泡
泡(あわ、あぶく、英: foam、bubble)または泡沫(ほうまつ、うたかた)とは、液体もしくは固体がその中に空気などの気体を含んで丸くなったもの。気体を包む液体の表面張力により作られる。固体の泡は、液体の状態で形成されたものが固体化されたものが普通である。

液体中に生じた気泡は密度が小さく、上昇して水面に姿を現すとあぶくとなる。液面に出た場合、液体側はやや平らになり、空気中に丸く突出する。空気中の部分は薄い液体の膜からなるが、次第にそれを構成する液体が流下するので薄くなり、最終的には壊れる。これはシャボン玉と同じである。
特徴編集
泡には次のような特徴がある。
泡の形状と挙動編集
液中における気泡の形状はその大きさによって以下のように変わる[1]。
また、比較的小さな気泡はほぼ直線的に上昇運動するが、ある程度大きくなると螺旋状に上昇し、さらに大きくなると不規則な振動をしながら上昇する。
泡の発生編集
圧力・温度の変化による泡編集
液体にかかる圧力を低下させたり、温度を上昇させたりすると、液体に溶け込んだ気体が泡となって放出される。さらに圧力を低下させたり、温度を上昇させると、液体自体が沸騰して泡を発生させる。
- ベーパーロック現象 - 自動車のブレーキにおいて、過熱によってブレーキ液の内部に蒸気(vapor)の泡が発生し、ブレーキが利かなくなる現象。
- キャビテーション
- スーパーキャビテーション
化学反応による泡編集
液体中で気体を発生させるような化学反応を起こすと、比重の小さい気体が上昇する過程で泡が発生する。料理においては重曹がこの目的で用いられる。また、アルコール発酵も気泡を生じさせるが、例えばパンのように、それをむしろ利用する例もある。
機械的操作による泡編集
攪拌機、泡立て器などで液体を攪拌することによって、空気を泡の形で液体に取り込む。あるいは、液体中に気体を吹き込むことで作る。空中で作ればシャボン玉になる。
自然界における泡編集
水面の泡は、風による水面の攪乱(波)や激しい水流(潮流や滝壺など)によって生じる。これはたやすく壊れるので長持ちしないが、水中に有機物や界面活性剤が含まれると、壊れないで蓄積する例がある。都会周辺の河川では、洗剤の流入によって盛り上がった多量の泡を生じる。海岸では、風に吹かれて打ち上がることがある。
このほか、水中・水底の有機物から発生した腐敗ガスや、水底の土中に閉じ込められていたメタンガスが泡を形成したり[2]、火山などによる高い地熱で水たまりや泥たまり[3]、マグマ[4]が泡立ったりする現象も見られる。
生物と泡編集
体液を利用して泡を作り、これを活用している生物に、アサガオガイやアワフキムシがある。卵を守るために泡で巣を作る例もある。ベタなどは水面に浮かぶ泡の層に卵を含ませ、モリアオガエルは樹上に体液をかき混ぜて作った泡の塊を作り、その内部に産卵する。
渓流においては、滝壺などに見られる細かい泡の堆積地で泡を採集し、顕微鏡下で観察すると、ここに水中の微小な顆粒が捕らえられており、特に水生不完全菌の胞子が多量に見られることが知られている。専門の研究者はよくこれを採集の試料として用い、ここから胞子を拾い出して培養することを試みる。
産業等への応用編集
発泡した液体は通常より流れ去りにくく、泡自体が汚れを浮かせる働きもある。このため日用品の各種洗剤・洗浄剤や髭そり用シェーヴィングフォームなどに泡入り製品があるほか、泡入りの水も普通の水より洗浄効果が高いため、機械洗浄や工場排水処理といった工業用途にも使われる[5]。
泡の大きさを細かくすることで、実用での使い道はさらに広がる。従来はマイクロバブル、ナノバブルと呼称されてきた。2017年6月、国際標準化機構(ISO)は、直径100㎛未満の泡を「ファインバブル」と総称し、1㎛以上を「マイクロバブル」、それ未満を「ウルトラファインバブル」に分ける規格を決めた。「ウルトラファインバブル」はブラウン運動により、保存方法によっては数年間、泡が浮上せず液体中にとどまることもある。
用途としては前述のような洗浄のほか、水揚げした魚を窒素の泡入り水に入れて鮮度を保持したり、酸素の泡入り水で農作物の食味を良くしたり取り組みが日本では実際に行われている。関連する企業・団体による一般社団法人ファインバブル産業会が設立されている[6]。ファインバブル産業会の推計によれば、ファインバブルの日本国内市場規模は2010年時点で200億円[5]。
このほか一般社団法人 日本マイクロ・ナノバブル学会も活動している[7]。同学会代表理事の大平猛によると、ナノバブルが植物の生育を促す理由は、泡の帯電性が葉緑素の増加を助けるためと考えられ、水中の溶存酸素による効果とは異なる。植物の品種により適切な帯電性、帯電率、濃度が異なるため、学会としてマニュアルの作成を進めている[5]。
古くからある他の用途としては、泡消火薬剤を使う消火器があるほか、発泡スチロールはポリスチレン樹脂を発泡させることにより製造される。
食料品における泡編集
関連作品編集
脚注編集
- ^ 浅野康一 『物質移動の基礎と応用』 丸善、2004年、137頁。ISBN 4-621-07356-7。
- ^ 【動画】アラスカの湖からメタンの泡の悪循環「今は北極の冷蔵庫が開きっぱなし」と研究者ナショナルジオグラフィック日本版サイト(2016年9月5日)2018年5月13日閲覧。
- ^ イエローストーン国立公園の「Mudpots」アメリカ合衆国内務省ナショナルパーク・サービス(2018年5月13日閲覧)。
- ^ 「マグマの複雑な泡の構造が火山の爆発的噴火を促すことを解明」東北大学(2017年12月4日)2018年5月13日閲覧。
- ^ a b c 「マイクロ・ナノバブル水-微細な泡で植物を活性化 農業現場に浸透」『日本農業新聞』2020年1月13日(18面)
- ^ 【サイエンスview】小さな泡の大きな力■国際規格「0.1ミリ未満」■鮮度保持や汚れ洗浄『読売新聞』朝刊2018年4月29日(くらしサイエンス面)。
- ^ 一般社団法人 日本マイクロ・ナノバブル学会(2020年2月4日閲覧)
関連項目編集
- バブル(曖昧さ回避)
- マイクロバブル
- ナノバブル
- エアロゲル
- 波の花
- フォームラバー(発泡ゴム)
- ムース (食品)
- シャボン玉
- 消火器
- 消泡剤
- 消泡装置
- 痙攣
- プラトーの法則
- 宇宙の大規模構造
- 泡沫候補