“テリー”アリストテレス・サバラスAristotelis "Telly" Savalas, 1922年1月21日 - 1994年1月22日)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ロングアイランド出身の俳優。表記はサヴァラスとも。

テリー・サバラス
Telly Savalas
Telly Savalas
本名 Aristotelis Savalas
生年月日 (1922-01-21) 1922年1月21日
没年月日 (1994-01-22) 1994年1月22日(72歳没)
出生地 ニューヨーク州ロングアイランド
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
配偶者 Katherine Nicolaides (1948-1957)
Marilyn Gardner (1960-1974)
Julie Hovland (1984-1994)
著名な家族 George Savalas(実弟 『刑事コジャック』で共演)
主な作品
映画
終身犯
バルジ大作戦
女王陛下の007
戦略大作戦
テレビドラマ
刑事コジャック
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生涯 編集

人生とキャリア

両親共にギリシャ系で、父はギリシャ料理レストランのオーナー[1]。5人兄弟の2番目[2]

コロンビア大学心理学を専攻し、その後劇団を経て1959年に舞台デビュー。同じ年、ジョン・フランケンハイマー監督の『明日なき十代』で映画にもデビュー。続くフランケンハイマー監督の『終身犯』ではアカデミー助演男優賞候補となった。

禿頭がトレードマークで、日本では特にテレビドラマ刑事コジャック』(1973年 - 1990年)の主演で有名。

ダンディで颯爽としたヒーローを演じ、お茶の間で親しまれた。70年代後半になるとその個性を逆手にとって強烈な悪役や不気味なキャラクターを演じた。1994年『バックファイヤー!』でも健在ぶりを披露し元気な姿を見せていたが、すでに前立腺癌に冒されていた。

1994年、誕生日の翌日の1月22日、で死亡。72歳没。

親友は俳優のジョン・アニストン英語版で、彼の娘でテレビドラマ『フレンズ』に出演している女優ジェニファー・アニストン(Jennifer Aniston)の名付け親でもある。

ヨーロッパでの活動

サバラスも彼と同時代の俳優たちと同様にマカロニ・ウエスタン等に代表されるイタリア製の疑似米国映画に出演した。

ハリウッド映画は1950年代から1960年代に掛けて盛んに欧州ロケを行っていた。サバラスもフランス・ロケの『プレイガール陥落す』(1963年)や旧ユーゴスラビアで撮影された大作史劇『ジンギス・カン』(1965年)、スペインで撮影された戦争大作『バルジ大作戦』(1965年)にも脇役出演し、欧州映画界との人脈を築いた。特に『バルジ大作戦』に出演した俳優の多くがマカロニ・ウエスタンにも参加した。

1960年代の末からはスペインでロケされたハリウッド西部劇『地獄の荒野(テレビ放映別題:フォージリバーの大虐殺)』(1969年/未/テレビ放映/当初はイタリア映画として紹介された)を手始めに、英国とスペインの合作『荒野のライフル』(1971年/未/テレビ放映/米国映画として紹介されることもある)にも悪役として出演した。尚、同時進行でハリウッド映画の個性派俳優として売れっ子でもあり、テレビ・シリーズ等にもゲスト出演していた。

1972年にはトニーノ・ヴァレリイ監督のマカロニ・ウエスタン『ダーティ・セブン/禿鷹要塞爆破作戦(要塞攻防戦/いのち知らずのならず者)』(未/テレビ放映/ビデオ)でジェームズ・コバーンに対する仇役として共演し、セルジオ・ソリーマ監督の『狼の挽歌』(1970年)とアルベルト・デ・マルティーノ監督のマフィア物『シシリアン・マフィア』(1972年)にも仇敵として出演した。他にも、セルジオ・コルブッチ監督のマカロニ・ウエスタン『J&S/さすらいの逃亡者』(1973年)にも執念深い保安官役で出演しており、トーマス・ミリアンスーザン・ジョージに翻弄される役どころだった。

