植物繊維(しょくぶつせんい)は、植物からとれる天然繊維のこと。繊維を取り出す目的で採取や栽培を行う植物を繊維植物という。

概要編集

化学的には植物の細胞壁の骨格成分であるセルロースを主成分とする。陸生植物は基部を支持するためヘミセルロースリグニンなどを含むマトリックス(基質)や油脂とともに維管束に沿って発達した細胞が連なり繊維を形成している。

植物繊維は種類によって可用となる繊維の長さや太さがまちまちであるため、用途ごとに同じ種類の植物から繊維を揃えて利用される。引っ張りに強い靭皮繊維は、文字通りものをとして結束したり、交差させて平面や立体を形づくってなどを作ることができる。マニラアサの葉鞘は硬質の強固な繊維が得られるため、の材料として古くから利用された。ただし植物組織であるため、腐朽や汚染、虫や菌による食害が起こることもある。これを防止する工夫として、不要部分を除去し必要な繊維組織のみを取り出す加工が行われる。芭蕉布は、刈り取ったバショウの茎を木灰で煮出して得られた繊維を利用している[1]

繊維を細くできるものはとして、これも交差させて平面にしたや、薄くできるものはパピルス紙など)としても利用した。毛状の繊維は保温性に優れるが繊維が短いため、散逸しないように別の布などにくるんでまとめるなどの工夫が必要だった。やがて綿では綿毛から綿糸を作る製法が発明され、ほかの植物繊維と同様に利用が進み、衣服に裏打ちした間に充填したり、布団などとして防寒にも適した。植物繊維は衣服用途としては狩猟などから得られる毛皮皮革などの動物繊維よりも比較的効率よく採集でき、通気性にも優れることから、やがて動物繊維が家畜から得られるようになった後も主要な材料となっていった。

なお、現代のは、植物からマトリクスであるリグニンおよびヘミセルロースを除去するパルプ化の後、パルプ繊維(細胞壁単位)を分離(離解)・叩解し、抄紙した素材である。セルロース繊維はその表面に水酸基を多数有するため、乾燥させると水素結合を形成して自己接着することで紙となる。乾燥後は、パルプ繊維の膨潤能・相互順応性が不可逆的に低下するホーニフィケーションと呼ばれる現象が起こる。布とは異なり、塗料を塗りこむことで防水性を持たせるなど、機能性モディファイが可能である。近年、パルプ繊維を様々な手法により解繊することで、セルロースナノファイバーが抽出され、ナノテクノロジー分野での応用研究が世界的に盛んである。

分類編集

植物繊維は採取・利用する部位により、種子毛繊維、靭皮繊維、葉脈繊維、果実繊維に分類される[2]

種子毛繊維
植物(主にアオイ科)の種子を利用する繊維[2]綿カポックなど[2]
靭皮繊維
植物の靭皮部を利用する繊維[2]亜麻や苧麻(ラミー)など[2]
葉脈繊維
植物(主にバショウ科)の葉脈を利用する繊維[2]マニラ麻サイザル麻など[2]
果実繊維
ココヤシの果実内から採取される繊維[2]

なお、以上に分類されないその他の植物繊維にイグサ(藺草)の繊維がある[2]

植物由来の合成繊維編集

近代以降では、セルロースを溶剤に溶かして再度繊維化させた再生セルロース繊維(広義の合成繊維の一種)も発達、様々な機能性を持った繊維が開発・利用されている。

更には、高分子素材をセルロースではなくとうもろこしでんぷんに求めた「とうもろこし繊維」なども登場しており、こちらは微生物によって簡単に二酸化炭素に分解される性質があり、ごみとして廃棄されても環境負荷が小さいなどの特徴がある。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ 喜如嘉の芭蕉布”. 伝統工芸 青山スクエア. 伝統的工芸品産業振興協会. 2019年1月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i 下村 寿「繊維の分類」『繊維製品消費科学』第8巻第5号、1967年、 271-278頁、2020年6月21日閲覧。

関連項目編集