日本の地方議会議員(にほんのちほうぎかいぎいん)とは、日本の地方議会を組織し、その議決に加わる資格を有する者。地方選挙によって選出される。

地方公共団体では、原則として地方議会を置くものとされ、その議会は当該地方公共団体の住民の公選した議員で構成される。地方公共団体の議員には、国会議員と異なり不逮捕特権及び免責特権は与えられていない。

地方議員の任期中の身分は、「非常勤の特別公務員」である。1年間の平均会期数は市議会89.4日、町村議会42.6日である[1]

選挙権 編集

以下の要件をすべて満たしている者は、地方公共団体の議会議員の選挙権を有する(18条)。

2015年6月に改正公職選挙法が成立し、2016年6月から選挙権年齢は20歳以上から18歳以上に引き下げられた(18歳選挙権[2]

被選挙権 編集

以下の要件をすべて満たしている者は、地方公共団体の議会の議員の被選挙権を有する(19条1項)。

  • 普通地方公共団体の議会の議員の選挙権を有する者
  • 年齢満25年以上
  • 引き続き3か月以上の居住実態

居住実態について 編集

「普通地方公共団体の議会の議員の選挙権を有する者」の中に「引き続き3か月以上その市町村の区域内に住所を有する者」があるため、1983年(昭和58年)12月1日最高裁判所の判決では、住民基本台帳で3か月以上当該住民として記録されているものであっても、現実に当該自治体の住所に居住していない者は地方議会議員の被選挙権を有さないとしている。 居住実態の有無については、選挙管理委員会がガスや電気、水道の利用状況から判断するが、居住実態が無いと判断された場合には当選は無効となる[3]

2019年(令和元年)の統一地方選挙では、居住実態が無いにもかかわらず立候補(当選)するケースが相次いだ[4]ことから、2020年地方分権一括法が改正。立候補者に居住実態に関する宣誓書の提出を求め、虚偽と判明した場合に30万円以下の罰金を科すこととなった[5]

選挙制度 編集

定数 編集

議員の定数は、条例で定める(90条1項、91条1項)。

任期 編集

議員の任期は原則として4年である(93条)。補欠選挙増員選挙で選出された議員の場合には、一般選挙選出の議員の任期と合わせ、短くなる。

だが、1991年平成3年)4月の選挙で選出された兵庫県議会議員、神戸市議会議員、西宮市議会議員、芦屋市議会議員は、1995年(平成7年)1月17日阪神・淡路大震災の被害が甚大だった影響を考慮して同年4月に実施されるはずだった統一地方選挙の実施より復興を優先するため、特例法により選挙が6月に延期されて議員の任期も2か月延長したことで、議員任期が4年2か月になった例がある。

兼職禁止規定 編集

普通地方公共団体の議会の議員は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない(92条1項)。

普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の議会の議員及び常勤の職員等と兼ねることができない(92条2項)。

兼業禁止規定 編集

普通地方公共団体の議会の議員は、

  • 当該普通地方公共団体に対し請負をする者及びその支配人又は
  • 主として当該普通地方公共団体に対し請負をする法人の無限責任社員、取締役執行役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人

たることができない(92条の2)。

ここでいう請負とは、民法上の請負のみならず、広く営業としてなされている経済的・営利的取引であって、一定期間にわたる継続的な取引関係に立つものを含むものと解される。

これは、地方公共団体の事務の客観的公平さを担保することを目的としている。

なお、請負が禁止されるのは、議員個人のみであり、その家族は含まれない。

議員が兼業禁止に該当するか否かの決定は、議会が行う。 この場合において、出席議員の三分の二以上の多数によりこれを決定する(127条)。

除斥 編集

普通地方公共団体の議会の議長及び議員は、

  • 自己若しくは父母、祖父母、配偶者、子、孫若しくは兄弟姉妹の一身上に関する事件又は
  • 自己若しくはこれらの者の従事する業務に直接の利害関係のある事件

については、その議事に参与することができない。 但し、議会の同意があつたときは、会議に出席し、発言することができる(117条)。

懲罰 編集

普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる(134条)。 懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない(134条2項)。

懲罰には次のものがある(135条)。

  • 公開の議場における戒告
将来を諫める旨を申し渡す。
  • 公開の議場における陳謝
公開の議場で議会の定める謝罪文を朗読させる。
  • 一定期間の出席停止
一定期間、議会への出席を禁止する。同一会期中に限られ、後会にわたらない。
  • 除名
議員の身分を剥奪する。

懲罰の動議を議題とするに当っては、議員の定数の8分の1以上の者の発議によらなければならない(135条2項)。 除名については、当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者の同意がなければならない(135条3項)。

