日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部を改正する法律

日本の法律

日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部を改正する法律(にほんこくけんぽうしこうのさいげんにこうりょくをゆうするめいれいのきていのこうりょくとうにかんするほうりつのいちぶをかいせいするほうりつ)は第2回国会で制定された日本法律。この法律は、題名のとおり、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律を改正することを主たる旨としている。

日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部を改正する法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 なし
法令番号 昭和23年5月31日法律第44号
種類 一部改正法
効力 被改正法に溶け込む
成立 1948年5月28日
公布 1948年5月31日
施行 1948年5月31日
主な内容 日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部改正
条文リンク 衆議院 法律第四十四号(昭二三・五・三一)
テンプレートを表示

立法主旨 編集

日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律は、大日本帝国憲法下で出された命令日本国憲法施行後における効力等について規定したものである。被改正法は、1947年昭和二十二年法律第七十二号日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律の一部を改正する法律により一度改正が行われており、その際に第1条の4の追加がなされた。第1条の4は、法律事項を含む命令の内、本条各号で列記された命令を、1948年5月2日までの間、法律として扱うことを規定した条文である。つまり、被改正法第1条で規定された期限である1947年12月31日までに命令の法律化が間に合わなかったことに対する延命措置と、5月2日までに法律化を行うことを政府に義務づけたことが、上記の改正で追加された。

その後政府は法律化への準備を行ってきたが、諸般の止むを得ない事由により、遂に効力の期限である5月2日までに法律化等の措置を行うことができなかった命令がでてきてしまった。そのため今回の改正では、期限である5月2日を7月15日まで延長することとし、これを最終的な延長と位置づけるため、上記期限までに法律として制定され、あるいは廃止されない限りは、16日を以て効力を失うという規定を新たに追加することとした。

議会及びその後の進行 編集

衆議院 編集

政府提出案(第2回国会閣法第59号)として1948年5月13日に衆議院司法委員会に付託された。5月20日に司法委員会で審査が行われ、いくつか質疑が行われた。5月21日に行政代執行法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案と一括して議題とされた本案は、討論を省略され、採決が行われた結果、総員起立で原案通り可決されるに至った。

5月26日に衆議院本会議に審議の場を移した本案は、同委員会で可決された民事訴訟法の一部を改正する法律案及び行政代執行法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案と一括して採決がなされた。結果、本案は異議なしと認められ、委員長報告通り可決された。

参議院 編集

参議院司法委員会でも同様に5月18日から予備審査を開始、いくつか質疑が行われた。5月27日、討論を省略し採決が行われ、結果、総員起立で可決されるに至った。翌日5月28日に参議院本会議に移った本案は、行政代執行法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案と一括して採決が行われ、結果、総員起立で委員長報告通りこれを可決するに至った。

質疑 編集

衆参両議院において、主な論点として3点についての質疑が行われた。

7月15日について 編集

第一に、7月15日の日付についてである。上記の通り、本案により5月2日から7月15日に期間が延長されるが、この日付について、なぜこの期日としたのか、という質問が行われた。

これに対し政府は、見通しとしては当該期日まで延長する必要はないというものであったが、予想外の出来事も考慮した結果、同会次にて審議されている刑事訴訟法の全部改正案(現行の刑事訴訟法)と調子を合わせる形で、7月15日としたと説いた。なお、当時の刑事訴訟法改正案は、1948年7月15日を施行日としていたが、裁判所弁護士会の意見を参考にした結果、準備期間として最低6ヶ月は必要と判断され、後の審議で修正がかかり、施行日を1949年1月1日に延ばされた。

第1条の4の効力について 編集

第二に、第1条の4による効力の範囲についてである。本条は、当該条文に列記された命令にたいし、法律として扱うこととしたものである。本案で追加される第3項では、本条の失効期限として7月15日までとしたが、これに対し質問者は、当時上記命令で他の法律により廃止された命令(栄養士規則、警察犯処罰令など。)に対しても7月15日まで効力が続くと読めるのではないか、と説いた。

これに対し政府はこの件に関して、他の法律によって廃止されているので適用上なんら問題はないと説いた。また政府は、本条で列記された命令を法律としてでき次第順次削除していくことが完全な手法である説いたが、諸般の事情を考慮した結果、上記の手法をあえて行わなかったことも付け加えて説明をした。

各命令の進行状況 編集

第三に、第1条の4第1項で列記された命令の法律化の進行状況についてである。政府は各命令について5月18日現在の進捗状況を以下のように説明した。

墓地埋葬関連の3件
墓地、埋葬等に関する法律案として既に国会に提出されており、現在審議が行われている最中である。
警察犯処罰令
軽犯罪法として成立し、附則により削除済みである。
有害避妊用器具取締規則
避妊用器具等取締法案として、国会にはまだ提出されていないが、準備は整っている状態である。(後に薬事法案に吸収される形となった。)
開港港則
港湾法案として現在政府内部で準備をすすめている状態である。
家畜ニ応用スル細菌学的予防治療品及診断品取締規則
家畜用血清類取締法案として既に国会に提出しているが、薬事法の全部改正案の関係上、審議が停止している状態である。(後にこの法案は廃案となり、薬事法案に吸収される形となった。)
栄養士規則
栄養士法として成立し、附則により削除済みである。
食肉輸移入取締規則
必要なしと判断された結果、食肉輸移入取締規則を廃止する法律案として国会に提出されている状態である。
医薬品等の封緘及び検査証明の取締に関する件
薬事法案に盛り込まれ、現在国会にて審議中である。
共済組合関連の13件
国家公務員共済組合法案として一本化し、現在政府内で準備を整えている状態である。

その後 編集

両議院で可決された本案は、5月31日に法律第44号として公布、同日施行され、また本案附則により、5月2日から遡及して適用された。これにより第1条の4第1項に掲げられた命令は、5月2日から5月31日までの間に関しても、継続して法律として扱われることとなった。

制定以降 編集

一部改正法たる本法は、その改正先である日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律に溶け込み、附則のみを残すに至った。附則では本法の施行とは別に、本法の遡及適用について規定されており、5月2日から5月31日までの間の第1条の4第1項に掲げられた命令の効力について有効であったことを規定しているため、現在でも一定の役割を保持している。しかし、第1条の4に掲げられた期限を過ぎた現在では、現在の法律関係に与える影響は薄い。

関連項目 編集