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フリチョフ・ナンセン級フリゲート

フリチョフ・ナンセン級フリゲートノルウェー語: fregatt-klassen "Fridtjof Nansen": Fridtjof Nansen-class frigate)は、ノルウェー海軍フリゲートの艦級[1][2]

フリチョフ・ナンセン級フリゲート
竣工時の「フリチョフ・ナンセン」(F310)
竣工時の「フリチョフ・ナンセン」(F310)
基本情報
種別 フリゲート
命名基準 ノルウェーの探検家に因む
運用者  ノルウェー海軍
建造期間 2003年 - 2009年
就役期間 2006年 - 就役中
同型艦 計5隻
内1隻事故により喪失
前級 オスロ級
次級 最新
要目
基準排水量 4,681トン
満載排水量 5,121トン
全長 132.00 m
水線長 120.39 m
最大幅 16.80 m
吃水 4.90 m
機関方式 CODAG方式
主機 ・BAZAN・BRAVO 12V
 ディーゼルエンジン×2基
LM2500ガスタービンエンジン×1基
推進器可変ピッチ・プロペラ×2軸
・隠顕式バウスラスター×1基
電源 MTU 12V396ディーゼル発電機×4基
(合計3,600 kW)
最大速力 26ノット
航続距離 4,500海里 (16kt巡航時)
乗員 120名
兵装76mm単装速射砲×1基
シープロテクター 12.7mmRWS×4基
Mk.41 VLS×8セル (ESSM×32発)
NSM SSM 4連装発射筒×2基
短魚雷連装発射管×2基
搭載機 哨戒ヘリコプター×1機
(リンクス or NFH90)
C4ISTAR イージスIWS戦術情報処理装置
FCS ・VIGY-20 光学式×1基
Mk.99 ミサイルFCS×2基
レーダーAN/SPY-1F 多機能型
・デッカ社製 航法用
ソナーMRS 2000 艦首装備式
CAPTAS Mk II V1 曳航式
電子戦
対抗手段
ES-3701電波探知装置
・DL-12T 12連装デコイ発射機×2基
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本級はイージスシステムを搭載しており、これにより、ノルウェースペインに次いでヨーロッパで2番目のイージス艦の保有国となる。なお、その小さな艦型ゆえに、本級は「ミニ・イージス艦」と呼ばれることもある。

来歴編集

1960年代以降、ノルウェー海軍は旧式の駆逐艦の整理を進め、高速戦闘艇を主体として沿海域での作戦に重点をおいた艦隊編制を採用しており、外洋での作戦に適した水上戦闘艦としては、オスロ級フリゲート5隻が建造されたのみであった。同級はアメリカ海軍ディーレイ級護衛駆逐艦をタイプシップとしており、ノルウェー海軍の主力艦として度重なる近代改装を受けていたが、現代戦には対応できなくなっていた[3]

このことから、1990年代より代艦の建造計画が着手され、1997年3月、プロジェクト6088として設計定義がなされた[3]。搭載する武器システムの選定に当たっては、イギリスフランスホライズン計画艦や、ドイツオランダスペイン(のちに脱退)のTFC計画艦も候補となったが、2000年3月、スペインのイサル社及びアメリカのロッキード・マーティン社によるイージス艦の建造が決定され、6月、ナバンティア(旧イサル)社との間で建造契約が締結された[1]

設計編集

船体編集

 
左舷から撮影された3番艦「オットー・スヴァドロップ」

本級はスペインのアルバロ・デ・バサン級フリゲートをタイプシップとしており、船型も同じ中央船楼型とされている[3](長船首楼を持つ傾斜船型という説もある[4])。レーダー反射断面積(RCS)の低減のため、主船体・上部構造物には傾斜が付されており、艦首から船楼後端にかけてナックルが続いている[3]

船体・上部構造物は鋼製であり、24個のモジュールにわけて建造された[2]。主船体は13の防水区画に区分されており、2区画までの浸水に抗堪できる。また機関区画は前後2区画に分離されていると考えられている[3]。4ヶ所のダメージコントロール・ステーションが配置されているほか、NBC防護措置も講じられている[2]

本級は高度に自動化されており、5000トン級という大きさにも関わらず、乗員数は前任のオスロ級と同程度に抑えられている[3]

機関編集

主機関としては、当初は電気推進の採用が計画されたものの、電源の出力不足から断念され、最終的にCODAG方式が採用された。巡航時にはバサン-BRAVO 12Vディーゼルエンジン(単機出力6,000馬力)2基、高速航行時にはこれに加えてゼネラル・エレクトリック LM2500ガスタービンエンジン(28,832馬力)1基を用いて、減速機を介して可変ピッチ・プロペラ2軸を駆動する。また精密な操艦が求められる場合に備えて、隠顕式のバウスラスター(1,340馬力)1基も装備している[2]

電源としては、当初は電気推進用を含めて8,200キロワットを確保する予定であったが、上記の通り主機方式が変更されたことから、結局、MTU 12V396ディーゼルエンジンを原動機とする発電機(出力900キロワット)4セットを搭載した。690ボルトの主配電盤と、450ボルトの艦内サービス用配電盤が2基ずつ配置されている[2]

なお主機関は、操縦室のほか艦橋からの遠隔制御も可能であり、省力化のため、機械室の無人化(Mゼロ化)が行なわれている[2]

装備編集

C4ISTAR編集

本級の中核的な装備となるのがイージス武器システム(AWS)である。本級の搭載システムは、アルバロ・デ・バサン級のDANCS(Distribute Advanced Naval Combat System)の系譜に属しており、イージスIWS(Integrated Weapons System)と称される。汎用フリゲートとして、要求仕様に艦隊防空能力が盛り込まれなかった一方、対水上・対潜戦への対応が重視されており、同国のコングスベルグ社によるMSI-2005F対水上・対潜戦システムを統合して開発された[5]

