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裁判官の報酬等に関する法律

裁判官の報酬等に関する法律(さいばんかんのほうしゅうとうにかんするほうりつ)は、1948年昭和23年)7月1日国会が、裁判官最高裁判所長官最高裁判所判事高等裁判所長官判事判事補簡易裁判所判事)の受ける報酬手当等の支給について定めた法律である(昭和23年7月1日法律第75号)。

裁判官の報酬等に関する法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 裁判官報酬法
法令番号 昭和23年7月1日法律第75号
効力 現行法
種類 法律
主な内容 裁判官の報酬の支給等について
関連法令 特別職給与法など
条文リンク e-Gov法令検索
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報酬の月額等は、この法律の別表に定められている。

なお、裁判官の給与は、最高裁判所規則である「裁判官の報酬以外の給与に関する規則」に基づいての初任給調整手当等の適用対象となる。

目次

沿革編集

明治憲法下の裁判所は、1890年施行の裁判所構成法に基づき司法省の管轄下にあり、等級や給与額は勅令の判事検事等俸給令で定められていた。1899年の改正法によれば、裁判官と検察官の等級はそれぞれ勅任1〜4等級、奏任1〜12等級の16種類となっており、給与は年俸で勅任1級(大審院院長のみ)が5000円、奏任12等級が600円であった[1]。なおイタリアフランスでは判事に附与される等級は、当時も5段階に留まっており、日本ほど等級種別の多い制度は独特である。

戦後の司法制度が策定されるに当たり、帝国議会貴族院裁判所法案委員会では、英米法学者の議員高柳賢三が、司法尊重の趣旨を考えれば裁判官の報酬規定については格差を減じるべきである旨を意見し、アメリカ合衆国では最高裁判事と普通の裁判官の報酬にはそれほどの差はないことを述べたが、弁護士であり民間人閣僚の司法大臣木村篤太郎はこれに反対した。このことから裁判所の中での激しい報酬格差はほぼ維持されることとなり[2]、同時に全ての事件の終審を最高裁判所とする制度も維持された。

1947年4月17日、第92回帝国議会で、「裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律」が成立。同法は第1回及び第2回国会において効力が延長されたが、1947年の1年間には103名の裁判官が退職し裁判所の欠員は310名に上った。また同法施行と同日の5月3日日本国憲法は、裁判官の給与は在任中減額することができないことを規定した(80条2項)。次いで闇米を拒絶して餓死した山口良忠判事の死亡を背景に、報酬引きあげが検討された[3]

さらに、最高裁判所は年度末の1948年3月31日、最高裁判所規則として独自に「裁判官報酬等に関する暫定規則」(昭和23年規則第2号)を定めた。

日本社会党法務大臣鈴木義男は、第2回国会で5月1日、裁判官報酬を当時の公務員の平均給与額2920円の基準とする「裁判官の報酬等に関する法律」案を提出し、同法が7月1日に成立。重ねて5日後の7月6日には「昭和23年6月以降の判事等の報酬等に関する法律」(昭和23年7月6日法律第96号)が可決し、12月23日の「裁判官の報酬等に関する法律」の改正により廃止されるまで効力を保った。

近年の改正編集

裁判官報酬(月額)[4]
(等級) (円)
最高裁長官 2,010,000
最高裁判事 1,466,000
東京高裁長官 1,406,000
他の高裁長官 1,302,000
判事1号 1,175,000
 同2号 1,035,000
 同3号 965,000
 同4号 818,000
 同5号 706,000
 同6号 634,000
 同7号 574,000
 同8号 516,000
判事補1号 421,100
 同2号 387,400
 同3号 364,500
 同4号 341,200
 同5号 319,200
 同6号 304,100
 同7号 286,800
 同8号 276,500
 同9号 254,100
 同10号 245,200
 同11号 238,500
 同12号 232,400
簡裁判事1号 818,000
 同2号 706,000
 同3号 634,000
 同4号 574,000
 同5号 438,500
 同6号 421,100
 同7号 387,400
 同8号 364,500
 同9号 341,200
 同10号 319,200
 同11号 304,100
 同12号 286,800
 同13号 276,500
 同14号 254,100
 同15号 245,200
 同16号 238,500
 同17号 232,400

2012年4月から、月額10,000円から1,700円が減額された(判事補3号以下及び簡易裁判所判事8号以下は据え置き)。

2014年11月28日の裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律(法律第129号)の施行により、本法による俸給表の額(本俸)は同年4月に遡って引き上げとなり、支払済の報酬との差額が支払われた(法律第129号第1条による改正)。

同時に国家公務員給与制度全体の見直しに併せ、2015年4月からは、引き下げられた(法律第129号第2条による改正・最低額である判事補12号及び簡易裁判所判事17号は引上げ)。引き下げ分は、地域手当の引き上げにあてられる。

第3次安倍内閣提出の報酬改正案は全体的に昇給を図るものであったが、2016年1月20日参議院で行われた採決では、投票総数234名のうち賛成が222票、反対が12票[5]であった[6]

