甲斐 享(かい とおる)は、テレビ朝日系でシリーズ化されている刑事ドラマ相棒』の主人公の一人。右京の三代目相棒。恋人と旅行に来ていた香港にて偶然右京と遭遇、そのままとある事件に共に関わり、解決後は右京に引き抜かれる形で特命係に配属された。トラブルに巻き込まれやすく、特命係へ異動した後は様々な災難に巻き込まれている。

成宮寛貴[1][2](S11-1〜S13-最終話 / S15-最終話〈回想〉 / S17-1〈回想〉、2〈回想〉、19〈回想〉 / S22-10〈回想〉)(少年期:橋爪龍〈S12-9〉[注 1]/ 青年期:上田晟人〈S13-最終話〉)
年齢 29[注 2]
階級 巡査部長[3]
出身地 東京都港区
経歴
  • 早慶大学政治経済学部経済学科
  • → 警視庁中根警察署地域課(2005年)
  • → 警視庁中根警察署刑事課強行犯係
  • → 警視庁特命係(S11-1〜S13-最終話)
  • → 懲戒免職(S13-最終話)
親族
特技 絶対音感(S11-1)[注 3]
好きなもの 炭酸飲料
苦手なもの 幽霊

経歴 編集

2005年に大学を卒業してノンキャリアとして警視庁に入庁、交番勤務を経て署長推薦の選抜試験に合格し中根警察署刑事課捜査一係に配属された。念願の刑事になった直後の香港旅行中、日本大使館での拳銃暴発事故に遭遇し、偶然知り合った右京と共に事件解決に奔走する。その際右京に警察官としての価値を認められ、彼直々の要望を受けて特命係へと引き抜かれた(S11-1)。

ダークナイト事件 編集

特命係に在籍中、親友の妹を殺した容疑者が心神喪失で不起訴処分になった際、妹の仇を討たんとする親友の犯行を止めるべく、自ら容疑者を襲撃して死なない程度の傷を負わせる。

それをネット上で賞賛された事で以降警察の追及を逃れた犯罪者たちに制裁を下す暴行犯「ダークナイト」として2年に渡り犯行を重ねるようになる[4]

最終的には右京に真実を突き止められる[5]。懲戒免職となった。(S13-最終話)

動機に「世間からの賞賛が気持ちよかった」とは言うが自身でも判然としていない。また峯秋は右京への対抗心によるものではないかと推察している。

現在も服役中で、息子である結平への影響を懸念し悦子との婚姻届提出を拒み続けている(S22-10)。

性格 編集

御曹司という出自とは裏腹に、荒っぽく血の気の多い性格。峯秋との親子仲は冷えきっている一方、侮辱する発言には激怒するなど複雑な感情を抱いている様子。子供の頃に見ていた刑事ドラマの影響で刑事課への憧れは強く、特に捜査一課配属を目指している事から、他の歴代相棒とは異なり捜査一課の面々を素直に慕っている(S11-2など)。特に芹沢には可愛がられており、情報提供のやり取りを頻繁に行っている。伊丹らとは特段仲が良いわけでも悪いわけでもなく、概ね対等に接している。

一人称は「僕」または「俺」。二人称は、「あなた」だが性格が荒れると「あんた」に変わる。父親である甲斐峯秋のことは基本的に「親父」と呼んでいる。右京については、後述参考。

捜査・仕事振り 編集

やや感情的な言動が目立ち[5]、自分を挑発してきたり、反省の色が見られない人物に激昂して掴みかかり、右京などに止められることもある。

さらには迂闊なミスから取り返しのつかない事態を引き起こすなど、大きな失敗をする事もあった(S11-3、最終話)。

しかし、自分の失敗にしっかりと向き合い、忘れずにいようとする意識も持っており、良くも悪くも素直な性格である。

また、歴代の特命係員の中で唯一被弾したことがある(S12-最終話)。

能力 編集

若年ながら細かな事にも気付く優れた観察力を持ち、勘も非常に鋭い。不測の事態に陥った場合を除き(S12-10)、車の運転は普段は右京や悦子に任せている。また幼少期に親の命令で強制的にピアノを習っていたことで、絶対音感になり、耳がいい。

