南海8200系電車(なんかい8200けいでんしゃ)とは、南海電気鉄道が保有する一般車両(通勤形電車)の一系列である。1982年に営業運転を開始した。

南海8200系電車
南海6200系電車(50番台)
南海電気鉄道8200系8705F(現・6552F)
現在全車が6200系50番台に改造済
(2006年6月24日 高野線住吉東駅付近)
基本情報
製造所 東急車輛製造
製造年 1982年 - 1985年
製造数 18両
改造所 南海電鉄千代田工場
改造年 2013年 - 2015年
改造数 18両
消滅 2015年10月(8200系)
主要諸元
編成 6両固定
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1500 V 架空電車線方式[1]
最高運転速度 100 km/h
設計最高速度 115 km/h[1]
起動加速度 2.5 km/h/s[1]
(乗車率 200 % まで一定)
減速度(常用) 3.7 km/h/s
(乗車率 200 % まで一定[1]
減速度(非常) 4.0 km/h/s
(乗車率 200 % まで一定[1]
車両定員 160人(先頭車)[1]
170人(中間車)[1]
車両重量 26 t(先頭車)[1]
38 t(中間車)[1]
最大寸法
(長・幅・高)
20,825 mm × 2,740 mm × 4,000 mm(先頭車)[1]
20,725 mm × 2,740 mm × 4,130 mm(集電装置付き中間車)[1]
20,725 mm × 2,740 mm × 4,000 mm(集電装置なし中間車)[1]
車体 ステンレス
主電動機 複巻整流子電動機
MB-3280-AC
かご形三相誘導電動機
TDK-6314-A
(6200系 50番台)[2]
主電動機出力 160 kW(8200系)
200 kW(6200系 50番台)[1][2]
駆動方式 WN式平行カルダン[1]
歯車比 5.31 (85:16)[1]
編成出力 2,560 kW(8200系)
2,400 kW(6200系50番台)
制御装置
制動装置 電磁直通ブレーキ
回生発電ブレーキ併用、抑速ブレーキ付き[1]
回生ブレーキ(遅れ込め制御全電気ブレーキ)併用、抑速ブレーキ付き(6200系50番台)
保安装置 南海型ATS[1]
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本項では、更新車である南海6200系電車50番台(なんかい6200けいでんしゃ50ばんだい)についても記述する。

概要

三日市町 - 橋本間の複線化工事の進展で運用数が増加した高野線区間運転用として、工事の進捗や需要の増加に合わせ1982年、1984年1985年に各1編成ずつ東急車輛製造で製造された、高野線オールステンレス製の20 m級両開き4扉通勤車である。

1975年に試作された電機子チョッパ制御車である8000系の使用実績[注 1]を踏まえた上で、8000系と同様に電機子チョッパ制御装置を採用した車両を導入するか、界磁チョッパ制御装置を採用した車両を導入するかが検討された。

製造費、電力費、勾配線における回生効率、平坦区間での高速走行特性等を考慮して、総合的に低コストな界磁チョッパ制御が南海で初めて採用された。

現在までに存在したのは6両固定編成のみだが、導入当時は基本組成を2M2Tの4両または4M2Tの6両とし、それらの組み合わせで4・6・8・10両と多様な編成を組めることを目指していた[3]

2013年以降、更新工事(後述)を受け、現在は製造された18両すべてが6200系50番台へ編入されている。

製造

6両固定編成が3編成、合計18両が製造された。

形式

  • クハ8701形 - 制御車
  • モハ8201形 - 中間電動車。奇数車と偶数車でペアを組む1C8M制御車。
奇数車 (M1)(難波寄り) - 集電装置(パンタグラフ)と主制御器を搭載する。
偶数車 (M2)(橋本寄り) - 140 kVA電動発電機空気圧縮機蓄電池を搭載する。
6両編成
 
← 難波
橋本・和泉中央 →
形式 クハ8701
(Tc1)
モハ8201
(M1)
モハ8201
(M2)
モハ8201
(M1)
モハ8201
(M2)
クハ8701
(Tc2)
竣工
搭載機器 CONT, PT×2 MG, CP CONT, PT×2 MG, CP
車両番号 8701 8201 8202 8203 8204 8702 1982年3月10日
8703 8205 8206 8207 8208 8704 1984年3月12日
8705 8209 8210 8211 8212 8706 1985年8月8日

