バンバラマメ[2]Vigna subterranea)はササゲ属の植物の1種。西アフリカ原産で、ラッカセイのように地中に豆をつける。

バンバラマメ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
: ササゲ属 Vigna
亜属 : ササゲ亜属 Vigna
: バンバラマメ V. subterranea
学名
Vigna subterranea (L.) Verdc.
シノニム
  • Arachis africana Burm. f.
  • Glycine subterranea L.
  • Voandzeia subterranea (L.) Thouars
  • Voandzeia subterranea (L.) DC.[1]

名称 編集

英名にはBambara groundnut、Bambara-bean、Congo goober、ground-bean、hog-peanut[3]、earth pea[4]、jugo beansなどがある。

バンバラ語では 'tiganingɛlɛntiganinkurun と呼ばれ、"少し固い落花生"を意味する("落花生"は tiga)。マダガスカル語ではvoanjobory と呼ばれ、これは"丸い落花生"を意味する。スワヒリ語では njugumaweザンビアでは ntoyo (ベンバ語)、katoyo (カオンデ語)、mbwiila (トンガ語) 、シャンガーン人には tindluwaと呼ばれる。ハウサ語では "Gurjiya" や "Kwaruru"、ナイジェリア北部高地のアンクェー語(Ankwei; 別名: Goemai)では"Kwam"、カヌリ語では"Ngangala"、ショナ語では"Nyimo"、ンデベレ語では"indlubu"、イボ語では"Okpa"、ヨルバ語では"Epa-kuta"、ガ語では"Akwei"、ロジ語では"Lituu"と呼ばれる。

マレー語では"kacang poi"と呼ばれるが、これはマレー半島南部で食される料理"kacang pool"とは異なる。インドネシアでは、ボゴールで栽培されているため、"kacang bogor"(ボゴールの落花生)と呼ばれる。

生態 編集

理想的な環境下で、生活環の完了には120-150日かかる。植えてから40–60日で閉鎖花をつけ、自家受粉する。受粉から30日で莢が成熟、その後55日で種子も成熟する[5]。30日ごとに新たな花をつける。

農業 編集

 
収穫される豆
 
栽培される姿
 
種子 - MHNT

西アフリカ原産[6]サブサハラアフリカの熱帯域で栽培される[5]

アフリカの半砂漠地帯においては、3番目に重要な豆類である[7]。高温に耐性があり、他の豆類が生育しないような土壌でも栽培可能である[8]。僅かな土のみでも生育し[9]、栄養価も高く、65%が炭水化物、18%がタンパク質である[10]。これらの理由から、降水量が乏しい、または不安定な地域でも、収穫が完全に失敗するリスクを抑えることができる。タンパク質が豊富であることは、動物性蛋白を得られないアフリカの貧しい人々にとって重要であることも意味している[9]。このような利点にもかかわらず、ベニンなどの国では未だマイナーな作物(Neglected and underutilized crop)の地位にある[11]

種子はタンパク質が豊富で、食用や飲料に用いられるだけでなく、消化器系の薬として利用されることもある。窒素固定を行うため、緑肥としても利用できる[12]。西アフリカでは、塩を振って炒ることで軽食として食べたり、他の豆同様に茹でて食べたりする。

栽培 編集

水分を保たない砂質の土壌が適する。土の深さは50-100 cmで、肥沃でない方がよい。pHは5-6.5の範囲が適し、4.3以下や7以上では生育に支障がある[12]

最も栽培に適する緯度は20-30°で、乾季のある熱帯から亜熱帯(サバナ気候から地中海性気候)がよい。温度は19-30℃で、16℃以下、38℃以上での栽培は難しい[12]。旱魃には強い耐性があり[5]、必要な年間降水量は最低で300 mm、栽培に適するのは750-1400 mmで、3000 mmを超えると栽培は難しい[12]

栽植密度は6-29本/m2と幅があり[13]、例えば、コートジボワールのサバンナでは単位収量が最も多いが、ここでは25本/m2の密度で植えられる[14]

単作も行われるが、モロコシ・キビ・トウモロコシ・ラッカセイ・ヤム・キャッサバなどの間作作物[12]としての利用が主であるため肥料が与えられることは少ない。収穫時には葉:種子が75:81の割合で畑から除去されているが、これを元素に換算すると、925 kgの葉と1000 kgの種子を収穫することで55.7 kgの窒素、26.2 kgのカリウム、25.1 kgの炭素、7.8 kgのリン、6.6 kgのマグネシウムを畑から除去していることになる[15]。窒素は根粒細菌を通じて大気中から自給できる豆類であるため肥料を与える場合にはリンが最も重要となり、ナイジェリアのヨラでの研究では五酸化二リンの形で60 kg/ha程度が最適だった[16]

生産 編集

全世界での生産量は1972年の29800トン[17]から2005年には79155トン[17]に増加しているが、栽培作物としての研究は未だ行われておらず、単位収量は伸びていない[18]

