ローマの祭り』(ローマのまつり、: Feste Romane)は、イタリアの作曲家オットリーノ・レスピーギ1928年に完成させた交響詩。「ローマ三部作」(『ローマの噴水』、『ローマの松』、および本作)の最後を飾る作品。

音楽・音声外部リンク
全曲を試聴する
RESPIGHI: Feste romane, P.157 (Roman Festivals) - アレン・ティンカム指揮シカゴ・ユース・シンフォニー・オーケストラによる演奏。シカゴ・ユース・シンフォニー・オーケストラ公式YouTube。

演奏時間・初演編集

楽器編成編集

構成編集

単一楽章で4つの部分が切れ目なく演奏される。各部分は古代ローマ時代、ロマネスク時代、ルネサンス時代、20世紀の時代にローマで行われた祭りを描いたものであり、それぞれレスピーギ自身によるコメント(標題)がつけられている。以下ではその標題と構成を書いていく。

第1部 チルチェンセス Circenses

チルコ・マッシモに不穏な空気が漂う。だが今日は市民の休日だ。『ネロ皇帝、万歳!』鉄の扉が開かれ、聖歌の歌声と野獣の唸り声が聞こえる。群衆は興奮している。殉職者たちの歌が一つに高まり、やがて騒ぎの中にかき消される。」[1]
古代ローマでは紀元前から平和の統治のために食料や娯楽が市民に提供された。いわゆる「パンと見世物」と呼ばれる政策で、チルチェンセスとはこの見世物のことである。前座に猛獣対猛獣や人間対猛獣の闘いもあり、重罪人やキリスト教徒らが猛獣の餌食とされた。この曲ではキリスト教徒と猛獣の対峙の様子を描いている。決闘は100日を超える市民の休日に開催され、ローマの貴族や善良な市民がオペラ鑑賞のように楽しんだ。また、チルチェンセスというのは、一名アヴェ・ネローネ祭ともいい、皇帝ネロが民衆を喜ばせるために円形劇場で行ったことからその名がついた。「アヴェ・ネローネ≪Ave, Nerone!≫」は「ネロ皇帝万歳」ということに相当する。なお、決闘はチルコ・マッシモではなく、ネロの時代は円形劇場で催されていたようである。
レスピーギは、キリスト教徒たちが衆人環視の中で猛獣に喰い殺されるこの残酷な祭りの一部始終を克明に描いている。導入部では闘技場に詰めかけた市民の喚声を表す部分とブッキーナによるファンファーレの部分が交互に現れる。次第に、それらは渾然一体となり興奮が高まっていく。次の低音楽器によるスタッカートの場面では解説者によって解釈が異なっており、「闘技場の扉が開き犠牲となるキリスト教徒たちが重い足取りで入場する」[1]「鉄の扉が押し開かれて飢えたライオンが姿を現す」[2]などがある。弦楽器や木管楽器たちがキリスト教徒たちの祈りを思わせる讃美歌風の旋律を歌い始める。一方、猛獣たちの唸り声に似た低音楽器たちが荒々しく割り込む。弦楽器と木管楽器の歌声はより発展し、速度が増し、音高も高くなっていく。これに対し、金管楽器の猛獣の唸り声もだんだん高まっていく。

第2部 五十年祭 Il Giubileo

「巡礼者たちが祈りながら街道をゆっくりとやってくる。モンテマリオの頂上方待ち焦がれた聖地がついに姿を現す。『ローマだ!ローマだ!』一斉に歓喜の歌が沸き上り、それに応えて教会の鐘が鳴り響く。」[1]
古い讃美歌「キリストは蘇り給えり(Christ ist erstanden)」が使われており、ロマネスク時代の祭(聖年祭)を表している。世界中の巡礼者たちがモンテ・マリオ (Monte Mario) の丘に集まり、「永遠の都・ローマ」を讃え、讃歌を歌う。それに答えて、教会の鐘がなる。

第3部 十月祭 L’Ottobrata

「カステテッリ・ロマーニの十月祭はブドウの季節。狩りの合図、鐘の音、愛の歌に続き、穏やかな夕暮れのロマンティックなセレナーデが聴こえてくる。」[1]
ローマの城で行われるルネサンス時代の祭がモチーフ。ローマの城がぶどうでおおわれ、狩りの響き、鐘の音、愛の歌に包まれる。やがて夕暮れ時になり、甘美なセレナーデが流れる。

