トラフグ
トラフグ (虎河豚、英: Japanese pufferfish、学名: Takifugu rubripes)は、フグ目フグ科に属する魚類。
トラフグ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() トラフグ
Takifugu rubripes | ||||||||||||||||||||||||||||||
保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||||||||
NEAR THREATENED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() | ||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Takifugu rubripes (Temminck & Schlegel, 1850) | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
トラフグ (虎河豚) | ||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Japanese pufferfish Torafugu Tiger puffer |
分布・生息域編集
分布は、太平洋北西部、日本海西部、黄海、東シナ海など。北海道室蘭付近が北限。湾内などに多く、成長するまでは河口の汽水域にもいる。
形態・生態編集
体長 70 cm 程度になる。産卵は春。小魚、甲殻類などを食べる。
人との関わり編集
食用として取引されるフグの中では最も高級とされる。他のフグ類同様に神経毒であるテトロドトキシンを含むため、業務として調理するには免許が必要である。特に肝臓と卵巣は毒性が強い。筋肉・皮膚・精巣は無毒。
生まれたての幼魚は無毒だが トラフグが好んで食べる毒貝ハナムシロガイを好んで食べると体に毒を持つようになる。
石川県では1年以上も卵巣を塩漬けにしたうえ、さらに糠に漬け込んで毒を抜いた珍味「河豚の卵巣の糠漬け」が食用として供されている。ただし、解毒に至るプロセスは依然解明されていない。
本種は養殖もされる。近年では、毒をもたないトラフグの養殖がされるようになり、今後の動向が注目される(海のフォアグラも参照)ほか、2008年には栃木県那珂川町の株式会社夢創造が、2011年には長野県飯田市の飯田市南信濃振興公社(道の駅遠山郷を参照)が、ともに温泉水を用いた毒を持たないトラフグの養殖を成功させており「温泉トラフグ」の名称で地域活性化を行っている(有毒部位の販売はできない)。
歯が鋭く咬む力が強いため、生きているフグの口に指を入れるのは非常に危険である。また、漁船の生け簀の中でフグ同士が喧嘩により傷つくのを防ぐため、捕獲したらすぐにプライヤーなどで歯を折る“歯切り”が行われる。
ゲノムプロジェクト編集
トラフグのゲノムにはジャンクDNA配列が非常に少なく、ゲノムサイズは 3.5-4 億塩基対と脊椎動物では最も小さい(ヒトゲノムは30億塩基対)が、遺伝子の数はヒトとほぼ同じであると考えられる。つまり遺伝子密度が高い生物といえる。これはゲノミクスなどでの遺伝子解析を容易にする。線虫をモデル生物として有名にしたシドニー・ブレナーは、このことに注目し、フグゲノムプロジェクトを立ち上げた。これによってトラフグは生物学において一躍有名になった。
トラフグの自然免疫システム編集
ゲノムプロジェクトから明らかになったトラフグの免疫システムのうち、自然免疫系で重要な働きをするTLR遺伝子が明らかとなった。ヒトは10種類のTLR分子で体内に侵入する微生物を発見するが、トラフグにもヒトとほとんど同じ種類のTLR分子を持っており、ヒトと同様のシステムでトラフグ体内に侵入する微生物を認識すると考えられている。
しかし、トラフグにはヒトには存在しないTLR分子として、TLR21やTLR22分子を持っており、ヒトよりも、より鋭敏に体内に侵入した微生物を認識できると予想されている。
脚注編集
- ^ Collette, B., Fox, W., Juan Jorda, M., Nelson, R., Pollard, D., Suzuki, N. & Teo, S. (2014). "Thunnus orientalis". IUCN Red List of Threatened Species. Version 3.1. International Union for Conservation of Nature. 2015年3月6日閲覧。
関連項目編集
外部リンク編集
- 天然トラフグ肝臓の毒性分布 食品衛生学雑誌 Vol.54 (2013) No.4 p.277-281