渡部暁斗

日本のスキー選手

渡部 暁斗(わたべ あきと、1988年5月26日 - )は、長野県北安曇郡白馬村出身のノルディック複合競技者。オリンピック2大会(2014年ソチオリンピック2018年平昌オリンピック)個人ノーマルヒル銀メダリスト。ノルディック複合・ワールドカップ2017-18シーズン個人総合王者。同じくノルディック複合競技者の渡部善斗は実弟。妻はフリースタイルスキー、ハーフパイプ競技者の渡部由梨恵英語版

渡部暁斗
2008年3月 オーストリア アイゼンエルツ
名前
カタカナ ワタベ アキト
ラテン文字 Watabe Akito
基本情報
国籍 日本の旗 日本
種目 ノルディック複合
所属 北野建設
使用メーカー フィッシャー
生年月日 (1988-05-26) 1988年5月26日(35歳)
生誕地 長野県北安曇郡白馬村
身長 173cm
体重 60kg
ワールドカップ戦歴
デビュー年 2005-2006シーズン
最高成績 1位
通算成績 19勝(準優勝30回、3位25回)
獲得メダル
オリンピック
2014 ソチ 個人ノーマルヒル
2018 平昌 個人ノーマルヒル
2022 北京 個人ラージヒル
2022 北京 団体
ノルディックスキー世界選手権
2009 リベレツ 団体
2017 ラハティ 個人10kmLH
2017 ラハティ 団体スプリント
2019 ゼーフェルト 個人10kmNH
2021 オーベルストドルフ 個人10kmLH
ノルディック複合・ワールドカップ
2017-18シーズン 個人総合
2011-12シーズン 個人総合
2014-15シーズン 個人総合
2015-16シーズン 個人総合
2018-19シーズン 個人総合
2012-13シーズン 個人総合
2013-14シーズン 個人総合
2016-17シーズン 個人総合
ノルディック複合トリプル
2018 総合
2016 総合
2015 総合
2021 総合
最終更新日:2021年3月22日

来歴 編集

長野県白馬高等学校在籍中の2006年トリノオリンピックに出場。

早稲田大学スポーツ科学部進学後は2009年世界選手権の団体戦(湊祐介加藤大平渡部暁斗小林範仁)で、日本の14年ぶり金メダル獲得に貢献した。

2010年1月、ノルディック複合・ワールドカップ(W杯)  オーストリアゼーフェルト大会で3位となり、初めてW杯個人戦の表彰台に登った。2月にはバンクーバーオリンピックに出場し、個人ラージヒルでは日本勢最高の9位。

ソチオリンピックシーズンまで 編集

大学卒業後は、北野建設に所属。

2011/12シーズンは序盤から好調で、ワールドカップ開幕戦の  フィンランドクーサモ大会でW杯自己最高順位となる2位。12月のゼーフェルト大会でも同順位に入ると、2月5日の  イタリアヴァル・ディ・フィエンメ大会で念願の初優勝を果たした。日本人のW杯優勝は2004年3月の高橋大斗以来4人目である。その後も好調を維持し、このシーズンは4勝を挙げて最終戦まで総合優勝の可能性を残した。結局ジャゾン・ラミー=シャプイ  フランス)に優勝は譲ったものの、日本人としては1995/96シーズンの荻原健司以来のW杯総合2位という快挙を果たした。

2012-13シーズンは世界選手権で出場4種目中3種目で4位と表彰台をあと一歩で逃し続け、「(4位が)僕の居場所という感じですね」とコメントを残すなど悔しさを味わった[1]。しかし、世界選手権後はW杯で2大会連続で2位に入り、うち3月15日の  ノルウェーオスロ大会では弟・善斗も3位に入り、1995年の荻原兄弟以来となる日本人の兄弟選手によるW杯表彰台獲得を果たした。シーズン個人総合では3位。

2013-14シーズンは夏から好調な滑り出しを見せ、サマーグランプリでは初の総合優勝を果たした。オリンピック前のW杯では優勝こそなかったものの、第2戦リレハンメル大会の2位をはじめ、3位が4回、出場10戦全てで8位以内に入る安定感を見せた。年末にインフルエンザを発症するアクシデントはあったものの、オリンピック前最後のW杯となったオーベルストドルフ大会でも3位に入り、個人総合2位と好調を維持してオリンピック本番を迎えた。

