レテン(Retene)は、コールタールの分画に含まれ、沸点が360℃以上の多環芳香族炭化水素である。天然では、樹脂を含む樹木蒸留によって得られる乾留液中に見られる。大きな面の結晶を作り、98.5℃で融け、390℃で沸騰する。温かいエーテルや熱い氷酢酸には容易に溶ける。ナトリウムや沸騰したアミルアルコールによって還元され、テトラヒドロレテンになるが、リン及びヨウ化水素とともに260℃に加熱するとドデカヒドリドを形成する。またクロム酸によって酸化され、レテンキノンフタル酸酢酸になる。123℃-124℃で融解するピクリン酸塩を形成する。

レテン
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識別情報
CAS登録番号 483-65-8
PubChem 10222
特性
化学式 C18H18
モル質量 234.33552
融点

98.5 °C

沸点

390 °C

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

レテンは、針葉樹が生産する特殊なジテルペンを分解して作られる。

レテンは針葉樹の熱分解物の主成分であり、空気中の痕跡量のレテンの存在は、山火事の指標となる[1]パルプ製紙工場からの廃液の中にも見られる[2]

レテンは、カダレンシモネッリ石とともに、維管束植物生体指標となり、堆積物古植物学的な分析に用いられる。堆積物中のレテンとカダレンの比は、生態系の中のマツ科植物の割合を明らかにする[3]

出典 編集

  1. ^ Unsolved Mysteries of Human Health, Community Outreach and Education Program, Oregon State University
  2. ^ J. Koistinen, M. Lehtonena, K. Tukia, M. Soimasuo, M. Lahtiperab and A. Oikari (1998). “IDENTIFICATION OF LIPOPHILIC POLLUTANTS DISCHARGED FROM A FINNISH PULP AND PAPER MILL”. Chemosphere 37 (2): 219–235. doi:10.1016/S0045-6535(98)00041-1. PMID 9650265. 
  3. ^ Y. Hautevelle, R. Michels, F. Malartre and A. Trouiller (2005). “Vascular plant biomarkers as ancient vegetation proxies and their stratigraphic use for tracing paleoclimatic changes during Jurassic in Western Europe” (abstract). Geophysical Research Abstracts 7: 10201. http://www.cosis.net/abstracts/EGU05/10201/EGU05-J-10201.pdf.