伊藤 裕之(いとう ひろゆき)は、スクウェア・エニックスゲームクリエイター東京造形大学造形学部卒業。岐阜県岐阜市出身。

概要 編集

大学卒業後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社。最初はデバッグ効果音などの仕事をしていたが、『ファイナルファンタジーIV』で趣味のF1観戦から思いついたアクティブタイムバトルシステム (ATB) を発案する。ATBは特許を取り、現在の「ファイナルファンタジーシリーズ」の骨格となった。また、アビリティシステムやジャンクションシステムといった独創的なゲームシステムも開発している。

ゲームデザインとは別に「シオミ」の名で、『ファイナルファンタジーV』のアレンジ曲や、『ファイナルファンタジーIX』の主題歌の作詞なども手掛けている。2006年には、『ファイナルファンタジーXII』のディレクター(ゲームデザイン)を担当した。

趣味はモータースポーツ観戦、パズル書道

好きなゲームは『ウィザードリィ』、『ウルティマオンライン』、『ファイナルファンタジータクティクス』。

経歴 編集

作品 詳細
1987 ファイナルファンタジー デバッグ
1988 ファイナルファンタジーII デバッグ
1989 魔界塔士Sa・Ga シナリオ
スクウェアのトム・ソーヤ 企画
1990 ファイナルファンタジーIII 効果音・「エリーゼのために」演奏。
1991 ファイナルファンタジーIV バトルデザイン、アクティブタイムバトル (ATB) 発明、スクウェアが特許獲得。
1992 ファイナルファンタジーV バトルデザイン、ジョブ・アビリティシステム開発。
FF5 ディアフレンズ (CD) (『FF5』の楽曲のアレンジCD)大森林の伝説/作詞。栄養ドリンク提供。
1994 ファイナルファンタジーVI ディレクター(北瀬佳範と共同)、主にバトルデザイン面で魔石システムなどを開発。
FF6 シングルCD FF6イメージソング 近付く予感/作詞(Vジャン共同企画)。
ファイナルファンタジー (OVA) 監修(複数人数参加)
1995 クロノ・トリガー イベントプラン。
1997 ファイナルファンタジータクティクス ゲームデザイン、バトルデザイン、『FFV』をより発展させたジョブアビリティを搭載したSRPG
1999 ファイナルファンタジーVIII バトルデザイン、カードゲーム・ジャンクションシステム開発。
おでかけチョコボRPG ゲームデザイン
2000 ファイナルファンタジーIX ディレクター、システムから主題歌の作詞まで広範に手がける。プレイステーションアワード2000、グランプリ受賞5部門制覇。
Melodies of life (CD) シオミ名義で作詞、オリコン初登場10位。作曲植松伸夫/歌白鳥英美子
2002 テトラマスター システム原案。
2005 いただきストリートSPECIAL 協力
2006 ファイナルファンタジーXII ディレクター(ゲームデザイン)プレイステーションアワード2006、ダブルプラチナ受賞。
2007 FFXIIインターナショナル ディレクター。公式サイト短編小説。
ファイナルファンタジーIV(DS版) バトル監修
2012 ガーディアンクルス システム原案、監修。
2014 デッドマンズクルス バトル原案。
2017 ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ スーパーバイザー
2021 ダンジョンエンカウンターズ ディレクター(ゲームデザイン)

ゲームデザイン 編集

一般的にRPGは、時間をかけて育てれば誰でもクリアできるバランスの作品が多く、伊藤作品でもそういったやり込み要素は多いが、レベル上げ禁止タイムアタックによるプレイヤー自身のスキルによってもクリア出来るバランスを非常に重視している。また、ボスモンスターを倒す事はプレイヤーの実力を試す試練であり、経験値といったご褒美は不要であるという持論も持っている。ただし、育成をせずにボスを倒すテクニックの多くは、アイテムやアビリティで敵の攻撃を封じる力押しやハメ技である事が多く、通常のプレイの際にそれらを駆使するとバランスを壊す面が少なからずある。これに関して一緒に仕事をしたスタッフは「レベルを上げるより装備やライセンスを集めたほうが強いと思います。人間の肉体が短期間で成長するわけがなく、新兵だろうと武装が強いほうが勝つのが伊藤の持論なので」と伊藤が近代戦的な思想を持っている事を語った。

ファイナルファンタジーIX』以降は、『ファイナルファンタジーXII』でディレクター(ゲームデザイン)として参加。ガンビットを搭載したシームレスな戦闘システムADBは、『FFXII』のエグゼクティブプロデューサーである河津秋敏から「ATBはこの形にならなければ完成ではなかった、流石は伊藤」と絶賛された。余談だが『FFXII』完成直後に「次にやるなら『FF150』」としばらく関わりたくないような発言をした直後にインターナショナル版に早々と登板した。

過去の「実験作」『FFVIII』が「評価以前に成長システムを理解をできなかった」ユーザーが発生してしまったため、『FFXII』の記事ではライトユーザーがバトルシステムを理解するのが精一杯で成長システムを使いこなせない事を不安視する発言を何度もした。

ゲームシステムの構築 編集

アクティブタイムバトルシステム (ATB) 編集

ファイナルファンタジーIV』にて、アクティブタイムバトルシステムを発明。ターン制のRPGには緊張感がなく眠いと評価し、フェラーリのセミオートマチック技術を参考に「セミリアルタイムバトルシステム」を発明、これを「アクティブタイムバトルシステム」と名付けた。このシステムは特許をとり、現在もFFシリーズの人気を支える売りとなっている。

アビリティシステム 編集

ファイナルファンタジーV』にてアビリティシステムを発明。アビリティ(能力)を自由に取り外し・組み合わせを可能とした。『FFV』では「コマンドアビリティ」と「ジョブ特性」という2つの概念しかなかったが、『ファイナルファンタジータクティクス』で「コマンドアビリティ」「サポートアビリティ」「リアクションアビリティ」「ムーブアビリティ」の4体系に整理した。

担当したゲームシステム 編集

カードゲーム 編集

ファイナルファンタジーVIII』から登場したゲーム内ミニゲームで、トリプルトライアド、クアッドミスト(テトラマスター)の2種類のカードゲームをデザインした。

それぞれ現実のカードゲームやオンラインゲーム等に発展し、『FFVIII』ではスタッフの要望で精製によってカードをアイテムに改造できたが、『FFIX』では廃止されている。

関連項目 編集