検疫所

厚生労働省の施設等機関の一つ

検疫所(けんえきしょ、英語: Quarantine Station)とは、海外から感染症や病害虫などが持ち込まれたり、また持ち出されることを防ぐ「検疫」を行う機関。

以下、日本国内における人の検疫業務を行う厚生労働省の施設等機関である検疫所について記述する。動植物の検疫は農林水産省消費・安全局所管の植物防疫所(植物)及び動物検疫所(動物)を参照。

概要 編集

  • 厚生労働省組織規則、第二節施設等機関、第一款検疫所、別表第一に規定のとおり、全国に計105箇所設置されている。

組織体制 編集

全国の主要な海港・空港に本所、支所、出張所が設置されている。

感染症の流入を未然に防護するため、また、国内に流通する輸入食品の安全性確保、審査及び検査を行う等、水際の第一線で輸入食品を監視するために、全国の検疫所には検疫官(食品衛生監視員を含む)が配置されている。

  • 本所(13箇所)
    • 小樽検疫所(海港
    • 仙台検疫所(海港)
    • 成田空港検疫所(空港
    • 東京検疫所(海港)
    • 横浜検疫所(海港)
    • 新潟検疫所(海港)
    • 名古屋検疫所(海港)
    • 大阪検疫所(海港)
    • 関西空港検疫所(空港)
    • 神戸検疫所(海港)
    • 広島検疫所(海港)
    • 福岡検疫所(海港)
    • 那覇検疫所(海港)
  • 支所(14箇所)
    • 小樽検疫所 千歳空港検疫所支所(空港)
    • 仙台検疫所 仙台空港検疫所支所(空港)
    • 東京検疫所 千葉検疫所支所(海港)
    • 東京検疫所 東京空港検疫所支所(空港)
    • 東京検疫所 川崎検疫所支所(海港)
    • 名古屋検疫所 清水検疫所支所(海港)
    • 名古屋検疫所 中部空港検疫所支所(空港)
    • 名古屋検疫所 四日市検疫所支所(海港)
    • 広島検疫所 広島空港検疫所支所(空港)
    • 福岡検疫所 門司検疫所支所(海港)
    • 福岡検疫所 福岡空港検疫所支所(空港)
    • 福岡検疫所 長崎検疫所支所(海港)
    • 福岡検疫所 鹿児島検疫所支所(海港)
    • 那覇検疫所 那覇空港検疫所支所(空港)
  • 出張所(78箇所)
    • 海港(59箇所)
    • 空港(19箇所)

検疫業務 編集

検疫所では、すべての入国者に対して、サーモグラフィー等を用いて発熱等の有無を確認する検疫を行う。発熱や咳、吐き気等の症状がある、また、体調不良を訴える人に対して、健康相談も行う。滞在国によっては、医師の判断で、検疫法第二条各号に規定する検疫感染症を疑い検査を実施する。検疫感染症に感染している患者を発見した場合は、必要に応じて隔離、停留、消毒(検疫法第十四条)等の防疫措置を行う。

海港・空港の出国相談カウンターでは、渡航に関する相談やリーフレットの配布等を行い、感染症に感染しないための予防対策等の周知を行っている。インターネット上では、海外渡航者向けに、成田空港検疫所の運営するFORTHホームページにて情報提供を行っている。

また、感染症予防対策として、検疫所では黄熱等の予防接種業務も行っている。

黄熱予防接種について 編集

  • 黄熱の流行地域に入国する場合などには、国際保健規則(IHR)に則り、黄熱の予防接種証明書(イエローカード)の提示を求められることがあり、国内においては、検疫所および厚生労働省の指定する医療機関にて、黄熱ワクチンの予防接種をすることができる。

港湾衛生業務 編集

検疫法第二条各号に規定する検疫感染症のうち、三号にはジカウイルス感染症マラリア等があり、国内に常在しない感染症病原体の国内侵入を防止するためには、蚊媒介感染症の調査も重要である。そのため検疫所では、ねずみ族および虫類の侵入や定着状況を監視し、海外から来航した船舶や航空機について、検疫法第二十七条に規定する調査及び衛生措置を行っている。