英国とスペイン合作の20世紀初頭のシベリア鉄道を舞台にしたホラー映画『ゾンビ特急「地獄」行き』(1971年/未/ビデオ)ではクリストファー・リーピーター・カッシングと共演し、監督のエウヘニオ・マルティンとは翌年のメキシコ革命物『パンチョ・ヴィラ』(1972年/未ソフト化)でも組んでおり、サバラスは主演のみならず、エンディング・テーマも歌っている。因みに、上記2作品の製作チームが手掛けた『地獄のアパッチ(テレビ放映別題:情報将校アパッチ)』(1971年/未/テレビ放映)では主演のリー・ヴァン・クリーフがエンディング・テーマを歌っている。尚、イタリアやスペインでのサバラスは凄味のある悪役としての活動が目立った。

その後、マリオ・バーヴァ監督のイタリア映画『新エクソシスト/死肉のダンス(テレビ放映題:エクソシストの館)』(1973年/未/テレビ放映/ビデオ)やフランコ・ネロと共演した『マーク・レスター/小さな冒険者』(1974年)、スペインのジェス・フランコ監督のフランスのホラー映画『フェイスレス』(1987年)等にも出演した。また、『ジンギス・カン』や『戦略大作戦』(1970年)で訪れた旧ユーゴスラビアへは『特攻大作戦』(1967年)の外伝的な1980年代に製作されたテレビ映画の撮影で再訪している。

ヨーロッパの他には、南アフリカ共和国では『ダイヤモンドの犬たち』(1975年)に敵役で登場したが、クレジットの序列は主演のピーター・フォンダを差し置いてのトップだった。また、片岡鶴太郎ファイティング原田を演じた豪州のテレビ映画『野性のファイター』(1990年/テレビ映画)にも出演した。

エピソード 編集

サバラスは若いころに不思議な体験をしていて、トークショーなどでよく話していた。1957年2月27日にロング・アイランドの田舎道を自動車で走っていた彼は、午前3時にガス欠を起こしてしまった。近くの食堂でガソリンスタンドの場所を聞き、歩き始めるとヘッドライトを消した黒いキャデラックが停まり、若い男が妙な甲高い声で話かけてきた。彼はスタンドまでサバラスを乗せてくれたうえ、小銭まで貸してくれた。どうしてもこれを返したいというサバラスの頼みに、男は紙切れに「ハリー・アガニス」という名と住所、電話番号を書いてくれた。

後日サバラスが電話をかけると、彼の妻が出て、困惑した様子で「ハリーは3年前に高校の同窓会に向かう途中事故でキャデラックが炎上し死んだ」と告げ、すすり泣いた。驚いたサバラスがアガニス家を訪ねると、妻のジェーンは紙切れの筆跡は夫に間違いなく、服装(黒いタキシードに白い絹シャツ、黒い蝶ネクタイ)も埋葬時のものだと語った。ハリーは咽頭癌の手術で声が甲高くなっていたという。

その後、サバラスは都合3回アガニスを見たといい、2回目はゴルフ場に白い背広で現れたあと、消えたと語っている。サバラスは「私にもさっぱりわからない。この事件は一生忘れられない。いつかこの謎が解ける時が来るのだろうか」と述懐している[3]

青池保子の漫画作品『エロイカより愛をこめて』の登場人物「子熊のミーシャ」は、サバラスをモデルにしている[4]

歌手としても活動しており、1974年にはブレッドの「イフ」のカヴァー(歌唱は無く、スポークン・ワードストリングス、コーラスで構成されたヴァージョン)を全英チャートNo1に送り込んだ。