懲罰議決に対する取消訴訟 編集

最高裁判所は、地方議会議員に対する3日間の出席停止の懲罰議決の効力が争われた事件で、「自律的な法規範を持つ社会ないし団体に在っては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがある」[6]として、この出席停止の懲罰はこれにあたると解していた。しかし、令和2年11月25日大法廷判決で、「出席停止の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らすと、これが議員の権利行使の一時的制限にすぎないものとして,その適否が専ら議会の自主的,自律的な解決に委ねられるべきであるということはできない。」として出席停止についても司法審査の対象となることを認めるに至った。除名処分については「議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題にとどまら」ず、市民法秩序につながる問題であるから、司法審査が及ぶとしていた[7]

戒告及び陳謝については、これまで司法審査の対象とならないとされてきたが、令和2年11月25日大法廷判決を受けて、今後裁判所がどのような司法判断をするか注目されるところである。

なお、国会議員の場合については、各議院に憲法上高度の自律権が保障され、憲法自身が各議院に資格裁判の争訟権を付与していることから、除名や登院停止についても司法権は及ばず、議院の判断が最終的なものとなると解されている。

終身議員待遇者(議員待遇者)・特権付与問題 編集

多くの市町村(特別区を含む。以下、同じ。)においては複数回当選し議員の職責を果たした者に対して、落選または引退により議員の身分を失った場合に、一定の要件(市町村により異なるが、在職期間8年から12年程度)を満たしていることを条件として、議員待遇者の資格を付与する。議員待遇者の特典は市町村により異なるが、感謝状、記念章或いは議員待遇者記章、名誉議員の称号授与、市町村の行なう式典への招待、死亡の際における相当の礼をもってする弔慰、その他市町村長が必要と認める事項などの待遇が定められている(※複数の事例をまとめて例示)。

日本全国的にも、補助金が出されたり、宿泊での「研修」など実施していることに対して、監査請求や削減案が出されている。江戸川区では2007年1月に、翌年度から在職8年以上の区議会議員らが所属する「議員待遇者会」に対する補助金などを廃止が決まった[8]

議員報酬 編集

議会数・議員数 編集

2020年時点で、日本の地方議会は1788個、地方議員数は3万2000以上である。地方議会の内訳は、都道府県議会47、政令指定都市を含む市議会792、 町議会742、村議会138、更に東京都特別区議会23である [1]

都道府県議会議員 編集

定数2,598人(内女性議員306人)2021年12月31日時点[9]

市区町村議会議員 編集

定数29,425(内女性議員4,520)2021年12月31日時点[9]

  • 無所属20526人
  • 公明党2690人
  • 日本共産党2428人
  • 自由民主党2177人
  • 諸派1050人
  • 社会民主党169人
  • 立憲民主党157人
  • 日本維新の会138人
  • 国民民主党51人
  • NHK党39人

東京都特別区議会 編集

削減論 編集

財政負担 編集

福岡県の飯塚市は「財政難なのに議員が多すぎる」と批判がおこり、2007年に住民団体の解散請求(リコール)が成立し、合併協定後に定数は34となった。2011年3月の市議選からは、経費削減するために定数は28となった。その後も人口減少による税収減少で市の財政は苦しい状況であるため、財政改革の一環として、人口5千人あたり1議員で「24」を定数とした。当時の議員1人当たりの経費は年間974万6130円であるため、4人議員削減は財政負担を年間3898万4520円も削減できた。朝日新聞は削減すると可決させた議員定数を「28」に戻した際には「問われる議員への信頼」と批判報道した[10]

有権者やマスコミの低関心・低投票率 編集

日本よりも地方新聞の廃刊が相次ぐ他の先進国でも、国政(国会議員)と比較すると地方政治(地方議員)について報道がほとんどされないことによる、低関心や低投票率問題がある[11][12]。 アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなど先進国でも日本と同じく、投票率が国政選挙と比べると圧倒的に低い。例えば、ニュージーランドでは、2020年国政選挙の投票率82%なのに対して、2019年地方選は42%、2022年地方選は36%という圧倒的に低い上に減少傾向という有り様である[11]

日本でもマスコミ報道が少なくて有権者の関心自体も低いため、現職議員たちから1度も議会で質問しない者、居眠りする者などよようや問題議員らが地方だとかなり存在することを明らかにしている。「何故この人がという同僚議員はいるか」と質の悪い地方議員の有無を問われると、70.4%の現職地方議員が同意した。このような地方議員の有り様について、市民に知られていないことについて、「残念に感じる」と答えている。現職地方議員66.6%が有権者は地方政治に関心がないと感じると答えている[12]。 2022年11月の世論調査によると、「地方議員のなり手不足」の解消策としてら半数(50%)が選んだのは「定数の削減」である[13]


