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姚際恒

1647-1715, 清の文筆家。『古今偽書考』撰

姚 際恒（よう さいこう、1647年（順治4年） - 1715年（康熙54年）頃[1]）は、中国清初の学者・文人・蔵書家。字は立方・首源[2]。中国古典の偽書説を多く論じ、民国初期の顧頡剛ら疑古派に影響を与えた。

姚際恒
繁体字 姚際恆
簡体字 姚际恒
発音記号
標準中国語
漢語拼音Yáo Jìhéng

人物 編集

伝記資料が乏しく、資料間で情報が食い違うこともある[3]。

安徽省徽州府休寧県に生まれ、浙江省杭州府仁和県に住んだ[4]。湖（おそらく西湖）を西に望む居所を「海峰閣」と号し、そこに書籍・書画・金石を多く収蔵した[1]。毛万齢（中国語版）・毛奇齢兄弟と親交し、毛奇齢を介して閻若璩とも交流した[5]。

受容・評価 編集

「疑古」も参照

閻若璩は『尚書古文疏証』で主張が偶然一致したことから、姚際恒の説をしばしば引用している[6][7]。

清末までほぼ無名の学者だったが、民国初期の疑古派の創始者顧頡剛によって再評価された。顧頡剛は、胡適との往復書簡形式で姚際恒について発信するとともに、著作の輯佚・再刊を進めた[8][9]。

著作 編集

著作の大半が散佚している[10]。

  • 『九経通論』 - ほぼ散佚。「詩経通論」などが残る[10]。完成に14年の歳月を費やし約170巻に及んだ大著[11]。
  • 『庸言録』 - 散佚[10]。『四庫提要』所載[12]。『古今偽書考』は元々本書の付録だった[13]。
  • 『古今偽書考』 - 現存。詳細下記。
  • 『好古堂書目』 - 現存。収蔵する書籍の目録。刊本ではなく写本によって伝わる[10]。
  • 『好古堂書画記』 - 現存。収蔵する書画・金石の目録。顧修撰『読画齋叢書』に収録されて伝わる[14]。
  • 呉振棫編『杭郡詩輯』に、詩がいくつか収録されている[14]。

古今偽書考 編集

本書は題名通り書籍の偽書説を論じる。その過程で、先人の偽書説を多く引用・検討している。具体的には、柳宗元『柳河東集』、欧陽脩等『崇文総目』、陳振孫『直斎書録解題』、晁公武（中国語版）『郡斎読書志』、高似孫『子略』、宋濂『諸子辨』、胡応麟『四部正譌』、楊慎『升庵集』、そして同時代人の顧炎武らの偽書説を引用している[15]。

本書の特徴として、『孝経』や『周礼』といった経書の偽書説も躊躇せず扱うこと、諸子百家を中立的に扱うこと等が挙げられる[16]。ただし、真偽の判断が強引な場合もあり、そこは顧頡剛も批判している[17]。

顧頡剛は本書を校訂整理し標点を付した上で、編著『古籍考辨叢刊』に収録して世に広めた[14]。注釈書に黄雲眉『古今偽書考補証』がある。

脚注 編集

  1. ^ a b 村山 1960, p. 39.
  2. ^ 村山 1960, p. 36.
  3. ^ 村山 1959, p. 78.
  4. ^ 村山 1959, p. 77.
  5. ^ 村山 1960, p. 39-41.
  6. ^ 梁 1974, p. 39（小野注文）.
  7. ^ “尚書古文疏證八 第99頁 (圖書館) - 中國哲學書電子化計劃” (中国語). ctext.org. 2021年3月18日閲覧。
  8. ^ 村山 1986, p. 28.
  9. ^ 顧頡剛著、平岡武夫訳 1987, p. 217f.
  10. ^ a b c d 村山 1986, p. 29.
  11. ^ 村山 1960, p. 38.
  12. ^ 全國漢籍データベース 四庫提要 庸言録 - 京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター
  13. ^ 村山 1986, p. 30-31.
  14. ^ a b c 村山 1986, p. 31.
  15. ^ 村山 1959, p. 83.
  16. ^ 村山 1959, p. 85-87.
  17. ^ 村山 1986, p. 33.

参考文献 編集

  • 顧頡剛著、平岡武夫訳『ある歴史家の生い立ち 古史辨自序』岩波書店〈岩波文庫〉、1987年（原著訳の初出は1940年創元社、原著は1926年『古史辨』第1巻所収）。ISBN 978-4003344217。 （訳者解説に輯佚の詳細あり）
  • 梁啓超 著、小野和子 訳『清代学術概論』平凡社〈東洋文庫〉、1974年（原著1923年）。ISBN 4582802451。 
  • 金谷治「疑古の歴史」『金谷治中国思想論集 下巻』平河出版社、1997年。ISBN 978-4892032875。 
  • 村山吉廣「姚際恒の学問――｢古今偽書考｣について(上)」『漢文学研究』第7巻、早稲田大学漢文学研究会、1959年。 NDLJP:1863639
  • 村山吉廣「姚際恒の学問――｢古今偽書考｣について(中)」『漢文学研究』第8巻、早稲田大学漢文学研究会、1960年。 NDLJP:1863640
  • 村山吉廣「姚際恒の学問――｢古今偽書考｣について(下)」『漢文学研究』第9巻、早稲田大学漢文学研究会、1961年。 NDLJP:1863641
  • 村山吉廣「姚際恒の礼記通論」『フィロソフィア』第45巻、早稲田大学哲学会、1963年。 NDLJP:4417774
  • 村山吉廣 「姚際恒論」『中国文学論集 目加田誠博士古稀記念論集』龍渓書舎、1974年。NDLJP:12573550
  • 村山吉廣「『古今僞書考』補説」『東洋の思想と宗教』第3巻、早稲田大学東洋哲学会、1986年。http://toutetsu.gakkaisv.org/tgt/T03/028-036_T03_1986.pdf。 

外部リンク 編集

 
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