主な出演作品 編集

公開年 邦題
原題
役名 備考 日本語吹替
1961年 機関銃を捨てろ
Mag Dog Coll
ダロ
明日なき十代
The Young Savages
ガンダーソン
1962年 恐怖の岬
Cape Fair
チャーリー・シーバース 小林清志(NETテレビ版)
菅生隆之(ソフト版)
終身犯
Birdman of Alcatraz
フェト・ゴメス
1963年 現金お断り
The Man from the Dinner's Club
Foots Pulardos
プレイガール陥落す
Love Is a Ball
クリスチャン・ガンプ
ひとりぼっちのギャング
Johnny Cool
ヴィンス
1965年 偉大な生涯の物語
The Greatest Story Ever Told
ピラト 大平透(NETテレビ版)
ジンギス・カン
Genghis Khan
シャン
バルジ大作戦
Battle of the Bulge
ガフィー軍曹 大平透(NETテレビ版/ソフト版)
いのちの紐
The Slender Thread
ジョー・コバーン
1966年 ボー・ジェスト
Beau Geste
Sgt. Maj. Dagineau 若山弦蔵(TBS版)
1967年 特攻大作戦
The Dirty Dozen
アーチャー・J・マゴット 水鳥鉄夫(東京12チャンネル版)
FBIの敵No.1
Cosa Nostra an Arch Enemy of the FBI
エド・クレメンテ
1968年 追いつめて殺せ!
Sol Madrid
エミル
インディアン狩り
The Scalphunters
ジム
1969年 女王陛下の007
On Her Majesty's Secret Service
エルンスト・スタウロ・ブロフェルド 森山周一郎(TBS版/キングレコード版)
天地麦人(ソフト版)
世界殺人公社
The Assassination Bureau
ボストウィック 森山周一郎
マッケンナの黄金
Mackenna's Gold
ティッブス 大平透(テレビ朝日版)
谷昌樹(ソフト版)
1970年 戦略大作戦
Kerry's Heroes
ビッグ・ジョー 大平透(フジテレビ版)
狼の挽歌
Citta Violenta
ウェーバー 大平透(テレビ朝日版)
森山周一郎(TBS版)
1971年 課外教授
Pretty Maids All in a Row
Sam Surcher 森山周一郎(東京12チャンネル版)
荒野のライフル
A Town Called Basterd
ドン・カルロス
皆殺しL.A.コネクション
Cray Pigeon
レッドフォード
1972年 シシリアン・マフィア
I Fammliari Delle Vittime Non Saranno Avvertiti
ドン・ヴィンチェンツォ
J&S/さすらいの逃亡者
La Banda J&S: Cronaca Criminale Del Far-West
フランシスカス保安官 森山周一郎(東京12チャンネル版)
死の透視/爆弾魔を追う超能力教授
Visions...
フィル・キーガン テレビ映画
ゾンビ特急地獄行き
Horror Express
カザン 森山周一郎(ソフト版)
ダーティ・セブン
Una Ragion per Vivera e Una per Morire
ワード
1973年 マーク・レスター/可愛い冒険者
Senza ragione
メンフィス
1973年 - 1978年 刑事コジャック
Kojak
セオドア・コジャック警部補 テレビシリーズ、118エピソードに出演  森山周一郎(TBS放映)
1974年 新エクソシスト 死肉のダンス
Lisa e il diavolo
レオナルド
1975年 怪盗軍団
Inside Out
ハリー・モーガン
ダイヤモンドの犬たち
Killer Force
ウェブ 大平透(テレビ朝日版)
1977年 テリー・サバラスの犯罪病棟
Beyond Reason
ニコラス博士 監督・脚本・出演
カプリコン・1
Capricorn One
アルバイン 大平透(テレビ朝日版/ソフト版)
1979年 オフサイド7
Escape to Athena
ゼノ 森山周一郎(TBS版)
ポセイドン・アドベンチャー2
Beyond the Poseidon Adventure
ステファン・スベボ博士 森山周一郎(日本テレビ版/TBS版)
マペットの夢みるハリウッド
The Muppet Movie
本人
大西洋を乗っ取れ!
The French Atlantic Affair
Father Craig Dunleavy テレビ・ミニシリーズ
1980年 怒りのボーダー
The Border
フランク・クーパー
脱獄アルカトラズ
Alcatraz: The Whole Shocking Story
Cretzer テレビ映画
1982年 テリー・サバラスのフェイク・アウト
Fake Out
サーストン
1984年 キャノンボール2
Cannonball Run II
ハイミー・カプラン 森山周一郎(テレビ朝日版)
ボスの罠
The Cartier Affair
フィル・ドレクスラー テレビ映画
1985年 新・刑事コジャック/ベラリス・ファイル
Kojak: The Belarus File
テオ・コジャック テレビ映画 森山周一郎(TBS放映)
不思議の国のアリス
Alice in Wonderland
チェシャ猫 テレビ映画 大平透
1987年 新・刑事コジャック/虚栄の絆
Kojak: The Price of Justice
テオ・コジャック テレビ映画  森山周一郎(TBS放映)
殺人軍団ダーティ・ミッション/特攻大作戦3
Dirty Dozen: The Deadly Mission
ライト テレビ映画
クライム・シティ
The Equalizer
ジョセフ・ヘイデン牧師 テレビシリーズ
1988年 殺人軍団フェイタル・ミッション/特攻大作戦4
The Dirty Dozen: The Fatal Mission
ライト テレビ映画
1989年 ハリウッド探偵事務所
The Hollywood Detective
ハリー・ベル テレビ映画
1991年 野性のファイター/リングに賭けた男
Rose Against the Odds
ジョージ テレビ映画
1992年 - 1993年 ザ・コミッシュ
The Commish
トミー テレビシリーズ
1995年 バックファイヤー!
Back Fire!
大物 宝亀克寿