車体

 
無塗装時代の8200系

車体は有限要素法による軽量ステンレス構造の採用により更なる軽量化が図られているが、側面腰板部のコルゲーションは従来通りである。

窓配置は既存の6200系などを踏襲し、クハがd1D2D2D2D1、モハが2D2D2D2D1(d:乗務員扉、D:客用扉)で戸袋窓はなく、モハは車端部の窓が1枚の方が難波寄り、2枚の方が橋本寄りとなる。

前面デザインも6200系のそれを基本とするが、妻面と側板や屋根板の接合部分にFRP製の縁飾りが取り付けられ、いわゆる額縁状のデザインとされた他、前面窓の下辺が引き下げられて大型化したため、ごくわずかな変更ながら印象は6200系と大きく異なる。

竣工当初は各編成とも無塗装仕上げであったが、関西新空港開港に伴うCI戦略によりオレンジと青のストライプを貼付した現行標準塗装に変更された。

最終増備の1本は当時製造が始まったばかりの9000系と同じ意匠が採り入れられ、車側灯が縦型に変更されている[4][注 2]。このほか前面の額縁の形状も9000系と同一のものに変更されている[4]

接客設備

アコモデーションは6200系に準じ、シンプルなロングシート車である。

1984年3月竣工の8703Fからは、吊り手棒受けの形状が変更されている[5]

冷房装置は従来通り冷凍能力 10,500 kcal/h (12.2 kW) の三菱電機 CU-191A形 集約分散式を各車4基ずつ搭載[1]し、車内には混雑時の冷房効率を高めるための補助送風機として、三菱電機開発のラインデリアが新たに4台設けられた[1]。しかし、最終増備の1本はロータリーコンプレッサー搭載の CU-191B に変更されている[4]

主要機器

主電動機

界磁チョッパ制御器の動作の関係で直流複巻整流子電動機の三菱電機 MB-3280-AC形(端子電圧 375 V時、定格出力 160 kW)がモハに各4基ずつ装架されていた[1]。駆動システムはWN式平行カルダンドライブ[1]歯数比は85:16(5.31)である[1]

主制御器

三菱電機 FCM-218-15MRDH 界磁チョッパ制御器[1]を、モハの奇数車に2基の東洋電機製造 PT-4803-A-M形 下枠交差式パンタグラフ[1]と共に搭載していた。

この主制御器は通常の電動カム軸抵抗制御器GTO素子による界磁チョッパ制御器とのペアで構成され、高野線の勾配区間での使用を前提に通常の回生ブレーキに加え、抑速回生ブレーキ機能が追加された。発生電圧過大等による回生失効時は、車載抵抗器による発電制動に自動的に切り替わる機構を搭載し、非常時のフェイルセーフを確保する設計となっている。1984年3月竣工の8703Fからは力行直並列切り替え時の前後動ショック防止策もなされ[4]、1987年11月にはモニタ装置も制御装置の外側に追加された[4]

台車

従来通り、2枚の板ばねで軸箱を支持する平行支持板式(SU式)ダイレクトマウント空気ばね台車である、住友金属工業FS-392B(モハ)・092(クハ)を装着する[1]

ブレーキ

HSC電磁直通空気ブレーキに回生制動との同期機能を付加したHSC-Rを搭載する[1]

6200系50番台

 
6200系50番台(6553F)
 
改造中の車体
(南海電車まつり2014会場にて)

VVVFインバータ制御が主流になった近年、需要がなくなった界磁チョッパの更新部品が徐々に製造されなくなり、部品調達困難な状況となっていた。そのため、機器更新時に界磁チョッパのままの更新を断念し、新調のVVVF制御方式に変更する方策が打ち出された。これにより、8200系は制御機器積み替えを主な工事とする大改造が施されることとなった[6][7]。2013年から6200系4両編成に続いて更新工事が始まり、同時に6200系50番台へと形式変更されている。

更新工事

6200系4両編成と基本的には同じ内容であるが、6両編成であるために内容が見直されている部分がある。

更新工事により6000系6300系の2両と併結し8両編成を組むことが可能になった[8]

なお更新3本目の6553Fでは、工事と同時に客室灯がLED照明に変更されており、更新済みの2本も追って改造されている[7]

動向

2013年11月に8703Fから改造された6551Fが更新工事を終えて出場し、営業運転を開始した[9]。その後2014年10月に6552F(元8705F)が、2015年10月には6553F(元8701F)がそれぞれ更新工事を終えて営業運転に就いている[10]。これにより、8200系は形式としては消滅したことになる。また、南海で三菱電機製の主制御器を使用する車両も無くなっている。