生産量(2013年)(Source FAOSTAT)[17] 作付面積 (Ha) 単位収量 (kg/ha) 生産量 (t)
  マリ 120,000 9,498 113,981
  ニジェール 68,000 4,412 30,000
  ブルキナファソ 55,000 8,909 49,000
  カメルーン 43,392 8,444 36,639
  コンゴ民主共和国 4,828 750 14,000
全世界 315,392 7,724 243,620

病原体 編集

病害はあまり重要な問題とはみなされていないが、次のような病原体が報告されている[15]

他の病害虫としては次のようなものがある[15]

脚注 編集

  1. ^ The Plant List: A Working List of All Plant Species”. 2015年4月12日閲覧。
  2. ^ 熱帯植物研究会『熱帯植物要覧』第3版、養賢堂、1991年、205頁。ISBN 4-924395-03-X
  3. ^ USDA GRIN Taxonomy”. 2015年4月12日閲覧。
  4. ^ Definition And Classification Of Commodities (Draft): 4. Pulses And Derived Products”. Food and Agriculture Organization (1994年). 2013年6月21日閲覧。
  5. ^ a b c Nichterlein, Karin. “Vigna subterranea”. Ecoport. 2011年3月16日閲覧。
  6. ^ Hepper, FN (1963). “Plants of the 1957-58 West Africa Expedition II: The bambara groundnut (Voandzeia subterranea) and Kersting’s groundnut (Kerstingiella geocarpa) wild in West Africa”. Kew Bulletin 16 (3): 395–407. JSTOR 4114681. 
  7. ^ Ocran, V. K, (1998). Seed Management Manual for Ghana. Accra Ghana: MOFA 
  8. ^ Yamaguchi, M (1983). World Vegetables. New York: Van Nostrand Reinhold 
  9. ^ a b Baryeh, E.A. (2001). “Physical properties of bambara groundnuts”. Journal of food engineering 47: 321–326. doi:10.1016/s0260-8774(00)00136-9. 
  10. ^ Doku, E.V. (1995). Proceedings of the Workshop on Conservation and Improvement of Bambara groundnut (Vigna subterranean (L.). Harare Zimbabwe: University of Ghana. http://www.bioversityinternational.org/fileadmin/_migrated/uploads/tx_news/Bambara_groundnut__Vigna_subterranea__L.__Verdc._499.pdf 
  11. ^ Dansi, A.; R. Vodouhe; P. Azokpota; et al. (19 April 2012). “Diversity of the Neglected and Underutilized Crop Species of Importance in Benin”. The Scientific World Journal 2012: 932947. doi:10.1100/2012/932947. PMC 3349165. PMID 22593712. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3349165/. 
  12. ^ a b c d e Data sheet Vigna subterranea”. Ecocrop. FAO. 2011年3月16日閲覧。
  13. ^ Rassel, A (1960). “Voandzou, Voandzeia subterranea Thouars, and its cultivation in Kwango”. Bull. agric. Congo belge 51: 1–26. http://www.cabdirect.org/abstracts/19601403615.html?freeview=true 2011年3月16日閲覧。. 
  14. ^ Kouassi, N’. J; I. A. Zoro Bi (2010). “Effect Of Sowing Density And Seedbed Type On Yield And Yield Components In Bambara Groundnut (Vigna subterranea) In Woodland Savannas Of Cote D’ivoire”. Experimental Agriculture 46: 99–110. doi:10.1017/S0014479709990494. http://journals.cambridge.org/action/displayFulltext?type=1&fid=6698056&jid=EAG&volumeId=46&issueId=01&aid=6698048 2011年3月16日閲覧。. 
  15. ^ a b c Mkandawire, Ceasar H (2007). “Review of Bambara Groundnut (Vigna subterranea (L.) Verdc.) Production in Sub-Sahara Africa”. Agricultural Journal 2 (4): 464–470. doi:10.3923/aj.2007.464.470. 
  16. ^ Toungos, M.D.; A.A. Sajo and D.T. Gungula (2009). “Recommended Fertilizer Levels on Bambara Groundnut (Vigna subterranea (L) Verde) in Yola Adamawa State, Nigeria”. Agricultural Journal 4 (1): 14–21. doi:10.3923/aj.2009.14.21. 
  17. ^ a b c FAOSTAT”. FAO. 2015年2月2日閲覧。
  18. ^ Massawe, F.J.; S.S. Mwale, S.N. Azam-Ali and J.A. Roberts (2005). “Breeding in Bambara groundnut (Vigna subterranea (L.) Verdc.): strategic considerations”. African Journal of Biotechnology 4 (6): 463–471. http://www.academicjournals.org/ajb/PDF/Pdf2005/Jun/Massawe%20et%20al.pdf 2011年5月3日閲覧。. 

外部リンク 編集