アカヤマドリ(赤山鳥[1]学名: Rugiboletus extremiorientalis)はイグチ目イグチ科アカヤマドリタケ属キノコである[2][3]食用キノコ[2][3][4]。極めて大型で傘の直径が30センチメートルを超えることもある。黄土色の傘の表面のひび割れ模様が特徴的でよく目立つ。和名は、赤みを帯びた褐色でヤマドリの羽の色に似ていることから名付けられた[5]。形があんパンのように見えることから、別名アンパン、ヤキアンパンとよばれることもある[6]

アカヤマドリ
茨城県潮来市・2016年9月
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : 菌蕈亜門 Hymenomycotina
: 真正担子菌綱 Homobasidiomycetes
: イグチ目 Boletales
: イグチ科 Boletaceae
: アカヤマドリタケ属 Rugiboletus
: アカヤマドリ R. extremiorientalis
学名
Rugiboletus extremiorientalis (Lj.N. Vassiljeva) G. Wu & Zhu L. Yang in Wu et al. (2015)
和名
アカヤマドリ(赤山鳥)

なお、同名の鳥類にキジ科ヤマドリ属アカヤマドリ (鳥類)がある。

従来はヤマイグチ属に分類されてきたが、2015年中国のGang Wu と Zhu L. Yangが新設したアカヤマドリタケ属タイプ種として移された。この属には、中国南部およびインドに生息するR. brunneiporusが含まれる。

分布・生育環境 編集

日本ロシア極東地方韓国、および中国に分布する[2][3]

外生菌根菌[1](共生性[7]・菌根性[5])。発生時期は夏から秋[2]コナラクヌギミズナラシイカシなどブナ科広葉樹林内の樹下か、これらの広葉樹にマツなどの針葉樹が混ざった混生林や雑木林の林床[6]、あるいはモミの樹下に[7]、単生か散生または群生する[2][3][4]

特徴 編集

きわめて大型なイグチ科のキノコであり[4]は直径7 - 25センチメートル (cm) [2]、ときに30 cmを超える個体が見られることもある[3]。幼菌時は半球形で後にまんじゅう型からほぼ平らに開く[2]。傘表面はビロード状で、濃黄土色から帯褐橙色[2][3][4]。初めは赤褐色の脳のしわ状で、傘が開くにつれてしわは伸び、表皮がひび割れて淡黄色の肉が見えるようになる[2][3][4]。縁部は管孔部より外側に膜状に突出する[2][3][4]。湿ると著しい粘性を帯びるが、通常はない[1]。管孔は黄色のちオリーブ黄色、孔口は同色で非常に小さい[2][3][4]

は高さ5 - 15 cm[2]、太さ25 - 50ミリメートル (mm) [2]、表面は淡黄色から黄色で、黄褐色の細粒点から細鱗片で密に被われる[2][3][4]。中実で堅く、上下同大か下方がやや太い[1]は白色またはやや帯黄色で、きわめて厚く、幼菌は緻密だがのちにやわらかくなる[2][1]。変色性はないが、空気に触れると僅かに淡紅色となることがある[2]

傘表面
茨城県潮来市・2016年9月
柄・管孔口
潮来市・2016年9月
孔口拡大
潮来市・2016年9月

利用 編集

見た目は異様なキノコであるが、食用キノコとして知られている[2][3][4]。生長すると管孔部分にキノコバエなどの虫が入りやすいため、見つけても食べられないことがあり、採取時には注意が必要である[3][1]。大きく生長したものは管孔の虫食いも多く、消化に悪いので、取り除くと食べられるようになることもある[1][6]。傘は柔らかく、柄は程よく硬く歯切れが良い[2]。汁物にすると肉から黄色い煮汁が出るが問題なく、イグチ科特有のうま味が出る[2][6]。クセがなく美味で、油を使った料理や汁物に利用でき、鉄板焼きバター炒め、きのこ汁、天ぷらなどにする[6]。新鮮な管孔部分だけを軽く炒めるとマシュマロのような風味・食感となる[2][3]。柄はスライスして炒めたり、リゾットにするとよい[6]

近縁種 編集

脚注 編集

  1. ^ a b c d e f g 吹春俊光 2010, p. 66.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 今関六也 2011, p. 341.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 大作晃一 2017, p. 197.
  4. ^ a b c d e f g h i 長澤栄史監修 工藤伸一著 2009, p. 154.
  5. ^ a b 大作晃一 2015, p. 70.
  6. ^ a b c d e f 瀬畑雄三監修 2006, p. 13.
  7. ^ a b 牛島秀爾 2021, p. 29.
  8. ^ a b c 吹春俊光 2010, p. 67.

参考文献 編集

  • 今関六也『日本のきのこ』(増補改訂新版)山と渓谷社〈山渓カラー名鑑〉、2011年12月。ISBN 978-4-635-09044-5 
  • 牛島秀爾『道端から奥山まで採って食べて楽しむ菌活 きのこ図鑑』つり人社、2021年11月1日。ISBN 978-4-86447-382-8 
  • 大作晃一『きのこの呼び名事典』世界文化社、2015年9月10日。ISBN 978-4-418-15413-5 
  • 大作晃一『おいしいきのこ毒きのこハンディ図鑑』主婦の友社、2017年1月。ISBN 978-4-07-416841-5 
  • 瀬畑雄三監修 家の光協会編『名人が教える きのこの採り方・食べ方』家の光協会、2006年9月1日。ISBN 4-259-56162-6 
  • 長澤栄史監修 工藤伸一著『東北きのこ図鑑』家の光協会、2009年9月。ISBN 978-4-259-56261-8 
  • 吹春俊光『おいしいきのこ 毒きのこ』大作晃一(写真)、主婦の友社、2010年9月30日。ISBN 978-4-07-273560-2 

関連項目 編集

外部リンク 編集