日本の地方議会

日本の地方議会(にほんのちほうぎかい)は、日本地方公共団体に置かれる議会を指す。

目次

議会が置かれる地方公共団体編集

法的根拠編集

戦前においても地方議会は存在していたが、明治憲法に地方自治の規定はなかった。第二次世界大戦後、日本国憲法第93条に規定が設けられた普通地方公共団体に、その住民に直接公選された議員をもって組織する議会を議事機関として置くことが明記され、根拠となっている。ただし、町村では条例で議会を置かず、これに代えて選挙権者の総会である町村総会を設けることができる(第94条及び第95条)。

  • 国会との違い
    国会は国権の最高機関であり、唯一の立法機関であるとされている(憲法第41条)。これに対して、地方自治制度は首長制を採用しており、普通地方公共団体の議会の議員のみならず長も住民から直接選挙されるため、地方議会は地方公共団体の最高機関ではない。また、地方議会は条例の制定及び改廃権を有しているが、普通地方公共団体の長も規則の制定・改廃権を有している(憲法第94条にいう「条例」とは、長の制定する規則も含むと解されている)ことから、唯一の立法機関でもない。

歴史編集

戦前も区会等が存在した。東京市会東区 (大阪市)を参照

組織編集

地方公共団体の議会の議員の定数は、条例で定めることとされている。(第90条及び第91条

1999年の地方自治法の一部改正前までは、地方自治法が議員の定数を法定していたが、地方公共団体の自己決定権を高める見地から、同年改正で条例定数制度が採用された。当初、地方自治法に定められた上限数を超えない範囲内で定めなければならないとされていたが、2011年の地方自治法改正により上限枠が撤廃された。

党派別議員数 (2009年12月31日現在)[1]


選挙編集

後記の組合団体を除けば、国政選挙同様に日本国籍を有し18歳以上で選挙区において住民登録を行った後3ヶ月以上経過する住民を有権者とする直接選挙により選ばれる。原則として単記非移譲式大選挙区制(複数の定数の選挙区で投票者は1人の候補に対して投票し、単純に得票の多い候補から順に当選する)であるが、定数1の選挙区も存在する。都道府県議会の場合は市・郡を基本単位とする複数の選挙区から選出する。市町村および東京都特別区は単一選挙区とする場合と複数の選挙区を分ける場合と2通りある。地方議会および首長の任期は日本全国で同一の周期であるものが多いため、これらの選挙を全国で同一時期に実施する統一地方選挙が国政における政局に対しても大きな影響を与えている。

組合議会の議員選出編集

一部事務組合や広域連合等の、地方公共団体の組合としての特別地方公共団体の議会の議員は、構成地方公共団体の議員から、互選で選出されるか、もしくはそのまま組合団体の議会議員を兼ねる。

任期編集

普通地方公共団体の議会の議員の任期は4年である(第93条第1項)。地方公共団体の議会の議員の任期は一般選挙の日から起算する(公職選挙法第258条本文)。ただし、任期満了による一般選挙が地方公共団体の議会の議員の任期満了の日前に行われた場合において、前任の議員が任期満了の日まで在任したときは前任者の任期満了の日の翌日から、選挙の期日後に前任の議員がすべてなくなったときは議員がすべてなくなった日の翌日からそれぞれ起算する(公職選挙法第258条但書)。地方公共団体の議会の議員の補欠議員については、その前任者の残任期間在任する(公職選挙法260条第1項)。また、地方公共団体の議会の議員の定数に異動を生じたため新たに選挙された議員は、一般選挙により選挙された議員の任期満了の日まで在任する(公職選挙法260条第2項)。

なお、議会の解散や議員の解職請求により、4年の期間満了前に議員の地位を失うことがある。ただし、議会の解散はハードルが高いため、解散が行われることはほとんどない。

権限編集

憲法においては、日本の地方自治制度として首長制(地方公共団体の長を住民の公選により議会の議員とは別に選ぶ制度)を採用している。普通地方公共団体の長と議会とは共に住民を代表する機関として対等であり、互いに自己の権限を行使し、牽制しあうことで円滑に地方自治が運営されていくことが期待されている。もっとも、普通地方公共団体の長は当該団体の統轄代表権(第147条)をはじめ、予算の調製・提案・執行権等を握るなど、現実面において強力な権限を有している。そのため、長と比べ地方議会の存在感は薄くなりがちであり(例えば、住民の間でも普通地方公共団体の長の名前は言えても議長の名前は言えない者が多いとの指摘がある等)、このような状況下において、近年のように議員の高額な議員報酬、物見遊山的な議員派遣による海外視察、政務調査費の不適切な使途等が問題となると、地方議会は不要ではないかなどといった極論も見られるようになった。

もっとも、地方分権の進展に伴い、地方公共団体の自主立法権も拡大することとなることから、条例制定等の立法機能の強化が必要となってきている。また、長の強大な権能を適切に監視する必要も高まっている。このように、地方分権の実現には、地方議会が適切にその権能を行使していくことが必要不可欠である。