第4部 主顕祭 La Befana

「主顕節前夜のナヴォーナ広場。お祭り騒ぎの中、ラッパの独特なリズムが絶え間なく聴こえる。賑やかな音と共に、時には素朴なモティーフ、時にはサルタレッロの旋律、屋台の手回しオルガンの旋律と売り子の声、酔っぱらいの耳障りな歌、さらには人情味豊かで陽気なストルネッロ『われらローマっ子のお通りだ!』も聞こえてくる。」[1]
ナヴォーナ広場で行われる主顕祭の前夜祭がモチーフ。踊り狂う人々、手回しオルガン、物売りの声、酔っ払った人(グリッサンドを含むトロンボーン・ソロ)などが続く。強烈なサルタレロのリズムが圧倒的に高まり、狂喜乱舞のうちに全曲を終わる。

レスピーギがスコアの冒頭に掲げたプログラム(イタリア語)編集

1.CIRCENSES

Il cielo è torvo sul Circo Massimo, ma la plebe è in festa: ≪Ave, Nerone!≫. Si schiudono le ferree porte, e viene per l’aria un canto religioso e l’urlo delle belve. La folla ondeggia e freme: impassibile, il conto dei martiri si diffonde, vince, naufraga nel tumulto.

2.IL GIBILEO

I pellegrini si trascinano per la lunga via, pregando. Finalmente, della vetta del Monte Mario, appare agli occhi ardenti e alle anime anelanti la città santa: ≪Roma! Roma!≫. Un inno di giubilo prorompe, e gli risponde lo scampanio di tutte le chiese.

3.L’OTTOBRATA

Festa d’ottobre nei Castelli inghirlandati di pampini: echi di caccia, tintinnii di sonagliere, canti d’amore. Poi, nel vespero dolce, trema una serenata romantica.

4.LA BEFANA

La notte dell’Epifania in piazza Navona: un ritmo caratteristico di trombette domina il clamore frenetico: sul mareggiare fragoroso galleggiano, a quando a quando, motivi rusticani, cadenze di saltarello, la voce dell’organo meccanico d’un baraccone e l’appello del banditore, il canto rauco dell’ubriaco e il fiero stornello in cui s’espande l’anima popolaresca: ≪Lassàtece passà, semo Romani!≫.

ブッキーナについて編集

ブッキーナというのは、古代ローマ帝国で競技や戦いの場で兵士を鼓舞するために吹き鳴らされていた金管楽器で、まだ音を変えるヴァルブ装置などはついていないシンプルな楽器であった。

古代ローマの時代から二千年近く経ったレスピーギの時代に、ブッキーナが現役の楽器として使われていた訳ではない。しかし、同時代に自らの国を神聖ローマ帝国に続く第三帝国と名乗っていたナチス・ドイツによって、ブッキーナを含む古代ローマの楽器が復元されていたのである。

残念ながら、イタリアでも同様の動きがあったとか、ドイツから楽器を借用したという記録などは残っていないが、少なくとも「ローマの祭り」では、具体的な楽器名としてブッキーナを指定していることは紛れもない事実なので、何らかの復元楽器か、その名を冠した特別注文の楽器を使用した可能性は十分に考えられる。

評価、作品の位置づけ編集

以下のような特徴指摘、あるいは評価がある。

その他編集

この曲を含む「ローマ三部作」はトスカニーニ指揮NBC交響楽団が演奏を残しており、1949~53年のモノラル録音であるにも関わらず、現代でも耳にする機会がある。

吹奏楽編曲について編集

この曲は、吹奏楽編曲で演奏される機会がしばしばある(作曲者自身による吹奏楽版は存在せず、他の編曲家による譜面である。編曲譜も複数種類存在する)。特に、日本においては、アマチュアの吹奏楽団がコンクールで8分程度に抜粋短縮して演奏する例は非常に多い。

脚注編集

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e レスピーギ 交響詩〈ローマの祭〉. 株式会社全音楽譜出版社. (2011年7月15日) 
  2. ^ CBSソニートスカニーニ指揮 NBC交響楽団 CD(SICC 30345)

参考文献編集

関連項目編集

ローマ三部作を成す作品群