働いたら負けかなと思ってる

2004年に日本で生まれたインターネットミーム
働いたら負けから転送)

働いたら負けかなと思ってる」(はたらいたらまけかなとおもってる)は、2004年に日本で生まれ流行したインターネット・ミーム

概要 編集

このフレーズは、2004年9月にフジテレビの『とくダネ!』で放送された、ニート男性へのインタビューから生まれた[1]。放送当時、「ニート」はネット流行語大賞候補に選ばれるなど[2]、新しい社会問題として世間から関心を持たれ始めていた[1]

取材を受けたニート男性は、丸刈りで、尖った歯をのぞかせながら常に薄ら笑いを浮かべているという風体だった[1]

インタビュアー「いつまでこの生活を続ける気か」
ニート男性「働いたら負けかなと思ってる[2]
ニート男性「今の自分は勝ってると思います」[1]

勤労の義務を堂々と拒絶するその姿勢は当時としては衝撃的なものであり[1]、ほどなく番組のキャプチャ画像やアスキーアートが熱狂的な勢いで[1]ネット中に拡散するに至った[3]。このニート男性はニートを象徴するアイコンとして[3]一躍時の人となり[2]、特に2ちゃんねる界隈では知らない者は居ないほどの存在となった[3]

その後、ニートの存在が社会的に広く認識されるにつれ、「働いたら負け」というフレーズもネット空間に定着していった[1]

このニート男性の消息は、高い関心を寄せられながらも[2]長らく不明で失踪説や死亡説まで出ていたが[3]、2011年1月22日に突然、「D-chan」と名乗りスーツ姿でニコニコ生放送に姿を現した[2]。配信内で彼は、現在30歳で就職活動中であること[2]パソコンを持っていないためネットでの盛り上がりを殆ど知らなかったこと[3]、例のフレーズは自分が考えたのでなくパクリであること[2]などを明かした。ニートを卒業してしまった彼の姿に、視聴者からは「伝説は伝説のままでいてほしかった」などと残念がる声が上がった[3]

影響 編集

 
双葉杏コスプレで「働いたら負け」Tシャツを着る女性

2007年7月に発売されたアニメ『ハヤテのごとく!』のキャラクターCD 1st series「3 三千院ナギ」に収録されている「お嬢様の戯れ言/日常会話篇」の中で、三千院ナギ(声 - 釘宮理恵)による「うむ。働いたら負けかな、と思っている。」というセリフが収録されている[4]

2011年にはゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』に登場する脱力系女子アイドルの双葉杏が「働いたら負け」と書かれたTシャツを着用し[1]、2015年より商品化もされた[5]

2017年頃から当時LINE執行役員の田端信太郎が、ニート男性が自身であると主張しており、イケダハヤトやまもといちろうもその主張に賛同していた[1][6][7]。しかし、風貌や経歴が全く一致しないことが指摘され、2018年1月3日に田端はこの主張を取り下げている[8]

2023年10月、内閣総理大臣岸田文雄官邸で開いた政府与党政策懇談会にて「所得税個人住民税減税が最も望ましい」と述べ、2024年6月に1人当たり4万円の定額減税を行う方針を示し、また、低所得者世帯には7万円を給付することを示した。この報道を受け、実業家の西村博之は「働いてる人は、払う税金を4万円だけ減らしてあげる。働いてない人は、働いてる人が払った税金を7万円あげる」という仕組みだと解説し、その上で「働いたら負け」と皮肉った[9]

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g h i 安田峰俊 (2019年5月1日). “ニートの名言「働いたら負けかなと思ってる」をマジで笑えなくなった“平成の終わり” (2/3)”. 文春オンライン. 文藝春秋. 2021年7月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 「働いたら負け」あの有名ニート君!?が就活中”. ニコニコニュース. ドワンゴ (2011年1月23日). 2021年7月15日閲覧。
  3. ^ a b c d e f 「働いたら負けかなと思ってる」ニート君、ただいま絶賛就活中”. INTERNET Watch. インプレス (2011年1月24日). 2021年7月15日閲覧。
  4. ^ ハヤテのごとく!キャラクターCD3/三千院ナギ | 三千院ナギ | GNCA-0057 | ジェネオン エンタテインメント”. ジョーシン ディスクピア. 2021年7月28日閲覧。
  5. ^ 『アイドルマスター シンデレラガールズ』の“働いたら負けTシャツ”やiPhone用カバーが4月に発売」『電撃オンライン』KADOKAWA Game Linkage。2021年7月15日閲覧。
  6. ^ 働いたら負けのニート君、今はLINE執行役員「田端 信太郎」氏という噂が拡散!本人も認める!が・・・」『秒刊SUNDAY』メディアーノ、2018年1月3日。2021年7月21日閲覧。
  7. ^ 「働いたら負けかな」で有名になったニート LINEの役員が「あれは俺だ」と名乗りだす もちろんデマ」『ゴゴ通信』、2018年1月3日。2021年7月21日閲覧。
  8. ^ 田端信太郎 [@tabbata] (2018年1月3日). "今回、私世界のタバティは、正月早々に嘘付いてしまい深く謝罪致します。". X(旧Twitter)より2021年7月28日閲覧
  9. ^ ひろゆきさん「働いたら負け!」「日本人全員が7万円給付されるべき、働くと減額という分断はよくない」とあらためて岸田首相を批判」『中日スポーツ』、2023年10月26日。2023年12月6日閲覧。