コナラ
コナラ(小楢[5]、学名: Quercus serrata)はブナ目ブナ科コナラ属の落葉広葉樹。別名で、ハハソ[5]、ナラ[1]ともよばれる。
コナラ | |||||||||||||||||||||
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![]() コナラ
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Quercus serrata Murray (1784)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
コナラ(小楢)、ハハソ[1]、ナラ[1] |
名称編集
和名コナラの由来は、もう一つの日本の主要なナラであるミズナラの別名であるオオナラ(大楢)と比較して、葉とドングリが小さめで「小楢」の意味で名づけられた[5][6]。別名ホウソ[7]、ナラ[6]。
分布・生育地編集
日本の北海道・本州・四国・九州、南千島、朝鮮半島に分布する[8][5]。日本では山野の雑木林に多く見られ、クヌギと共に雑木林を構成する代表的な樹種である[5][6]。武蔵野の雑木林の主要樹種でも知られる[8]。ミズナラよりも低地に多く、本州では標高1000メートル (m) までとなっている[6]。
特徴編集
落葉広葉樹の高木[8][5]。高さは15 - 20メートル (m) 、幹径は60センチメートル (cm) になる[7][9]。里山などで薪炭用に伐採された個体は、数本の株立ちになるものも多い[9]。樹皮は灰黒色から暗灰褐色、黒褐色で、縦に深い裂け目が入る[8][7][9]。一年枝は細くて無毛かときに毛が残り、皮目が多く、1か所から数本出ることがある[9]。
葉は長さ1 cmほどの短い葉柄がついて互生し、長さ5 - 15 cmの倒卵形から倒卵状長楕円形で先は尖り、葉縁に鋸歯がある[8][7][6]。葉の裏面は灰白色の毛がある[7]。芽吹きの葉は銀白色の毛が多い[9]。秋には黄葉し、黄色や黄褐色に色づき、寒冷地や若木では赤色に染まるものもある[6]。
花期は春から晩春(4 - 5月ごろ)で[7]、若葉が広がると同時に黄褐色の花が咲き、雄花は長さ6 - 9 cmの雄花序となって尾状に垂れ下がる[8][7][5]。雌花は上部の葉腋につく[7]。
果期は10 - 11月で[7]、果実は長さ15 - 20ミリメートル (mm) の楕円形のドングリが、秋に熟す[8][7][5]。ドングリは、翌年の秋に熟すクヌギとは異なり、コナラでは同年秋に熟す[7]。
冬芽は濃赤褐色の卵形で多くの芽鱗に包まれ、枝に側芽が互生し、枝先には頂芽のほか複数の頂生側芽がつく[9]。葉痕は半円形で、維管束痕が小さく散らばったように多数みられる[9]。葉痕の両脇には托葉痕がある[9]。
落葉樹だが、秋に葉が枯れた時点では葉柄の付け根に離層が形成されないため葉が落ちず、いつまでも茶色の樹冠を見せる。春に新葉が展開する頃に枯れた葉の基部の組織で離層が形成され、落葉が起きる。
種内変異編集
- 亜種
- フモトミズナラ (Quercus serrata Murray subsp. mongolicoides) - シノニム (Quercus crispula var. mongolicoides)。ミズナラの変種ともされる。以前はユーラシア大陸産のモンゴリナラ (Quercus mongolica) と同種とされた。研究者により様々な見解が存在し、はっきりしない。
- 変種
- マルバコナラ(ビワバコナラ)(Quercus serrata var. pseudovariabilis)
- 品種
- シダレコナラ (Quercus serrata f. dependens)
- テリハコナラ (Quercus serrata f. donarium) - シノニム (Quercus serrata var. donarium)
- アオナラ (Quercus serrata f. concolor) - シノニム (Quercus serrata var. concolor, Quercus neostuxbergii)
- ハゴロモアオナラ (Quercus serrata f. pinnata)
- タレハハゴロモアオナラ (Quercus serrata f. pinnatifida)
- 交雑種
利用編集
材は薪、木炭の原料や、シイタケ栽培の原木に使われる[7][5]。落ち葉は腐葉土として利用される[8]。多くの菌類と菌根を作るため、コナラ林には多くの菌根性のきのこが出現する。関東以西ではクヌギと並んで人里の薪炭林に植栽され、重要な燃料源であったが、1960年頃以降、燃料の需要の主力が木材から化石燃料へと変化したことで、薪炭林としての位置づけは失われた。また、かつて東北地方の山村では、コナラのドングリはミズナラのドングリと並んで重要な食料であった[要出典]。樹皮・果実・葉は染料に使られる[9]。
岩手県などの山村周囲の森林には大量のドングリを実らせるコナラやミズナラの巨木が数多く自生しており食用としての需要をよく賄っていたが、大正期以降、このコナラやミズナラの森林は、東京近郊への燃料供給基地と位置付けられて伐採を受けた。この変化は山村に現金収入をもたらしたが、往古のコナラやミズナラの巨木が生い茂った森林は失われ、今日の東北地方の山林では、かつての山村人口を養った程のドングリの生産力は見込めない。
病虫害編集
コナラがかかる病虫害に「ナラ類萎凋病(ナラるいいちょうびょう)」があり、夏頃から葉が赤色に染まって枯死する病気である[5]。カビの仲間である病原菌を、カシノナガキクイムシが媒介することで起こる感染症で、歴史上ではときどき流行をしている[5]。
脚注編集
- ^ a b c d 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus serrata Murray コナラ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus glandulifera Blume コナラ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus serrata Thunb. コナラ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年1月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Quercus serrata Murray f. suberosa Hayashi コナラ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年1月22日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l 田中潔 2011, p. 40.
- ^ a b c d e f 亀田龍吉 2014, p. 92.
- ^ a b c d e f g h i j k l 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 102.
- ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 232.
- ^ a b c d e f g h i 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 142.
参考文献編集
- 亀田龍吉 『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年10月5日、92頁。ISBN 978-4-418-14424-2。
- 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、142頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
- 田中潔 『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、40頁。ISBN 978-4-07-278497-6。
- 辻井達一 『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、120 - 123頁。ISBN 4-12-101238-0。
- 西田尚道監修 学習研究社編 『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、102頁。ISBN 978-4-05-403844-8。
- 平野隆久監修 永岡書店編 『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、232頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 林弥栄『日本の樹木 山渓カラー名鑑』 ISBN 4635090175
- 畠山剛『〔新版〕縄文人の末裔・ヒエと木の実の生活史』(彩流社、1997年)ISBN 4-88202-552-3