AMAモトクロス

アメリカのモトクロス選手権

AMAプロ・モトクロス選手権AMA Pro Motocross Championship)は、AMA(アメリカモーターサイクル協会)が主催する屋外のモトクロスの全米選手権。5〜8月にかけて開催される。

2014年ペンシルベニア州ハイ・ポイント・レースウェイ戦

過去には「AMAナショナルモトクロス選手権」と呼ばれていた。また2009年から2022年まではルーカル・オイルがタイトルポンサーとなって、「ルーカス・オイル・プロ・モトクロス」として開催されていた。

概要

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例年1月に開幕するAMAスーパークロスシーズン終了直後の5月頃に開幕する。1大会2ヒート(レース)開催。アメリカの国内選手権だが、その競技レベルはモトクロス世界選手権より高いとも言われており、モトクロス世界選手権でチャンピオンを獲得したライダーが参戦することも多い。車両規定は基本的にスーパークロスと共通である。

1971年までアメリカ国内でインターAMA、トランズAMA、トランズUSA、ウィンターAMAなどの国際格式シリーズが開催されていたが、1972年よりこれらを統合して全米選手権となる。

1986年からプロトタイプのマシンが禁止され、市販車をベースとすることが義務付けられた[1]

250(現・AMAモトクロス)クラスと500クラスは1993年までは全13戦程度のシリーズを前期250クラス、後期500クラスと分けて開催されていた。当時バイクメーカーによっては商業的理由から500ccマシンが消え始めていたため、前期を250クラス、後期は125クラスに参戦するライダーもいた。

このことにより以下のような問題が生じた。

  • 500クラスのマシンを持たないメーカーと契約しているライダーは、250クラスが開催されない後期から125クラスに途中参加という形になり、結果として通期で125クラスに参戦しているライダーと途中参戦のライダーとの実力とランキングが一致しない。
  • 1980年代以降、250クラスには各メーカーのエース級ライダーが参加し、ラップタイムも500クラスより速い実質的最高峰クラスとなったため、興業的理由からシーズンを通して250クラスのレースを行いたい。

以上の理由から、1993年をもって500クラスは廃止された。250ccは4ストロークエンジンなら550ccまでの排気量拡大が認められた。

1996年に4ストロークを促進したい運営の意向により、4ストロークエンジンならば1シーズンにつき1台のみ、特別にプロトタイプ車での参戦が認可された。これを用いてKTMが選手権史上初めて4ストロークエンジン車でスーパークロスに参戦し、3位表彰台を獲得した[2]

1997年にカリフォルニア州の環境問題への意識の高まりに触発されたヤマハ発動機はAMAに働きかけ、将来の市販を前提とすることでプロトタイプの4ストローク車両をモトクロスとスーパークロスに参戦させた。ヤマハはYZM400Fを開発し、4ストロークで初勝利を収め、4ストローク化の流れを決定付けた[3]。その後ホンダとスズキも特認ルールを用いて4ストロークエンジンを導入した。カワサキとハスクバーナは特認ルールを使わずに4ストロークエンジン化を行った[2]

1996年からは女子部門が新設[4]

2023年からスタジアム開催のAMAスーパークロスの成績上位者と、全米最強決定戦を行うプレーオフAMAスーパーモトクロスが秋から開催されることとなった。

開催クラス

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  • AMAモトクロス(旧250)

2ストローク250cc以下または4ストローク450cc以下のエンジン搭載車両

  • AMAモトクロスライツ(旧125)

2ストローク125cc以下または4ストローク250cc以下のエンジン搭載車両

AMAモトクロスの特徴として、どちらのクラスにおいても、バイクへの改造はサスペンションや吸排気系に限られ、エンジンやトランスミッション、フレームへの改造は認められていない。そのため、全日本モトクロス選手権モトクロス世界選手権のような、いわゆるプロトタイプのワークスマシンは基本的に出走できない。そのため、AMAモトクロスにおけるワークスマシンは、サスペンションやマフラーなどを特別製のパーツに交換し、フレームやエンジン・ミッションなどは、各部を構成するパーツの高度なバランス取りや、組み立て精度の向上などを施した仕様となっている。ただし、現在はAMAに申請をすれば、1車種につき1シーズンに限り、プロトタイプバイクの出走が認められる。なお、これらのマシンレギュレーションは、AMAスーパークロスについても同様である。

歴代チャンピオン

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出典:[4][5][6]