議決事件編集

普通地方公共団体の議会は、下記の事件を議決しなければならない(第96条)。議決事件は地方自治法に具体的に列挙されており、普通地方公共団体の長の権限が概括列挙され(第149条)、広く権限の推定が及ぶとされているのとは異なっている。そのため、議会の議決事件について制限列挙主義を採用しているとされている。もっとも、議決事件は条例で任意に追加できることからすれば、必ずしも議決事件が地方自治法に列挙されているものだけに制限されているわけではない。

  • 条例の制定、改廃
  • 予算の決定
    予算は増額して修正することを妨げない(第97条第2項)。ただし、長の提出の権限を侵すような修正はできないとされており、一定の制約がある。減額修正については制限はないと解されている。
  • 決算の認定
  • 地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入金もしくは手数料の徴収に関すること
  • 政令で定める基準に従い条例で定める契約の締結
  • 財産の交換等、不動産の信託、その他政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分
  • 負担付きの寄付又は贈与を受けること
  • 法律又は条例で定める場合を除くほか、権利の放棄
  • 公の施設の条例で定める独占的利用
  • 訴えの提起等
  • 議会の権限として損害賠償額を定めること
  • 地方公共団体の区域内の公共的団体等の活動の総合調整
  • その他法律又はこれに基づく政令(これらに基づく条例を含む。)により議会の権限に属する事項
  • 上記のほか、普通地方公共団体は、条例で普通地方公共団体に関する事件(法定受託事務にかかるものを除く。)につき、議会の議決すべき事件を追加することができる。

権限に属する選挙権編集

普通地方公共団体の議会は、法律又はこれに基く政令によりその権限に属する選挙を行わなければならない (第97条第1項)。議長及び副議長の選挙(第103条第1項)や、選挙管理委員会の委員の選挙(第182条第1項)などがこれに当たる。

検査権及び監査請求権編集

  • 当該普通地方公共団体の事務に関する書類及び計算書を検閲し、当該普通地方公共団体の長、委員会又は委員の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる(第98条第1項)。
  • 監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務に関する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができる(同条第2項)。

意見表明権編集

普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁[2]に提出することができる(第99条)。

なお、当該意見書は地方公共団体の機関たる議会の意思を決定・表明するものであり、地方公共団体の団体意思を決定・表明するものではない。したがって、当該意見書の発案権は議員のみが有しており、地方公共団体の長等はこれを有さない。

調査権編集

普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる(第100条)。調査権の行使をゆだねられた委員会は、地方自治法の条項から百条委員会とも呼ばれる。

国会の国政調査権を参考として、戦後改革の際に設けられた権限である。ただし、国会の国政調査権は議院のみならず委員会も行使できるとされているが、地方議会の調査権はあくまで議会の議決により行使され、委員会に調査権の行使をゆだねる際にもその旨の議会の議決が必要である。

  • 除外事項
    自治事務:労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるもの。
    法定受託事務:国の安全を害するおそれがあることその他の事由により政令で定めるもの。

請願編集

普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない(第124条)。なお、議員の紹介がないものを陳情という。

普通地方公共団体の議会は、その採択した請願で当該普通地方公共団体の執行機関において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、かつ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる(第125条)。

執行機関は請願を誠実に処理しなければならない(請願法第5条)とされるが、請願により法的に拘束されるわけではない。

請願は住民票の在る自治体で無くても出す事が出来る。

招集、会期編集

地方議会は定例会と臨時会に分かれており、会期制度を採用している。すなわち、議会は会期中に限り活動する(例外は、委員会の閉会中審査)。

議会の活動は、長が議会を招集することにより開始することとなるが、いったん議会が招集されたならば、その会期の設定及び延長並びに議会の開閉は議会が定めることとされている(第101条第102条)。

  • 招集(第101条)
    長が招集する(第1項)。
    議長は、議会運営委員会の議決を経て、又は議員の定数の4分の1以上の者は、長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる(第2・3項)。
    平成24年改正により長が招集の請求に応じない場合には、議長が招集できることとされた[3]
  • 定例会
    毎年、条例で定める回数、招集される(第102条)。
    平成16年改正前までは、「年4回以内で条例で定める回数」とされていたが、現在はそのような制限はない。もっとも、多くの地方議会では、いまなお定例会の回数を年4回としている。
    平成24年改正により条例により通年の会期とすることが可能とされた[3]
  • 臨時会
    必要な事件に限り、招集される。

議長及び副議長編集

  • 議長の権限
    委員会に出席し発言できる(第105条)。
  • 議案の可否は、出席議員の過半数により決まるが、可否同数の場合は、議長が決定することができる(第116条

委員会編集

委員会は、議会で審議される案件に、専門的知識や経験を生かし事前審査を行うための審議機関である。

議会の自主的な活動を推進するために、条例で常任委員会(第109条)・議会運営委員会(第109条の2)・特別委員会(第110条)を設置することができる。

各委員会は、議会の議決すべき事件のうちその部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関するものにつき、議会に議案を提出することができる。ただし、予算については、この限りでない(109条、109条の2、110条)。

