アキアミ

サクラエビ属アキアミ科のエビ
アミエビから転送)

アキアミ(秋醤蝦、Acetes japonicus)はサクラエビ科に分類されるエビの一種。日本を含む東南アジアの内湾域に生息する小型のエビで、食用や釣り餌などに利用される。

アキアミ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 軟甲綱 Malacostraca
: 十脚目 Decapoda
亜目 : 根鰓亜目 Dendrobranchiata
: サクラエビ科 Sergestidae
: アキアミ属 Acetes
: アキアミ A. japonicus
学名
Acetes japonicus
Kishinouye1905
英名
Akiami paste shrimp

標準和名に「アミ」と名がつくが、アミ目オキアミ目ではなく十脚目(エビ目)に属する。

特徴 編集

雄は11-24mm、雌は15-30mm[1]。体は前後に細長い。生きている時は体がほぼ透明だが、尾扇にい斑点が2つある。死んだ個体の体色は濁ったピンク色になる。第2触角は体長の約2倍もあり、根元から1/4くらいの所で折れ曲がる。5対ある歩脚のうち、第4・第5歩脚が退化し、残り3対はどれも鋏脚である。アミ類やオキアミ類の歩脚は鋏脚ではないので、この点で区別できる。

インド南部、ベトナム中国黄海日本の沿岸域に分布する。日本での分布域は秋田県以南で、富山湾三河湾瀬戸内海中海有明海などの内湾が多産地として知られる。

プランクトンとして内湾河口付近を大群で遊泳し、他のプランクトンやデトリタスを食べる。天敵魚類鳥類などである。生息地での個体数は多く、食物連鎖で重要な位置を占める。

生活史 編集

日本での産卵期は5月から10月までで、メスは交尾後に680-6800個の受精卵を海中に放出する。オスは交尾後に、メスは産卵後に死んでしまう。受精卵は直径0.25mmほどで緑色、数時間のうちに孵化し、ノープリウス3期、前ゾエア(プロトゾエア : Protozoea)3期、ゾエア1期、ミシスを経る。

日本の生息地での研究によると、アキアミには9-10ヶ月ほど生存して越冬をする「越冬世代」と、夏の2-3ヶ月だけで一生を終える「夏世代」があり、1年のうちで2-3回世代交代を行うことがわかっている。越冬世代は5-7月に産卵、生まれた夏世代が7-10月に産卵して死ぬ。また、早いうちに誕生した夏世代からもう一代夏世代が生まれ、秋に越冬世代を産卵する場合もある。越冬世代は水温が下がると成熟せずに休眠し、春に成長して産卵する。

利用 編集

 
アミの塩辛
 
アキアミの瓶詰め

1980年代頃から漁獲量は増え始め、2000年代には全世界で年間60万t程度が漁獲されている。1980-90年代には養殖も試みられたが、現在では行われていない[1]

曳き網などで漁獲される。漁の盛期は8-10月頃で、和名通りに多く漁獲される。

塩辛にされることが多く、産地周辺で流通する。他にも佃煮干物掻き揚げなどにも利用され、郷土料理として扱われることもある。朝鮮半島ではキムチの風味付けの一つとして、アキアミの塩辛が重要な材料となっている。かつては岡山県児島湾が一大産地であり、「備前の漬アミ」として名高かった。西行法師の「山家集」にもうたわれ、東京や関西へもさかんに移出された[2]が、児島湾の干拓によって漁場が消滅したことで衰退した。

食用以外に、釣り餌養殖魚の飼料にも用いられる。

日本では商品名にはアミエビという商品名が付くことがある。一般的には、冷凍物、塩漬け物が出回っており、冷凍物は日本水産等が生産し、塩漬け物はキムチ料理に使用する物を流用するため、韓国からの輸入物が多い。

脚注 編集

  1. ^ a b Species Fact Sheets Acetes japonicus in FAO”. 2015年1月31日閲覧。
  2. ^ 本山荻舟『飲食事典』平凡社 p. 14 昭和33年12月25日発行

参考文献 編集