小数点(しょうすうてん、英語: decimal separatorまたはdecimal marker[1])とは、実数を数字列で表記したときの整数部と小数部との境を表す記号であり、アラビア数字の場合、「ピリオド」(:dot)または「コンマ」(comma)が用いられる。現代の日本では、ピリオドを用いることがほとんどである。

3 . 14
整数部  小数点  小数部   小数点は「ピリオド」(イギリス式)
3 , 14
整数部  小数点  小数部   小数点は「コンマ」(フランス式)

用語編集

日本語では単に「小数」ということが多い。英語では、decimal pointdecimal separatordecimal marker などと呼ばれる。point はまさしく「点」であり、小数点としてピリオドを用いる国・文化では問題がない。しかし、小数点としてコンマを用いる国ではそぐわないので、decimal separator,decimal marker が好まれる。英語版ウィキペディアではen:decimal separetorを用い、国際度量衡委員会国際単位系(SI)の英語版において、decimal marker を用い、正式の仏語版では séparateur décimal を用いている[2][3]( (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センターの日本語訳では、「小数点」と訳している)。IUPACでは、decimal sign の語を用いている[4]

ピリオド」は、「点」(dot 又は point)を意味するが、中黒やミドル・ドット(middle dot)と区別するために、より正確には、point on the line が紛れがなく、国際単位系(SI)の英語版でも、この語を使っている[5]。これに対して、コンマを正確には comma on the line としている。

無線通信で小数点を表現する際は誤認を防止するため、小数点を「デシマル」あるいは「ポイント」と発声する。

二つの方式編集

小数点として点(point on the line)を用いるか、コンマ({{{2}}})を用いるかは、国、地域、文化によってまちまちである。ごく大まかには、イギリス、米国、日本、中国、インドでは「点」を用い、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシアでは「コンマ」を用いる。以下では、国際単位系(SI)での呼び方にならって、「点」を用いる方式を「イギリス式(British practice)」、「コンマ」を用いる方式を「フランス式(French practice)」と呼称する[6]

イギリス式編集

ピリオドと同じ記号で、ベースライン上に置かれた小さな黒丸(point on the line)で表す。イギリス方式の場合、整数部の桁の区切り(3桁ごと)には、コンマ「 , 」(comma on the line)が用いられる。小数部の桁の区切り(3桁ごと)には半角スペースを用いる。

例: 450,225.34   0.168 588 478

ミドル・ドットの使用編集

イギリスでは数字の中央の高さに記す「 · 」(ミドル・ドットen:middotまたはインタープンクトen:interpunct)で表すこともあり[7]、1970年代までよく使われたが、現在はコンピュータの普及によって、ミドル・ドットの使用は激減した。しかし、例えば、世界五大医学雑誌のひとつである「ランセット」の投稿規定は、原稿を電子ファイルで提出する場合に、小数点をミドル・ドットで記述することを要求している[8][9]

日本でも、数学記号の規格を定めるJIS Z8201-1981 は、紛らわしくないときはミドル・ドット(規格上は「中の点」)の使用を認めている[10][11]

フランス式編集

コンマ「 , 」(comma on the line)が小数点として用いられる。整数部の桁の区切り(3桁ごと)には、ピリオド「 . 」(point on the line)が用いられる。小数部の桁の区切り(3桁ごと)には半角スペースを用いる。

例: 450.225,34   0,168 588 478

国際単位系(SI)など編集

国際単位系(SI)では小数点について、イギリス式でもフランス式でも、どちらでもよいと規定している。ただし、桁の区切りについては、整数部でも小数部でも、スペース( space)に限るとしていて[12](2006年の基準書では、半角のスペースthin space)と規定していた。[13][14])、ピリオドやコンマの使用を禁じている。

例(イギリス式): 43 279.168 29   不適例: 43,279.168,29[15]

例(フランス式): 43 279,168 29   不適例: 43.279,168.29[16]

1948年第9回国際度量衡総会の決議7で「数値において、コンマ(フランス式)またはピリオド(イギリス式)は数値の整数部分と小数部分とを分けるためにだけ用いられる」、「数値は読取りを容易にするために(整数部も小数部も)3桁ずつに区切ってよい。ただし、その区切りの空白に決してピリオドもコンマも挿入してはならない」と定め、2003年第22回国際度量衡総会の決議10で再確認された[2][3]

小数点表記の、国家や言語による差異は重大な誤解が危惧されるので、国際標準を策定するISOIECなどは、英語を含む全ての言語表記でフランス式を統一的に用いると定めている。

しかし、英語は事実上の世界標準言語であることから、英語表記ではイギリス式に統一することを英語圏の諸国が国際機関に働きかけている。

小数点の前のゼロの表記編集

数字が+ 1 と −1 の間にある場合は、小数点の前に常にゼロ(0)を置く。かつては、0.05 を最初のゼロの表記を省略して、.05 と書くことがあった。しかし、現在では、国際単位系(SI)でも日本のJISでも、小数点の前のゼロは省略してはならないことを規定している[17]

