白石かずこ
白石 かずこ(しらいし かずこ、1931年2月27日 - 2024年6月14日)は、日本の詩人、翻訳家。本名 菱沼嘉壽子〈ひしぬま・かずこ〉[1]。
来歴
編集伯父の小原克己は「満州公論」などの雑誌編集長をしており、井伏鱒二や林芙美子らといった作家と深い交流があった。
7歳で帰国し、10代から詩を書き始め、北園克衛らの「VOU」に所属。早稲田大学第一文学部在学中の1951年、20歳で詩集『卵のふる街』を上梓。一時期、映画監督の篠田正浩と結婚していた。1960年に『虎の遊戯』で復活し、1970年、『聖なる淫者の季節』でH氏賞、1978年、『一艘のカヌー、未来へ戻る』で無限賞、1982年、『砂族』で藤村記念歴程賞、1997年、『現れるものたちをして』で高見順賞、読売文学賞(詩歌部門)、1998年、紫綬褒章、2003年、『浮遊する母、都市』で晩翠賞受賞。2009年『詩の風景、詩人の肖像』で二度目の読売文学賞(随筆・紀行部門)受賞。2010年、セルビアの「スメデレボの金の鍵賞」受賞。
当初はモダニズムとシュールレアリスムの影響を受けていたが、1960年代以降、アメリカのビート詩人、ジャズの影響を受け、1970年代には、アイオワ大学、ロッテルダム国際詩祭、ポーランド詩祭、ジェノヴァ国際詩祭など、30数カ国の詩人祭などで詩の朗読を行う。1980年代にはメキシコ国際詩祭、インド・バルシキ国際詩祭などに参加。
女性向けの恋愛エッセイや絵本、写真集、翻訳など多彩な仕事ぶりである。1970年代には先鋭な「フェミニスト」と思われていた。その後の「学者フェミニスト」の登場で影が薄くなったが、上野千鶴子が愛するニキ・ド・サンファルを日本に紹介したのは白石である。九条の会の賛同者である。
三島由紀夫、森茉莉、寺山修司らとも交流が深かった。『聖なる淫者の季節』の英訳者の一人で、同書の序文を書いた詩人ケネス・レクスロス[2][3]は、白石を「日本のアレン・ギンズバーグ」と呼んだ。[4]
著書
編集- 『白石かずこ第一詩集 卵のふる街』(協立書店)1951
- 『虎の遊戯』(世代社) 1960
- 『もうそれ以上おそくやってきてはいけない』(思潮社) 1963
- 『今晩は荒模様』(思潮社) 1965
- 『男性捕獲法』(文理書院ドリーム出版・新書) 1967
- 『ある日、トツゼン恋が』(新書館、For ladies) 1967
- 『悦びの触角 プレイラブ・テクニック』(青春出版社、プレイブックス) 1967
- 『白石かずこ詩集』(思潮社) 1968
- 『愛たちけものたち神たち』(天声出版) 1968
- 『恋人たちよこんにちは』(新書館、For ladies) 1969
- 『白石かずこ詩集』(思潮社、現代詩文庫) 1969
- 『聖なる淫者の季節』(思潮社) 1970
- 『青春のハイエナたちへの手紙』(三笠書房) 1970
- 『動物詩集』(サンリオ山梨シルクセンター) 1970
- 『1セントの花びら』(新書館、For Ladies) 1970
- 『わたしの中のカルメン』(文化出版局、レモン新書) 1971
- 『わたしの天気予報』(思潮社) 1973
- 『ブラックの朝』(思潮社) 1974
- 『アメリカン・ブラック・ジャーニー』(河出書房新社) 1975、のち集英社文庫
- 『紅葉する炎の15人の兄弟日本列島に休息すれば 』(サンリオ出版) 1975
- 『愛のレター教室』(広済堂出版) 1975
- 『聖なる淫者の秋 詩画集』(バベル社) 1976
- 『晩酌の思想 味噌汁と六本のストロー』(奥成達,平岡正明共著、住宅新報社) 1976
- 『恋のサブノート 愛の行動学』(住宅新報社) 1976
- 『きまぐれ魔女の物語』(宇野亜喜良絵、エルム) 1976
- 『一艘のカヌー、未来へ戻る』(思潮社) 1978
- 『なりたがりやのくも』(岩崎書店) 1978
- 『やまのこのぶのたんけん』(小峰書店) 1978
- 『新選白石かずこ詩集』(思潮社、新選現代詩文庫) 1978
- 『スペースへ漕ぎだすものたち 一艘のカヌー、航海譜』(九藝出版) 1978
- 『風そよぎ、聖なる淫者』(思潮社) 1980
- 『大人の恋をしてみませんか 愛されるより愛したいあなたなら』(PHP研究所) 1982
- 『海光る天草』(桐原書店) 1982
- 『Jazzに生きる わたしの内なる異邦人の旅』(旺文社文庫) 1982
- 『可愛い男たちと可愛い女たち わたしの映画旅行』(旺文社文庫) 1982