捕獲したねずみ、蚊等については種の同定、病原体保有の有無の確認検査を行う。

船舶衛生検査業務 編集

国際航行する船舶は、船舶を介して感染症が国際的に拡大しないように、船内の衛生状態を良好に保つよう、国際保健規則(IHR)で定められている。検疫所では、船長等からの申請に基づき船内の衛生管理状況等を確認する衛生検査を実施する。

検査官が乗船し、感染症を媒介するねずみ、蚊等の生息の有無、食品や飲料水の取扱い、船舶の各区域の衛生状態について、現場確認、乗組員への聴取等の衛生検査を行い、検査の結果、衛生管理状況が良好な場合は、船舶衛生管理免除証明書(SSCEC)を交付する。問題が認められた場合、改善措置内容を記載した船舶衛生管理証明書(SSCC)を交付する。

動物の輸入届出審査業務(農林水産省動物検疫所の検疫対象を除く) 編集

日本で流行していない感染症のうち、動物が媒介する動物由来感染症の国内侵入を防ぐために、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に規定されている動物の輸入届出制度(法第五十六条の二)があり、その届出書等を検疫所において審査する。現場確認では、届出書に記載された内容と実際の貨物が合っているか、輸入動物の健康状態に問題がないか、実際に動物を目視で確認する。また、届出書および衛生証明書と貨物の内容を確認する。

届出制度の対象となる動物は、陸生哺乳類(家畜、犬、猫、あらいぐま、きつね、スカンクを除く)、鳥類(家きんを除く)、齧歯目の死体。イタチアナグマ、こうもりサルタヌキハクビシンプレーリードッグ、ヤワゲネズミは輸入禁止となっている。

輸入食品監視業務(食品の検疫) 編集

輸入者は、販売や営業を目的として使用する食品、添加物、器具、容器包装、乳幼児対象のおもちゃ(食品等)を輸入する場合、検疫所へ食品等輸入届出書の提出が必要となる。検疫所の食品衛生監視員が、食品衛生法に基づき適法な食品等であるか、届出書の審査をする。

検査が必要と判断された食品等については、命令検査(違反の蓋然性が高いとして厚生労働大臣が命ずる検査)、行政確認検査(初めて輸入される食品等や輸送途中に事故が発生した食品等の確認のために検疫所が実施する検査)を実施し、その他の食品等についても計画的なモニタリング検査(多種多様な食品等について幅広く監視するため策定された年度計画[2]に基づき検疫所が実施する検査)を行うことにより、効率的・効果的な輸入食品の安全性を確保している。検査の結果、食品衛生法に違反していることが判明した食品等については、廃棄・積戻し・第三国輸送などの措置をとるよう指導を行う。

その他、輸入者や関係事業者に対し、輸入食品相談業務も行っている。

試験検査業務 編集

検疫所の主要検査施設として、東日本と西日本にそれぞれ、横浜検疫所輸入食品・検疫検査センター、神戸検疫所輸入食品・検疫検査センターが設置されており、それ以外にも成田空港検疫所、関西空港検疫所等の検査施設にて、輸入食品等の検査、海外から侵入する感染症に関する検査を行っている。

輸入食品等については、殺虫剤などの残留農薬、抗生物質などの動物用医薬品カビ毒重金属などの有毒有害物質、おもちゃや飲食器具、容器包装の規格、遺伝子組換え食品、食中毒の原因となる病原微生物の検出など、理化学検査および微生物学検査を行う。

また、海港・空港において検疫を実施した時に検疫感染症に感染した疑いのあるヒ卜から採取した検体、港湾衛生業務で捕獲したねずみ、蚊等の検体について、病原体検査を行う。

脚注 編集

  1. ^ クアランの海外旅行Q&A”. www.forth.go.jp. 2019年10月5日閲覧。
  2. ^ 監視指導・統計情報”. www.mhlw.go.jp. 2019年10月5日閲覧。

関連項目 編集

外部リンク 編集