△持ち駒 なし
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△持ち駒 なし
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5筋位取り中飛車(ごすじくらいどりなかびしゃ)は将棋戦法の一つ。序盤で飛車を横に動かす振り飛車戦法のうち、飛車を5筋に振る中飛車に分類される。現代のゴキゲン中飛車もこの5筋位取り中飛車作戦をベースに構築されており、序盤から5筋の位を取って積極的に主導権を握る指し方を行うことから、多くの新手筋や独特の戦術が展開され発見開発されていった。

1980年代から、力戦調ではっきりした定跡が出来て居ないことで静かな人気があったが、1981年12月から1982年11月末日までの統計で5筋位取り中飛車は9局、5筋交換型中飛車は7局指されている[1]

概要 編集

△持ち駒 歩2
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5筋位取り中飛車は、その名の通り駒組みの早い段階で5筋の歩を5五まで進める戦法である。

振り飛車は角交換を避ける際、6六の地点で角道を止める場合が多いが、この戦法は5五の地点で止めることになる。

5五で位を取っていること、ツノ銀と違って図1-1のように左金を7八や6八の地点に配備するだけでなく、図1-2のように持久戦で右へ配備する指し方もあり、伸び伸びとしたバランスのいい陣形になる他、振り飛車が後手番でも損が少ない戦法のため、プロアマ問わず人気の戦法である。

昨今のゴキゲン中飛車が多く指されて戦法としての類例が多くなって研究が進む以前は、図1-1や図1-2のような陣形が多く指されていた。位を取ることで中飛車側の可動域が上がり、ツノ銀中飛車よりも手づまりになりにくくなる。

戦型は中飛車側のように左銀を繰り出して、▲5六(△5四)の地点まで持っていき、機を見て▲6六歩~▲6五歩(△4四歩~△4五歩)と仕掛けていくことが多いが、金を▲5六(△5四)の地点に持っていく指し方もみられた。図1-3は先手四間飛車に対して居飛車側中央位取りの陣形を目指したのに際し、振り飛車側が中飛車に転じて反撃したもので、こうして金を繰り出す指し方は森安秀光が愛用していた。

その後の推移 編集

△持ち駒 歩
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△持ち駒 歩
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昨今では先手番で5筋位取り中飛車を指す場合、初手は▲5六歩の手順がみられる。これは初手▲7六歩に対して二手目△3四歩とされた時に5筋の歩を突くとそこで、△8八角成~△5七角とされる、後手に馬を作る作戦があるからである。初手▲5六歩の以降は△3四歩▲5八飛と回る出だしとなる。以下△8四歩▲7六歩△6二銀(又は△8五歩▲7七角△6二銀等)ならば▲5五歩として5筋の位を取ることになる。その後の注意点として左銀を6八に持っていく際、▲7七角(△3三角)と角行を先に上がるか左金▲7八(△3二)に沿えないと、▲6八銀(△4二)の瞬間に△5四歩とする位の奪還が生じることもある。

以前は初手▲7六歩に△8四歩▲5六歩△3四歩に▲5五歩~▲5八飛、▲7六歩に△3四歩の場合は▲6六歩として△8四歩▲5六歩△6二銀▲5八飛で、△5四歩と突かない場合に▲5五歩として左銀を6八~6七~5六とくりだすか又は△3四歩に▲7八金△8四歩▲5六歩△8五歩(ここでの△8八角成から△5七角は▲6八角)▲5五歩で取る指し方、初手▲7六歩に△8四歩▲5六歩に、△5四歩と突いた場合にはすぐ▲5五歩△同歩▲同角の5筋歩交換から、△8五歩ならば▲7七角△3四歩▲5五歩(△8五歩のところで△3四歩は角交換から▲5三角から馬をつくれる)もしくは△5四歩にすぐ▲5八飛から5筋の歩を交換して▲5五歩と抑える指し方などで、もしくは図2-1のようにツノ銀中飛車模様から後手居飛車側が△4四歩と角道を止めて先手▲5五歩からの歩交換から図2-2のように盛り上がる形で5筋位取り中飛車が実現していた。

△持ち駒 なし
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△森 持ち駒 歩
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△森 持ち駒 歩
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△森 持ち駒 歩
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後手番では△3二金型にして以前から飛車先歩交換型で指されていた。▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩で6手目に△5五歩とし(図3-1)、▲2四歩△同歩▲同飛 △3二金▲4八銀△5二飛▲5八金右に△5六歩、という順が1845年に天野宗歩が指し始めた指し方として知られている。

こうした指し方はプロでは木村嘉孝などが指していた。その後1988年頃から中飛車を得意とする森雞二が後手番の際に指すようになる。後に「森流」と呼ばれるこの指し方で、森は当時40代ながら王位のタイトルを奪取することになる。但し森の場合5筋の位を保つのではなく、天野宗歩のように△5六歩と積極的に飛車先交換をして、飛車を浮く指し方を目指していた節があるが、1988年8月の対羽生善治戦(全日本プロトーナメント)で図3-2から▲5四同歩△同飛▲5七銀~▲6六銀と手順に銀を繰り出されたので、その後はゴキゲン中飛車でも採用されていく△5五歩のまま△5四飛と浮いて、△2四飛▲2五歩△3四飛を指すようになる。後手陣のこの後の展開はひねり飛車の名手の森らしく、図3-3~図3-4に見られるような展開に持っていく展開を理想としている(1988年、全日本プロトーナメント、対関浩戦)。この時期、田中寅彦も後手番でのひねり飛車を採用して、当時30代でのタイトル獲得につながっていた。 森はその後も先手の▲3六歩に即△5六歩を1997年09月05日 順位戦のvs.福崎文吾 戦、5筋位取りからの浮き飛車を、2001年05月31日 早指戦の川上猛 戦、2002年05月17日 達人戦の中原誠 戦では後手番で、2002年05月16日 銀河戦、vs. 谷川浩司 戦では先手番で、指している。

