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五ノ井里奈

元陸上自衛隊員、柔道指導者

五ノ井 里奈（ごのい りな、 1999年9月29日[1] - ）は、日本の元陸上自衛官、柔道指導者[2]である。

ごのい　りな

五ノ井 里奈
生誕 (1999-09-29) 1999年9月29日（24歳）
宮城県石巻市
国籍 日本の旗 日本
職業 柔道指導者
著名な実績 陸上自衛隊勤務当時の性暴力被害告発
代表作 『声をあげて』
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来歴 編集

宮城県石巻市生まれ[3]、東松島市出身[4][5]。両親と兄二人がいる。自然分娩ではあったが、「泣き声がしない」ために、仙台赤十字病院に緊急搬送され、しばらく集中治療室で過ごす[6]。「里奈」という名前は、「ふる里」と母親の好きな「奈良」から、一文字ずつを取った[7]。2023年現在は横浜市在住で、好物はアイスクリーム[8]。

全くの柔道未経験から黒帯所持にまで変貌した父の影響で、五ノ井も4歳から兄の手ほどきで柔道の道を進むようになる[9]。

小学校5年生、11歳の時に東日本大震災に被災、約3か月間を公民館の避難生活で過ごす[10]。その時に被災者支援に奮闘する女性自衛官たち[注 1]が、入浴介助や腕相撲の相手をしてくれたことに感銘を受け、自身も自衛隊員を志す[1]。東松島市内に航空自衛隊松島基地があることから、自衛隊には親しみがあった[11]。翌年に両親が離婚し、五ノ井は兄二人とともに母のもとで暮らす[12]。

柔道の腕を見込まれて県内の高校にスカウトで入学し、県内高校新人大会で優勝するも、対人関係のトラブルから柔道が嫌になって中退[13]。その後は同県内の通信制高校に入学するも、高校付近のボクシングジムで汗をかいたところでやっぱり柔道が好きなのに気づき、兵庫県立飾磨工業高等学校[14]多部制に編入して柔道を再スタート[15]。抹消神経障害や挫折を味わいながらも、全国高校選手権大会兵庫県予選の女子63kg級で優勝[16][17][14]。第40回全国高等学校柔道選手権大会に出場して憧れの日本武道館の畳を踏むが、2回戦で敗退[18]。翌年夏のインターハイでの再挑戦へ奮起した矢先に、左膝の靱帯断裂を負う[18]。その後、五ノ井の知らぬ間に出場登録されていた、高校の「生活体験発表会」にて、『わたしは、あの方々のように、誰からも信頼され、感謝されるような立派な自衛官になりたいです』とスピーチした[19]。

2019年4月に東亜大学に進学したが、半年で中退[20]。直後に東松島の実家に戻った際、母親に自衛隊入隊の意思を告げて自衛隊広報官に連絡してもらう[20]。自衛隊体育学校で格闘指導官となるのを目標に、陸上自衛隊の自衛官候補生に志願、試験に合格した[20]。

自衛官として 編集

五ノ井（ごのい） 里奈（りな）
Rina Gonoi
生誕 1999年9月29日
宮城県石巻市
所属組織   陸上自衛隊
軍歴 2020 - 2022
最終階級 陸士長
除隊後 柔道指導者
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2020年3月29日、五ノ井は陸上自衛隊第119教育大隊に入隊[21]。前期教育を多賀城駐屯地[21]、後期教育を郡山駐屯地[注 2]で受け[22]、郡山駐屯地の男性隊員たちから数々の性暴力被害を受けた。

詳細は「2022年に発覚した自衛隊での性被害」を参照

2022年6月28日に、陸上自衛隊を依願退職[1]。退職当時の階級は1等陸士だったが、同年10月に防衛省に公務災害を申請し、12月15日に認められて1階級昇進での退職に改められ、最終階級は陸士長となった[23][9]。

退職後 編集

五ノ井里奈
人物
生誕 五ノ井里奈
(1999-09-29) 1999年9月29日（24歳）
宮城県東松島市
出身校 東亜大学中退
職業 柔道指導者
YouTube
チャンネル
活動期間 2013年6月18日 -
登録者数 4350人
総再生回数 68465回
挨拶 「元自衛官の五ノ井里奈です。」
チャンネル登録者数・総再生回数は
2024年1月24日時点。
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陸上自衛隊退職後、五ノ井は複数の放送メディアに取材依頼を送ったが反応がなく、週刊誌の存在も知らなかったため、五ノ井にとってより身近な告発系YouTubeチャンネルの複数に連絡を送った[1]。反応があった最初のチャンネル『【消防防災】RESCUE HOUSE レスキューハウス』の、大阪にある事務所に足を運び、事情を説明したところ、すぐに街中での動画撮影が開始され、当時の加害隊員（3等陸曹）に電話で確認をとる動画が撮影された[1]。この時、五ノ井は泣かないこと、隙を与えないことを心に決めて撮影に臨んでいた。この電話の後、五ノ井は内部の人間から、部隊内に「性加害を否定する」口裏合わせと、「五ノ井と連絡を取るな」という緘口令が敷かれたのを知らされたという。また、次のチャンネル『街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜』での収録が配信されたのちに、週刊誌数誌から取材依頼が来るようになり、対応していたところに、2022年7月9日の安倍晋三銃撃事件の影響で、五ノ井自身もいつか襲撃されるのではないか？と不安な日々を送っていた[1]。

