花山トンネル(花山隧道、かざんトンネル)は、京都市東山区清閑寺山ノ内町と京都市山科区北花山大峰町を結ぶ歩行者用トンネル花山洞(かざんどう)とも呼ばれる。

花山トンネル(花山隧道)
花山トンネル(東山区側から望む)
(トンネル補修前:2016年4月撮影) 地図
概要
位置 京都府
座標 北緯34度59分22秒 東経135度47分23秒 / 北緯34.98942度 東経135.78986度 / 34.98942; 135.78986座標: 北緯34度59分22秒 東経135度47分23秒 / 北緯34.98942度 東経135.78986度 / 34.98942; 135.78986
現況 共用中
所属路線名 京都府道116号渋谷山科停車場線
起点 京都市山科区上花山旭山町
終点 京都市山科区上花山旭山町
運用
完成 1903年明治36年)4月28日
開通 1903年明治36年)5月19日
管理 京都市
通行対象 歩行者
用途 人道トンネル
技術情報
全長 141 m[1]
高さ 3.4 m
4.0 m
テンプレートを表示

概要 編集

1903年明治36年)5月19日に渋谷街道の渋谷隧道(渋谷トンネル)として開通[2]。南に並行する国道1号五条バイパス東山トンネルの開通に伴い、歩行者用トンネルとなる。京都市が管理するトンネルのうち、1889年(明治22年)竣工の厨子奥トンネル・御陵トンネル、1890年(明治23年)竣工の粟田口トンネル(ねじりマンポ)に次いで4番目に古く、明治期に供用開始されてから100年以上経過するが[3]2021年令和3年)現在も通行可能。なお、山科区側(東側)の坑口には「花山洞」の扁額が架かり[4]煉瓦を模したタイルによって修景されているほか、内部もコンクリートで補強されている。また、建設当初の面影を残す東山区側(西側)の坑口には「方軌通門」の扁額が架かり[5]土木学会が選出する「日本の近代土木遺産」(ランクC)に認定されている[6][7]

「方軌」は、を並べて二台の車(中国では牛車、日本では荷車(幅45 cm又幅60 cm)が通れる。「通門」は、普段使いの門。通用門。正門とは違い、関所や門番がない。

2019年(令和元年)と2020年(令和2年)に前期・後期に分けてトンネル補修工事が行われ[8]、PCL(プレキャストコンクリートライニング)工法で内部が補修されている[9]

中世には「苦集滅道(くずめぢ)」「汁谷口(しるたにくち)」と呼ばれ、江戸時代には「渋谷越」と呼ばれた渋谷に開削されたトンネルで、トンネルの真上を京都市道渋谷蹴上線(東山ドライブウェイ)が通る。

トンネルのある阿弥陀ヶ峰周辺一帯は、北の「蓮台野」、西の「化野」と共に京都三大葬送地の一つ、東の「鳥辺野」として知られ、平安時代風葬の地、中世以降は墓所火葬場が存在した。現在もトンネル南側に京都市中央斎場(旧花山火葬場)があるほか、清閑寺東本願寺東山浄苑本正寺法華寺等の寺院墓地が多く所在する。

諸元 編集

  • 着工:1902年(明治35年)4月03日
  • 竣工:1903年(明治36年)4月28日
  • 供用:1903年(明治36年)5月19日
  • 延長:141 m[1]
  • 幅員:4.0 m
  • 形式:煉瓦(坑道内部はコンクリートで補強済み)
  • 起点:京都市山科区上花山旭山町
  • 終点:京都市山科区上花山旭山町
    • 東山区清閑寺山ノ内町と山科区北花山大峰町を結ぶトンネルだが、トンネル自体は前後の道路も含めて山科区上花山旭山町に所在する
  • 請負:大西土木合資会社[10]

歴史 編集

  • 1899年(明治32年)2月18日 - 渋谷街道の改修計画が京都府会に提出される[11]
  • 1900年(明治33年)12月 - 改修計画予算が可決[11]
  • 1902年(明治35年)4月03日 - 工事開始[11]
  • 1903年(明治36年)4月28日 - 工事完了[11]
  • 1903年(明治36年)5月19日 - 渋谷隧道開通式[2]
  • 1967年昭和42年) - 国道1号(五条バイパス)東山トンネルの開通に伴い、歩行者用トンネルとなる
  • 2019年(令和元年) - 花山トンネル補修工事(前期)を実施[8]
  • 2020年(令和2年) - 花山トンネル補修工事(後期)を実施、8月に補修工事を完了[8]

ギャラリー 編集

以下の画像はいずれも花山トンネル補修工事前の物である。

補修工事後

脚注 編集

  1. ^ a b 『京都日出新聞』(現・京都新聞)、1903年(明治36年)5月20日付「渋谷隧道開通式」の記事ではトンネル長さは78(約142 m)と記されている。
  2. ^ a b 明治36年5月19日 - 京都府立京都学・歴彩館デジタルアーカイブ 2019年11月22日閲覧。
  3. ^ トンネル長寿命化修繕計画、京都市、2021年(令和3年)3月、3頁
  4. ^ 『京都日出新聞』、1903年(明治36年)5月20日付「渋谷隧道開通式」の記事では「火山洞」と記されている。
  5. ^ 「A19 花山トンネル洞門(上花山)」山科の歴史を知る会 2012, p. 19.
  6. ^ 「花山洞(西口)」土木学会土木史研究委員会 2005, pp. 178–179.
  7. ^ 日本の近代土木遺産(改訂版) 現存する重要な土木構造物2800選 京都府、土木学会
  8. ^ a b c 「はばたけ未来へ! 京プラン」実施計画第2ステージ「政策編・年次計画」取組内容 No.116001、京都市、2020年11月17日
  9. ^ 道路トンネル補修工事(花山トンネル)、日本サミコン、2020年
  10. ^ 『京都日出新聞』、1903年(明治36年)5月20日
  11. ^ a b c d 鏡山次郎 2007, pp. 111–112.

参考文献 編集

  • 土木学会土木史研究委員会 編『日本の近代土木遺産 現存する重要な土木構造物2800選』(改訂版)土木学会、2005年12月。ISBN 4-8106-0551-5 
  • 鏡山次郎『京都山科「陵ヶ岡・鏡山」二千年の歩み』つむぎ出版、2007年5月。ISBN 978-4-87668-158-7 
  • 山科の歴史を知る会 編『山科の歴史探訪』 6(山科の石ふみ)、山科の歴史を知る会、2012年3月。全国書誌番号:22076885