医師法
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医師法(いしほう)は、医師全般の職務・資格などを規定する日本の法律。
医師法 | |
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![]() 日本の法令 | |
通称・略称 | なし |
法令番号 | 昭和23年法律第201号 |
種類 | 医事法 |
効力 | 現行法 |
主な内容 | 医師の資格の法定 |
関連法令 | 外国医師等が行う臨床修練に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律・障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律 |
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概要編集
成立は1948年7月30日(昭和23年法律201号)、施行は同年10月27日。
戦後に制定された医師法・歯科医師法の「根本的な考え方」は、以下の通りである。
「両法の基礎となつている根本的な考え方は、一方において、医療を担当する立場にある医師、歯科医師の資質をできるだけ高い水準に置くとともに、他面、資格を取得した医師及び歯科医師に対しては、国民保健の見地からの最少限度の規制をするにとどめ、医師及び歯科医師にできるだけ自由にその技能を発揮せしめ、両々(りょうりょう)相まって国民に適正な医療を与えることができるようにしようということにある。」(厚生省医務局編集・医制百年史(記述編)399頁)
この「根本的な考え方」に基づき「削除」されたのが、旧国民医療法には存在した「罰則規定」である。
当該箇所は、以下の通りである。
「(八) 医師、歯科医師の応招義務及び証明文書の交付義務の違反に対しては従来罰則をもって臨んでいたが、新法においてはその遵守は医師、歯科医師の良識に任せることとしてその罰則を廃し、甚だしきものに対しては行政処分をもって臨むこととしたこと。」(厚生省医務局編集・医制百年史(記述編)400頁)
この「罰則規定」は、国民医療法(昭和17年2月25日法律第70号)第76条第1項第1号に「五百円以下の罰金又は科料」として存在した。
戦後に制定された医師法・歯科医師法の源流は、国民医療法(昭和17年2月25日法律第70号)にあり、同法第9条で、医師又は歯科医師を纏(まと)めて規律し、同法第76条第1項第1号に「罰則」を置き、抑止力を持たせていた。
国民医療法(昭和17年2月25日法律第70号)
第9条
診療に従事する医師又は歯科医師は診療治療の需(もとめ)ある場合において正当の事由なくして之(これ)を拒むことを得ず
診察又は検案を為(な)したる医師は 診断書、検案書または死産証書の交付の需(もとめ)ある場合において正当の事由なくして之(これ)を拒むことを得ず
診察を為したる歯科医師は診断書の交付の需(もとめ)ある場合において正当の事由なくして之(これ)を拒むことを得ず
(医制百年史(資料編)、128頁)
第76条
左の各号の一に該当する者は五百円以下の罰金又は科料に処す
一 第8条第2項、第9条、第10条、第12条又は第13条の規定に違反したる者
(医制百年史(資料編)、134頁)
- 1条 医師の任務
- 医療と保健指導を司ることによって、公衆衛生の向上と増進に寄与し、国民の健康的な生活を確保する。
- 3条 絶対的欠格事由
- 未成年者は医師になれない。
- 4条 相対的欠格事由
- 心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者、麻薬、大麻、あへん中毒、罰金刑以上の刑に処せられたもの、医事に関する犯罪、不正を行ったもの
- 6条 登録・免許証の交付及び届出
- 医師国家試験に合格した者の申請で医籍に登録されたもの、厚生労働大臣が免許を与えたときは免許証を交付する。
- 7条 医師の処分
- 戒告、3年以内の医業の停止、免許の取り消しの処分を厚生労働大臣から受ける。第7条の2の医業の停止を命ぜられ、当該期間中に医業を行った者は第32条の規定により1年以下の懲役または50万円以下の罰金または併科
- 11条 医師国家試験受験資格
- 15条 医師国家試験または医師国家試験予備試験における不正行為の禁止
- 第31条の規定により虚偽の事実、不正によって免許を得た者は3年以下の懲役または100万円以下の罰金または併科
- 17条 医師以外の医業の禁止
- 第31条の規定により3年以下の懲役または100万円以下の罰金または併科
- 18条 名称の使用制限
- 第31条の2の規定により3年以下の懲役または200万円以下の罰金または併科
- 19条 応招義務及び診断書交付の義務
- 20条 無診療治療等の禁止
- 21条 異状死体などの届出義務
- 22条 処方箋の交付義務
- 24条 診療録の記載及び保有
例外規定など編集
- 20条
- 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。
- 22条
- 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当つている者に対して処方せんを交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当つている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合や、次の各号の一に該当する場合は、この限りでない。
- 暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合
- 処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合
- 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合
- 診断又は治療方法の決定していない場合
- 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合
- 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合
- 覚せい剤を投与する場合
- 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合
医師の義務編集
- 療養指導義務
- 応召義務
- 診断書の交付義務
- 無診療治療の禁止
- 処方箋の交付義務
- 異状死体、異状死胎の届出義務
- 医師の現状届
- 診療録の記載及び保存義務
守秘義務を規定する刑法など、医師法以外の法律にも、医師の義務を規定するものがある。
罰則編集
医師以外の者の医業禁止、名称の使用制限、試験に対する不正行為、無診療治療の禁止、異状死体の届出義務、処方箋の交付、診療録の記載、及び保存の条項には罰則がある。
外国人医師編集
外国の医師免許を持っていても、日本の医師免許を取得していない者は、医師法上、日本で医療活動をすることが出来ない。ただし、以下のような例外がある。
脚注編集
- ^ a b 東日本大震災:海外医療チーム受け入れへ(毎日新聞 2011年3月16日)
- ^ a b 海外医療チーム、政府が受け入れ 例外措置を決定(日本経済新聞 2011年3月16日)
- ^ 平成23年(2011年) 東北地方太平洋沖地震の被害状況及び対応について(第16報) (PDF) (厚生労働省 2011年3月16日。3月14日に医政局医事課が許可)