株式会社A.L.I.Technologies(エーエルアイテクノロジーズ[3]: A.L.I.Technologies Inc.)は、エアモビリティの開発や販売などを行っていた日本の企業。米国法人AERWINS Technologies Inc.の完全子会社、日本における現地法人。2022年12月期は年収入高約7億3000万円に対し、約20億円の純損失を計上し、2023年12月に東京地裁に自己破産申立、2024年1月10日に東京地裁は破産手続き開始を決定した[4]

株式会社A.L.I.Technologies
A.L.I.Technologies Inc.
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
105-0011
東京都港区芝公園3丁目1-8
芝公園アネックス6階
北緯35度39分39.7秒 東経139度44分56.2秒 / 北緯35.661028度 東経139.748944度 / 35.661028; 139.748944座標: 北緯35度39分39.7秒 東経139度44分56.2秒 / 北緯35.661028度 東経139.748944度 / 35.661028; 139.748944
設立 2016年平成28年)9月1日
業種 輸送用機器
法人番号 9010001178677
事業内容
  • ホバーバイク(空中移動用バイク)の研究開発、製造、販売
  • 産業用ドローンの研究開発、コンサルティング
  • 産業用ドローンを用いた点検、測量等の運用
  • ドローンの統合運航管理システムの研究開発
  • クラウドGPUサービスの提供
代表者
  • 破産管財人 飯田岳
資本金 1億円
(2021年12月末)
純利益 -16億3192万3000円
(2021年12月末)[1]
純資産 -7403万5000円
(2021年12月末)[1]
総資産 17億4123万4000円
(2021年12月末)[1]
決算期 12月31日
所有者 AERWINS Technologies Inc.
関係する人物 デイビッド・ジェンキンス(前代表取締役)
外部リンク ali.jp
特記事項:2023年12月27日自己破産申請、2024年1月10日破産手続開始決定[2]
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AERWINS Technologies Inc.
種類
公開会社
市場情報
NASDAQ AWIN
2023年2月6日上場
設立 2021年2月12日
(SPAC先のPono Capital Corp.の設立日)
2023年2月4日
(De-SPAC日)
本社 600 N Broad Street, Suite 5 #529, Middletown、
Delaware
U.S.A.
主要人物
小松周平 (創業者)
Kiran Sidhu (Executive Chairman and Chief Executive Officer)
伊東大地(ex-Chief Executive Officer)
総資産 $117,237,645 (2021年12月末、Ponoとして)
子会社 株式会社A.L.I.Technologies
ウェブサイト aerwins.us

沿革 編集

東京大学航空宇宙工学専攻の学生達がドローンの開発企業を創業。2017年2月[5]、当時ロンドンにあるヘッジファンドのポートフォリオマネージャーを勤めていた[6]小松周平が、債務超過に陥っていたこのドローンの事業を買収し、新規にエアモビリティ事業、ドローンサービス事業、分散コンピューティング事業の会社を設立、代表取締役に就任[7][8]。社名は株式会社エアリアルラボ。エンジェル投資家の千葉功太郎島田亨から出資金を獲得し、自身も自己資金を追加投資、2017年7月11日に東京都港区元麻布に本社を移転後、エアモビリティの研究を開始した。また、同時期にドローン物流のハードウェアを開発する株式会社エアロネクストを創業(後に担当役員によってMBO)、他にもドローン関連では株式会社liberawareや株式会社トラジェクトリーへの出資やITエンジニア会社の買収などドローン関連技術研究のために多角的に行った [9]

2018年1月1日、株式会社Aerial Lab Industriesに社名変更[10]

2018年7月1日、コンサルティングファームのYCP Japanの代表取締役だった[11]片野大輔が代表取締役COOに就任した[12]

同社は研究開発によって生まれた周辺技術を事業化。ドローンサービス、CO2排出量算出・可視化クラウドサービス「zeroboard(ゼロボード)」、多目的産業向けのShared Computingサービスを開始(後にゼロボードは同社役員によってMBO)。

2019年1月1日、株式会社A.L.I.Technologiesに社名変更[13]。同社はドローン事業を黒字化し、連結決算は国内のエアモビリティ・ドローン会社としては最大規模となった。またこの時期に大きな資金調達を実施、日本を代表する大企業各社が出資した[14]

2019年9月12日、GPU EATERを開発する米Pegara, Inc.に出資[15]

2020年4月1日、小松周平が代表取締役会長、片野大輔が代表取締役社長に就任。CEOが会長に、COOが社長に変更になった[16]

エアモビリティからドローンまで一括管理するクラウド型管制システム”コスモス”の開発に着手。国土交通省の「PLATEAU」プロジェクトに採択された[17]

