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分隊支援火器

M27 IAR(発展型の軽機関銃)
ミニミ軽機関銃 (専用設計型の軽機関銃)
M60機関銃(汎用機関銃)
FN MAG(汎用機関銃)

分隊支援火器: Squad Automatic Weapon, SAW)もしくは軽支援火器: Light Support Weapon, LSW)は、分隊火力支援するために容易に携行することが可能な機関銃である。

小銃弾以上の銃弾を使用する軽機関銃を指すことが多いが、汎用機関銃を分隊支援に使用する国も存在し定義は国によって異なる。

通常、1個歩兵分隊または1個歩兵小隊に1-2丁配備される。

目次

概要編集

分隊支援火器の基本的な運用法は、行軍時の野戦において弾幕を張ることで敵歩兵に頭を上げさせない火力制圧を行うものである。この援護射撃によって敵の攻撃行動を抑制し、味方の攻撃の自由度を確保する。また、敵の強襲に対する防御に使うこともできる。

分隊支援火器は基本的に1人で携行できるほど軽量で、戦闘部隊への補給の単純化・効率化を考慮して、弾薬はアサルトライフルと共通のものを使用する。汎用機関銃、または重機関銃は、その重量ゆえに攻勢に伴う移動にあまり適さず、三脚を用いて陣地の守備に用いられることが多いが、分隊支援火器は部隊移動を伴う野戦において二脚(バイポッド)を展開して使用されることが多い。分隊支援火器は陣地防御のような用途には向かず、そのような使い方は設計・運用思想とも合わない。

分隊支援火器はミニミ軽機関銃ウルティマックス100など最初から個人携行用の軽機関銃として設計されている専用設計型と、ロシアソ連)のRPK軽機関銃イギリスL86などアサルトライフルを連続射撃に耐えられるように長銃身化、二脚を追加したアサルトライフルからの発展型(アサルトライフルと構造が似ているため、操作・整備技術の習得を早める効果がある)2通りの基本パターンに分類できる。

歴史編集

分隊支援火器の登場前
機関銃の登場によって歩兵戦の火力は向上したものの兵士による携行が困難であった機関銃は移動を伴う突撃時にはその火力を発揮することはできなかった。その場合、連射が不可能なボルトアクション式小銃と威力が弱い短機関銃が歩兵火力の中心となり、弾幕による制圧射撃が弱いか、または無いという問題が生じた。分隊支援火器は、この問題を解決するために、機関銃を突撃時にも携行できるようにする、という発想から生まれた。この武器の登場と、それを扱う専門の援護射撃兵の教育により、個々の兵士は弾薬を節約することができ、訓練時間を短くすることができ、かつ分隊が持つ弾薬の重量を軽減することができた[注釈 1]
分隊支援火器の登場
第一次世界大戦期にアメリカ軍で採用されたブローニングBARは初期の分隊支援火器として有名である。BARは当時の主力小銃であるM1903小銃の倍近い重量ではあったものの兵士が携行できる重量でありガス圧による自動装填機能、セミ/フル切り替え機能、20発の着脱式弾倉を備えておりボルトアクション小銃より強力な制圧能力を持っていた。第二次世界大戦前にはBARのように自動装填機能、フルオート機能、数十発程度の着脱式弾倉を備えた軽機関銃ブレン軽機関銃DP28軽機関銃mle1924/29軽機関銃など)が登場し大戦期の分隊火力の中核となった。
分隊支援火器の進化
第二次世界大戦後にはFN FALといった自動小銃が登場した。これらのライフルは基本的にフルオート(連続)射撃が可能であるが、特に新兵など興奮しすぎた兵士は、戦闘においてあっという間に弾薬を使い果たしてしまう。また、フルオート射撃時にはアサルトライフルの小型軽量さが災いして反動が激しくなり、銃口が跳ね上がるので当然命中精度は低くなる。従って、多くの軍隊では一般兵士に対して、フルオートの使用を近接戦闘時に限定するように教育している[注釈 2]。このような弾薬消費を抑える努力や工夫によって、兵站への負担軽減と弾薬を携行する前線兵士の疲労も同様に軽減できる。こうした事情から依然として軽機関銃による火力支援を必要とした。この時代の分隊支援火器(M60機関銃FN MAGなど)ではベルト給弾式が取り入れられ大戦期の分隊支援火器よりも制圧能力が向上した。

