熱田線(あつたせん)は、かつて愛知県名古屋市に存在した、名古屋市電路線路面電車)の一つである。同市中区の栄停留場から南区の内田橋停留場までを結んでいた。

熱田線
概要
現況 廃止
起終点 起点:栄町電停
終点:内田橋電停
駅数 15駅
運営
開業 1908年5月3日
市営化 1922年8月1日
廃止 1974年3月31日
所有者 名古屋電気鉄道
名古屋市交通局
   (名古屋市電
路線諸元
路線総延長 6.2km
軌間 1,067 mm (3 ft 6 in)
電化 直流600 V 架空電車線方式
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路線概略図 
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路線廃止時の電停
uexHST
それ以前に廃止された電停

tSTRq
tSTRq
栄駅
1号線
2号線
uexSTRq
uexSTRq
0.0 栄電停
大津町線
栄町線
uexHST tSTR
南大津町電停 -1918
uexBHF tSTR
0.4 白川通大津電停
矢場町駅
uexSTRq
0.7 矢場町電停 千早線
uexHST tSTR
矢場地蔵前電停 -1918
uexBHF tSTR
0.9 赤門通電停
uexHST tSTR
(1.2) 小林町電停 -1918
uexSTRq
uexSTRq
1.3 上前津電停
御黒門線公園線
右:上前津駅
uexHST tSTR
春日町電停 -1918
uexHST tSTR
(1.5) 不二見町電停 -1943休
uexBHF tSTR
1.7 下前津電停
2.0 東別院電停 右:東別院駅
uexHST tSTR
東雲町電停 -1918
tSTR3
2.5 古沢町電停
tSTRc2
tSTRc4
tSTRc2 tSTR3+1
(2.7) 専売局前電停
tSTRc4 uexHST
(2.8) 金山橋電停 (I) -1944 /左:金山駅
STRq STRq
金山橋 国鉄中央本線 金山駅
vSTRc3
uexkSTR2+r uexkSTRc3
金山橋電停 (II) 八熊東線東西連絡線
vSTRl+4 uxmKRZvo
vSTR+r uexkSTR+4
高座橋
名鉄名古屋本線 金山橋駅
国鉄:東海道本線
emtKRZ uexSTRq uexTBHFx uexSTRq emvKRZu uexABZql
3.1 沢上町電停 八熊東線
xtKRWgr uexKDSTaq uexABZgr+r
SHI3+r
沢上電車運輸事務所
2号線
4号線(建設中)↓
extSTR uexHST STR STR
(3.2) 沢上車庫前電停 -1943休
extSTR uexHST STR STR
(3.5) 大薬師電停 -1918
extSTR uexBHF STR STR
3.8 高蔵電停
extSTR uexHST STR STR
(4.2) 横田町電停 -1918
exmtKRZ uexSTRq
HUBq
STR
4.6 熱田駅前電停
築港線
右:熱田駅
extSTR
STR STR
(4.9) 名鉄本社前電停 -1943
extSTR
HUBtf-3
5.1 熱田神宮前電停 /右:神宮前駅
extSTR uexSTRc2
STR STR
(5.3) 神宮東門電停 -1943
extSTR uexSTR+1 uexSTRc4 exvSTR+lo-SHI1+r
右:神宮前駅“西駅”
 
extSTR
HUBq
KRZ3+1u STR+c4
(5.5) 秋葉前電停 -1944 /右:秋葉前駅
uexSTR3 STRc2 xd-KRZ3+1u xdKRZ3+1u- STR+c4 STRl
名鉄:名古屋本線→
eKRZt extSTRq
4号線(建設中)→
uexBHF STR
d STR
5.7 熱田伝馬町電停 伝馬町信号所
uexSTR
d STRl STRq
傳馬町駅/国鉄:東海道本線→
uexWBRÜCKE1 WASSERq WBRÜCKE1
新堀川
uexBHF STR2 STRc3
6.2 内田橋電停
uexABZg2 uexSTRc3 STRc1
STRc3
名鉄:常滑線
uexSTRc3 STRc1 STR2+4 STRc3
左:東築地線 -1940
右:大江線 1940-

地下鉄4号線は沢上 - 熱田伝馬町間廃止から42日後開業。

歴史

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栄町線(広小路線)の開業により経営が軌道に乗った名古屋電気鉄道は、次なる路線として本町から熱田に至る南北線の建設に取り掛かろうとしていた[1]。しかし、特許を受けた本町通は幅員狭小であり、沿線の末広町、門前町、橘町らの住民が建設反対運動を展開した[2]。富裕商家である沿線住民の政治的発言力は強く、1899年(明治32年)9月13日名古屋市会決議により、道路が拡幅されるまで敷設の延期が指示されてしまった[2]。会社はやむなく熱田線の計画を中断し、押切線を先に建設する方針に変更した[2]。押切線建設の間も会社は沿線民との交渉を継続し、本町通の有力者である富田重助を役員に加えるなど策を講じていた[3]。熱田線計画と競合するような乗合バスの申請の動きもあり、会社は早期建設を目指して地元との折衝を急いでいたが、日露戦争の勃発によりこれも中断されてしまう[3]