右京との関係 編集

右京のことは「杉下さん」と呼ぶ[注 4]。右京からはあだ名で「カイトくん」と呼ばれているが、公的な場では「甲斐くん」と呼ばれる事もある(S11-4、S12-10)。香港で右京と邂逅して当初は、その変人ぶりに辟易して悪態をついたり特命係配属への不満を露骨に示していた他、個人的感情を排し冷徹に事件の真相を追求する右京に対し反発する事もあった。それでも数々の事件に関わって右京の能力と正義感を認めるようになり「最強の味方」と吐露する程の信頼を寄せるまでになった(S12-10)。右京もそんな享が秘める正義感を以て「警察官にとって一番必要なものを持っている」と改めて評価し、互いに信頼し合える相棒関係を築き上げていった。感情的な言動が鳴りを潜めてからは生来の刑事としての資質を遺憾なく発揮し右京の右腕として活躍していた。

現実世界での扱い 編集

右京が一度若い者と組むのが良いということで、30歳(撮影開始当時)だった成宮寛貴が起用された[6]

キャラクター背景 編集

水谷は成宮演じる享からは色気を感じていて、男同士の何かを感じさせるものがありつつも、若さゆえの葛藤や揺れ動く様を見せる姿が自分の若いころに通じる不安定さがあったとも話している[7]

反響・評価 編集

ねとろぼ調査隊が2024年に行った「相棒」の登場人物人気ランキングでは第7位であった[8]。ダークナイト事件による降板は右京の演者である水谷豊にとっても視聴者にひんしゅくを買ったと認めており人は極限までいくことがあるという話を、ものすごく納得して演じていたという[9]。また初登場時から右京はあまりそっけない態度は取らず、それまでの相棒たちにはなかった優しい対応も見せ最初からあだ名で呼ぶなどが印象的である。一見するとヤンキーのようだが刑事としての強い正義感と高い能力を持ち右京にはなかなかできない所をカバーしていた。演者の成宮寛貴が俳優業を引退したこともあり、享がその後登場したのは回想シーンのみだがその度にSNSでは大きな反響を呼んだ。享は、事件に巻き込まれやすい体質だったが、それがしっかりと息子・桔平にも受け継がれているとも評価されている。[10]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 橋爪はS14-10にも柄谷時生の幼少期役として出演している。
  2. ^ 1983年7月7日生まれ
  3. ^ 幼少期にピアノを習った経験から
  4. ^ 一度だけ「右京さん」と発言した事がある(S12-13)が、薫や冠城と違って右京本人にそう呼びかけた訳ではない。

出典 編集

  1. ^ “10月スタート『相棒11』、成宮寛貴の役名は「甲斐享」”. ORICON NEWS. (2012年8月13日). https://www.oricon.co.jp/news/2015544/full/ 2023年2月23日閲覧。 
  2. ^ “成宮寛貴、3代目『相棒』3年で卒業「最後まで悔いのないように」”. ORICON NEWS. (2015年2月4日). https://www.oricon.co.jp/news/2048132/full/ 2023年2月23日閲覧。 
  3. ^ キャスト|相棒 season13 - テレビ朝日(アーカイブ)
  4. ^ ドラマ「相棒」反町隆史の卒業で注目集まる“元相棒”成宮寛貴の存在”. ZAKZAK (2021年11月26日). 2023年2月23日閲覧。
  5. ^ a b “『相棒』歴代の相方キャストと女将を紹介、最長出演者は誰?”. マイナビニュース. (2022年11月21日). https://news.mynavi.jp/article/20211228-2239827/ 2023年2月23日閲覧。 
  6. ^ 水谷豊が明かす“寺脇降板”秘話 「いつまでも居ちゃだめだ」とアドバイスした理由とは(5ページ目)”. デイリー新潮 (2022年8月20日). 2024年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月24日閲覧。
  7. ^ 水谷豊が語る相棒たちの素顔。成宮寛貴に感じた“色気”と反町隆史が見せた“涙”「若い時とダブるところがあったんです」”. テレ朝POST (2023年3月14日). 2024年3月11日閲覧。
  8. ^ 「相棒」の登場人物人気ランキング! 第2位は「神戸尊」、1位は? | ドラマ ねとらぼ調査隊”. ねとらぼ調査隊 (2024年3月13日). 2024年3月22日閲覧。
  9. ^ 水谷豊が明かす“寺脇降板”秘話 「いつまでも居ちゃだめだ」とアドバイスした理由とは(5ページ目)”. デイリー新潮 (2022年8月20日). 2024年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月24日閲覧。
  10. ^ 『相棒』“3代目相棒”甲斐享、今なお人気の理由は? 元日スペシャルに関係者が集結”. デイリー新潮 (2024年1月1日). 2024年3月26日閲覧。