断捨離(だんしゃり)とは、

  1. 沖正弘が提唱したヨーガの思想[1]1976年の著書『ヨガの考え方と修業法 上巻』[2]において「断捨離」という語が使用されている。
  2. 作家やましたひでこが提唱し、商標登録する、不要な物を減らし、生活に調和をもたらそうとする思想。本項では主にこちらについて解説する。

断捨離の思想編集

「断捨離」のそれぞれの文字には、ヨーガの行法(ぎょうほう)である断行(だんぎょう)・捨行(しゃぎょう)・離行(りぎょう)に対応し、

  1. 断:入ってくる不要な物を断つ。
  2. :家にずっとある不要な物を捨てる。
  3. :物への執着から離れる。

という意味がある。

すなわち「断捨離」とは、不要な物を「断ち」「捨て」、物への執着から「離れる」ことにより、「もったいない」という固定観念に凝り固まってしまった心を開放し、身軽で快適な生活と人生を手に入れようとする思想である。ヨーガの行法が元になっているため、単なる片付けとは異なるものとされている。

やましたが2009年に出版した『新・片付け術 断捨離』(マガジンハウス)のヒットにより一般に知られるようになった。やましたは同著書や自身の公式ウェブサイトにおいて、自身を「断捨離の提唱者[3]」とし、自身のブログのプロフィールでは「断捨離の言い出しっぺ[4]」、著書の内容紹介では「断捨離の考案者[5]」であると記している。

やましたの著書のヒットにより「断捨離」は流行語となり、翌2010年には新語・流行語大賞にノミネートされた[6]。「断捨離ブーム」によって、やました以外にも多数の著者により断捨離を扱った本が出版されるようになり、仕事[7]人間関係[8][9]などについて断捨離の実践を勧める書物も出版された。

断捨離を実践する人を、やましたは「ダンシャリアン」と呼ぶ[10](著者によっては漢字で「断捨離アン」と表記される場合もある)。また「ミニマリスト」と呼ばれることもあるが、所有物を「最小」化しようとするミニマリストと、「最適」化しようとするダンシャリアンを、やましたは明確に区別している[10]

思想の背景編集

やましたの母親は物を捨てずに溜め込む性格で、片付けるためと称して収納家具を買い足してはさらに部屋を狭くし、「片付かない、家が狭い」と愚痴をこぼすことを繰り返していた[11]。彼女はそうした母親の姿を見て「物を減らせば解決するのになぜ気づかないのか?」と感じていた[11]。そして従来の書籍などが提唱する片付け術が収納術に偏っていることに気づき、ヨーガを通じて「断捨離の思想」に行き着いたという[11]。物を溜め込むのは心に不安があるからで、溜め込んだ物を捨てることで、行動療法のように不安を解消できるとする[11]

こうして母親を反面教師としてきた経験から「親にわだかまりのない人はいない」と述べるとともに[11]への執着を「断つ」ことの重要性についても言及している[11]。女性向け雑誌『婦人公論』増刊号(2013年4月10日号)の特集「断捨離で『母の呪縛』を解く」では、信田さよ子と「断捨離は生存をかけた娘の闘いです」と題して対談した[9]

また、東洋経済オンラインでの岩崎夏海との対談では、多忙から2015年に体調を崩した経験から「心身の健康を守るためには、責任感や『忙しさへの執着』を断捨離することも必要だと悟った」と語っている[11]

断捨離の商標権編集

やましたは「断捨離」を商標登録している。

特許庁は、書籍や電子出版物などの商品において「商標が…著作物の…一定の内容を明らかに認識させるものと認められる場合には、商品の『品質』を表示するものと判断する」[12]としている。

やました以外の誰であっても「断捨離」の思想及びやましたの所有するブランドを説明する趣旨で「断捨離」の語を使用することに対し、いかなる場合でも商標権の効力は及ばない[13]

例として、電子出版のプラットフォームや書籍リーダーの「ブランド名」として「断捨離」の語を使用することはできないが、書籍などのタイトルとして「断捨離」の語を使用することは可能である[要検証]

やましたは自身のウェブサイトで「断捨離」の語を商用利用することを禁じているが、個人的に断捨離体験を語ることは認めている。しかし商標法においてはそうした行為を禁止することは不可能であるし、やましたの許可を得る以前に認められているということになる。

問題点編集

断捨離を意識するあまり、同居する家族の所有物を勝手に捨てたり売却してしまうことでトラブルになる例もあり、妻が夫の貴重なコレクションを同意なく捨てる、子供が大切にしていた思い出の品を親が勝手に捨てるなどで、離婚問題(特に離婚調停や裁判離婚)などに発展することが多々ある[14][信頼性要検証]