ソチオリンピックでは初戦の個人ノーマルヒルで、前半ジャンプでトップだったエリック・フレンツェル  ドイツ)から6秒差の2位につけると、後半クロスカントリーではフレンツェルと共にトップ集団を形成。終盤までフレンツェルと互いにトップに出ながら激しく競り合い、スタジアムに入ったところで仕掛けたフレンツェルのスパートに離されたものの、4.2秒差で2位に入り銀メダルを獲得した。オリンピックでのノルディック複合の個人でのメダルは、1994年リレハンメルオリンピックで銀メダルを獲得した河野孝典以来20年ぶり2人目[2]。次の個人ラージヒルでも2個目のメダルが期待されたが、終盤クロスカントリーでの転倒が響いてしまい6位入賞に留まった。団体戦は5位入賞だった。

五輪後のW杯では、最終戦ファルン大会でシーズン初勝利、通算5勝目をあげた。個人総合では1試合のみ22位に沈んだ大会が有ったため五輪前の総合2位から順位を落としたが、2シーズン連続で3位入賞。

平昌オリンピックシーズンまで 編集

2014-15シーズンは個人第1戦のルカ大会で4位となるスタート。1月4日のショーナッハ大会で2位となり、シーズン初の表彰台を獲得。2月にファルンで開催された世界選手権では個人・団体とも表彰台入りはならなかったが、世界選手権後のW杯では2勝をあげ(通算7勝)、W杯個人総合では3シーズンぶりの2位となった。

2015-16シーズンは初戦のリレハンメル大会で2位でスタートすると、優勝こそなかったが、自身最多のシーズン8度の準優勝、4度の3位など安定した成績を残し、2年連続の総合2位となった。

2016-17シーズンは世界選手権直前の札幌大会第2戦で2シーズンぶりに優勝すると、世界選手権直後のオスロ大会でも優勝し、最終的に総合3位となり6シーズン連続で総合順位3位以内に入った。世界選手権ではラージヒル個人で銀メダルを獲得すると、弟・善斗とペアで出場した団体スプリントで銅メダルを獲得した。世界選手権での個人メダルは自身初、団体スプリントでのメダル獲得は日本勢初だった。

2017-18シーズンは  フィンランドルカでのW杯開幕戦で3位となると、翌日の第2戦でシーズン初勝利をあげW杯通算10勝に到達。1月26日から  オーストリアゼーフェルトにおいて3日間連続で行われた3試合で自身初の3連勝を達成し、自己最多の1シーズン4勝に到達。また、トリプル(3試合の総合成績で優勝を争う)でも優勝した[3]。さらに2月3日の地元白馬大会でも優勝し、4連勝を達成。

平昌オリンピックでは3種目に出場。個人ノーマルヒルはジャンプで105.5メートルの飛躍で首位と38秒差の3位となると、後半クロスカントリーでは前回ソチオリンピック金メダリストのフレンツェルとのデッドヒートとなった。終盤、フレンツェルのスパートに振り切られたが、オリンピック2大会連続での銀メダルを獲得。ラージヒルは前半のジャンプで134メートルを記録して首位に立ったが、後半クロスカントリーでは互いに風よけとなるなど協力しながら追い上げてきたヨハネス・ルゼックファビアン・リースレエリック・フレンツェルのドイツ勢3人をかわしきれず、5位に終わった。団体はジャンプで3位につけたが、クロスカントリーの中盤でメダル争いから脱落し、4位だった。オリンピック後、2月2日のW杯予選で肋骨を骨折したまま出場していたことが明らかになった[4]

オリンピック後のW杯では3月10日のオスロ大会でシーズン5勝目をあげると、その後も安定して上位の成績を残し、3月18日の第20戦クリンゲンタール大会で3位に入った時点で、残り2戦を残して総合優勝が決定した。日本勢の個人総合優勝は1994-95シーズンの荻原健司以来で2人目である。さらに3月24日、25日のショナッハ大会で連勝し、荻原を上回る日本人最多シーズン7勝をあげてシーズンを締めくくった。

北京オリンピックシーズンまで 編集

2018-19シーズンは、開幕戦の団体戦で5年ぶりの表彰台入りとなる2位となる。個人では開幕戦・第2戦は振るわなかったが、第3戦リレハンメルでのマススタート方式の大会で4位になると、それ以降出場したすべての大会で9位以内に入り、年明け後のオテパー大会でシーズン初の表彰台入りとなる2位。優勝こそならなかったが、2位3回、3位2回で総合2位となった。世界選手権では、個人ラージヒルでは6位、団体スプリントでは4位、個人ノーマルヒルでは銅メダルを獲得。団体ノーマルヒルではジャンプで1位オーストリアと1秒差の2位だったが、4位となった。