  • 常任委員会
  • 議会運営委員会
    • 議会運営委員会の議決を経て、議長は、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる(101条2項)。
    • 調査、審査事項(第109条の2)
      1. 議会の運営に関する事項
      2. 議会の会議規則、委員会に関する条例等に関する事項
      3. 議長の諮問に関する事項
  • 特別委員会
    特別委員は、議会において選任し、委員会に付議された事件が議会において審議されている間在任する(第110条第2項)。
    特別委員会は、会期中に限り、議会の議決により付議された事件を審査する。ただし、議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中も、なお、これを審査することを妨げない(第110条第4項)。

会議編集

  • 議会は原則として、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議を開くことができない(113条)。
  • 普通地方公共団体の議会の議員の定数の半数以上の者から請求があるときは、議長は、その日の会議を開かなければならない(114条)。
  • 議長または議員3人以上の発議により、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは秘密会を開くことが出来る(115条)。
  • 議事録(123条
    議長及び2人以上の議員が署名しなければならない。
  • 議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない(124条)。

議会の解散・議員の解職編集

地方公共団体の長との関係編集

  • 執行機関の長である普通地方公共団体の長は、議会の違法な議決等について再議に付するなどの議決に対する拒否権が認められている(第176条第177条)。
    • 長は、議決について異議あるときは、再議に付すことができる(第176条第1項)。その場合、再議決があれば当該議決が確定する(同条第2項)。条例又は予算に関する再議決については出席議員の3分の2以上の者の同意が必要である(同条第3項)。
    • 長は、議会の議決又は選挙がその権限を超え、又は法令違反等があると認めるときは、再議に付し又は再選挙を行わせなければならない(第176条第4項)。再議決又は再選挙になお法令違反等があると認めるときは、総務大臣又は都道府県知事に審査を申し出ることができ、さらにその裁定に不服があれば裁判所に出訴できる。
    • 長は、一定の経費(義務費、災害復旧費等)を削除し、減額する議決についても再議に付さなければならない。
  • 長に対する不信任議決(第178条第1項)
    議会の総議員の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者で長の不信任の議決をしたときに、長はその通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができる。解散しない場合には長は不信任の議決の通知を受けた日から10日後に失職するが、失職に伴って行われる選挙には失職した長の立候補は可能である。解散した場合には、解散後初めて招集された議会において総議員の3分の2以上の者が出席し、過半数の者で不信任の議決があれば、長はその通知を受けた日に失職し再度議会を解散することはできない。この場合でも失職に伴って行われる選挙には失職した長の立候補は可能である。なお、この不信任議決は、強大な権限を有する長に対する最大の武器である。なぜなら、1回目の不信任議決において長が仮に解散権を行使したとしても、選挙後の議会構成には大きな差異は生じない(地方議会の被選挙権は、当該選挙区内において選挙権を有する者に限定されているため)うえに、2回目の不信任議決は1回目に比べてはるかに可決要件がゆるいため、1回目の不信任議決が可決された時点で、長が失職する可能性が高くなるからである。
  • 議会の権限に属する事項について長に専決処分をする権限が認められている(第179条)。

給与その他の給付編集

  • 議員報酬第203条
  • 費用弁償(職務に要した費用の支給 ex旅費など)
  • 期末手当(条例で支給することができる。)
  • 政務調査費(調査研究に資するための経費の一部として、条例で会派又は議員に支給することができる。)(第100条)

日本以外の地方議会制度を見ると、議員活動は殆どがボランティア制度の一環であり、議会等の出席に際しては日当と交通費の支給程度で運営されている。議員報酬や政務調査費等で優遇される日本の議会制度は行政コストを押し上げ、過激な選挙活動や汚職の根源となる側面がある。

  •  議員年金

地方公務員共済組合法第11章には、地方議会の議員が対象となる議員年金が定められている。近年、市議会議員年金・町村議会議員年金の運営が破綻寸前であること、諸外国と比較して格段に特権的制度であるとして議論され、2011年に議員年金制度は廃止となった。しかし、既に退職した議員への支払いは続けられている。

実態編集

  • 正副議長の任期は、地方自治法では議員の任期と同じ4年となっているが、大半の議会では1~2年で交代しており、議長職はベテラン議員の、副議長職は中堅議員の箔付けの意味合いが強い。[1]
  • 議会の委員会等での視察は、裁判で「観光旅行」と認定されたり[2]、視察報告書を他のウェブサイトから盗用したり[3]と、数々の問題点があがっている。
  • 朝日新聞が2011年に調査したところ、首長が出した議案を全て修正なしで可決している議会が半数以上で、議員提案による政策条例を1つも作っていない議会は9割、議案に対する個々の議員各々の賛否を公開していない議会が8割超あることが分かった[4]

脚注編集

  1. ^ a b c 地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等について(H21.12.31現在)、総務省。
  2. ^ 関係行政庁には、国の行政機関のほか、地方公共団体の行政機関も含まれる。
  3. ^ a b 政策ニュース/国等の動き 地方自治法の一部を改正する法律が成立 全国町村議会議長会
  4. ^ 2011年2月17日の朝日新聞朝刊3面

関連項目編集

外部リンク編集