日露戦争後、愛知県および名古屋市は熱田町(名古屋市編入予定)にある熱田港(現・名古屋港)の改修と大津町通の拡幅を計画した。名古屋市中心部と港とを結ぶ交通機関が求められていた事もあり、会社は従来の本町通案を撤回し、大津町通を自治体と共同で拡幅して軌道を敷設する計画に切り替えた(道路拡幅負担額は名古屋電鉄が20万円、名古屋市が20万円、熱田町が3万円を負担)[3]。大津通拡幅の協議自体は1905年(明治38年)11月に合意したものの、熱田港改修の負担額を巡って愛知県議会三部会内の紛糾(郡部会・市部会・連帯会のうち前2者間の対立)があり、大津町通拡幅の遅延の影響で熱田線栄町 - 熱田駅前間の開通は1908年(明治41年)5月3日までずれ込んだ[4]

会社の負担は20万円に加えて敷設費40万円を要したため、1906年(明治39年)9月12日に資本金を50万円増資し100万円とした[4]。また、建設に使用されたレールは横浜市電から購入した溝付45kg軌条であった[5]

熱田線の営業成績は好調で会社収入も増加し、株価も高騰した[4]。熱田線の成功は名古屋電鉄に郊外路線建設に対する自信をもたらし、後年の郡部線建設へとつながってゆく[6]

熱田線は地下鉄2号線・4号線(現・名城線)と並走していたため、路線廃止も地下鉄の開業に呼応するものだった[7]。栄 - 金山橋間は2号線栄 - 金山間が開業してしばらくの間は営業を続けていたが、地下鉄開業約1年後の1968年(昭和43年)2月1日に廃止された[7]。沢上町 - 内田橋間は地下鉄4号線開業に伴う人員配置転換のため全廃一歩手前の1974年(昭和49年)2月16日に廃止され[8]、残された金山橋 - 沢上町間は市東部の残存路線と金山とを結ぶ目的で最後まで残った[9]

年表

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特記なき項は『日本鉄道旅行地図帳』7号を典拠とする[10]

停留場

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停留場名[10] 読み[10] キロ程[10] 接続路線
さかえ 0.0 名古屋市電栄町線大津町線
名古屋市営地下鉄1号線2号線栄駅
白川通大津 しらかわどおりおおつ 0.4
矢場町 やばちょう 0.7 名古屋市電:千早線(1944年休止)
名古屋市営地下鉄:2号線(矢場町駅
赤門通 あかもんどおり 0.9
上前津 かみまえづ 1.3 名古屋市電:御黒門線・公園線
名古屋市営地下鉄:2号線(上前津駅
下前津 しもまえづ 1.7
東別院 ひがしべついん 2.0 名古屋市営地下鉄:2号線(東別院駅
古沢町 ふるさわちょう 2.5
金山橋 かなやまばし 名古屋市電:八熊東線東西連絡線(1954年廃止)
名古屋市営地下鉄:2号線(金山駅
国鉄中央本線(金山駅)
名鉄名古屋本線(金山橋駅)
沢上町 さわかみちょう 3.1 名古屋市電:八熊東線
高蔵 たかくら 3.8
熱田駅前 あつたえきまえ 4.6 名古屋市電:築港線(1971年廃止)
国鉄:東海道本線熱田駅
熱田神宮前 あつたじんぐうまえ 5.1 名鉄:名古屋本線・常滑線神宮前駅
熱田伝馬町 あつたてんまちょう 5.7 名古屋市電:東築地線(1940年廃止)
内田橋 うちだばし 6.2 名古屋市電:大江線


脚注

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  1. ^ 『名古屋鉄道社史』 p.37
  2. ^ a b c 『名古屋鉄道百年史』 p.40
  3. ^ a b c 『名古屋鉄道百年史』 p.44
  4. ^ a b c 『名古屋鉄道百年史』 p.47
  5. ^ 『市営三十年史』 後編p.43
  6. ^ 『名古屋市電(上)』 p.13
  7. ^ a b 『名古屋市電(中)』 p.20
  8. ^ 『名古屋市電(下)』 p.32
  9. ^ 『名古屋市電(下)』 p.37
  10. ^ a b c d 『日本鉄道旅行地図帳』7号 pp.55-56
  11. ^ 「名古屋市路面電車一部廃止軽微認定 運輸審議会」『交通新聞』交通協力会、1968年1月18日、1面。

参考文献

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  • 名古屋市交通局(編)『市営三十年史』名古屋市交通局、1952年。 
  • 名古屋鉄道株式会社社史編纂委員会(編)『名古屋鉄道社史』名古屋鉄道、1961年。 
  • 名古屋鉄道広報宣伝部(編)『名古屋鉄道百年史』名古屋鉄道、1994年。 
  • 服部重敬『名古屋市電(上)』ネコ・パブリッシング、2013年。ISBN 978-4777053520 
  • 服部重敬『名古屋市電(中)』ネコ・パブリッシング、2013年。ISBN 978-4777053551 
  • 服部重敬『名古屋市電(下)』ネコ・パブリッシング、2013年。ISBN 978-4777053575