2019-20シーズンは、例年になく不調で2019年内のW杯では開幕2戦目で10位に入ったのが最高だった。後半に入り調子を上げ、1月31日のゼーフェルト大会から3大会連続で一ケタ順位を記録。3月1日のラハティ大会でシーズン初優勝 (通算18勝目) を達成したがこれがシーズン唯一の表彰台だった。シーズン総合順位は9位。

2020-21シーズンは、ルカでの開幕戦6位、2戦目3位でシーズン初表彰台。1月23日に山本涼太とペアを組んだラハティ大会団体スプリントで3位となり、この種目でW杯日本勢初表彰台となった[5]。翌1月24日のラハティ大会個人戦では前半ジャンプの2位から後半距離で1位となりシーズン初優勝を達成。通算勝利数は19勝となり、日本勢最多の荻原健司に並んだ。世界選手権では、個人ノーマルヒルでは5位、団体ノーマルヒルでは3大会連続の4位、個人ラージヒルでは日本人の個人種目としては初の3大会連続のメダルとなる銅メダルを獲得。山本涼太と組んだ団体スプリントではジャンプでトップに立つも、ラストスパートでドイツに敗れ4位となった。ワールドカップでは先述のラハティでの優勝1回に加え、準優勝4回、3位2回を挙げ、総合3位で終えた。

2022年北京オリンピックでは、開会式で郷亜里砂と共に日本選手団の旗手を務めた。個人ノーマルヒルでは7位で同種目の3大会連続のメダル獲得は逃したものの、続いて行われた個人ラージヒルと、永井秀昭、渡部暁斗、山本涼太とともに出場した団体の両種目で銅メダルを獲得した。

