杉沢の沢スギ
杉沢の沢スギ(すぎさわのさわスギ)は、富山県下新川郡入善町の海沿いにある約2.7 haのスギ林を中心とする森林である。森林内に黒部川の湧水が多数みられるのが特徴。スギが一株で複数の幹をつける伏条現象や、森林内の多様な生態系が見られ、国の天然記念物に指定されている。
概要
編集沢スギは、元々は黒部川扇状地の末端部で、小川が流れ地下水の湧出するスギ林の総称で、海岸約40箇所に約130 haもあったが、1973年(昭和48年)ごろの圃場整備事業によりそのほとんどが水田に転用された。杉沢の沢スギ2.67haの森も整備の対象だったが、国内で唯一の平地の湧水地帯に生育する唯一のスギ林として1973年(昭和48年)8月4日に国の天然記念物に指定された[1]。
沢スギは、成長した木の枝が雪の重みで地表に着地し、そこから根がでて、一株から何本もの幹が伸び伏条現象が見られる。この現象が見られるのは平地の森林では杉沢の沢スギのみである。
森の入り口にある沢スギ自然館には模型や映像、パネル展示、展望室などがあり、沢スギの特徴や生態などを学習することができる。沢スギ林内は木道が整備されている[2]。
林内の湧水は1985年(昭和60年)年3月28日に環境庁から黒部川扇状地湧水群として全国名水百選の一つに選定された[3][4]。
最近では、入善乙女キクザクラと言われる新種の自生菊咲きザクラで、1つの花に100枚以上の花びらを付けるものが発見された。自生の菊咲き品種が国内で確認されたのは、静岡県の富士菊桜に次ぎ2例目[5]。
生態
編集絶滅危惧種や山地性植物を含め、様々な生物が生息する。
動物
編集2014年(平成26年)の調査で、魚類では森林内にスナヤツメ、トミヨ、ニシシマドジョウの生息が確認された。両生類ではニホンアマガエルがいる他、古い記録ではモリアオガエルが生息していたという情報がある[6]。
植生
編集林内は湧水や地下水の影響で冬でも暖かく、タブノキ、ユズリハ、カラタチバナやらマンリョウ、カラタナバナ、オオキジノオシダ、タブノキ、シオノキ、などの暖温帯性植物が多く、照葉樹林の性格が強い。
また、黒部川の氾濫により山から流されてきたと思われる、アケボノシュスラン、ノリウツギなど山地性の植物や、珍しいものではギボウシラン、サギソウ、モウセンゴケ、オオミズゴケなどの絶滅危惧種を含めた湿性植物なども自生する極めて豊富な植物群落である[4][7]。
台風等による倒木被害
編集過去に幾度か台風等による倒木被害が出ている
- 2004年 - 平成16年台風第23号で422本が倒伏[8]
- 2017年 - 平成29年台風第21号で99本が倒伏[8]
ギャラリー
編集-
杉沢の沢スギの木道
交通アクセス
編集脚注
編集- ^ 『目で見る 魚津・黒部・下新川の100年』(1993年7月24日、郷土出版社発行)164頁。
- ^ “杉沢の沢スギ・沢スギ自然館 | 名所 | 入善町をみる | 富山 入善観光情報サイト「にゅうぜんマニア」”. 入善町観光物産協会. 2021年5月9日閲覧。
- ^ “環境省選定 名水百選/詳細ページ”. 環境省. 2021年5月9日閲覧。
- ^ a b “杉沢の沢スギ/入善町”. 入善町 (2021年3月18日). 2021年5月9日閲覧。
- ^ “入善乙女キクザクラとは/入善町”. 入善町 (2021年3月29日). 2021年5月9日閲覧。
- ^ “早月川に形成された河川伏流水からなる水溜りにおける” (PDF). 魚津水族館. 2021年5月9日閲覧。
- ^ “歴史と文化が薫るまちづくり事業計画書” (PDF). 富山県. 2021年5月9日閲覧。
- ^ a b “2017_12.pdf” (PDF). 入善町. 2021年5月9日閲覧。
外部リンク
編集- 杉沢の沢スギ/入善町
- 杉沢の沢スギ - 国指定文化財等データベース(文化庁)
- とやま学遊ネット
座標: 北緯36度56分33.0秒 東経137度28分20.9秒 / 北緯36.942500度 東経137.472472度