その主センサーとなるのがAN/SPY-1Fである。4面のアンテナは、艦橋構造に連続してその後部に設けられた八面体の塔状構造物の周囲に固定配置されている。全体的な印象としてはドイツのザクセン級フリゲートやオランダのデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲートの装備構造に近い[3]

なおAN/SPY-1Fは、FARS(Frigate Array Radar System)として、フリゲートへの搭載を前提に、巡洋艦駆逐艦搭載のAN/SPY-1をもとに小型化して開発されたものであり、アンテナ素子数は4,350個から1,856個に削減、また進行波管(TWT)も平均出力にしてAN/SPY-1Dの4割以下と低出力化したことにより、最大探知距離はAN/SPY-1Aの5割強程度とされている[5]

ソナーとしては、タレス社のスフェリオンMRS2000をバウ・ドームに収容して搭載したほか、曳航式のCAPTAS Mk.2(V)1も搭載される[2]

航海用のレーダー、ジャイロ、GPS、電子海図、操舵装置は、コングスベルク・マリタイム社製の統合艦橋システム(Integrated Bridge System: IBS)によって統合される。そのレーダーとしては、リットン・マリーン・システムズ社製のSバンド 水上レーダー1基と、同じくリットン社製のXバンド航海レーダー2基が搭載される。

武器システム編集

艦対空ミサイルの発射装置として、艦首甲板に8セルのMk.41VLSを備えており、僚艦・個艦防空用のESSMを32発搭載している[5]。もう8セル分の追加搭載余地は確保されているが、艦隊防空能力が求められなかったことから、他のイージス艦で搭載されているようなスタンダードミサイルを装備する具体的な計画は存在しない[2]

艦対艦ミサイルとしては、艦橋構造物直後両舷に国産のNSMの4連装発射筒を2基搭載している。また対潜兵器としては、艦中部船楼内に固定式の連装短魚雷発射管を備え、スティングレイ英語版魚雷を発射できる[1][2]

艦砲としては、艦首甲板に76mmスーパーラピッド砲を1基備えており、電子光学式のVIGY-20射撃指揮装置の指揮を受ける[1][2]

艦尾甲板はヘリコプター甲板とされており、その直前の船楼後端部に設けられたハンガーにはNFH90哨戒ヘリコプター1機を収容できる。また航空要員10名を乗艦させることができる[2]

同型艦編集

一覧表編集

艦番号 艦名 発注 起工 進水 就役 備考
F310 フリチョフ・ナンセン
KNM «Fridtjof Nansen»
2000年
6月23日
2003年
4月9日
2004年
6月3日
2006年
4月5日
F311 ロアール・アムンセン
KNM «Roald Amundsen»
2004年
6月3日
2005年
5月25日
2007年
5月21日[6]
F312 オットー・スヴェルドルップ
KNM «Otto Sverdrup»
2005年
5月25日
2006年
4月28日
2008年
4月30日[7]
F313 ヘルゲ・イングスタッド
KNM «Helge Ingstad»
2006年
4月28日
2007年
11月23日
2009年
9月29日
2018年11月8日
事故により大破[8]
F314 トール・ヘイエルダール
KNM «Thor Heyerdahl»
2007年
11月23日
2009年
2月11日
2011年
1月18日

運用史編集

1番艦から3番艦までは、艦首と艦尾をノルウェーで作り、全体の建造はスペインで行われることとし、4番艦および5番艦はノルウェーでの建造が主体となることになっている。

2018年11月8日、4番艦「ヘルゲ・イングスタッド」は演習から帰還する途中で石油タンカー「ソラTS」と衝突、右舷側を大きく損傷した。乗員137名のうち8名が負傷したが、死者は出なかった。艦は沈没を避けるため意図的に座礁したものの、結局、塔型構造物の最上部を除いてほぼ完全に水没した[8]

脚注編集

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注釈編集

出典編集

  1. ^ a b c d Saunders 2009, p. 568.
  2. ^ a b c d e f g h i j k Wertheim 2013, pp. 494-495.
  3. ^ a b c d e f g 海人社 2003.
  4. ^ 海人社 2006.
  5. ^ a b c 大塚 2016.
  6. ^ Norwegian Defence Force official website: Første seilas med F311 Archived 2007年9月30日, at the Wayback Machine. (ノルウェー語)
  7. ^ Norwegian Defence Force official website: Tredje fregatt på norske hender (ノルウェー語)
  8. ^ a b 井上 2019.

参考文献編集

  • 井上, 孝司「詳報! ノルウェー海軍イージス艦衝突事故」『世界の艦船』第893号、海人社、2019年2月、 141-145頁。
  • 大塚, 好古「世界のイージス艦総覧 (特集・世界のイージス艦)」『世界の艦船』第844号、海人社、2016年9月、 78-87頁、 NAID 40020917927
  • 海人社, 編纂.「フリチョフ・ナンセン級〈ノルウェー〉 (2010年前後に登場する新型水上戦闘艦)」『世界の艦船』第619号、海人社、2003年12月、 96-97頁、 NAID 40005987851
  • 海人社, 編纂.「世界のイージス艦とミニ・イージス艦 (特集・イージス艦発達史)」『世界の艦船』第667号、海人社、2006年12月、 84-93頁、 NAID 40015140494
  • Saunders, Stephen (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. ISBN 978-0710628886. 
  • Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545. 

関連項目編集

同時期のイージス艦