淵に立つ』(ふちにたつ、英題:Harmonium)は、2016年の日本・フランス合作のドラマ映画である[3]。監督を深田晃司、主演を浅野忠信が務めている[4]第69回カンヌ国際映画祭にて、「ある視点」部門の審査員賞を受賞した[5]

淵に立つ
Harmonium
第29回東京国際映画祭に登壇した深田晃司、真広佳奈、筒井真理子、太賀
監督 深田晃司
脚本 深田晃司
製作 新村裕
澤田正道
製作総指揮 福嶋更一郎
大山義人
出演者 浅野忠信
筒井真理子
古舘寛治
太賀
音楽 小野川浩幸
主題歌 HARUHI「Lullaby」[1]
撮影 根岸憲一
編集 深田晃司
製作会社 『淵に立つ』製作委員会
配給 エレファントハウス
カルチャヴィル
公開 フランスの旗 2016年5月14日(カンヌ国際映画祭[2]
日本の旗 2016年10月8日
上映時間 119分
製作国 フランスの旗 フランス
日本の旗 日本
言語 日本語
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あらすじ

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町工場を営む利雄は、妻子との会話はあまりないもののとくに波風の立たない穏やかな家庭を有していた。そこにある日、利雄の古い友人である八坂が現われる。前科をもつ八坂は出獄して間もない身の上であり、その身を案じる利雄はさっそく自宅の一室を彼のために貸すのだった。突然のことに動揺する妻・章江も八坂の人当たりの良さと誠実さに好感をもった。通っている教会での演奏会のためオルガン練習に余念のない娘・蛍も、演奏に長けアドバイスしてくれる八坂になついてゆくのだった。すっかり家族同然になった八坂は、あるとき章江に殺人を犯したことを告白するが、すでに彼に揺るぎない信頼を寄せていた章江にとっては、むしろ八坂への感情が愛情に変わるきっかけとなるばかりであった。家族が八坂を核として動き始めた実感を得たとき、彼による暴挙は始まった。すべてを目の当たりにし狼狽する利雄をおいて、八坂はつむじ風のように暴れ、そして去っていった。

8年の月日が流れた。町工場は平穏を取り戻してはいたが、家族には言い知れぬ痛みを伴う傷跡が残されていた。皆のため失踪した八坂を探させる利雄ではあったが、時の流れがいつしか諦めの気持ちを彼に抱かせていた。利雄の工場では、勤めていた青年・設楽の退職に伴い後継者として孝司という若者が出入りするようになっていた。熱意をもつ孝司は好意的に迎えられていたが、ふとしたことから利雄に、自分の父親が八坂であることを洩らす。孤児であり父親の記憶はない、と弁明する彼だったが、家族の忌まわしい記憶を掘り起こさせるには十分であった。利雄は章江に対し、八坂と自分にまつわる秘密を明らかにするが、もはやそれは遅すぎた告白であった。

探偵の調査の結果、撮影された八坂とおぼしき写真をたよりに家族は地方へと旅立つ。その旅路の果てに待つものは何かを、家族たちは祈るような気持ちをこめて注視し続けた。

キャスト

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スタッフ

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  • 監督・脚本・編集 - 深田晃司
  • 主題歌 - HARUHI「Lullaby」
  • 音楽 - 小野寺浩幸
  • 撮影 - 根岸憲一
  • 照明 - 高村智
  • 録音・効果 - 吉方淳二
  • 美術 - 鈴木健介
  • 編集コンサルタント - Julia Gregory
  • 助監督 - 山門朔、石井千晴、浜潟尚
  • ラインプロデューサー - 南陽
  • サウンドデザイン - Olivier Goinard
  • 工場所作指導 - 藤田製作所(藤田進、関川大介)
  • 農業指導 - 金子秀富
  • 介護指導 - 松本明子、鈴木貴子、生井志津子
  • アクション - 西田真吾、山東文発、辻やすこ、高木友、浅見奉史
  • ポスプロ - COMME DES CINEMAS
  • Special Thanks - 池田晃、村上正樹、平田オリザ、二宮佑己子
  • プロデューサー - 新村裕、澤田正道
  • 制作プロデューサー - 戸山剛
  • 制作協力 - メディア・トレーディング、トーキョーガレージ
  • エグゼクティブプロデューサー - 福嶋更一郎、大山義人
  • 共同製作 - 浅井賢二(名古屋テレビ放送)、Anne Pernod(COMME DES CINEMAS)、長谷川康子(MAM FILM)、牧和男(イオンエンターテイメント)、増田英明(エレファントハウス)、木原康博(MAM)、市村友一(朝日新聞社)
  • 企画 - 米満一正、深田晃司
  • 製作 -『淵に立つ』製作委員会(名古屋テレビ放送、MAM FILM、イオンエンターテイメント、エレファントハウス、朝日新聞社)、COMME DES CINEMAS

