法華三部経

大乗仏教の経典群、三経

法華三部経』(ほっけさんぶきょう)は、大乗仏教経典群である。法華経十巻妙法蓮華経並開結(みょうほうれんげきょうならびにかいけつ)とも称される。 なお、ここでいう三部とは、『無量義経』、『妙法蓮華経』、『仏説観普賢菩薩行法経』の三経を指す。

概要 編集

漢訳の『妙法蓮華経』は鳩摩羅什によって訳されたものだが、智顗によれば一経だけで完結した内容とはなっておらず、『妙法蓮華経』八巻二十八品を根幹部分とし、『無量義経』一巻を開経・『仏説観普賢菩薩行法経』一巻を結経という三部で構成・完結すると説いた。これによって、釈迦が最終的に開示した最高の教えである法華経の主題部が成り立つと智顗は考えている(三経一体説)。

諸の菩薩の為に、大乗経の無量義、教菩薩法、仏所護念と名くるを説きたもう。仏此の経を説き已って、結加趺坐し、無量義処三昧に於て入り、身心動ぜず。

— 『法華経』序品

上記の説を教義として、日本の天台宗(山門派・寺門派)ならびに日蓮宗日蓮正宗等の法華宗各派は、この三経を所依の経典としている。また、これら三経を一つとして看做すことから一部経という呼称も用いられ、殊に霊友会やその分派にあたる立正佼成会佛所護念会などで呼び習わされている。

構成 編集

開経 編集

『無量義経』 編集

天台思想の根幹となる一文「四十余年未顕真実」が含まれる重要な経典である[1]。一方で出処に不明点が多く、荻原雲来が中国撰述説を指摘し学術レベルでは定説となっている。作成の目的としては、法華経と頓悟説の擁護が背景にあったともみられている[2][3][4]

  • 序分
    • 徳行品第一
  • 正宗分
    • 説法品第二
  • 流通分
    • 十功徳品第三

本経 編集

『妙法蓮華経』 編集

一経三段 二門六段 一部八巻二十八品(法華七喩)

  • 序分 迹門の序分
    • 序品第一 一巻
  • 正宗分 迹門の正宗分
    • 方便品第二
    • 譬喩品第三 二巻(三車火宅喩)
    • 信解品第四(長者窮児喩)
    • 薬草喩品第五 三巻(三草二木喩)
    • 授記品第六
    • 化城喩品第七(化城宝処喩)
    • 五百弟子受記品第八 四巻(衣裏繋珠喩)
    • 授学無学人記品第九
  • 迹門の流通分
    • 法師品第十
    • 見宝塔品第十一
    • 提婆達多品第十二 五巻
    • 勧持品第十三
    • 安楽行品第十四(髻中明珠喩)
  • 本門の序分(後半から)
    • 従地涌出品第十五
  • 本門の正宗分(一品二半)
    • 如来寿量品第十六 六巻(良医治子喩)
  • 本門の流通分(後半から)
    • 分別功徳品第十七
    • 随喜功徳品第十八
    • 法師功徳品第十九
    • 常不軽菩薩品第二十 七巻
    • 如来神力品第二十一
    • 嘱累品第二十二
    • 薬王菩薩本事品第二十三
    • 妙音菩薩品第二十四
    • 観世音菩薩普門品第二十五 八巻
    • 陀羅尼品第二十六
    • 妙荘厳王本事品第二十七
    • 普賢菩薩勧発品第二十八

結経 編集

『仏説観普賢菩薩行法経』 編集

訳注文献 編集

注釈 編集

  1. ^ 法華宗真門流 法華経は佛教の生命「仏種」である。第7話
  2. ^ 横超慧日「無量義經について」『印度學佛教學研究』第2巻第2号、1954年、453-462頁、doi:10.4259/ibk.2.453 
  3. ^ 古田和弘「劉軋の無量義経序の背景」『印度學佛教學研究』第25巻第2号、1977年、668-669頁、doi:10.4259/ibk.25.668 
  4. ^ ロバートFローズ 「第四回国際法華経学会に参加して」『仏教学セミナー』

関連項目 編集