2021年10月26日、世界初の実用型ホバーバイク 「XTURISMO Limited Edition」を発表した[18]。価格は7,770万円。仮面ライダーリバイスライダーバイクに採用された[19]。中東地域での使用に加え、米当局からXTURISMO Limited Edition は航空機の定義とならないという通達を受け、米デトロイトモーターショーでテスト走行を行っている[20]

2022年6月、小松周平がAERWINS Technologies Incを設立しChairman & CEOに就任。

2022年9月、AERWINS社はA.L.I.社を株式交換にて子会社化し、日本の現地法人とする。

2022年10月、小松周平が株式会社A.L.I.Technologies の代表取締役を辞任。片野大輔1名の代表体制となる[21]

2023年2月6日、日本では初となる、米投資会社PONO CapitalとのDe-SPAC契約によって米国法人AERWINS Technologies Inc.が米証券取引所NASDAQに上場した[22][23][24]

2月の上場直後、小松周平はPONO Capital Corpと経営方針等の対立から退任に追い込まれ辞任した[25]

PONOは代わりに伊東大地を米AERWINS社のCEOに任命。日本法人であるA.L.I.Technologies社の代表取締役にも就任させた。その後、同社はこれまでの勢いを急速に失って行った[26][27]。  

2023年3月、上場前よりアナウンスされていたUAE政府向け販売パフォーマンスを実施。G42企業グループであるBayanat社と共に行った[28]

新しいトップになってからは、これまでに予定されていた事業開発計画や資金計画とは異なる計画が突如打ち出され、”誇張された製品営業”や”明らかに不利な資金調達契約”など、経営会議や取締役会の承認を十分に得ず、伊東が独断で推進していた事が社外取締役によって明らかにされた[29]

これらのガバナンスを逸脱した行為は伊東の代表就任後から短期間で”ノータイム、ノーチョイス”と繰り返し行われ、その結果として、事業崩壊や株価乱高下のマネーゲームに至ったのではないかと当時の社外取締役は述べている[30]。また、それらの暴走について指摘後も改善が見られなかったため、その社外取締役は辞任している[31]

元広報担当者は「新しいトップとなった伊東大地がUAEで危険な飛行パフォーマンスを現場に無理強いさせていた」と述べている。

5月19日に元メリルリンチのKiran SidhuがChairmanに就任。他2名のIndependent Directorと入れ替わる形で、PONO Capital側のIndependent Directorは解任された[32]

2022年4月より、同社は研究拠点として山梨県身延町から旧身延町立久那土中学校校舎などを借用していたが、2023年度は未払いが発生、社員の大半が離職し2023年秋、日本法人であるA.L.I.社は従業員を大幅に不当解雇し、労働基準監督署から是正勧告を受け[33]事実上の事業停止に陥っていた[34]。身延町は2024年1月の臨時町議会に関連議案を提出し審議したうえで、同社に対し賃料の請求や校舎の明け渡しを求める訴訟を提起する方針を固めている[35]

同社は2023年12月27日に東京地方裁判所へ破産申請を行い、2024年1月10日に破産手続き開始が決定した[36]。負債総額は11億6751万円[37]

元従業員やAERWINS社の株主は、トップが伊東大地に代わってからの転落が速い事を目の当たりにしたという感想を述べている[38] [39]

2024年1月初旬、伊東大地に代わり、Kiran ShidhuがCEOに任命された[40]

米AERWINS社の発表によると閉鎖されたのは子会社の日本法人であるドローンサービス事業を主とするA.L.I.社であり、エアモビリティ事業を行っているのは米AERWINS社である[41]

Kiran Shidhuは小松周平が保有する議決権を委任され、再建を託された[42]

受賞歴 編集

  • 2019年 Forbes JAPAN Startup TOP20
  • 2020年 Deloitte Technology FAST50
  • 2022年 リアルテック・ベンチャー・オブザイヤー(グロース部門)

