第70次長期滞在Expedition 70)は70回目の国際宇宙ステーションでの長期滞在。この長期滞在は2023年9月27日のソユーズ MS-23の出発で開始され[2][3][4]、デンマーク人宇宙飛行士アンドレアス・モーゲンセン英語版が第69次長期滞在のセルゲイ・プロコピエフ英語版からISSの指揮権を引き継いだ。この長期滞在は2024年4月6日にNASAの宇宙飛行士ローラル・オハラ英語版ソユーズ MS-24での出発で終了した[5]

ISS第70次長期滞在
オレグ・コノネンコ(オレンジのTシャツ)と第70次長期滞在の他のメンバー(赤いTシャツ)およびアクシオム ミッション3のクルー(黒いジャンプスーツ
任務種別ISS長期滞在
運用者NASA / Roscosmos
任務期間191日 20時間 39分
長期滞在
宇宙ステーション国際宇宙ステーション
開始2023年9月27日[1]
終了2024年4月6日
到着ソユーズMS-24
スペースX Crew-7
乗員
乗員数7–11
乗員
EVA2
EVA期間14時間23分

第70次長期滞在の徽章

第70次長期滞在クルーのポートレート

背景、クルー、イベント 編集

当初、この長期滞在は第69次長期滞在から移行したアンドレアスとともにスペースX Crew-7でアメリカ、日本およびロシアからやって来た3人のクルー、ジャスミン・モグベリ英語版古川聡コンスタンチン・ボリソフ英語版と、ソユーズ MS-24で到着したロシア人飛行士オレグ・コノネンコニコライ・チュブ英語版、それにアメリカ人飛行士のローラル・オハラ英語版とで構成されていた[6]

しかしながら、船外活動による艤装およびRTOd放熱器の設置に数か月を費やしたにもかかわらず、6ヶ月後の2023年10月9日にナウカのRTOd放熱器が実使用前に故障した(RTOd設置の目的は、ナウカでの実験による熱を放射するためだった)。冷却剤漏れによるこの故障によって、RTOd放熱器はナウカで使用することができなくなった。これはソユーズ MS-22およびプログレス MS-21に続く3度目のISSの放熱器からの漏洩となった。仮に予備のRTOdが手配できなければ、ナウカでの実験は打ち上げ時のメイン放熱器に頼らざるを得ず、その場合はモジュールの能力をフル活用することができなくなる[7][8]

その後、長期滞在ミッションのクルーおよびアクシオム ミッション3といった訪問者(アメリカ人のマイケル・ロペス=アレグリア、イタリア人宇宙飛行士ワルター・ヴィラデイ英語版ESAのスウェーデンプロジェクトの宇宙飛行士マルクス・ヴァント英語版およびトルコ人宇宙飛行士アルペル・ゲゼラフチュ英語版が搭乗)によってクルーが補充された[5]当初、ボーイング スターライナー有人飛行試験がこの長期滞在中にドッキングすることになっていたが、宇宙船の打ち上げスケジュールは4月に延期されたため、第71次長期滞在中にドッキングすることになる[9]

イベント時系列 編集

先行ミッション:第69次長期滞在

2023年9月27日 – ソユーズMS-23が無人でドッキング解除、公式に第69次長期滞在から移行

2023年10月9日 – ナウカのRtoD追加放熱器で漏洩発生

2023年10月25/26日 - EVA 1(VKD-61)コノネンコ/チュブ:7時間41分

2023年11月1日 - EVA 2(US-89)モグベリ/オハラ:6時間42分

2023年11月11日 – CRS SpX-29 ドッキング

2023年11月29日 – プログレス MS-23/84P ドッキング解除

2023年12月3日 – プログレス MS-25/86P ドッキング

2023年12月21日 - CRS Spx-29 ドッキング解除

2023年12月22日 – CRS シグナス NG-19 係留解除および解放

2024年1月20日 – アクシオム ミッション3 ドッキング(短期訪問者)

2024年1月31日 – CRS シグナス NG-20 捕捉および係留

2024年2月7日 – アクシオム ミッション3 ドッキング解除(短期訪問者)

2024年2月13日 – プログレス MS-24/85P ドッキング解除

2024年2月17日 – プログレス MS-26/87P ドッキング[10]

2024年3月5日 – スペースX Crew-8 ドッキング[11]

2024年3月11日 – スペースX Crew-7 ドッキング解除

2024年3月23日 - CRS Spx-30 ドッキング

2024年3月24日 – ソユーズ MS-25/71S ドッキング 第70/71次長期滞在および短期訪問者

2024年4月6日 – ソユーズ MS-24/70S ドッキング解除、公式に第71次長期滞在に移行

後続ミッション:第71次長期滞在

出典:[10][5][12]