有権者由来の体質・国会議員との負の連鎖問題 編集

2023年12月舛添要一は自民党国会議員らのキックバック不記載問題におけるキックバック自体について、彼らは私腹を肥やしてはいないと推測した理由を問われると、国会議員は選挙に金がかかるからと述べている。国会議員はどうして「選挙は金がかかる」のかについて、地方議員と有権者のゆすりたかり体質という根源を絶たない限り、キックバック問題の根本は解決しないと述べた[14]。地方議員の「ゆすりたかり体質」の原因となっているのは、有権者の「ゆすりたかり体質」と解説している。その例として、舛添議員時代に選挙区の盆踊り参加時に、有権者から直に金銭をゆすりたかりされた過去を明かしている。議員心理としては、民主党など選挙区内の対立候補はくれたのに、「自民党はくれない」と選挙で負ける要素になるのとを恐れて、渡してしまう議員がいると述べている。このように、地方議員がまず選挙区の有権者へのゆすりたかりされ、その元金を地方議員が国会議員に求めてくるという連鎖を断ち切らないといけないと証言している[14][15]。舛添は議員活動として多額の費用がかかる冠婚葬祭の参加・香典を含む金品授受も法律で禁止して欲しいと述べている。彼はひと月で500万円も冠婚葬祭に費用がかかっていたと明かし、法的禁止してくればコレだけ金銭が浮くと述べている[15]。田中眞紀子も国会議員がお金がかかる理由について、自身の選挙区の県議会議員、市議会議員ら地方議員・知事や市長らが「お金くれ、お金くれ」「(くれないなら)選挙で落とすぞ」と脅し、タカってくることが背景にあると明かしている[16]。自身も父の角栄が病で寝たきり状態なのに、目白の邸宅に金銭をせびりにきた県議会議員からのタカりを受けた場面に遭遇した過去にも触れ、日本国の地方議員数を減らすべきと表明している[17][18]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 公職選挙法15条6項により必要がある場合は条例により選挙区を設置することができる。
  2. ^ 平成の大合併時に旧市町村を単位とする選挙区を設置する自治体が多く見られたが大半が最初の1回のみで2回目以降の選挙で廃止している。2回目以降の選挙で最後まで選挙区を設置していたのは北海道伊達市(2019年の選挙で廃止)。

出典 編集

  1. ^ a b 「地方議員は必要か 3万2千人の大アンケート」p8, NHKスペシャル取材班, 2020
  2. ^ “選挙権年齢「18歳以上」に 改正公選法が成立”. 47NEWS. (2015年6月17日). オリジナルの2015年6月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150617032536/http://www.47news.jp/CN/201506/CN2015061701001110.html 2015年6月18日閲覧。 
  3. ^ 31歳町議に当選無効の決定、居住実態なしと判断 神奈川・真鶴”. 朝日新聞DIGITAL (2021年11月20日). 2023年7月14日閲覧。
  4. ^ 地方議員選、居住なし立候補に罰則 改正法案を閣議決定”. 朝日新聞 (2020年3月3日). 2023年7月14日閲覧。
  5. ^ 「地方分権一括法」成立 虚偽の立候補届け出には罰金”. NHK政治マガジン (2020年6月3日). 2023年7月14日閲覧。
  6. ^ 昭和35年10月19日最高裁大法廷判決
  7. ^ 昭和35年3月9日最高裁判所大法廷判決
  8. ^ 「議員待遇者会」に対する補助がようやく廃止になりました。 - 江戸川区議会議員 間宮由美のblog * ひとりじゃないよ。プロジェクト*”. goo blog. 2023年12月26日閲覧。
  9. ^ a b 地方公共団体の議会の議員及び長の所属党派別人員調等(令和3年12月31日現在)”. 総務省. 2022年4月8日閲覧。
  10. ^ 減らしたはずの議員定数、改選せずに元通りに 問われる議員への信頼:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年4月17日). 2023年12月26日閲覧。
  11. ^ a b 海外でも日本でも地方議会は「なり手不足」 その理由と対策を考える:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年4月4日). 2023年12月26日閲覧。
  12. ^ a b 日本放送協会. “議員なんて、もうやめたい ~地方議員2万人アンケート | 特集記事”. NHK政治マガジン. 2023年12月26日閲覧。
  13. ^ ’23統一地方選 議員定数、多すぎる? <なり手不足の謎>(2):中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2023年12月26日閲覧。
  14. ^ a b 舛添要一氏が自民党裏金問題で私見 根源は「地方議員と有権者の〝ゆすりたかり〟体質」(東スポWEB)”. Yahoo!ニュース. 2023年12月27日閲覧。
  15. ^ a b 【1ページ目】舛添要一氏が自民党裏金問題で私見 根源は「地方議員と有権者の〝ゆすりたかり〟体質」”. 東スポWEB (2023年12月24日). 2023年12月29日閲覧。
  16. ^ 【ノーカット】田中眞紀子氏 田中直紀氏 緊急会見「今こそ政治改革~政治とカネ」(2023年12月8日)ANN/テレ朝 - YouTube
  17. ^ 慎平, 奥原 (2023年12月8日). “田中真紀子氏、松野博一官房長官に「答弁控えるなら議員になるの控えて」”. 産経ニュース. 2023年12月26日閲覧。
  18. ^ 【1ページ目】田中眞紀子氏 政治家時代の体験談を披露「100万円、白い封筒でいただきましたが返しました」”. 東スポWEB (2023年12月9日). 2023年12月27日閲覧。

関連項目 編集