乾くるみ
1963年10月30日 -)は、日本の小説家・推理作家。静岡県静岡市出身。静岡大学理学部数学科卒業[1]。男性。別名義である市川 尚吾(いちかわ しょうご)[2]名義では評論活動を行っている[3]。
(いぬい くるみ、誕生 |
1963年10月30日(61歳) 日本・静岡県 |
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職業 | 小説家、評論家 |
最終学歴 | 静岡大学理学部数学科卒業 |
活動期間 | 1998年 - |
ジャンル | 推理小説 |
代表作 | 『イニシエーション・ラブ』(2004年) |
主な受賞歴 | メフィスト賞(1998年) |
デビュー作 | 『Jの神話』(1998年) |
ウィキポータル 文学 |
経歴・作風
編集小学生の頃からミステリーが好きで、中学の頃には横溝正史や江戸川乱歩賞受賞作を読み漁る[3]。高校生になるとジョン・ディクスン・カーなどの海外ミステリーにも興味を広げ、同時に自らも執筆活動を始める[3]。大学在学中には江戸川乱歩賞に初応募するが、一次選考にも残らなかった。大学卒業後はIT企業に就職し、ソフトの開発業に従事する[3]。
1998年に『Jの神話』で第4回メフィスト賞を受賞し、34歳で作家デビュー[3]。続く2作目の『匣の中』では、四大奇書と呼ばれる竹本健治の『匣の中の失楽』にオマージュをささげた。三作目の『塔の断章』では断章のタイトルどおり、各エピソードが時間軸ばらばらに並べられている実験的な作品だった。2004年に刊行した『イニシエーション・ラブ』はその年の「このミステリーがすごい」で第12位、「本格ミステリベスト10」で第6位と高く評価される。2005年に同作で第58回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補となる。2007年に同作が文庫化されると、雑誌やテレビ番組などでたびたび紹介されロングヒットとなり、2014年4月に100万部に達した[4]。2021年、「夫の余命」で第74回日本推理作家協会賞(短編部門)候補。
ミステリ・ランキング
編集週刊文春ミステリーベスト10
編集- 2010年 - 『スリープ』18位
このミステリーがすごい!
編集- 2005年 - 『イニシエーション・ラブ』12位
本格ミステリーベスト10
編集- 2004年 - 『林真紅郎と五つの謎』20位
- 2005年 - 『イニシエーション・ラブ』6位、『リピート』18位
- 2010年 - 『六つの手掛り』23位
- 2011年 - 『セカンド・ラブ』13位
- 2013年 - 『嫉妬事件』28位
作品リスト
編集単行本
編集タロウ・シリーズ
編集タロットをモチーフにしたシリーズ(英語でタロットは「タロウ」と発音する)。タロット・シリーズとも呼ばれる。「天童太郎」という人物が共通して登場するが、それぞれの作品は独立したものである。【】内はモチーフとされているカードである。
- 塔の断章(1999年2月 講談社ノベルス / 2003年2月 講談社文庫 / 2012年11月 講談社文庫【新装版】)【16番・塔】
- イニシエーション・ラブ(2004年3月 原書房 ミステリー・リーグ / 2007年4月 文春文庫 / 2015年3月 原書房 ミステリー・リーグ【特別限定版】)【6番・恋人】
- リピート(2004年10月 文藝春秋 / 2007年11月 文春文庫)【10番・運命の輪】
- セカンド・ラブ(2010年9月 文藝春秋 / 2012年5月 文春文庫)【2番・女教皇】
- 嫉妬事件(2011年11月 文春文庫)【3番・女帝】
- 収録作品:嫉妬事件 / 三つの質疑
林四兄弟シリーズ
編集林兄弟が探偵役をつとめるシリーズ。【】内はその作品の探偵役である。まだ作品になっていない長男の名前は林州太。
- 林真紅郎と五つの謎(2003年8月 光文社 カッパ・ノベルス / 2006年8月 光文社文庫)【四男・林真紅郎】
- 収録作品:いちばん奥の個室 / ひいらぎ駅の怪事件 / 陽炎のように / 過去から来た暗号 / 雪とボウガンのパズル