こうしたトラブルによる「断捨離」への批判もあるが、やましたはこれに対し「家族を含めて他人のものを勝手に捨てるのは断捨離ではない」「同居人に対し協力を期待したり説得しないこと」[15]とした上で、「同じ居住空間を共有する夫婦は価値観の折り合いをつけていくことが大事」[11]と発言し、断捨離とは自分と自分の所有物に行うものであると主張している[15]

また、新型コロナウイルス感染症の流行により食料品や日用品などの入手性が悪化したことにより、備蓄を持たない生活のデメリットが浮き彫りになった。ミニマリストの中には考えを改める例が見られ、今後は備蓄に取り組む「プレッパー」が増加すると予想する者もある[16][信頼性要検証]

脚注編集

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  1. ^ Oki yoga no kangaekata to shugyōhō. 1. Oki, Masahiro, 1921-1985., 沖 正弘, 1921-1985.. 竹井出版. (1987). ISBN 4884740394. OCLC 674045906. https://www.worldcat.org/oclc/674045906 
  2. ^ Oki yoga no kangaekata to shugyōhō. 1. Oki, Masahiro, 1921-1985., 沖, 正弘, 1921-1985.. 竹井出版. (1987). ISBN 4884740394. OCLC 674045906. https://www.worldcat.org/oclc/674045906 
  3. ^ 断捨離® やましたひでこ公式サイト”. 断捨離® やましたひでこ公式サイト. 2019年6月16日閲覧。
  4. ^ 断捨離@やましたひでこさんのプロフィールページ” (日本語). profile.ameba.jp. 2019年6月16日閲覧。
  5. ^ Tatsumura, Osamu.; 竜村修. (2013). Densetsu no yoga masutā ga oshiete kureta kyūkyoku no ikiru chie. Yamashita, Hideko., やましたひでこ.. Tōkyō: Pīeichipīeditāzugurūpu. ISBN 9784569812588. OCLC 848599376. https://www.worldcat.org/oclc/848599376 
  6. ^ 「現代用語の基礎知識・選 ユーキャン 新語・流行語大賞 第27回 2010年」”. 2019年8月2日閲覧。
  7. ^ 田崎 (2010)
  8. ^ 向谷 (2011)
  9. ^ a b 婦人公論編 (2013)
  10. ^ a b やましたひでこ. “最小でも最大でもなく「最適」な量と関係で ~ダンシャリアンがミニマリストと違う理由”. Yahoo!ニュース 個人. 2016年7月7日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g h やましたひでこ・岩崎夏海 (2015年5月28日). “"断捨離"と"ヘヤカツ"で人生が劇的に変わる | 家庭” (日本語). 東洋経済オンライン. 2020年12月21日閲覧。
  12. ^ 特許庁「商標審査基準第14版 第3条第1項第3号」” (日本語). 2019年8月12日閲覧。
  13. ^ 商標法第26条第1項第2号、第3号、第4号、第6号
  14. ^ 断捨離を理由に離婚? 夫の物を勝手に捨てた妻の法的責任について” (日本語). ベリーベスト法律事務所. 2020年12月20日閲覧。
  15. ^ a b 断捨離【公認officialページ】同居人に「期待」しない、「説得」しない やましたひでこ Facebook
  16. ^ “新型コロナでミニマリストが続々「やめます」宣言 “他人に迷惑をかけた”後悔のワケは”. リアルライブ (リアルライブ). (2020年7月24日). http://www.npn.co.jp/article/detail/200005975 2020年7月25日閲覧。 

参考文献編集

  • やましたひでこ『新・片づけ術「断捨離」』マガジンハウス、2009年、ISBN 4838720521
  • やましたひでこ・中村究『断捨離 なぜ“捨てられない人”は「うつ」になりやすいのか?―モノ 人 執着 思い込み クセ』主婦の友社、2012年、ISBN 4072844284
  • 鈴木淳子・川畑のぶこ『断捨離アンになろう! モノを捨てれば福がくる』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2010年、ISBN 4887598874
  • 田崎正巳『ビジネスパーソンのための断捨離思考のすすめ』同文館出版、2010年、ISBN 4495591517
  • 向谷匡史『50歳からの人断捨離』辰巳出版、2011年、ISBN 4777809722
  • 婦人公論編『断捨離で「母の呪縛」を解く』婦人公論増刊、2013年4月10日号

関連項目編集