上映

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2016年9月6日、東京都のユーロライブにて完成披露試写会が行われた[6][7]。同年10月8日、全国50スクリーンで一般公開された[8]。10月30日、第29回東京国際映画祭の「Japan Now」部門にて上映された[9]

評価

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Variety』のマギー・リーは、「本作は、ロベール・ブレッソン大島渚に通じる批評的な思慮深さをもって、家族のあいだの傷に迫っている」と指摘した[10]。『The Hollywood Reporter』のデボラ・ヤングは、「日本で最も革新的な映画作家のひとりである深田晃司は、豊かで得体の知れない本作において、彼本来の調子を取り戻している」と評価した[11]

受賞

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脚注

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  1. ^ 深田晃司監督、浅野忠信主演「淵に立つ」主題歌はHARUHIの新曲に決定!”. 映画.com (2016年8月4日). 2016年10月7日閲覧。
  2. ^ カンヌで浅野忠信、深田晃司監督らに満場のスタンディングオベーション”. 映画.com (2016年5月17日). 2016年8月21日閲覧。
  3. ^ 浅野忠信主演の日仏合作「淵に立つ」、カンヌ映画祭のある視点部門に正式出品”. 映画ナタリー (2016年4月14日). 2016年8月21日閲覧。
  4. ^ 浅野忠信×深田晃司のカンヌ受賞作「淵に立つ」緊張感みなぎる予告編公開”. 映画ナタリー (2016年8月12日). 2016年8月21日閲覧。
  5. ^ 深田晃司監督、浅野忠信主演作「淵に立つ」がカンヌ「ある視点」部門審査員賞受賞”. 映画.com (2016年5月22日). 2016年8月21日閲覧。
  6. ^ 浅野忠信、「淵に立つ」で演じた“怪しい男”は「僕にぴったりの役柄」”. 映画ナタリー (2016年9月7日). 2016年9月15日閲覧。
  7. ^ 浅野忠信「僕にしかできない役」…主演映画「淵に立つ」完成披露試写”. スポーツ報知 (2016年9月7日). 2016年9月15日閲覧。
  8. ^ 「淵に立つ」20カ国以上で配給決定! 深田晃司監督「グローバルな日本映画になれた」”. 映画.com (2016年10月8日). 2016年10月20日閲覧。
  9. ^ 「淵に立つ」深田晃司監督、“映画の神様”の粋な計らいにガッツポーズ!”. 映画.com (2016年10月30日). 2017年3月27日閲覧。
  10. ^ Lee, Maggie (2016年5月15日). “Cannes Film Review: ‘Harmonium’”. Variety. 2016年8月21日閲覧。
  11. ^ Young, Deborah (2016年5月15日). “'Harmonium' ('Fuchi ni Tatsu'): Cannes Review”. The Hollywood Reporter. 2016年8月21日閲覧。
  12. ^ 浅野忠信、主演映画『淵に立つ』カンヌで審査員賞受賞「最高です!」”. ORICON STYLE (2016年5月22日). 2016年8月21日閲覧。
  13. ^ カンヌ受賞の喜びを深田晃司監督と太賀が語る『淵に立つ』”. エンタメステーション (2016年10月16日). 2016年10月16日閲覧。
  14. ^ 第38回ヨコハマ映画祭 - 2016年日本映画個人賞”. ヨコハマ映画祭 (2016年12月3日). 2017年3月27日閲覧。
  15. ^ エルが選ぶ2016年映画賞 授賞式に黒木華や菅原小春が登場”. Fashionsnap.com (2016年12月20日). 2017年3月27日閲覧。
  16. ^ “浅野忠信主演「淵に立つ」高崎映画祭で最優秀作品賞”. 日刊スポーツ. (2017年1月6日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/1761680.html 2017年1月6日閲覧。 
  17. ^ “キネマ旬報ベスト・テン決定、「この世界の片隅に」「ハドソン川の奇跡」が1位に”. 映画ナタリー. (2017年1月10日). https://natalie.mu/eiga/news/216247 2017年1月10日閲覧。 
  18. ^ “毎日映画コンクールで「シン・ゴジラ」が大賞ほか3冠獲得、「君の名は。」は2冠”. 映画ナタリー. (2017年1月19日). https://natalie.mu/eiga/news/217340 2017年1月19日閲覧。 
  19. ^ 「第67回芸術選奨」演劇部門は金剛永謹、橋爪功、浦井健治が受賞 近藤良平、宮藤官九郎、深田晃司らも選出”. シアターガイド (2017年3月9日). 2017年3月27日閲覧。
  20. ^ 浅野忠信、アジア・フィルム・アワードで主演男優賞!”. 映画.com (2017年3月22日). 2017年3月27日閲覧。

関連文献

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小説
  • 深田晃司『淵に立つ』ポプラ社、2016年。ISBN 978-4-591-15145-7 

外部リンク

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