納涼床
納涼床(のうりょうゆか、のうりょうどこ)、あるいは川床(大阪北浜では「かわゆか」、京都鴨川では「ゆか」、貴船、高雄では「かわどこ」と読むのが一般的)は京都や大阪の夏の風物詩の一つである。料理店や茶屋が川の上や、屋外で川のよく見える位置に座敷を作り、料理を提供する。
5月ごろから9月ごろまで、京都の鴨川、貴船、高雄、鷹峯などで楽しむことができる。
納涼床と法規制
編集納涼床は近代法が整備される明治時代以前から存在した[1]が、納涼床が河川敷を含む「河川区域」に張り出して設置されることから、河川法が制定されて以降、設置に当っては許可が必要となった。
現在施行されている新河川法では、第24条により河川区域内の土地を占用しようとする者は河川管理者の許可を受けねばならず、工作物を設置する際は第26条に基づきさらに許可が必要となる。この河川法の施行細則として国土交通省は「河川敷地占用許可準則」[2]を定めており、その中で占用主体は原則的に公共性・公益性が高い団体に限り、通常は営利目的の利用を認めていない。納涼床についても、半永久的な構造物の設置は長く禁止されていた[1]。
2002年(平成14年)、政府の都市再生本部による「全国都市再生のための緊急措置」[3]の中で「地域産業・観光などの経済活動・交流活動の振興や福祉をはじめとする生活サービスの充実などを空間整備と一体的に実施する取組み」が提言され、これを受けて2004年(平成16年)に特例措置として、河川局長が指定した区域において許可準則を緩和する社会実験が行われることとなった[4]。この社会実験の一環として、2009年大阪北浜に常設された「北浜テラス」をはじめとした納涼床が全国で設置された。
2010年(平成22年)には、国土交通省内の成長戦略会議[5]において観光振興が強く打ち出されたこともあり、2011年(平成23年)3月8日、河川敷地占用許可準則が改正され、これまでの特例措置が恒久化されることとなった[6]。なお、河川敷地占用許可準則においては、「納涼床」ではなく「川床」と呼称されている[7]。
鴨川納涼床
編集開催内容
編集毎年5月1日から9月30日まで設営される。月間によってそれぞれ「皐月の床」(5月)、「本床」(6月7月8月)、「後涼み」(9月)と呼称される。二条から五条にかけて4つのエリア(上木屋町、先斗町、西石垣、下木屋町)で構成され、90軒余りの店が並ぶ。懐石、割烹、京料理などの和食だけでなく、中華料理、西洋料理、焼肉、喫茶などの店舗でも納涼床を楽しめる。基本的に夜の納涼床が中心であるが、5月・9月は昼の納涼床も楽しめる。(食中毒防止のため、6・7・8月は昼の納涼床は営業しない)
京都府鴨川条例においては、特に「鴨川の右岸の二条大橋から五条大橋までの区間において、飲食を提供するために設置される高床形式の仮設の工作物」(同条例14条)を同条例における鴨川納涼床と定義し、それらについては知事が河川法許可の審査基準を定めるものとしている。
歴史
編集江戸時代前期の文献(『案内者』〈寛文2年、1662年〉、『日次紀事』〈貞享2年、1685年〉)によれば、鴨川での床が年中行事化したのは17世紀の初頭とみられ、18世紀末頃までは祇園会の前祭から後祭までの期間に限定して設営していたようである。当初は茶屋が鴨川の中州や浅瀬に床几程度のものを臨時に設置していたが、その後、茶屋本体に付随したある種の固定化された床が出現する。文政2年(1819年)刊行の『扁額軌範』の記述からみて、固定化された床は少なくとも19世紀の初頭には確実にあったとみられ、17世紀後半の作品ともいわれる「四条河原風俗図巻」に見られる床が夕涼みを描写したものであれば、その歴史はさらに1世紀以上遡ることができる[8]。