クルー 編集

フライト[5] 飛行士 第1期 第2期 第3期 第4期 第71次へ移行
2023年9月27日 - 2024年3月5日
2024年3月5日 - 3月11日
2024年3月11日 - 3月25日
2024年3月25日 - 4月6日
2024年4月6日 -
ソユーズ MS-24/70S   オレグ・コノネンコRoscosmos
5回目
フライトエンジニア 指揮官 指揮官
  ニコライ・チュブ英語版Roscosmos
1回目
フライトエンジニア フライトエンジニア
  ローラル・オハラ英語版NASA
1回目
フライトエンジニア 帰還後
スペースX Crew-7   ジャスミン・モグベリ英語版NASA
1回目
フライトエンジニア 帰還後 帰還後
  アンドレアス・モーゲンセン英語版ESA
2回目
指揮官 帰還後 帰還後
  古川聡JAXA
2回目
フライトエンジニア 帰還後 帰還後
  コンスタンチン・ボリソフ英語版Roscosmos
1回目
フライトエンジニア 帰還後 帰還後
スペースX Crew-8   マシュー・ドミニク英語版NASA
1回目
搭乗前 フライトエンジニア フライトエンジニア
  マイケル・バラットNASA
3回目
搭乗前 フライトエンジニア フライトエンジニア
   ジャネット・エップス英語版NASA
1回目
搭乗前 フライトエンジニア フライトエンジニア
  アレクサンダー・グレベンキン英語版Roscosmos
1回目
搭乗前 フライトエンジニア フライトエンジニア
ソユーズ MS-25/71S   トレイシー・コールドウェル=ダイソンNASA
3回目
搭乗前 フライトエンジニア フライトエンジニア

長期滞在クルーの他にアクシオム・スペースマイケル・ロペス=アレグリア(元NASA)、イタリア国防省ワルター・ヴィラデイ英語版トルコ宇宙機関英語版アルペル・ゲゼラフチュ英語版スウェーデン国立宇宙委員会マルクス・ヴァント英語版からなるアクシオム ミッション3を載せたクルードラゴンがステーションを訪れた[13]

ソユーズ MS-25は長期滞在メンバーのトレイシー・コールドウェル=ダイソンと、訪問者としてRoscosmosのオレッグ・ノヴィツキーおよびベラルーシ宇宙局英語版がISS訪問ミッションのために訓練したフライトアテンダントのマリナ・ヴァシレフスカヤ英語版を運ぶことになっている。ドッキングの一週間後に、ノヴィツキーとヴァシレフスカヤは長期滞在メンバーのローレル・オハラとともにソユーズ MS-24で帰還する。一方、MS-24で打ち上げられたコノネンコとチュブはMS-25で帰還する[5]

宇宙船目録[5] 編集

宇宙船 目的 ポート ドッキング/捕捉日 ドッキング解除日

(第70次長期滞在中であれば)

第69次長期滞在から引き継いだ宇宙船
  プログレス MS-23/84P ロシアの貨物船 ポイスク 天頂側 2023年5月24日 2023年11月29日
  CRS シグナス NG-19 ローレル・クラーク アメリカの宇宙船 ユニティ 天底側 2023年8月4日 2023年12月22日
  プログレス MS-24/85P ロシアの貨物船 ズヴェズダ 後方側 2023年8月25日 2024年2月13日
  スペースX Crew-7 第69/70次長期滞在アメリカ側クルー ハーモニー 天頂側 2023年8月27日 2024年3月11日
  ソユーズ MS-24/70S 第69/70次長期滞在ロシア側クルー ラスヴェット 天底側 2023年9月15日 2024年4月6日(計画)
第70次長期滞在中にドッキングした宇宙船
  CRS ドラゴン SpX-29 アメリカの貨物船 ハーモニー 前方側 2023年11月11日 2023年12月21日
  プログレス MS-25/86P ロシアの貨物船 MRM2 天頂側 2023年12月3日 第71次長期滞在に移行予定
  アクシオム ミッション3 フリーダム 長期滞在以外のアメリカの商業ミッション ハーモニー 前方側 2024年1月20日 2024年2月7日
  CRS シグナス NG-20 パトリシア・"パティ"・ヒリアード・ロバートソン アメリカの貨物船 ユニティ 天底側 2024年1月31日 第71次長期滞在に移行
  プログレス MS-26/87P ロシアの貨物船 ズヴェズダ 後方側 2024年2月17日 第71次長期滞在に移行
  スペースX Crew-8 エンデバー 第70/71次長期滞在アメリカ側クルー ハーモニー 前方側 2024年3月5日 第71次長期滞在に移行
  CRS ドラゴン SpX-30 アメリカの貨物船 ハーモニー 天頂側 2024年3月23日 第71次長期滞在に移行
  ソユーズ MS-25/71S 第70/71次長期滞在アメリカ側クルーと短期訪問者 プリチャル 天底側 2024年3月25日 第71次長期滞在に移行
Segment   アメリカ軌道セグメント   ロシア軌道セグメント
期間 ハーモニー 前方 ハーモニー 天頂 ハーモニー 天底 ユニティ 天底 ラスヴェット 天底 プリチャル 天底 ポイスク 天頂 ズヴェズダ 後方
2023年9月27日-2023年11月11日 空き スペースX Crew-7 空き シグナス NG-19 ソユーズ MS-24/70S 空き プログレス MS-23/82P プログレス MS-24/83P
2023年11月11日-29日 CRS SpX-29
2023年11月29日-2023年12月3日 空き
2023年12月3日-21日 プログレス MS-25/84P
2023年12月21日-22日 空き
2023年12月22日-2024年1月20日 空き
2024年1月20日-2月1日 アクシオム ミッション3
2024年2月1日-7日 シグナス NG-20
2024年2月7日-13日 空き
2024年2月13日-17日 空き
2024年2月17日-2024年3月5日 プログレス MS-26/87P
2024年3月5日-11日 スペースX Crew-8
2024年3月11日-21日 空き
2024年3月23日-25日 CRS SpX-30
2024年3月25日-4月6日 ソユーズ MS-25/71S