- 六つの手掛り(2009年4月 双葉社 / 2012年3月 双葉文庫)【三男・林茶父】
- 収録作品:六つの玉 / 五つのプレゼント / 四枚のカード / 三通の手紙 / 二枚舌の掛軸 / 一巻の終わり
- 蒼林堂古書店へようこそ(2010年5月 徳間文庫)【次男・林雅賀】
- 収録作品:秘密結社の集い / アルプスの朝暘 / 都市伝説の恐怖 / マネキンの足跡 / 通知表と教科書 / 臨光寺池の魔物 / 転居通知と名刺 / 鉄道模型の車庫 / 謎の冷蔵庫メモ / 亡き者を偲ぶ日 / 楽天的な愛猫家 / 塔に住む魔術師 / 転送メールの罠 / 解読された奇跡
カラット探偵事務所の事件簿
編集- カラット探偵事務所の事件簿1(2008年9月 PHP研究所 / 2009年9月 PHP NOVELS / 2011年3月 PHP文芸文庫)
- 収録作品:卵消失事件 / 三本の矢 / 兎の暗号 / 別荘写真事件 / 怪文書事件 / 三つの時計
- カラット探偵事務所の事件簿2(2012年7月 PHP文芸文庫)
- 収録作品:小麦色の誘惑 / 昇降機の密室 / 車は急に…… / 幻の深海生物 / 山師の風景画 / 一子相伝の味 / つきまとう男
- カラット探偵事務所の事件簿3(2020年11月 PHP文芸文庫)
- 収録作品:秘密は墓場まで / 遊園地に謎解きを / 告白のオスカー像 / 前妻が盗んだもの / 次女の名前 / 真紅のブラインド / 警告を受けたリーダー
その他
編集- Jの神話(1998年2月 講談社ノベルス / 2002年6月 講談社文庫 / 2008年11月 文春文庫)
- 匣の中(1998年8月 講談社ノベルス / 2006年5月 講談社文庫)
- マリオネット症候群(2001年10月 徳間デュアル文庫)
- クラリネット症候群(2008年4月 徳間文庫)
- 収録作品:マリオネット症候群 / クラリネット症候群
- スリープ(2010年6月 角川春樹事務所 / 2012年5月 ハルキ文庫)
- 北乃杜高校探偵部(2013年12月 講談社ノベルス)
- 収録作品:《せうえうか》の秘密 / 記録された殺人の予告 / 牛に願いを / 贈る言葉
- セブン(2014年5月 角川春樹事務所 / 2015年7月 ハルキ文庫)
- 収録作品:ラッキーセブン / 小諸-新鶴343キロの殺意 / TLP49 / 一男去って…… / 殺人テレパス七対子 / 木曜の女 / ユニーク・ゲーム
- 物件探偵(2017年2月 新潮社 / 2020年12月 新潮文庫nex)
- 収録作品:田町9分1DKの謎/ 小岩20分一棟売りアパートの謎 / 浅草橋5分ワンルームの謎 / 北千住3分1Kアパートの謎 / 表参道5分1Kの謎 / 池袋5分1DKの謎
- ジグソーパズル48(2019年3月 双葉社 / 2021年12月 双葉文庫)
- 収録作品:ラッキーセブン / GIVE ME FIVE / 三つの涙 / 女の子の第六感 / マルキュー / 偶然の十字路 / ハチの巣ダンス
- ハートフル・ラブ(2022年12月 文春文庫)
- 収録作品:夫の余命 / 同級生 / カフカ的 / なんて素敵な握手会 / 消費税狂騒曲 / 九百十七円は高すぎる / 数学科の女
アンソロジー
編集「」内が乾くるみの作品
- 愛憎発殺人行 鉄道ミステリー名作館(2004年5月 徳間文庫)「ひいらぎ駅の怪事件」
- 事件の痕跡 最新ベスト・ミステリー(2007年11月 カッパノベルス)「五つのプレゼント」
- 【改題】事件の痕跡 日本ベストミステリー選集(2012年4月 光文社文庫)
- 本格ミステリ08 二〇〇八年本格短編ベスト・セレクション(2008年6月 講談社ノベルス)「四枚のカード」
- 【改題】見えない殺人カード 本格短編ベスト・セレクション(2012年1月 講談社文庫)
- 本格ミステリ09 二〇〇九年本格短編ベスト・セレクション(2009年6月 講談社ノベルス)「二枚舌の掛軸」
