シュードマラカイト

擬孔雀石から転送)

擬孔雀石またはシュードマラカイト(Pseudomalachite)は、ヒドロキシ基を持つリン酸塩であり、炭酸塩鉱物孔雀石(マラカイト)と似ているため、「偽の」孔雀石を意味するギリシア語から命名された。どちらも緑色の二次鉱物で、しばしば互いに共生して、銅鉱床の酸化帯で見られる。ライヘンバッハ石ルドジバ石多形である。1813年に発見された。1950年までは、ジハイドライト、ルナイト、エーライト、タギライト、プラシンは別の鉱物種であると考えられていたが、ベリーは、いくつかの博物館が所蔵する、これらの名前が付けられた標本を分析して、これらが実際は擬孔雀石であることを発見した。これらの古い名前は、現在では国際鉱物学連合によって認められていない[5]

擬孔雀石
分類 リン酸塩鉱物
シュツルンツ分類 8.BD.05
Dana Classification 41.04.03.01
化学式 Cu5(PO4)2(OH)4
結晶系 単斜晶
対称 P21/c
単位格子 a = 4.47 Å, b = 5.75 Å,
c = 17.05 Å; β = 91.06°; Z = 2
モル質量 575.7 g/mol
晶癖 柱状のものは稀で、通常は不平坦状。腎臓状、ブドウ房状、繊維状、フィルム状
双晶 On {100}
へき開 Perfect on {100}, distinct on {010}
断口 多片状または貝殻状
モース硬度 4.5-5
光沢 ガラス光沢

暗いエメラルドグリーンから黒がかった緑色

Dark emerald green to blackish green
条痕 青緑色、鉱物より淡い色
透明度 半透明
比重 4.15 - 4.35 (測定)
光学性 二軸 (-)
屈折率 nα = 1.791 nβ = 1.856 nγ = 1.867
複屈折 δ = 0.076
多色性 Weak; X = bluish green to pale green; Y = yellowish green; Z = deep bluish gBiaxialen to blue-green
分散 Strong r<v. Also biaxial (+) r>v
溶解度 酸に可溶だが非発泡(温塩酸で発泡する孔雀石とは対照的)
その他の特性 非蛍光、非放射性
文献 [1][2][3][4]
プロジェクト:鉱物Portal:地球科学
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模式産地 編集

模式産地は、ドイツラインラント=プファルツ州ヴェスターヴァルトにあるヴァインバーグ鉱山である。ローマ時代に遡る古代からの銅鉱山であり、1872年まで断続的に採掘されてきた[1]模式標本は、ドイツフライベルクの鉱山学校(現在のフライベルク工科大学)に保管されている[3]

構造 編集

銅イオンには6つの酸素イオンが配位し、歪のある八面体を形成している[6]。これらの八面体は、陵を共有して結合し、bと平行な2種類の鎖を形成している。この鎖は、やはり八面体の陵を共有してお互いに結合し、bc平面に平行なシートを形成している。歪のあるリン酸基の四面体がシートに結合しているが、構造中の水素イオンの正確な位置については疑問がある[7]

環境 編集

銅鉱床の酸化帯の中で見られる二次鉱物である。オーストラリアニューサウスウェールズ州[8]ニューメキシコ州チノ鉱山[9]等、いくつかの場所では、燐銅鉱共生している。他の共生鉱物としては、燐灰石藍銅鉱玉髄珪孔雀石コルネ鉱赤銅鉱、孔雀石、緑鉛鉱黒銅鉱、酸化水酸化鉄等がある。

分布 編集

アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、チリ、チェコ共和国、コンゴ民主共和国、フランス、ドイツ、アイルランド、イスラエル、イタリア、日本、カザフスタン、マダガスカル、メキシコ、ナミビア、ノルウェイ、ポーランド、ポルトガル、コンゴ共和国、ルーマニア、ロシア、スロバキア、南アフリカ共和国、スペイン、イギリス、アメリカ合衆国、ザンビアで産出の報告がある。

出典 編集

  1. ^ a b http://www.mindat.org/min-3299.html Mindat.org
  2. ^ Pseudomalachite Mineral Data”. 2022年9月8日閲覧。
  3. ^ a b http://rruff.geo.arizona.edu/doclib/hom/pseudomalachite.pdf Handbook of Mineralogy
  4. ^ Gaines et al (1997). Dana’s New Mineralogy Eighth Edition. Wiley
  5. ^ Berry L G (1950). American Mineralogist 35: 365 to 385
  6. ^ Ghose, Subrata (1963) The Crystal Structure of Pseudomalachite. Acta Crystallographica 16:124-128
  7. ^ Shoemaker, G L, Anderson, J B and Kostiner, E (1977). American Mineralogist 62: 1042 to 1048
  8. ^ The Australian Journal of Mineralogy 3:50, 10:55, 10:79, 11:97 and 11:117 to 118
  9. ^ Rocks & Minerals (2009) 84:6 page 498