ヒシアマゾン
ヒシアマゾン(1991年3月26日 - 2019年4月15日)は、日本の競走馬、繁殖牝馬。
ヒシアマゾン | ||||||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1995年10月8日 京都競馬場 | ||||||||||||||||||||||||||||||
現役期間 | 1993 - 1996年 | |||||||||||||||||||||||||||||
品種 | サラブレッド | |||||||||||||||||||||||||||||
性別 | 牝 | |||||||||||||||||||||||||||||
毛色 | 黒鹿毛 | |||||||||||||||||||||||||||||
生誕 | 1991年3月26日 | |||||||||||||||||||||||||||||
死没 | 2019年4月15日(28歳没) | |||||||||||||||||||||||||||||
父 | Theatrical | |||||||||||||||||||||||||||||
母 | Katies | |||||||||||||||||||||||||||||
母の父 | Nonoalco | |||||||||||||||||||||||||||||
生国 |
![]() (ケンタッキー州) | |||||||||||||||||||||||||||||
生産 | マサイチロウ アベ[1] | |||||||||||||||||||||||||||||
馬主 | 阿部雅一郎 | |||||||||||||||||||||||||||||
調教師 | 中野隆良(美浦北) | |||||||||||||||||||||||||||||
厩務員 | 小泉守男 | |||||||||||||||||||||||||||||
競走成績 | ||||||||||||||||||||||||||||||
タイトル |
JRA賞最優秀3歳牝馬(1993年) JRA賞最優秀4歳牝馬(1994年) JRA賞最優秀5歳以上牝馬(1995年) | |||||||||||||||||||||||||||||
生涯成績 | 20戦10勝 | |||||||||||||||||||||||||||||
獲得賞金 | 6億9582万9000円 | |||||||||||||||||||||||||||||
|
アメリカで生まれ日本で調教を受けた外国産馬である。1993年JRA賞最優秀3歳牝馬、1994年JRA賞最優秀4歳牝馬、1995年JRA賞最優秀5歳以上牝馬(JRA賞の部門名はいずれも当時のもの)。
戦績編集
3歳 - 4歳時編集
1993年9月19日の新馬戦を中舘英二騎手とのコンビで快勝。続くプラタナス賞、京成杯3歳ステークスと2戦連続で2着した後の阪神3歳牝馬ステークスで2着ローブモンタントに5馬身差をつけて圧勝し、一躍牝馬のスターダムに躍り出た。
明けて1994年春、当時は外国産馬にクラシックへの出走が認められていなかったため、裏街道を歩むことになった。年明け緒戦の京成杯こそ2着に敗れたものの、続くクイーンカップ、クリスタルカップ、ニュージーランドトロフィー4歳ステークスといずれも1番人気に応えて快勝した。特にクリスタルカップで見せた残り100mでの4馬身差を差し、逆に1馬身差をつけた驚異の追い込みは、井崎脩五郎が20世紀のベストレースの1つにあげている。
秋シーズンもクイーンステークス、ローズステークスを連勝し、迎えたエリザベス女王杯では優駿牝馬優勝馬チョウカイキャロルとの叩きあいをハナ差制し、重賞6連勝[2]で名実ともに4歳最強牝馬となった。
主戦騎手であった中舘英二によると、エリザベス女王杯までのレース戦術について、他の馬と一枚も二枚も力が違っていたことから「負けてはいけない立場だったので、後ろから行って、大外を通って、着差は小さくても最後に勝てばいいというレースをしていた」と説明した[3]。
続く有馬記念では並み居る古牡馬が揃っていたが、相手は三冠馬ナリタブライアン1頭に絞ったレース運びをし、4コーナー付近でヒシアマゾンはナリタブライアンに競りかけたが、ナリタブライアンはこれまで以上の瞬発力を発揮して後続を突き放しており、ヒシアマゾンも勢いを保持したままを追走して3着以下には2 1/2馬身差をつけたが、結果的に優勝したナリタブライアンから3馬身差の2着に敗れた[4]。
同年のレース戦績は、エリザベス女王杯を含む6連勝、有馬記念2着が評価され最優秀4歳牝馬に選出された。
5歳以降編集
5歳となった1995年は、春にアメリカ遠征に挑戦するもレース直前に脚部不安に見舞われ帰国、帰国後緒戦の高松宮杯ではそれまでの実績から圧倒的1番人気に支持されたものの、スタートから折り合いを欠き逃げる形になってしまい5着に敗れ、デビューからの連続連対記録が12で途絶えるなど、上半期は不本意なシーズンになった。
しかし秋になり、オールカマー、京都大賞典を圧勝し、完全復調をアピール。外国産馬であるため天皇賞(秋)には出走することはできず、迎えたジャパンカップでは、直線鋭く追い込んだものの先に抜け出したランドに1馬身半及ばず2着に敗れたが、負けてなお強しの印象であった。続く有馬記念ではその年不調のナリタブライアンを抑えて1番人気に推されたものの、スタートでの出遅れもあり5着に終わった。