Year 250cc 125cc 500cc
1972年   ギャリー・ジョーンズ(カワサキ     ブラッド・ラッキー(カワサキ)
1973年   ギャリー・ジョーンズ(ホンダ     ピエール・カールスマーカーヤマハ
1974年   ギャリー・ジョーンズ(カンナム   マイク・スミス(ホンダ)   ジム・ワイナート(カワサキ)
1975年   トルガン・ディステファノ(スズキ   ジム・ワイナート(ヤマハ)
1976年   ボブ・ハンナ(ヤマハ)   ケリー・ハワートン(ハスクバーナ)
1977年   ブロック・グローバー(ヤマハ)   マイク・スミス(ホンダ)
1978年   ボブ・ハンナ(ヤマハ)   リチャード・バージェット(ヤマハ)
1979年   ダニー・ラポルテ(スズキ)
1980年   ケリー・ハワートン(スズキ)   マーク・バーネット(スズキ)   チャック・サン(ホンダ)
1981年   ブロック・グローバー(ヤマハ)
1982年   デニー・ハンセン(ホンダ)   ダン・シュルツ(ホンダ)
1983年   デビット・ベイリー(ホンダ)   ジョニー・オマラ(ホンダ)   ブロック・グローバー(ヤマハ)
1984年   リック・ジョンソン(ヤマハ)   ジェフ・ワード(カワサキ)   デビット・ベイリー(ホンダ)
1985年   ジェフ・ワード(カワサキ)   ロン・ラシーン(ホンダ)   ブロック・グローバー(ヤマハ)
1986年   リック・ジョンソン(ホンダ)   ミッキー・ダイモンド(ホンダ) デビット・ベイリー(ホンダ)
1987年   リック・ジョンソン(ホンダ)
1988年   ジェフ・ワード(カワサキ)   ジョージ・ホランド(ホンダ)
1989年   ジェフ・スタントン(ホンダ)   マイク・キドラウスキー(ホンダ)   ジェフ・ワード(カワサキ)
1990年   ガイ・クーパー(スズキ)
1991年   ジャン・ミッシェル・バイル(ホンダ)   マイク・キドラウスキー(カワサキ)   ジャン・ミッシェル・バイル(ホンダ)
1992年   ジェフ・スタントン(ホンダ)   ジェフ・エミッグ(ヤマハ)   マイク・キドラウスキー(カワサキ)
1993年   マイク・キドラウスキー(カワサキ)   ダグ・ヘンリー(ホンダ)   マイク・ラロッコ(カワサキ)
Year 250cc 125cc
1994年   マイク・ラロッコ(カワサキ)   ダグ・ヘンリー(ホンダ)
1995年   ジェレミー・マクグラス(ホンダ)   スティーブ・ラムソン(ホンダ)
1996年   ジェフ・エミッグ(カワサキ)|
1997年   リッキー・カーマイケル(カワサキ)
1998年   ダグ・ヘンリー(ヤマハ)
1999年   グレッグ・アルバーティン(スズキ)
2000年   リッキー・カーマイケル(カワサキ)   トラビス・パストラーナ(スズキ)
2001年   マイク・ブラウン(カワサキ)
2002年   リッキー・カーマイケル(ホンダ)   ジェームス・スチュワート(カワサキ)
2003年   グラント・ラングストンKTM (オートバイ)
2004年   ジェームス・スチュワート(カワサキ)
2005年   リッキー・カーマイケル(スズキ)   アイバン・テデスコ(カワサキ)
モトクロス モトクロスライツ
2006年   リッキー・カーマイケル(スズキ)   ライアン・ビロポート(カワサキ)
2007年   グラント・ラングストン(ヤマハ)
2008年 ジェームス・スチュワート(カワサキ)
450クラス 250クラス
2009年   チャド・リード(ヤマハ) ライアン・ダンジー(スズキ)
2010年   ライアン・ダンジー(スズキ)   トレイ・カナード(ホンダ)
2011年   ライアン・ビロポート(カワサキ)   ディーン・ウィルソン(カワサキ)
2012年   ライアン・ダンジー(KTM)   ブレイク・バゲット(カワサキ)
2013年   ライアン・ビロポート(カワサキ)   イーライ・トマック(ホンダ)
2014年   ケン・ロクスン(KTM)   ジェレミー・マーティン(ヤマハ)
2015年   ライアン・ダンジー (KTM)
2016年   ケン・ロクスン (スズキ)   クーパー・ウェブ (ヤマハ)
2017年   イーライ・トマック(カワサキ)   ザック・オズボーン(ハスクバーナ)
2018年   アーロン・プレッシンジャー(ヤマハ)
2019年   アダム・シアンサルーロ(カワサキ)
2020年   ザック・オズボーン(ハスクバーナ)   ディランズ・フィランディス(ヤマハ)
2021年   ディランズ・フィランディス(ヤマハ)   ジェット・ローレンス(ホンダ)
2022年   イーライ・トマック(ヤマハ)   ジェット・ローレンス(ホンダ)
2023年   ジェット・ローレンス(ホンダ)   ハンター・ローレンス(ホンダ)

脚注

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  1. ^ 1985 Motocross Season The VAULT 2023年10月6日閲覧
  2. ^ a b THE UNLIKELY STORY OF THE HAND-BUILT BIKE THAT MADE SUPERCROSS HISTORY Motocross Action Magazine 2023年10月8日閲覧
  3. ^ 4ストモトクロッサーの衝撃 ヤマハ発動機公式サイト 2023年9月20日閲覧
  4. ^ a b Women's Motocross National”. Women's Motocross Association. October 2, 2010閲覧。
  5. ^ AMA Motocross Champions. Books.Google.com. (February 1986). https://books.google.com/books?id=6vkDAAAAMBAJ&pg=PA38&dq=american+motorcyclist+february+1986&hl=en&ei=sZ2nTM7nI4P68Abi3sSgDA&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=1&ved=0CCwQ6AEwAA#v=onepage&q=american%20motorcyclist%20february%201986&f=false October 2, 2010閲覧。 
  6. ^ Every Champ There Ever Was”. Motocross Action. October 25, 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。October 2, 2010閲覧。

関連項目

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外部リンク

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