主な戦績 編集

 
2008年3月 オーストリア アイゼンエルツ

オリンピック 編集

ノルディックスキー世界選手権 編集

FISワールドカップ 編集

個人総合成績(※2021年2月19日現在
シーズン 総合 優勝 準優勝 3位
2005/06 47位 0回 0回 0回
2008/09 38位 0回 0回 0回
2009/10 18位 0回 0回 1回
2010/11 11位 0回 0回 0回
2011/12 2位 4回 3回 2回
2012/13 3位 0回 5回 1回
2013/14 3位 1回 2回 4回
2014/15 2位 2回 2回 1回
2015/16 2位 0回 8回 4回
2016/17 3位 2回 1回 4回
2017/18 1位 8回 2回 4回
2018/19 2位 0回 3回 2回
2019/20 9位 1回 0回 0回
2020/21 3位 1回 4回 2回
合計 19回 30回 25回
ワールドカップ個人表彰台
シーズン 開催日 開催地 種目 成績
2009-10 2010年1月30日   ゼーフェルト HS100/10.0km 3位
2011-12 2011年11月25日   クーサモ HS142/10.0km 準優勝
2011年11月26日   クーサモ HS142/10.0km 3位
2011年11月26日   ゼーフェルト HS109/10.0km 準優勝
2012年2月5日   ヴァル・ディ・フィエンメ HS134/10.0km 優勝(1)
2012年2月10日   アルマトイ HS140/10.0km 3位
2012年2月11日   アルマトイ HS140/10.0km 準優勝
2012年2月18日   クリンゲンタール HS140/10.0km 優勝(2)
2012年2月26日   リベレツ HS134/10.0km 優勝(3)
2012年3月9日   オスロ HS106/10.0km 優勝(4)
2012-13 2013年1月6日   ショナッハ HS106/10.0km 準優勝
2013年1月12日   ショー=ヌーヴ HS118/10.0km 3位
2013年2月9日   アルマトイ HS140/10.0km 準優勝
2013年2月10日   アルマトイ HS140/10.0km 準優勝
2013年3月8日   ラハティ HS130/10.0km 準優勝
2013年3月15日   オスロ HS134/10.0km 準優勝
2013-14 2013年12月7日   リレハンメル HS100/10.0km 準優勝
2013年12月8日   リレハンメル HS138/10.0km 3位
2013年12月21日   ショナッハ HS106/10.0km 3位
2013年12月22日   ショナッハ HS106/10.0km 3位
2014年1月26日   オーベルストドルフ HS137/10.0km 3位
2014年2月28日   ラハティ HS130/10.0km 準優勝
2014年3月15日   ファルン HS100/10.0km 優勝(5)
2014-15 2015年1月4日   ショナッハ HS106/10.0km 準優勝
2015年1月18日   ゼーフェルト HS109/15.0km 3位
2015年1月24日   札幌 HS134/10.0km 準優勝
2015年3月6日   ラハティ HS130/10.0km 優勝(6)
2015年3月14日   オスロ HS134/15.0km 優勝(7)
2015-16 2015年12月5日   リレハンメル HS138/10.0km 準優勝
2016年1月23日   ショー=ヌーヴ HS118/10.0km 3位
2016年1月24日   ショー=ヌーヴ HS118/10.0km 3位
2016年1月29日   ゼーフェルト HS100/10.0km 準優勝
2016年1月30日   ゼーフェルト HS100/10.0km 準優勝
2016年1月31日   ゼーフェルト HS100/10.0km 準優勝
2016年2月9日   オスロ HS134/10.0km 準優勝
2016年2月10日   トロンハイム HS140/10.0km 準優勝
2016年2月19日   ラハティ HS130/10.0km 準優勝
2016年2月21日   ラハティ HS130/10.0km 3位
2016年2月23日   クオピオ HS130/10.0km 準優勝
2016年3月5日   ショナッハ HS106/10.0km 3位
2016-17 2016年11月27日   ルカ HS142/10.0km 3位
2017年1月15日   ヴァル・ディ・フィエンメ HS134/10.0km 3位
2017年1月21日   ショー=ヌーヴ HS118/10.0km 3位
2017年2月10日   札幌 HS137/10.0km 準優勝
2017年2月11日   札幌 HS137/10.0km 優勝(8)
2017年3月11日   オスロ HS134/10.0km 優勝(9)
2017年3月19日   ショナッハ HS106/10.0km 3位
2017-18 2017年11月24日   ルカ HS142/5.0km 3位
2017年11月25日   ルカ HS142/10.0km 優勝(10)
2018年1月20日   ショー=ヌーヴ HS118/10.0km 準優勝
2018年1月26日   ゼーフェルト HS109/5.0km 優勝(11)
2018年1月27日   ゼーフェルト HS109/10.0km 優勝(12)
2018年1月28日   ゼーフェルト HS109/15.0km 優勝(13)
2018年2月4日   白馬 HS134/10.0km 優勝(14)
2018年2月4日   白馬 HS134/10.0km 3位
2018年3月10日   オスロ HS134/10.0km 優勝(15)
2018年3月13日   トロンハイム HS140/10.0km 準優勝
2018年3月17日   クリンゲンタール HS140/10.0km 3位
2018年3月18日   クリンゲンタール HS140/10.0km 3位
2018年3月24日   ショナッハ HS106/10.0km 優勝(16)
2018年3月25日   ショナッハ HS106/15.0km 優勝(17)
2018-19 2019年1月5日   オテパー HS100/10.0km 準優勝
2019年1月6日   オテパー HS100/10.0km 3位
2019年1月13日   ヴァル・ディ・フィエンメ HS135/10.0km 3位
2018年1月19日   ショー=ヌーヴ HS118/10.0km 準優勝
2019年2月10日   ラハティ HS130/10.0km 準優勝
2019-20 2020年3月1日   ラハティ HS130/10.0km 優勝(18)
2020-21 2020年11月28日   ルカ HS142/10.0km 3位
2021年1月24日   ラハティ HS130/10.0km 優勝(19)
2021年1月29日   ゼーフェルト HS100/5.0km 準優勝
2021年1月30日   ゼーフェルト HS100/10.0km 準優勝
2021年1月31日   ゼーフェルト HS100/15.0km 3位
2021年2月7日   クリンゲンタール HS140/10.0km 準優勝
2021年3月20日   クリンゲンタール HS140/10.0km 準優勝
ワールドカップ団体表彰台
開催日 開催地 種目 成績 メンバー
2013年12月1日   クーサモ HS142/4×5.0km 3位 加藤大平渡部善斗永井秀昭渡部暁斗
2018年11月25日   ルカ HS142/4×5.0km 準優勝 山元豪、渡部善斗、永井秀昭、渡部暁斗
2020年1月25日   オーベルストドルフ HS140/4×5.0km 3位 渡部暁斗山本涼太、永井秀昭、渡部善斗
2021年1月23日   ラハティ HS130/2×7.5km 3位 山本涼太、渡部暁斗

ノルディックスキージュニア世界選手権 編集

脚注 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集