五ノ井の性被害は、週刊現代[24]、AERA[25][26] 、SPA![27]などのweb記事が報じた。これらの記事は、自衛隊法59条第1項[28]に抵触することがなきように、弁護士と相談の上で、郡山駐屯地の名前を出した。7月21日にChenge.orgで署名を署名を求め[29]、60066件の賛同を集めて7月27日に記者会見を開いたものの[30] 会見開始時に記者が2名しか来なかったため、この問題をもっと世に出さなければ、との思いを強くした[1]。

YouTube動画への出演や記者会見を始めてから、五ノ井には自衛隊関係者やその家族からの連絡や、数々の誹謗中傷や殺害予告も届いていた[31]。

柔道指導者として 編集

2022年7月10日、神奈川県内に移住。横浜市青葉区にある柔道家小見川道大の道場にて、小学生相手の柔道指導を始める。小見川は、五ノ井の居宅の手配にも協力した[32]。

2023年2月5日、五ノ井は道場にて、女性限定の柔道体験教室を開いた。五ノ井自身の経験をもとに、辛い思いやストレスを柔道で発散できるように、初心者向けの内容にして、柔道の動きを使ったエクササイズも取り入れた[33]。しかし、自衛隊時代の性被害のフラッシュバックが起き、「好きだった柔道が純粋にできない」状態であるという[34]。柔道は接触スポーツであるため、女性同士の組合でも、寝技の時に「被害のままの行為の瞬間もある」ため、ぱっとその時の光景が来てしまったこともあるという[35]。

再就職 編集

2023年5月26日、五ノ井は櫻井裕一がCEOを務めるリスクマネジメント企業STeam Research & Consultingへの就職が決まったことを、自身のXアカウントに投稿した。今後も柔道指導は続ける方針であるという[36]。

受賞歴 編集

著書 編集

  • 五ノ井里奈『声をあげて』小学館、2023年5月10日。ISBN 978-4-0938-9104-2。 
    • 2023年5月23日、出版記念イベントが東京都世田谷区内の書店にて行われた[8]。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 女性自衛官には、WAC(陸上:Woman Army Corps)、WAVE(海上:Woman Accepted for Volunteer Emaergency Service)、WAF(航空:Woman in Air Force)の略称がある。
  2. ^ 一般の軍隊でいう「砲兵部隊」に当たる、自走砲や野砲などの大型の砲を扱う「特科隊」が配属されている。

