イヌビワ
イヌビワ(犬枇杷、学名: Ficus erecta または Ficus erecta var. erecta)は、クワ科イチジク属の落葉低木または小高木。別名イタビ、姫枇杷。
イヌビワ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Ficus erecta Thunb. var. erecta (1786)[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
イヌビワ、イタビ[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
変種・品種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
|
果実(正確にはイチジク状果という偽果の1種)がビワ[3]に似ていて食べられるが、ビワに比べ不味であることから「イヌビワ」の名がある。イチジク渡来前の時代の日本では、本種は「イチジク」とよばれていた[4]。
分布 編集
日本の本州(関東以西)・四国・九州・沖縄と、韓国の済州島に分布する[4]。海岸や沿海の山地に自生する[4]。
なお、イチジク属のものには熱帯性のものが多く、本種は落葉性を獲得したため、暖温帯まで進出できたものと考えられる。本種はイチジク属の木本としては本土で最も普通に見られるため、南西諸島などに分布する同属のものには「○○イヌビワ」という本種に比した名を持つものが多い。
形態・生態 編集
この節の加筆が望まれています。 |
落葉広葉樹の低木で[4]、高さは5メートル (m) くらいまでになる。樹皮を傷つけると、イチジクと同様に乳白色の樹液が出る[4]。
葉は狭い倒卵形から長楕円形、基部は少し心形か丸まる[4]。葉質は薄くて草質、表面は滑らかかあるいは短い毛が立っていてざらつく。変異が多く、海岸沿いでは厚い葉のものも見ることがある。ごく幅の狭い葉をつけるものをホソバイヌビワ (var. sieboldii (Miq.) King)、葉面に毛の多いものをケイヌビワ (var. beecheyana (Hook. et Arn.) King) というが、中間的なものもある。
花期は晩春(4 - 5月ごろ)で、雌雄異株[4]。葉の付け根についた花嚢(かのう)は、秋に赤色から黒紫色へと変化して果嚢(かのう)となる[4]。
果嚢は9月末 - 10月ごろに完熟し、直径10 - 13ミリメートル (mm) ぐらいで、白い粉を吹いたような濃紫青色となる。果嚢は甘く、食用になる[4]。
蜂との共生 編集
イヌビワの花序には、他の多くのイチジク属植物と同様に、イチジクコバチ科のハチ(イヌビワコバチ)が寄生する。雄花序の奥側には雌花に似た「虫えい花」(花柱が短く、不妊)があり、これにハチが産卵する。幼虫は虫えい花の子房が成熟して果実状になるとそれを食べ、成虫になる。初夏になると雌成虫は外に出るが、雄成虫は花序の中で雌成虫と交尾するだけで一生を終える。雌成虫は雄花序の出口付近にある雄花から花粉を受け、この頃(初夏)に開花する雌花序に入った際には授粉をするが、ここでは子孫を残せず、雄花序に入ったものだけが産卵し、翌年春にこれが幼虫になる。このように、イヌビワの授粉には寄生蜂が必要であり、イヌビワと寄生蜂は共生しているということができる。
脚注 編集
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ficus erecta Thunb. var. erecta イヌビワ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年12月10日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ficus erecta Thunb. var. erecta”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2014年8月7日閲覧。
- ^ なお、ビワはバラ科で、本種とは近縁関係にない。
- ^ a b c d e f g h i 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 236.
- ^ 安田守『イモムシハンドブック』高橋真弓・中島秀雄監修、文一総合出版、2010年、35頁。ISBN 978-4-8299-1079-5。
参考文献 編集
- 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、236頁。ISBN 4-522-21557-6。
- 茂木透写真『樹に咲く花 離弁花1』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、338-339頁。ISBN 4-635-07003-4。
- 林将之『樹木の葉 : 実物スキャンで見分ける1100種類 : 画像検索』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2014年、323頁。ISBN 978-4-635-07032-4。
関連項目 編集
外部リンク 編集
- "Ficus erecta Thunb". Germplasm Resources Information Network (GRIN). Agricultural Research Service (ARS), United States Department of Agriculture (USDA). 2014年8月7日閲覧。 (英語)
- "Ficus erecta". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語). (英語)
- "Ficus erecta" - Encyclopedia of Life (英語)
- 波田善夫. “イヌビワ”. 植物雑学事典. 岡山理科大学生物地球学部. 2014年8月7日閲覧。
- 福原達人. “イヌビワ(クワ科イチジク属)”. 植物形態学. 福岡教育大学教育学部. 2014年8月7日閲覧。