 例: -.234  → -0.234

日本編集

  • JIS Z8201-1981(数学記号)は、前述(小数点#二つの方式#イギリス式#ミドル・ドットの使用)のとおり、”下の点”すなわち point on the line と規定しているが、紛らわしくないときは ”中の点” すなわち middle dot の使用を認めている。この ”中の点”は、通常、中黒「・」である。例えば、3・14 と書くことが許容されている。
  • JIS規格の様式を定めているJISZ 8301:2019においては、「小数点は,“.”(ピリオド)を用いて表す。」と規定している。ただし、ISO規格を基礎とした規格の表(数値が大量の場合)・式などをそのまま転載する場合は、“,”(コンマ)を用いても良いとしている。これは、すべてのISO規格は小数点としてコンマを用いており、表中の大量のコンマをピリオドにいちいち変換する手間を省くことと、その変換による間違いを防ぐ趣旨からの規定である。そして、注記「この表は,対応国際規格の表をそのまま転載したものであり,小数点の表記を対応国際規格の表記どおり“,”のままとしている。」を付すように規定している[18]。また、この規格では、小数点の不適切な例として「0・001」(点がミドル・ドット middle dot) を例示しており、JIS Z8201(数学記号)とは齟齬がある[19]
3
1
4
  • 漢数字の場合は、横書きでも縦書きでも小数点を中黒「・」で表す。例えば 32.8 を「三二・八」と表記する。

日本語では小数点を「コンマ」と言い表すことがあり、例えば、0.3秒を「コンマ3秒」と言う。また「コンマ以下(人の価値、度量、人物が人並み以下であること)[20]」という言い回しがある。これらは、明治期に小数点としてコンマを用いるフランスの方式が入ったことによる[21]

アラビア語圏編集

数字を左から右へ書き表すアラビア語では、Momayyezの「 ٫ 」 (U+066B) が使用される。例:9,999.99は۹٬۹۹۹٫۹۹‎と書く。

各方式の比較編集

「千百二十三万四千五百六十七点八九一二三四五六」はそれぞれ下表のごとく表す。

国際単位系(SI) 11 234 567.891 234 56 または 11 234 567,891 234 56
日本、中国、台湾、韓国 11,234,567.891 234 56、11234567.89123456 又は 11 234 567.891 234 56 縦書きは 千百二十三万四千五百六十七・八九一二三四五六
イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア 11,234,567.891 234 56 (イギリスでは、11,234,567·891 234 56 もある。)
フランス南アフリカ 11 234 567,891 234 56
ドイツイタリアスペインポルトガル 11.234.567,891 234 56
インド 112,34,567.891 234 56
アラビア ١١٬٢٣٤٬٥٦٧٫٨٩١٢٣٤٥٦

中南米スペイン語圏の多くの国々では、フランス式であるが、近年は合衆国の影響でイギリス式も増えており、特に中米ではイギリス式を一般的に用いる国が多い。

小数点記号の分布編集

 
小数点記号の分布
  青:ピリオド
  黄緑:コンマ
  緑:ピリオドとコンマ両方
  赤:Momayyez
  灰:不明

イギリス式(ピリオド)編集

オーストラリアブルネイボツワナカナダ英語を使う場合)、ドミニカ共和国グアテマラ香港インドアイルランドイスラエル日本ケニア韓国北朝鮮レバノンマレーシアマルタメキシコネパールニュージーランドニカラグアナイジェリアパキスタン中国フィリピンシンガポールスリランカスイススイス・フランを表記する場合)、台湾タンザニアタイウガンダイギリス米国ジンバブエ

フランス式(コンマ)編集

アルバニアアンドラアルゼンチンアルメニアオーストリアアゼルバイジャンベラルーシベルギーボリビアボスニア・ヘルツェゴビナブラジルブルガリアカメルーンカナダフランス語を使う場合)、コスタリカクロアチア(公式にはコンマだが、それ以外ではピリオドも使われる)、チリコロンビアキューバキプロスチェコデンマークドミニカ共和国エクアドルエストニアフェロー諸島フィンランドフランスドイツギリシャグリーンランドホンジュラスハンガリーインドネシアアイスランドイタリアカザフスタンラトビアレバノンリトアニアルクセンブルク(公式には両方使われる)、マカオ(ポルトガル語を使う場合)、マケドニア共和国モルドバモンゴルオランダノルウェーパナマパラグアイペルーポーランドポルトガルルーマニアロシアセルビアスロバキア南アフリカ(公式。ただしビジネス上はピリオドが一般的)、スロベニアスペインスウェーデンチュニジアトルコウクライナウルグアイベネズエラベトナム