出典 編集

  1. ^ a b c d e f g 五ノ井 2023, p. 38.
  2. ^ “源流の人　第32回 ◇ 五ノ井里奈（柔道指導者、元陸上自衛官）”. 小説丸. 株式会社小学館 (2023年5月29日). 2024年1月24日閲覧。
  3. ^ 五ノ井 2023, p. 19.
  4. ^ “元自衛官女性、駐屯地で複数の隊員から性被害　宮城・東松島出身、調査求め１０万人署名を提出”. 河北新報オンライン. 株式会社河北新報社 (2022年9月1日). 2023年11月28日閲覧。
  5. ^ “「性被害」告白した元女性自衛官、実名で声あげた理由　「嘘だと言われても、今止めなければ」”. 弁護士ドットコムニュース. 弁護士ドットコム株式会社 (2022年9月1日). 2023年11月28日閲覧。
  6. ^ 五ノ井 2023, p. 20.
  7. ^ 五ノ井 2023, p. 21.
  8. ^ a b 岩本雅子 (2023年5月9日). “「弱い人間、それでも声あげられた」　元自衛官の五ノ井里奈さんが10日に自叙伝出版”. 東京新聞 TOKYO Web. 株式会社中日新聞社. 2023年11月28日閲覧。
  9. ^ a b “日本で性被害者の「スティグマ」と闘う　元自衛官の五ノ井里奈さん”. BBCニュース. BBCグローバルニュースジャパン株式会社 (2022年6月12日). 2023年11月28日閲覧。
  10. ^ 五ノ井 2023, p. 24-33.
  11. ^ 五ノ井 2023, p. 42-44.
  12. ^ 五ノ井 2023, p. 34.
  13. ^ 五ノ井 2023, p. 37-44.
  14. ^ a b 神戸新聞 (2017年12月18日). “柔道　五ノ井、夙川の女子全階級Ｖを阻止　全国高校選手権兵庫県予選”. 47NEWS. 株式会社全国新聞ネット. 2024年1月24日閲覧。
  15. ^ 五ノ井 2023, p. 38-39.
  16. ^ 五ノ井 2023, p. 39.
  17. ^ 中大輔 (2018年8月1日). “［特別読み物］ それぞれの戦い ～熱血監督の十連覇と58歳の高校生～ 最終回”. BBM Sports. 株式会社ベースボール・マガジン社. 2024年1月24日閲覧。
  18. ^ a b 五ノ井 2023, p. 40.
  19. ^ 五ノ井 2023, p. 42.
  20. ^ a b c 五ノ井 2023, p. 44.
  21. ^ a b 五ノ井 2023, p. 37.
  22. ^ 五ノ井 2023, p. 45.
  23. ^ “元陸上自衛官の五ノ井さんが受けた性暴力、公務災害に認定　防衛省”. 朝日新聞デジタル. 株式会社朝日新聞社 (2022年12月23日). 2024年1月23日閲覧。
  24. ^ “「下半身を触れ」…元女子自衛官が退職を決めた「ヤバすぎる理由」”. 現代ビジネス. 株式会社講談社 (2022年7月12日). 2024年1月23日閲覧。
  25. ^ 岩下明日香 (2022年7月14日). “【前編】22歳元女性自衛官が実名・顔出しで自衛隊内での「性被害」を告発　テント内で男性隊員に囲まれて受けた屈辱的な行為とは”. AERA dot.. 株式会社朝日新聞出版. 2024年1月23日閲覧。
  26. ^ 岩下明日香 (2022年7月14日). “【後編】元女性自衛官が「性暴力」を告発した理由　「セクハラを“なかったこと”にするのが許せなかった」”. AERA dot.. 株式会社朝日新聞出版. 2024年1月23日閲覧。
  27. ^ 東田俊介 (2022年11月9日). “性被害を受けた元自衛官が“女性の先輩に言われたこと”。悪しき伝統をなくすためには”. 日刊SPA!. 株式会社扶桑社. 2024年1月23日閲覧。
  28. ^ “防衛省を退職されたみなさまへ”. 防衛研究所. 防衛省 (2022年6月12日). 2024年1月23日閲覧。
  29. ^ “元自衛官・五ノ井里奈が告発する性被害について、第三者委員会による公正な調査を求めます！ #自衛隊は性被害を隠さないで”. change.org (2022年7月22日). 2024年1月23日閲覧。
  30. ^ 岩下明日香 (2022年7月27日). “元自衛官・五ノ井里奈さんが訓練中の性被害について会見　「新隊員の人たちが安心して勤務できるように対策を」”. AERA dot.. 株式会社朝日新聞出版. 2024年1月23日閲覧。
  31. ^ 五ノ井 2023, p. 138-146.
  32. ^ 五ノ井 2023, p. 132.
  33. ^ “組んで投げ「前向きに」　元自衛官の五ノ井さん、柔道教室開催”. 産経ニュース. 株式会社産経デジタル (2023年2月5日). 2024年1月21日閲覧。
  34. ^ “五ノ井さん「今でもフラッシュバック、命を削って闘っている」被告は無罪主張【五ノ井里奈さん性被害事件・初公判詳報】”. TBS NEWS DIG. 株式会社TBSテレビ (2023年6月30日). 2024年1月21日閲覧。
  35. ^ “元自衛官 五ノ井里奈さん 被害に向き合うのが辛くても…「声をあげた」のは支えがあったから【news23】”. TBS NEWS DIG. 株式会社TBSテレビ (2023年5月4日). 2024年1月21日閲覧。
  36. ^ judo_gonoiのツイート、2023年11月28日閲覧。
  37. ^ “The FT’s 25 most influential women of 2022”. Financial Times (2022年12月1日). 2024年1月16日閲覧。
  38. ^ “米タイム誌「次世代の100人」元陸上自衛官 五ノ井里奈さん選出”. NHK NEWS WEB. 日本放送協会 (2023年9月14日). 2023年9月14日閲覧。
  39. ^ 伊藤詩織 (2023年9月13日). “Rina Gonoi Is on the TIME100 Next 2023 List”. time.com. 2024年1月16日閲覧。
  40. ^ 伊藤詩織 (2023年10月26日). “元自衛官・五ノ井里奈さん柔道着姿でTIME誌「次世代の100人」授賞式に出席 「世界でも悪いものは悪いと評価された」”. TBS NEWS DIG. 株式会社TBSテレビ. 2024年1月16日閲覧。
  41. ^ “「BBCが選ぶ100人の女性」に元自衛官の五ノ井里奈さん”. BBCニュース. BBCグローバルニュースジャパン株式会社 (2022年11月22日). 2024年1月17日閲覧。
  42. ^ “2024 International Women of Courage Award”. U.S.DEPARTMENT of STATE (2024年2月29日). 2024年3月3日閲覧。
  43. ^ “米国務省、五ノ井里奈さんに「世界の勇気ある女性賞」…日本人は小酒部さやかさん以来２人目”. 読売新聞オンライン. 2024年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月6日閲覧。
  44. ^ “五ノ井さんに「勇気ある女性賞」 実名告発「タブーに光」―米国務省”. 時事通信. (2024年3月2日). https://www.jiji.com/amp/article?k=2024030200262 2024年3月2日閲覧。 
  45. ^ “米政府 五ノ井里奈さんに「世界の勇気ある女性賞」授与”. NHK NEWS WEB. 2024年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月6日閲覧。

外部リンク 編集

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