利点編集

  • 信頼性が高く連続射撃が可能(弾幕による実効制圧力が増す)
  • アサルトライフル弾薬が共通なため、兵站の負担軽減になる
  • 小型で持ち運びが容易な軽量の機関銃は、敵にとっては標的の特定と順位付けを行うのが難しい
  • 二脚(バイポッド)によって高精度の射撃ができる
  • 分隊支援火器の専門兵士がいれば
    • 高精度・効率的[注釈 3]な射撃が期待できる
    • 弾薬の携行量を最適化できる
    • 予備銃身などまで含めた装備への配慮が期待できる
  • アサルトライフルの発展型の場合
    • 基本設計・基本操作が共通しており、射撃と保守の訓練期間が軽減できる
    • 一部共通する部品については保守・修理で利便性が向上する
    • 製造・取得コストの低廉化が期待できる

欠点編集

  • アサルトライフルと共通の弾薬、つまり汎用機関銃より低威力の弾薬を使用するため、射程・殺傷力が劣り、正面からの撃ち合いでは『力負け』する(「アサルトライフルに毛が生えた」程度のもの)
  • 二脚架運用である以上、三脚架に固定された汎用機関銃と比較するとことさら命中精度に劣る
  • 従来の機関銃に比べると、強引に軽量化した分だけ構造的に無理が多く信頼性が低い
  • 従来の機関銃とまったく互換性のないパーツ・弾薬を全軍に適切に供給し続けなければならない
  • 機関銃手ともまた異なる分隊支援火器の専門兵士を、全軍の各分隊に十分配属できるようかなり大量に育成する必要がある
  • アサルトライフルの発展型の場合
    • 銃身交換ができないため連射性に問題が生じる
    • 弾倉の装弾数が少ないため連続射撃において不利(ドラム式弾倉を使用するなどして解決する方法もあるが命中精度が高く装填作業が簡単な発展型においては無理に装弾数を増やすメリットは少ない)

日本での運用編集

日本において近年まで分隊支援火器の役割を果たしていたのは62式7.62mm機関銃である。

一般に7.62mm弾薬を使用する機関銃は、汎用機関銃として運用されるが、64式7.62mm小銃と共通の弱装弾を用いるため、分隊支援火器に近い運用がなされていたのである。

89式5.56mm小銃が採用され、弾薬が5.56mmに変更されると、それに合わせてベルギー製のミニミ軽機関銃住友重機械工業ライセンス生産し、5.56mm機関銃MINIMIとして配備され、62式機関銃との代替が進みつつある。ミニミは、アメリカ軍でほぼ同じものがM249として採用されており、もちろん弾薬も共通である。

脚注編集

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注釈編集

  1. ^ 民兵や非正規軍においても、この運用思想は利点をもつ。私費で購入する弾薬代を節約できる上に、訓練の時間も短くすることができ、正規軍と同じような行動を非軍事用の銃で行うことができる。戦時には軽装備の民兵でも、1個分隊に1丁の分隊支援火器を支給して火力を増強できる
  2. ^ フルオート射撃の抑制で云えば、アメリカ陸軍の一般兵士用のアサルトライフル・M16自動小銃のA2・A4型は、フルオート機能を敢えて廃止してセミオート(単射)機能と3点バースト射撃(引き金を引くと3発だけ連射される)機能だけに限定したほどである
  3. ^ 分隊支援火器は軽量化のために連続射撃時の制約が大きく、多数のフルオート射撃をした場合には、給弾過程で早発爆発するコックオフ事故やその他の動作不具合を起こし易い。そういった短所も含めた訓練が求められ、兵士の専門化は射撃精度の向上だけでなく兵器の効率的運用にもつながる

出典編集

関連項目編集