- 『ラビリントス 六つの精霊呼ぶ土地より』(静地社) 1983
- 『新動物詩集』(沖積舎) 1983
- 『ザ・ラブレター この想い、あなたに伝えたい』(PHP研究所) 1983
- 『砂族』(書肆山田) 1984
- 『砂族からの手紙』(講談社) 1984
- 『火の眼をした男』(集英社) 1984
- 『大人の恋を知りはじめたあなたに ときめきとせつなさの間で』(PHP研究所) 1984
- 『吉田ルイ子・白石かずこの部屋』(旺文社) 1985
- 『燃えるような恋をしたいあなたに』(大和文庫) 1985
- 『日本の詩 白石かずこ』(ほるぷ出版) 1985
- 『炎える瞑想』(ジョン・ソルト訳、アラン・グリーン画、静地社) 1986
- 『風景が唄う』(音楽之友社) 1986
- 『ふれなま・ふれもん・ふるむん』(書肆山田) 1988
- 『ひらひら、運ばれてゆくもの』(書肆山田) 1992
- 『続白石かずこ詩集』(思潮社、現代詩文庫) 1994
- 『ロバにのり、杜甫の村へゆく』(芸立出版) 1994
- 『現れるものたちをして』(書肆山田) 1996
- 『黒い羊の物語 Personal poetry history』(人文書院) 1996
- 『羊たちの午后』(指月社) 1996
- 『愉悦のとき 白石かずこの映画手帖]』(パンドラ) 1999
- 『ロバの貴重な涙より』(思潮社) 2000
- 『浮遊する母、都市』(書肆山田) 2003
- 『満月のランニング』(本阿弥書店) 2004
- 『詩の風景・詩人の肖像』(書肆山田) 2007
翻訳
編集- 『空がレースにみえるとき』(エリノア・L・ホロウィッツ、ほるぷ出版) 1976
- 『おやすみなさい』1 - 3(ロバート・クラウス、ポプラ社) 1979
- 『恋を駆ける女』(サンドラ・ホックマン、講談社) 1979
- 『大きな悪魔のディンゴ』(ディック・ラウジィ、集英社) 1980
- 『大きなにじへび』(ディック・ラウジィ、集英社) 1980
- 『ちいちゃな女の子のうた“わたしは生きてるさくらんぼ"』(デルモア・シュワルツ、ほるぷ出版) 1981
- 『ヴィーナスの鏡』(フランソワーズ・サガン,フェデリコ・フェリーニ詞、ウィンゲート・ペイン写真、ノーベル書房) 1981
- 『ジョン・レノン ノー・リプライ』(ジョージ・カルポジ・ジュニア、文化出版局) 1981
- 『アラビアン・ナイト』(ローレンス・ハウスマン編、エドマンド・デュラック絵、新書館) 1981
- 『ニキ・ド・サンファール』(ニキ・ド・サンファル、ピエール・レスタニー詩、松本路子写真、PARCO出版局) 1986
- 『窓の下で』(ケイト・グリーナウェイ、ほるぷ出版、ほるぷクラシック絵本) 1987
- 『ハイワサのちいさかったころ』(ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー、ほるぷ出版) 1989
- 『アドリエンヌ・リッチ詩集』(アドリエンヌ・リッチ、渡部桃子共訳、思潮社) 1993
- 『花の妖精たち』全8冊(シシリー・メアリー・バーカー、ほるぷ出版) 1994
- 『ぼくを抱きしめて』(パティ・ストレン、河合楽器製作所出版事業部) 1997
- 『おばあちゃんのアップルパイ』(ローラ・ラングストン,リンジイ・ガーディナー、ソニー・マガジンズ) 2004
ディスコグラフィ
編集アルバム
編集関連項目
編集脚注
編集- ^ “訂正して、おわびします:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞. 2024年6月21日閲覧。
- ^ “Seasons Of Sacred Lust” (英語). www.ndbooks.com (1978年4月1日). 2019年10月11日閲覧。
- ^ “新刊情報 - 海外詩文庫『レクスロス詩集』”. www.shichosha.co.jp. 思潮社. 2019年10月11日閲覧。
- ^ “Author Page - Kazuko Shiraishi”. 28 January 2016閲覧。
- ^ “詩人の白石かずこさん死去、93歳…詩集「現れるものたちをして」で読売文学賞”. 読売新聞オンライン (2024年6月19日). 2024年6月19日閲覧。
外部リンク
編集- 白石かずこポエトリー・リーディング - ウェイバックマシン(2004年11月9日アーカイブ分)