明治時代になると7月から8月にかけて四条大橋を中心に北は竹村屋橋(四条大橋の北約200mにあった橋)から南は団栗橋にかけて設営された[9]。しかし、1894年(明治27年)の鴨川運河開削や1915年(大正4年)の京阪電車鴨東線の延伸などで左岸からは消滅した[9]。
1929年(昭和4年)には半永久的な床を出すことが禁止された[9]。さらに1934年(昭和9年)の室戸台風と1935年(昭和10年)の集中豪雨で壊滅的な被害を受けた[9]。また、第二次世界大戦中は灯火管制などから営業は自粛された[9]。
1952年(昭和27年)に景観保護のため「納涼床許可基準」が策定され規則が整備された[9]。
貴船の川床
編集貴船口駅から貴船神社に向けて少し歩くと20軒ほどの店が床を並べている。京料理や流しそうめんを楽しむことができる。自然が多く情緒溢れる床である。川の上に床をつくる。
高雄の川床
編集京都市内より気温が3~5度低く夏の別天地として知られる高雄。清滝川に張り出すように一段高い位置にたてられた床で屋根が有るのが特徴。天然鮎、京野菜など旬の食材を使った川床料理を楽しむことができる。また6月中旬から7月中旬頃まで、天然記念物の源氏ぼたるも見ることができる。期間はお昼 5月初旬から11月末まで。夜 6月1日~9月末頃まで。
大阪川床「北浜テラス」
編集水都大阪のシンボル「中之島」に面して、北浜1丁目から2丁目の土佐堀川左岸に設けられる川床。背景の梅田のビル街や高速道路、中之島のバラ園や赤レンガの大阪市中央公会堂、時折遊覧船が行く穏やかな土佐堀川(旧淀川)など、都会と自然が融合した広大な空間を楽しめる。3月下旬の川床開きから秋・寒くなるまで運用されているが、常設の為一部店舗は冬季も営業している。
関連項目
編集脚注
編集- ^ a b “納涼床の歴史”. 京都鴨川納涼床協同組合. 2016年7月18日閲覧。
- ^ “河川敷地占用許可準則について”. 国土交通省. 2016年7月18日閲覧。
- ^ “全国都市再生のための緊急措置~稚内から石垣まで~”. 内閣官房 地域活性化統合事務局 (2002年4月8日). 2016年7月18日閲覧。
- ^ “河川空間のオープン化(地域活性化のための河川敷地の占用に関する規制緩和)” (PDF). 国土交通省 河川局 (2011年3月8日). 2016年7月18日閲覧。
- ^ “国土交通省成長戦略会議”. 国土交通省. 2016年7月18日閲覧。
- ^ “河川空間のオープン化について(地域活性化のための河川敷地の占用に関する規制緩和)”. 国土交通省 河川局 水政課 (2011年3月8日). 2016年7月18日閲覧。
- ^ 河川敷地占用許可準則 第4章 第二十二第3項の十。
- ^ 川嶋將生『祇園祭 祝祭の京都』吉川弘文館、2010年。
- ^ a b c d e f “「地域景観づくり計画書」”. 先斗町まちづくり協議会. 2021年10月3日閲覧。
外部リンク
編集- 京都鴨川納涼床協同組合
- 京の夏の風物詩 鴨川 納涼床、鴨川納涼床(ぐるなび)
- 納涼床(京都新聞)、Noryo Yuka - ウェイバックマシン(2002年8月3日アーカイブ分) (The Kyoto Shimbun News)
- 京都・鴨川納涼床の風景 - ウェイバックマシン(2003年9月14日アーカイブ分)(日本の写真集 デジタル楽しみ村)
- 鴨川納涼床(パノラマ写真で巡る京都観光ガイド。先斗町四条上ル鍋屋町の和風居酒屋「くわ焼 ぽんと」前の河川敷付近で全周を見る。QuickTime VR。ドラッグで移動、シフトキーでズームイン、コントロールキーでズームアウトする写真)
- 鴨川・貴船の床びらき(e京都ねっと)
- 貴船観光会
- 大阪川床 北浜テラス
- 北浜テラス