ボノプラザン(Vonoprazan)は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のひとつであり、武田薬品工業が開発したカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-Competitive Acid Blocker:P-CAB)である。胃酸抑制剤のため、十二指腸潰瘍の治療や予防、逆流性食道炎の治療、ヘリコバクター・ピロリ除菌時の胃内pH調整に用いられる[1]

ボノプラザン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
投与経路 経口
薬物動態データ
血漿タンパク結合85.2 - 88.0%
代謝肝代謝
半減期6.1 - 7.7 時間
排泄尿中排泄 (67.4%);
便中排泄 (31.1%)
識別
CAS番号
881681-00-1
PubChem CID: 45375887
KEGG D10466
化学的データ
化学式C17H16FN3O2S
分子量461.46 g/mol
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ほかのPPIで必要である胃酸による活性化が不要で、有効濃度への到達が速やかで、服用から作用発現までが早い[2]。商品名タケキャブ後発医薬品は無い。に対して安定しているので、作用部位(胃腺の分泌細管)に長く留まることができる[3]

効能・効果 編集

併用 編集

禁忌 編集

アタザナビルリルピビリンの効果を減弱する。

注意 編集

副作用 編集

添付文書に記載されている重大な副作用は、偽膜性大腸炎などの血便を伴う重篤な大腸炎(ピロリ除菌時の抗生物質の使用に伴うもの)である。AST(GOT)、ALT(GPT)、AL-P、LDH、γ-GTPの上昇を生じることがある。また、ピロリ除菌時に10%の患者で下痢が発生する。

長期投与中に良性の胃ポリープを認めたとの報告がある。マウスおよびラットで、臨床用量で胃の神経内分泌腫瘍が、約300倍で胃の腺腫が、約13倍以上(マウス)および約58倍以上(ラット)で肝臓腫瘍がそれぞれ認められている。

重大な副作用 編集

2019年4月の、厚生労働省医療・生活衛生局発行の「医薬品・医療機器等安全性情報 No.362」により、ボノプラザンフマル酸塩、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン、ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾールについて、下記の重大な副作用の項目が追加改訂された[5]

商品名

  • タケキャブ錠10mg、同錠20mg(武田薬品工業株式会社)
  • ボノサップパック400、同パック800(武田薬品工業株式会社)
  • ボノピオンパック(武田薬品工業株式会社)
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑:中毒性表皮壊死融解症,皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。 — 厚生労働省医薬・生活衛生局、医薬品・医療機器等安全性情報 No.362 医薬品・医療機器等安全性情報 No.362 3①ボノプラザンフマル酸塩② ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン③ ボノプラザンフマル酸塩・アモキシシリン水和物・メトロニダゾール

作用機序 編集

胃腺の壁細胞に存在するH+,K+-ATPaseを競合的に阻害して、胃内へのH+ 分泌を抑制する。

臨床試験 編集

ランソプラゾールに対する非劣性が示されている[6]。開発コードTAK-438。

脚注 編集

  1. ^ 酸関連疾患治療剤「タケキャブ錠」日本における製造販売承認取得について”. 武田薬品工業 (2014年12月26日). 2015年2月4日閲覧。
  2. ^ タケキャブ:作用発現が速い新機序のPPI”. 日経メディカル (2015年2月6日). 2015年2月11日閲覧。
  3. ^ タケキャブ情報サイト 作用機序”. 武田薬品工業. 2015年5月21日閲覧。
  4. ^ 的場秀亮、吉田寛、鈴木剛 ほか、H. pylori除菌療法におけるボノプラザンとエソメプラゾールの比較検討『日本医科大学医学会雑誌】 13巻 (2017) 1号 p.38-41, doi:10.1272/manms.13.38
  5. ^ 医薬品・医療機器等安全性情報 No.362” (PDF). 厚生労働省. 2019年4月17日閲覧。
  6. ^ 2014年米国消化器病週間における酸関連疾患治療薬ボノプラザンフマル酸塩の最新試験データの発表について”. 武田薬品工業 (2014年5月7日). 2015年2月5日閲覧。

外部リンク 編集