運用

8200系であった時は同形式・異形式関係なく併結は行われていなかった。 更新工事により、従来通りの6両編成での単独運転のほか、6000系や6300系2両と併結した8両編成でも運転されるようになった[8]。このためモハ6250形には女性専用車両ステッカーが貼られている[注 5]

なおシステム上は6200系0番台、6000系、6300系の4両と併結した10両編成も組成可能であるが、現行ダイヤでは10両編成で運転される列車がないため実績はない。

編成

※()内の番号は8200系として製造された時の番号。

 
難波
形式 クハ6550 モハ6270 サハ6850 モハ6250 モハ6260 クハ6560
形式 Tc1 M3 T M1 M2 Tc2
搭載機器 SIV VVVF, CP, PT×1 VVVF, CP, PT×2 VVVF SIV
車両番号 6551 (8703)
6552 (8705)
6553 (8701)
6271 (8205)
6272 (8209)
6273 (8201)
6851 (8206)
6852 (8210)
6853 (8202)
6251 (8207)
6252 (8211)
6253 (8203)
6261 (8208)
6262 (8212)
6263 (8204)
6561 (8704)
6562 (8706)
6563 (8702)

「サハ685X」を名乗る形式は2代目となる[注 6]。なお、6200系50番台以降の新形式車については、系列のなかでの電動車・制御車・付随車等の付番を以前の「xxx1形」標準[注 7]から「xxx0形」標準へ変更している[11][12]

脚注

注釈

  1. ^ 営業運転中の回生率は30〜32 %という高いものだった[3]
  2. ^ これは車体更新後の6100系や6300系も同じ。
  3. ^ 6200系VVVF更新車のTDK-6313-A型とほぼ同一のモーターであるが、それぞれの更新前の主電動機であるMB-3072型とMB-3280型とは主電動機取り付け部の形状が異なるため違う形式のモーターとなっている。
  4. ^ 進行方向左側の扉開閉案内は女性の声、右側は男性の声と使い分けられている。8両編成での運転時は、本車両が後部に連結されている場合(下り列車)にのみ使用でき、またこの場合には、前部に連結されている車両(6000系・6300系)に対しても扉開閉が予告放送される。
  5. ^ 平日朝ラッシュ上り(難波行き)の8両編成の急行・区間急行(泉北線からの直通列車を含む)では、前から4両目の車両が女性専用車両となる。
  6. ^ 6100系の付随車だったサハ6851形は6300系へ改造された際にサハ64xx形へ改番された。
  7. ^ ただし11001系21000系30000系31000系には、「xx100形」と付番された車両がある。これらは全て中間車で、初番もxx100番から始まっている。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa 『電気車の科学』通巻412号、p.45
  2. ^ a b c 「南海電気鉄道 現有車両主要諸元表」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、276頁以下。
  3. ^ a b 『電気車の科学』通巻412号、p.44
  4. ^ a b c d e 「私鉄車両めぐり〔153〕南海電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1995年12月臨時増刊号(通巻615号)、電気車研究会、1995年、238-239頁。
  5. ^ 「私鉄車両めぐり〔130〕南海電気鉄道」『鉄道ピクトリアル』1985年12月臨時増刊号(通巻457号)、電気車研究会、1985年、191頁。
  6. ^ 「6200系6251型(旧8200系) 解説」『南海電鉄車両大全第1巻』南海電気鉄道、2017年、32頁。
  7. ^ a b 「車両総説」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、55頁。
  8. ^ a b 【南海】6551編成、併結運転を開始”. 鉄道ホビダス (2013年12月18日). 2013年12月28日閲覧。
  9. ^ 南海6551編成が営業運転を開始”. 『鉄道ファン』交友社 railf.jp 鉄道ニュース (2013年11月30日). 2013年12月1日閲覧。
  10. ^ 「南海電気鉄道 現有車両履歴表」『鉄道ピクトリアル』2023年10月臨時増刊号(通巻1017号)、電気車研究会、2023年、288-289頁。
  11. ^ 「大手私鉄車両ファイル 車両配置表」、『鉄道ファン』2016年8月号特別付録、交友社、2016年。
  12. ^ 『鉄道ダイヤ情報』第366号、p.44、交通新聞社、2014年10月号。

参考文献

  • 花岡徹「南海高野線用8200系概説」『電気車の科学』第412号、電気車研究会、1982年8月、44-51頁。