1996年、6歳になると順調さを欠き、安田記念は10着、エリザベス女王杯は2位入線も斜行により7着降着、有馬記念は5着に敗れ、結果的にこれが最後のレースとなった。
1997年、京王杯スプリングカップの出走を目指し調整していたが、同年4月30日に右前脚浅屈腱炎の発症により、現役生活を断念して引退となった[5]。
なお、当初オーナーサイドは「ヒシアマゾネス」で馬名登録申請したものの却下され、この名前になったという。
引退後編集
引退後は繁殖入り。オーナーの夢の配合ではあったものの、初年度にヒシマサル(GIII3勝)が種付けされたことは物議を醸した。故郷のテイラーメイドファームに戻りヒシマサルとの仔(のちのヒシアンデス)を出産するとそのままテイラーメイドファームで繁殖生活を送り、2011年に父ウォーパスの牡馬(競走馬としては登録されていない)を出産したのを最後に繁殖を引退し、アメリカ・ケンタッキー州で日本人が経営するPolo Green Stable(ポロ・グリーン・ステーブル)で余生を送っていた。
初年度産駒のヒシアンデスを筆頭に、アメリカで種付けされたヒシシルバーメイド、ヒシバラード、ヒシラスター、ヒシラストレディ、ヒシラストガイが日本で競走馬となったがいずれも大成しておらず、アメリカで競走馬になったAmazi (2004年産、牝、父オーサムアゲイン)とFlying Warrior (2006年産、騸、父フサイチペガサス)の2頭も大成することはできなかった。セリ市では比較的高値で取り引きされた産駒が多く、たとえばFlying Warriorは2007年9月10日に行われたキーンランド・セプテンバー・イヤリングセールで29万ドル(約3300万円)で落札された。
競走馬としての成績が良かった牝馬は繁殖入りしてもいい仔を出せないという例は多々あり、ヒシアマゾンも例に漏れず、繁殖牝馬としては低調であった。日本の一部の生産関係者の間では、世界でも比較的優秀な種牡馬が多くなっている日本に買い戻して、残りの繁殖生活を日本で送らせようという声もあったが、実現には至らなかった。
競走成績編集
年月日 | 競馬場 | レース名 | 格 | 人気 | 着順 | 距離 | タイム(上3F) | 着差 | 騎手 | 斤量 | 勝ち馬/(2着馬) | 馬体重 | ||
1993 | 9. | 19 | 中山 | 3歳新馬 | 1人 | 1着 | ダ1200m(良) | 1:13.7 (38.7) | クビ | 中舘英二 | 53 | (ノボリリュウ) | 474 | |
10. | 24 | 東京 | プラタナス賞 | 3人 | 2着 | ダ1400m(良) | 1:26.3 (38.5) | 0.1秒 | 江田照男 | 53 | ミツルマサル | 478 | ||
11. | 13 | 東京 | 京成杯3歳S | GII | 6人 | 2着 | 芝1400m(良) | 1:22.9 (34.7) | 0.0秒 | 中舘英二 | 53 | ヤマニンアビリティ | 474 | |
12. | 5 | 阪神 | 阪神3歳牝馬S | GI | 2人 | 1着 | 芝1600m(良) | R1:35.9 (36.5) | 5身 | 中舘英二 | 53 | (ローブモンタント) | 474 | |
1994 | 1. | 9 | 中山 | 京成杯 | GIII | 1人 | 2着 | 芝1600m(良) | 1:34.2 (36.6) | 0.3秒 | 中舘英二 | 55 | ビコーペガサス | 470 |
1. | 30 | 東京 | クイーンC | GIII | 1人 | 1着 | 芝1600m(良) | 1:35.1 (35.9) | クビ | 中舘英二 | 55 | (エイシンバーモント) | 474 | |
4. | 16 | 中山 | クリスタルC | GIII | 1人 | 1着 | 芝1200m(良) | 1:08.5 (34.7) | 1身 | 中舘英二 | 53 | (タイキウルフ) | 474 | |
6. | 5 | 東京 | NZT4歳S | GII | 1人 | 1着 | 芝1600m(良) | 1:35.8 (34.3) | 1/2身 | 中舘英二 | 54 | (マチカネアレグロ) | 464 | |
10. | 2 | 中山 | クイーンS | GIII | 1人 | 1着 | 芝2000m(稍) | 2:02.9 (35.8) | 1 1/2身 | 中舘英二 | 54 | (ジョウノバタフライ) | 478 | |
10. | 23 | 阪神 | ローズS | GII | 1人 | 1着 | 芝2000m(良) | 2:00.0 (35.3) | 1身 | 中舘英二 | 55 | (アグネスパレード) | 480 | |
11. | 13 | 京都 | エリザベス女王杯 | GI | 1人 | 1着 | 芝2400m(良) | 2:24.3 (34.8) | ハナ | 中舘英二 | 55 | (チョウカイキャロル) | 480 | |
12. | 25 | 中山 | 有馬記念 | GI | 6人 | 2着 | 芝2500m(良) | 2:32.7 (35.2) | 0.5秒 | 中舘英二 | 53 | ナリタブライアン | 478 | |