なお、上記図3-1に至る途中で▲2四歩△同歩▲同飛△3二金に▲3四飛と横歩を取る指し方も指されてきた。横歩取り (対中飛車)参照。以下△5二飛に先手は▲3六飛または▲2四飛が指されている。

▲3六飛の場合、後手は△4四角と2六へ飛車を戻れないようにする指し方もあるが、単に△6二玉でも先手はここですぐに▲2六飛としてもすかさず△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△4四角の筋がある。△5六歩のところ▲同歩ではなく▲2二角成△同銀▲5六歩でも△4四角がある。

超急戦 編集

△持ち駒 歩
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△持ち駒 歩2
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△持ち駒 銀香歩2
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図4-1aで△5二飛に先手▲2四飛には△5六歩▲同歩に当初は△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成▲7七角としていたが、その後後手は△5六歩▲同歩△同飛と指し(図4-1b)、以下先手が▲5八歩とすると、△6二玉▲2八飛(▲6五角△5二飛▲8三角成は△3三角)△7二玉▲4八銀△2六歩▲5七銀△5一飛、などの進行が予想される。

▲5八歩は▲5八金右であると△5七歩が懸念されていたことからであるが、▲5八金右△5七歩▲6八金寄(▲4八金とするのは△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成で次に△5八銀という手がある。▲6八金寄としておけば△5八銀には▲4八玉がある)△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成▲4五角△5二飛▲5三歩△同飛▲5四歩△5二飛▲7七桂△9九馬▲2四桂という進行がみられてから(図4-1c)、特に問題はないことがわかり、後手としても▲5八金右ならば△6二玉▲2八飛△7二玉という展開で、一局の進行である。

△持ち駒 なし
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△持ち駒 歩
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現在ではこうした将棋はゴキゲン中飛車で頻繁に指されて様々な指し手が理解され始めた結果、先手▲2五歩に後手も△3二金とはせずに△5二飛を先にして構わないことが分かった。ゴキゲン中飛車は、序盤から角道を止めない戦法のため、常に▲2四歩と突かれる可能性はあるが、図4-2aでの▲2四歩の飛車先交換作△8八角成▲同銀△3三角▲8二飛以降、先手が飛先を逆襲される展開を嫌って実戦例は少ない。この他に▲4八銀であれば、先手玉の右側は一時的に壁になっていることから右の銀は早く繰り出すことになりやすくなった。このためすぐに▲2四歩ではなくいったん▲5八金右として、右の壁銀をつくらず中央からの反撃に備え、△5五歩と角道を止めさせてから飛車先交換をする指し方が出現する。この変化は、△3二金や△6二玉など穏やかに指せば一局であるが、図4-2a のように先手の誘導に対して決戦する指し方もあり、『イメージと読みの将棋観』(2008年、日本将棋連盟)ではこの順が平成以降2008年までに公式棋戦で51局現れて25勝25敗1千日手となっている。本書で6名の棋士らも双方有力な手があって結論は出ず、結局のところ研究しているほうが有利な将棋とされているが、研究してどちらをもっても危険性があり、どちらも持ちたくない将棋とみている。

地下鉄飛車型 編集

現在は図5-1のように先手の中飛車でも相手の飛車先を切らせて図5-2図のようにもっていく指し方もみられる。飛車を5九にひいてからいったん8九に構える。これはこの形の向かい飛車特有である8五桂ポンがあるので、▲8九飛に後手は△8四歩と備える。以下▲9八香で△5四歩ならばその後は▲9五歩△同歩▲9九飛△8三飛▲9五香△9三歩▲8六歩(次に▲8五歩△同歩▲8四歩がある)△9四歩▲同香△同香▲9五歩△同香▲同飛△9三歩▲9九飛(図5-4)といった展開になる。

△後手 歩
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△後手 歩
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△後手 なし
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△後手 香
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これは後手番ゴキゲン中飛車の出だし▲2四歩△同歩▲同飛に△3二金と構える形での進展においても可能となる。

この形は相振り飛車でも威力を発揮する。図5-5のような中飛車対石田流三間飛車の場面以下、図5-6のように攻撃態勢が整えられ、また図5-7のような6五銀の形をつくれば相手陣の進展性を奪うことが可能である。

△後手 歩
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△後手 歩
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△後手 歩
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飛騨の合掌造り 編集

△持ち駒 歩
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飛騨の合掌造り戦法とは、つのだじろうの『5五の龍』に出てくる架空の5筋位取り中飛車戦法。図6のような陣形が飛騨地方の建築様式である合掌造りの屋根を思わせるのでこの名がある。先手はこの後飛車を三間に転じ、完全な屋根型にしてから▲6八角~7五歩を狙う。

脚注 編集

  1. ^ 高橋道雄「緊急レポート居飛車vs振飛車プロ間における最近の序盤傾向の研究」第2回 三間飛車中飛車編(『将棋世界』1983年2月号所収)

関連項目 編集