Momayyez編集

バーレーンイランイラククウェートオマーンカタールサウジアラビアシリアUAE

注釈編集

  1. ^ JIS Z8201-1981(数学記号)の解説には、「審議中 特に問題になった事項」として次の記述がある(JIS Z8201-1981 数学記号(確認2015年)、p.566 解説、JISハンドブック56 標準化 (56;2020)、日本規格協会、2020年1月31日発行、ISBN 978-4542187900 )。 2.小数点について ISO 31/XI(Mathematical signs and symbols for use in the physical sciences and technology)では小数点は規定していないが、ISO 31/0(量、単位及び記号に関する一般原則)の3.3.2(小数点)で次のように規定している。
    ISO 31/0 の 3.3.2:小数点  小数点は、コンマがよい。点を用いるときは、下の点とする。数の大きさが1より小さいときは、小数点の前にゼロを置く。

    備考 ISO理事会の決定によれば、ISO文書では小数点はコンマである。また、ISO/Ⅰ~Ⅹ(各種物理量別の量記号及び単位記号)でも ”小数点には、コンマを用いる。英語の文書ではコンマ又は下の点が用いられる” との規定がある。 このようにISOとしては、小数点としてコンマと ”下の点”の両方を認め、国情により ”下の点”も用いてよいとしている。しかし、ISO文書(ISO規格その他)ではコンマを用いることにしている。 我が国の場合は、従来から小数点は ”下の点”を用いてきており、ISO31シリーズのDIS投票に際しても小数点としては ”下の点”を認めるように主張してきているので、従来どおり小数点は ”下の点”を用いる旨の規定をこのJISで明示しておくこととした。

脚注編集

  1. ^ 国際単位系(SI)における英語表現
  2. ^ The International System of Units (SI) 5.4.4 Formatting numbers, and the decimal marker, p.150, BIPM
  3. ^ The International System of Units (SI) 5.4.4 Écriture des nombres et séparateur décimal, p.38, BIPM
  4. ^ GUIDELINES FOR DRAFTING IUPAC TECHNICAL REPORTS AND RECOMMENDATIONS (2007) IUPAC, 11. Printing of Numbers
  5. ^ The International System of Units (SI) 9th ed. 5.4.4 Formatting numbers, and the decimal marker, p.150
  6. ^ SI 22nd CGPM, 2003, Resolution 10, Appendix 1 p.169
  7. ^ 例えば、Watson, C.M. (1910), British Weights & Measures, London: John Murray .[1]のp.13, "Roman foot of 11・65 inches,"とある。
  8. ^ Formatting guidelines for electronic submission of manuscripts THE LANCET,  "Type decimal points midline (ie, 23·4, not 23.4)."  
  9. ^ え?小数点を中ぽちに? Observation Island、2017年12月10日
  10. ^ JIS Z8201-1981 数学記号(確認2015年)、p.562、2.(1) 1.35 備考欄「下の点,紛らわしくないときは中の点でもよい。0.05を.05と略さない。」、JISハンドブック56 標準化 (56;2020)、日本規格協会、2020年1月31日発行、ISBN 978-4542187900
  11. ^ JIS Z8201-1981 2.(1) 1.35 備考欄「下の点,紛らわしくないときは中の点でもよい。0.05を.05と略さない。」
  12. ^ The International System of Units (SI) 9th ed. 5.4.4 Formatting numbers, and the decimal marker, p.150
  13. ^ 国際単位系(SI) (pdf)”. 5.3.4 数字の書式,及び小数点, 産業技術総合研究所 計量標準総合センター (2006年). 2018年6月7日閲覧。
  14. ^ The International System of Units (SI) 8th ed. 5.3.4 Formatting numbers, and the decimal marker, p.133
  15. ^ The International System of Units (SI) 9th ed. 5.4.4 Formatting numbers, and the decimal marker, p.150の欄外の例による。
  16. ^ The International System of Units (SI) 9th ed. 5.4.4 Écriture des nombres et séparateur décimal, p.38の欄外の例による。
  17. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.119  5.4.4 数字の形式および小数点、産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  18. ^ 規格票の様式及び作成方法 JISZ 8301:2019 9.2.1 「小数点、小数点は,“.”を用いて表す。ただし,対応国際規格を基礎とした規格で,数値が大量に記載されている表,式などをそのまま転載する場合には,“,”を用いてもよい。この場合には,注記でその旨を明記する。」
  19. ^ 規格票の様式及び作成方法 JISZ 8301:2019 9.2.1 「例1 0.001(不適切な例:0,001,0・001,.001) 」
  20. ^ 「コンマ以下」、日本国語大辞典、第8巻(こく~さこん)、第1版第2刷、小学館、1976年4月15日発行、p.518。
  21. ^ 「コンマ」、新明解国語辞典、第4版第10刷、三省堂、1992年3月20日発行、p.461。ISBN 4-385-13098-1