- 【改題】空飛ぶモルグ街の研究 本格短編ベスト・セレクション(2013年1月 講談社文庫)
- ミステリ魂。校歌斉唱! メフィスト学園(2010年3月 講談社ノベルス)「《せうえうか》の秘密」
- 本格ミステリ'10 二〇一〇年本格短編ベスト・セレクション(2010年6月 講談社ノベルス)「《せうえうか》の秘密」
- 【改題】凍れる女神の秘密 本格短編ベスト・セレクション(2014年1月 講談社文庫)
- 名探偵に訊け 最新ベスト・ミステリー(2010年9月 カッパノベルス)「四枚のカード」
- 【改題】名探偵に訊け 日本ベストミステリー選集(2013年4月 光文社文庫)
- ベスト本格ミステリ2013(2013年6月 講談社ノベルス)「ラッキーセブン」
- 【改題】墓守刑事の昔語り 本格短編ベスト・セレクション(2017年1月 講談社文庫)
- 古書ミステリー倶楽部II(2014年5月 光文社文庫)「亡き者を偲ぶ日」
- 10分間の官能小説集3(2014年9月 講談社文庫)「木曜の女」
- ベスト本格ミステリ2015(2015年6月 講談社ノベルス)「三つの涙」
- 自薦 THE どんでん返し 2(2017年1月 双葉文庫)「同級生」
- 共犯関係(2017年10月 ハルキ文庫)「カフカ的」
- 平成ストライク(2019年4月 南雲堂 / 2020年10月 角川文庫)「消費税狂騒曲」
- 超短編! 大どんでん返し(2021年2月 小学館文庫)「なんて素敵な握手会」
- 神様の罠(2021年6月 文春文庫)「夫の余命」
- ザ・ベストミステリーズ2021(2021年6月 講談社)「夫の余命」
- 【改題】2021 ザ・ベストミステリーズ(2024年4月 講談社文庫)
- 彼女。 百合小説アンソロジー(2022年3月 実業之日本社 / 2024年2月 実業之日本社文庫)「九百十七円は高すぎる」
共著
編集- ニアミステリのすすめ 新世紀の多角的読書ナビゲーション(2008年6月 原書房) - 市川尚吾名義
- 本格ミステリ・フラッシュバック(2008年12月 東京創元社 キイ・ライブラリー) - 市川尚吾名義
- 人狼作家(2015年10月 原書房)
- 本格ミステリの本流 本格ミステリ大賞20年を読み解く(2020年12月 南雲堂)
単行本未収録作品
編集映像化作品
編集映画
編集- イニシエーション・ラブ(2015年5月23日公開、配給:東宝、監督:堤幸彦、主演:松田翔太)[5]
テレビドラマ
編集- リピート〜運命を変える10か月〜(2018年1月 - 3月、読売テレビ・日本テレビ系) - 原作『リピート』[6]
- リセット〜運命をさかのぼる1年〜(2020年3月 - 4月、韓国MBC) - 「リピート〜運命を変える10か月〜」の韓国リメイクドラマ[7]
脚注
編集- ^ “映画「イニシエーション・ラブ」5月23日(土)公開”. 静岡大学 (2015年5月21日). 2015年6月11日閲覧。
- ^ 『静中・静高同窓会会員名簿』平成15年度(125周年)版 338頁。
- ^ a b c d e 乾くるみ「話題のミステリー作家が放つ、奇想天外な7つの謎」『日経エンタテインメント!』2014年8月号、日経BP社、100頁。
- ^ “乾くるみさん:「イニシエーション・ラブ」100万部”. 毎日.jp. (2014年4月15日). オリジナルの2014年4月16日時点におけるアーカイブ。 2015年6月11日閲覧。
- ^ “松田翔太で「イニシエーション・ラブ」映画化!あっちゃんヒロイン役”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2014年10月15日). オリジナルの2014年10月15日時点におけるアーカイブ。 2017年12月5日閲覧。
- ^ “貫地谷しほり:本郷奏多、ゴリと新ドラマ主演 乾くるみの「リピート」原作のミステリー”. まんたんウェブ (株式会社MANTAN). (2017年12月5日) 2017年12月5日閲覧。
- ^ “リセット~運命をさかのぼる1年~ 公式サイト”. 2021年1月28日閲覧。