1995 | 7. | 9 | 中京 | 高松宮杯 | GII | 1人 | 5着 | 芝2000m(良) | 2:03.0 (37.2) | 0.4秒 | 中舘英二 | 57 | マチカネタンホイザ | 480 |
9. | 18 | 中山 | オールカマー | GII | 1人 | 1着 | 芝2200m(稍) | 2:16.3 (34.9) | クビ | 中舘英二 | 57 | (アイリッシュダンス) | 480 | |
10. | 8 | 京都 | 京都大賞典 | GII | 1人 | 1着 | 芝2400m(良) | 2.25.3 (34.3) | 2 1/2身 | 中舘英二 | 57 | (タマモハイウェイ) | 484 | |
11. | 26 | 東京 | ジャパンC | GI | 2人 | 2着 | 芝2400m(良) | 2:24.8 (34.7) | 0.2秒 | 中舘英二 | 57 | ランド | 484 | |
12. | 24 | 中山 | 有馬記念 | GI | 1人 | 5着 | 芝2500m(良) | 2:34.6 (35.7) | 1.0秒 | 中舘英二 | 55 | マヤノトップガン | 488 | |
1996 | 6. | 9 | 東京 | 安田記念 | GI | 4人 | 10着 | 芝1600m(良) | 1:33.9 (35.4) | 0.8秒 | 中舘英二 | 56 | トロットサンダー | 482 |
11. | 10 | 京都 | エリザベス女王杯 | GI | 5人 | *7着 | 芝2200m(良) | 2:14.3 (34.2) | - | 中舘英二 | 56 | ダンスパートナー | 492 | |
12. | 22 | 中山 | 有馬記念 | GI | 5人 | 5着 | 芝2500m(良) | 2:35.0 (37.0) | 1.2秒 | 河内洋 | 54 | サクラローレル | 500 |
- 1 (*)2位入線、降着。
- 2 タイム欄のRはレコード勝ちを示す。
血統表編集
ヒシアマゾンの血統(ノーザンダンサー系 / Nearctic4×3=18.75%) | (血統表の出典)[§ 1] | |||
父系 | ヌレイエフ系(ノーザンダンサー系) |
[§ 2] | ||
父 Theatrical 1982 鹿毛 |
父の父 Nureyev1977 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic | |
Natalma | ||||
Special | Forli | |||
Thong | ||||
父の母 *ツリーオブノレッジTree of Knowledge 1977 鹿毛 |
Sassafras | Sheshoon | ||
Ruta | ||||
Sensibility | Hail to Reason | |||
Pange | ||||
母 Katies 1981 黒鹿毛 |
*ノノアルコ Nonoalco 1971 鹿毛 |
Nearctic | Nearco | |
Lady Angela | ||||
Seximee | Hasty Road | |||
Jambo | ||||
母の母 Mortefontaine1969 鹿毛 |
*ポリック Polic |
Relic | ||
Polaine | ||||
Barbantia | Honeyway | |||
Parthaven F-No.7-f | ||||
母系(F-No.) | Katies系(FN:7-f) | [§ 3] | ||
5代内の近親交配 | Nearctic4×3、Pharos=Fairway5×5 | [§ 4] | ||
出典 |
|
父シアトリカルは名種牡馬、母ケイティーズはアイルランド1000ギニー優勝馬と血統は一流である。
脚注編集
- ^ 生産牧場はテイラーメイドファーム
- ^ この記録はメジロラモーヌやタマモクロス、タイキシャトル(同馬は重賞6連勝後に国外重賞競走の1勝を挟んでまたJRAでの重賞競走を1勝しての重賞8連勝を達成したが、JRAのレースのみでの連勝ではない)、オグリキャップと並ぶタイ記録であった。この重賞連勝記録は2000年にテイエムオペラオーによって更新された後、2018年に障害競走重賞を9連勝したオジュウチョウサンによって再度更新されている。
- ^ 女傑たちの記憶 中舘英二が語るヒシアマゾン×ナリタブライアン〔1〕 - Number 2009年10月9日
- ^ 女傑たちの記憶 中舘英二が語るヒシアマゾン×ナリタブライアン〔2〕 - Number 2009年10月9日
- ^ 中央競馬を振り返る 1997年5月:5/1(木) - 競馬ニホン
- ^ ヒシアマゾン号が死亡 - JRAニュース(日本中央競馬会)2019年4月17日
- ^ ヒシアマゾン死す 93年阪神3歳牝馬S、94年エリザベス女王杯とG1を2勝 - デイリースポーツ online 2019年4月17日
- ^ 平出貴昭 (2014年9月17日). “『覚えておきたい日本の牝系100』収録の全牝系一覧”. 競馬“血統”人生/平出貴昭. 2017年9月9日閲覧。
外部リンク編集
- 競走馬成績と情報 netkeiba、スポーツナビ、JBISサーチ、Racing Post
- ヒシアマゾン(USA) - 競走馬のふるさと案内所