ハミルトン形式において、力学系の運動状態を指定する力学変数は一般化座標 と一般化運動量 である。力学系の性質は一般化座標と一般化運動量、および時間を変数とするハミルトン関数(ハミルトニアン) によって記述される。
ハミルトン形式において、作用汎関数は時間積分
として与えられる。力学変数 p,q は束縛条件の下で可能なあらゆる運動状態を取り得るが、最小作用の原理(変分原理、停留条件)により実際に起こる運動が導かれる。
作用の停留条件から導かれる運動方程式は
である。この運動方程式は正準方程式、或いはハミルトン方程式と呼ばれる。
ハミルトン形式において物理量は一般化座標、一般化運動量、および時間の関数
として書かれる。物理量の時間微分は
となる。特にハミルトニアンの時間微分は
である。
ハミルトニアンはラグランジアンから
で定義される。
ラグランジアンが
の形で書かれている場合のハミルトニアンは
となり、運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和、すなわち、系の全エネルギーであることが分かる。
ハミルトニアンの時間微分は
であり、ハミルトニアンが陽に時間に依存しないときには全系のエネルギーが保存する。
なお、ハミルトニアンは一般化座標、一般化運動量、および時間の関数として書かれている量であり、引数が違えば大きさが同じであってもハミルトニアンではない。
ハミルトニアンの定義式内での一般化速度は、一般化運動量の定義式を逆に解いて一般化座標、一般化運動量、および時間の関数 として書かれている。
一般化座標 q、一般化運動量 p から、変換を行って
をしたとき、P,Q と時間の関数として書かれた新たなハミルトニアン H'(P,Q,t) を用いて、
となるとき、この変換を正準変換と言う。
一般化座標と一般化運動量は正準変換によって相互に混ざり合い、両者の区別は曖昧なものとなる。
一般化座標と一般化運動量を総称して正準共役量と呼ぶ。
正準共役量 p,q によって張られる空間は位相空間と呼ばれ、正準変換は二つの位相空間を対応付ける変換である。
ポアソン括弧(ポアソンの括弧式)とは、正準変数と時間の関数として書かれた物理量 A, Bに対して、
で定義される物理量である。
物理量の時間微分はハミルトニアンとのポアソン括弧を用いて
となる。物理量が陽に時間に依存しないときは
となる。
量子力学ではポアソン括弧は正準量子化の手続きによって、正準交換関係と対応付けられる。
ラグランジアン の全微分は
である。
一般化運動量は
で定義され、ラグランジュの運動方程式から
である。これを用いて先ほどの全微分を書き換えれば、
となる。全微分を移項して
となる。ハミルトニアン
を定義すれば、
となり、
を得る。