苦行
苦行(くぎょう、英: Tapas)とは、身体を痛めつける事によって自らの精神を高めようとする宗教的行為。禁欲とも密接に関係し、主立った宗教(仏教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、神道など)には共通して禁欲主義的な傾向が見られる。
仏教における苦行編集
開祖釈迦本人は出家した後、断食などを伴う激しい苦行を積んだが、悟りを開いてから、苦行はいたずらに心身消耗するのみで、求めていたもの(真理)は得られぬと説いている(初転法輪)。
キリスト教における苦行編集
イエス本人も荒野での修行や十字架刑に架けられるという苦行を経ているが、正統派教義では外在存在である神への信仰を重視するため、内にある神性を求めるという苦行の動機が薄かった。しかし神秘主義や聖アントニウスに始まる修道士の流れでは禁欲によって神に近づこうという傾向がある。
14世紀のイタリアではペストの流行によって社会不安が蔓延し、ドミニコ会修道士の指導のもと鞭で体を打つことで贖罪を行い、功徳を得ようとする「鞭打ち苦行団」が組織された[1]。鞭打ち苦行団はドイツとフランスでも組織されたが、ペストの被害が深刻になるにつれてローマ教皇にも統制が取れない事態となった。
仮説編集
脳科学によれば神経伝達物質にエンドルフィンというのがあり、これは一定以上の苦痛を受けると、それを緩和するために幸福感をもたらす作用があるといわれる。この説に従うと宗教者が苦行の果てに神や仏を見出す事に生物学的説明がつく。[2]