脚注 編集

  1. ^ a b c 株式会社A. L. I. Technologies 第6期決算公告 | 官報決算データベース
  2. ^ (株)A.L.I.Technologies - 東京商工リサーチ(2024年1月15日付)
  3. ^ 株式会社A.L.I.Technologiesの情報”. 法人番号公表サイト. 国税庁 (2019年1月22日). 2024年1月13日閲覧。
  4. ^ 空飛ぶバイクのA.L.I.テクノロジーズ、破産手続き-帝国データ”. Bloomberg.com (2024年1月15日). 2024年1月15日閲覧。
  5. ^ 株式会社A.L.I.Technologies のフリーランスや副業エンジニア向け採用・求人・案件 |ドーシージョブ
  6. ^ 株式会社 Aerial Lab Industries | インタビュー | IT/Web業界の求人・中途採用情報に強い転職サイトGreen(グリーン)
  7. ^ ドローンをビジネスに転換した男、ALI代表の小松周平氏に話を聞く
  8. ^ 本田圭佑氏「投資がリスクという感覚さえない」 (3ページ目):日経ビジネス電子版
  9. ^ 株式会社Liversware
  10. ^ 社名変更のお知らせ | A.L.I. Technologies
  11. ^ YCP Japan(旧ヤマトキャピタルパートナーズ)「ポストコンサルキャリア」インタビュー
  12. ^ 役員人事のお知らせ | A.L.I. Technologies
  13. ^ 社名変更のお知らせ | A.L.I. Technologies
  14. ^ エアーモビリティ社会のインフラ開発などを目指し、総額23.1億円を調達|A.L.I. Technologies 資金調達のお知らせ
  15. ^ GPU EATERを開発する米Pegara, Inc.、シードラウンドで104万米国ドルを調達。累積調達額は約153万ドルへ|ペガラジャパンのプレスリリース
  16. ^ ガバナンス体制及びマネジメント体制変更のお知らせ | A.L.I. Technologies
  17. ^ PLAREAU | 国土交通省
  18. ^ A.L.I.Technologies、実用型ホバーバイク『XTURISMO Limited Edition』発表会を開催|株式会社A.L.I. Technologiesのプレスリリース
  19. ^ まさにSF映画の世界…先端技術の結晶「空飛ぶバイク」は次世代の交通手段になるのか - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト”. www.sankeibiz.jp (2021年12月12日). 2022年9月7日閲覧。
  20. ^ |株式会社A.L.I. Technologiesのプレスリリース
  21. ^ Ito, 伊藤 有/Tamotsu (2023年2月8日). “国内初、NASDAQに実質「SPAC上場」した、空飛ぶバイクのA.L.I.社。片野社長が語る背景”. BUSINESS INSIDER JAPAN. 2024年2月27日閲覧。
  22. ^ AERWINS Technologies Inc.とPONO Capital Corp. De-SPAC契約による企業合併完了のお知らせ|株式会社A.L.I. Technologiesのプレスリリース
  23. ^ 米証券取引所NASDAQへの上場に関するお知らせ|株式会社A.L.I. Technologiesのプレスリリース
  24. ^ AERWINS 10-Q QUARTERLY REPORT
  25. ^ Newspicks 空飛ぶバイクの悲劇
  26. ^ Newspicks 迷走に次ぐ迷走 教訓と末路
  27. ^ AERWINS 10-Q REPORT
  28. ^ AERWINS Technologies、UAEアブダビにてXTURISMOのフライトパフォーマンス
  29. ^ 日本放送協会. “スタートアップの光と影 ~空飛ぶバイクはなぜ破綻したのか|NHK”. NHK NEWS WEB. 2024年2月28日閲覧。
  30. ^ 日本放送協会. “スタートアップの光と影 ~空飛ぶバイクはなぜ破綻したのか|NHK”. NHK NEWS WEB. 2024年2月26日閲覧。
  31. ^ 10-K”. www.sec.gov. 2024年2月28日閲覧。
  32. ^ [1]
  33. ^ A.L.I.失速 | 労基署から是正勧告
  34. ^ 空飛ぶバイクの開発企業が破産開始 負債総額は11億6000万円超 山梨県 - 日テレNEWS 2024年1月16日
  35. ^ 賃料未払い、拠点はもぬけの殻「空飛ぶバイク」開発の企業を提訴へ:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2024年1月12日). 2024年1月12日閲覧。
  36. ^ 「空飛ぶバイク」のA.L.I. Technologiesが破産手続き開始 仮面ライダーや新庄監督も乗っていた”. ITmedia (2024年1月15日). 2024年1月15日閲覧。
  37. ^ (株)A.L.I.Technologies 倒産・注目企業情報 - 東京商工リサーチ 2024年1月16日
  38. ^ 真実が分かる 経済暴露 弱り目に祟り目 | 悪しきハイエナ② | VERDAD 会員制報道メディア
  39. ^ 真実が分かる経済暴露 弱り目に祟り目 | 悪しきハイエナ③ | VERDAD 会員制報道メディア
  40. ^ AERWINS SEC | Public Filling | Arrangement Certain Officers
  41. ^ AERWINS SEC | Public Filling | Bankruptcy or Receivership
  42. ^ AERWINS SEC | Public Filling | Proxy from Founder

外部リンク 編集