プリチャルの前方、後方、右舷および左舷ポートはモジュールが宇宙ステーションにドッキングして以来使用されていないため表から割愛した。

脚注 編集

  1. ^ Graf, Abby (2023年9月27日). “Crewed Soyuz Spacecraft Undocking Live on NASA TV”. blogs.nasa.gov. NASA. 2023年10月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月27日閲覧。
  2. ^ Dinner, Josh (2023年8月23日). “SpaceX Crew-7 astronauts will handle over 200 science experiments on ISS”. Space.com. オリジナルの2023年9月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230928103303/https://www.space.com/nasa-spacex-crew-7-science-highlight 2023年9月12日閲覧。 
  3. ^ Evans, Ben (2023年9月10日). “Better Late Than Never: New ISS Crew Prepares to Fly, All-Female EVAs Possible in October”. AmericaSpace.com. オリジナルの2023年9月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230929124754/https://www.americaspace.com/2023/09/10/better-late-than-never-new-iss-crew-prepares-to-fly-all-female-evas-possible-in-october/ 2023年9月12日閲覧。 
  4. ^ Graf, Abby (2023年9月27日). “Crewed Soyuz Spacecraft Undocking Live on NASA TV”. blogs.nasa.gov. NASA. 2023年10月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月27日閲覧。
  5. ^ a b c d e f Complete ISS flight events”. NasaSpaceFlight.com Forum (2023年4月15日). 2020年11月10日閲覧。
  6. ^ Shipkenov, Maxim. “Soyuz MS-24 preps continue days before launch”. ABS-CBN. オリジナルの2023年9月29日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230929124759/https://news.abs-cbn.com/overseas/multimedia/photo/09/12/23/soyuz-ms-24-set-for-launch-to-iss 
  7. ^ Robinson-Smith, Will. “Russian space station laboratory module appears to spring coolant leak – Spaceflight Now”. オリジナルの2023年10月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231014232548/https://spaceflightnow.com/2023/10/09/leak-detected-onboard-russian-segment-of-international-space-station/ 2023年10月10日閲覧。 
  8. ^ Госкорпорация «Роскосмос»”. Telegram. 2023年10月10日閲覧。
  9. ^ Sturm, Karin (2023年11月20日). “Stars aligning for Boeing crew launch in April”. NASASpaceFlight.com. オリジナルの2023年12月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20231227212758/https://www.nasaspaceflight.com/2023/11/starliner-asap-nac/ 2023年12月23日閲覧。 
  10. ^ a b Launch Schedule – Spaceflight Now” (英語). 2023年2月23日閲覧。
  11. ^ Finch, Joshua; Cheshier, Leah, eds. (17 January 2024). "NASA Sets Briefings for Crew-8, International Space Station Missions" (Press release). NASA. M24-006. 2024年1月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月22日閲覧
  12. ^ Microgravity Research Flights”. Glenn Research Center (2020年11月10日). 2020年11月10日閲覧。
  13. ^ Howell, Elizabeth (2023年12月13日). “SpaceX to launch 3rd private astronaut mission to the ISS for Axiom Space on Jan. 9”. Space.com. オリジナルの2024年1月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20240120160354/https://www.space.com/spacex-axiom-space-ax-3-international-space-station-launch-date 2023年12月27日閲覧。