日本語吹き替え 編集

主に担当していたのは、以下の二人である[5]

森山周一郎
刑事コジャック』で初担当。同作は『ニューズウィーク』が絶賛するなど当たり役となった。以降、他の作品でも吹き替えを担当するようになり、サヴァラスの専属(フィックス)として定着した[6]
サヴァラスが来日した際には本人からも公認されており、その後も交流が生まれ、「テリー」「シュー」と呼び合う仲であった[7]。その際サヴァラスからは「シュー、俺を日本で有名にしてくれてありがとう」との賛辞をもらったという[6]
また、1977年放送の人形劇『飛べ!孫悟空』に「悪党ゲパルツ団長」の声でゲスト出演した際、通常本人の顔をイメージして製作されるゲストの人形は、森山でなくサヴァラスをイメージした人形が作られた。
大平透
バルジ大作戦』など、『刑事コジャック』以前の初期の作品から多く担当しており、サヴァラスの当初のフィックスとして定着していた。
当初は『刑事コジャック』のコジャック役も担当する予定であり、実際にオファーがあったものの、当時の演出担当ディレクターが「吹き替えのためには、声優もオリジナル俳優と同じ格好で生活してリアリティを出すべきだ」と、大平に対して丸坊主になるよう要求したが、当時田辺製薬の生CMに出演していた都合から不可能だったため降板[8]。その後は、森山と分け合う形での担当となっていた。

このほかにも、若山弦蔵小林清志水鳥鉄夫麦人なども声を当てている。

脚注 編集

  1. ^ . http://nl.newsbank.com/nl-search/we/Archives p_product=LA&p_theme=la&p_action=search&p_maxdocs=200&p_topdoc=1&p_text_direct-0=0EF519CB23A32696&p_field_direct-0=document_id&p_perpage=10&p_sort=YMD_date:D&s_trackval=GooglePM 
  2. ^ Richardson, Lisa (1994年1月23日). “`Kojak' Star Telly Savalas Dies at 70”. Pqasb.pqarchiver.com. http://pqasb.pqarchiver.com/latimes/access/59293447.html?dids=59293447:59293447&FMT=ABS&FMTS=ABS:FT&date=Jan+23%2C+1994&author=LISA+RICHARDSON&pub=Los+Angeles+Times+(pre-1997+Fulltext)&desc=%60Kojak'+Star+Telly+Savalas+Dies+at+70&pqatl=google 2009年12月10日閲覧。 
  3. ^ Nigel Blundell著「The World's Greatrst Mysteries」(世界不思議物語)、Tom Slemen著「Strange But True - Mysterious and Bizarre People」
  4. ^ 『エロイカより愛を込めての創りかた』(マガジンハウス、青池保子著)
  5. ^ 森山周一郎さんと瑳川哲朗さん”. TORI MIKI (2021年6月1日). 2021年6月1日閲覧。
  6. ^ a b Voice -声優-”. 森山 周一郎(声優・俳優・ナレーション). 2022年1月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月10日閲覧。
  7. ^ テリーサバラスとの交流”. 森山周一郎オフィシャルブログ - Ameba Blog. 2020年3月4日閲覧。
  8. ^ 【追悼】大平透さん伝説エピソード”. シンプソンズ・ファンクラブ・ブログ (2016年4月17日). 2021年7月11日閲覧。

外部リンク 編集