問題点編集

ハーバード大学法学部教授のJ.M.ラムゼイヤーらは1998年の論文で、日本では裁判官報酬の格差が激しく昇進が強い動機づけになることから、左遷を避けるために[[被告人]|の釈放が決定されることすらほとんどないということを指摘し、裁判官の独立が妨げられているであろうことを示している[7]

他方、澳門科技大学法学教授のV.ヤンらは、汚職防止活動をするNGOトランスペアレンシー・インターナショナルが発行する2007年世界汚職報告書に寄せた論文において、裁判官に対する十分な報酬は、一定の条件の下で汚職を防ぐ効果があるとみなされているとして、日本の裁判官の報酬制度に対する日本弁護士連合会の見解を引用する。

ただし、同論文では、これに続け、高額な報酬は逆の効果も生み得るとして、シンガポールの裁判官が受ける高額な報酬(米国の相当職の5倍と表現され[8]、同論文の依拠する記事では、例えば、主席判事の年収は126万豪ドル(1997年)に相当するとされている[9]。)が、「恒久的な賄賂」と呼ばれている例を挙げる。シンガポールの裁判官は、これまで裁判官の生活や収入を損ないかねないような判決をしておらず、「恒久的な賄賂」によって、裁判官の公平性が損なわれているのではないかといわれているというのである[10]

第2次安倍内閣は2014年4月に、史上初めて、人事院総裁に元裁判官である一宮なほみを任命した。

報酬額の推移編集

別 表
区分 報 酬 月 額
2010年
12月から[11]
2012年
4月から[12]
2014年
4月から[13]
2015年
4月から[13]
2015年
4月から[14]
2016年
4月から[15]
2017年
4月から[16]
(参考)
最高裁判所長官 2,060,000円 2,050,000円 2,050,000円 2,009,000円 2,010,000円 2,010,000円 2,010,000円 特別職俸給(内閣総理大臣)
最高裁判所判事 1,503,000円 1,495,000円 1,495,000円 1,465,000円 1,466,000円 1,466,000円 1,466,000円 特別職俸給(国務大臣等)
東京高等裁判所長官 1,441,000円 1,434,000円 1,434,000円 1,405,000円 1,406,000円 1,406,000円 1,406,000円 特別職俸給(副大臣等)
その他の高等裁判所長官  1,334,000円 1,328,000円 1,328,000円 1,301,000円 1,302,000円 1,302,000円 1,302,000円
判事 1号 1,204,000円 1,198,000円 1,198,000円 1,174,000円 1,175,000円 1,175,000円 1,175,000円 指定職8号俸
2号 1,060,000円 1,055,000円 1,055,000円 1,034,000円 1,035,000円 1,035,000円 1,035,000円 指定職6号俸
3号 989,000円 984,000円 984,000円 964,000円 965,000円 965,000円 965,000円 指定職5号俸
4号 838,000円 834,000円 834,000円 817,000円 818,000円 818,000円 818,000円 指定職3号俸
5号 724,000円 720,000円 720,000円 705,000円 706,000円 706,000円 706,000円 指定職1号俸
6号 650,000円 646,000円 646,000円 633,000円 634,000円 634,000円 634,000円
7号 688,000円 585,000円 585,000円 573,000円 574,000円 574,000円 574,000円
8号 529,000円 526,000円 526,000円 515,000円 516,000円 516,000円 516,000円
判事補 1号 428,000円 426,900円 427,900円 419,200円 420,300円 420,700円 421,100円
2号 394,200円 392,500円 393,500円 385,500円 386,600円 387,000円 387,400円
3号 368,900円 同左 370,000円 362,600円 363,700円 364,100円 364,500円
4号 345,100円 同左 346,200円 339,300円 340,400円 340,800円 341,200円
5号 322,200円 同左 323,500円 317,000円 318,200円 318,700円 319,200円
6号 306,400円 同左 307,800円 301,700円 302,900円 303,500円 304,100円
7号 288,200円 同左 289,700円 284,100円 285,300円 286,000円 286,800円
8号 277,600円 同左 279,100円 273,700円 274,900円 275,700円 276,500円
9号 253,800円 同左 255,400円 250,400円 252,000円 253,200円 254,100円
10号 244,800円 同左 246,400円 241,500円 243,100円 244,300円 244,300円
11号 234,300円 同左 236,000円 234,000円 236,200円 237,600円 238,500円
12号 227,000円 同左 228,700円 227,500円 229,900円 231,400円 232,400円 行政職(一)3級1号俸
簡易裁判所判事 1号 838,000円 834,000円 834,000円 817,000円 818,000円 818,000円 818,000円 判事4号
2号 724,000円 720,000円 720,000円 705,000円 706,000円 706,000円 706,000円 判事5号
3号 650,000円 646,000円 646,000円 633,000円 634,000円 634,000円 634,000円 判事6号
4号 588,000円 585,000円 585,000円 573,000円 574,000円 574,000円 574,000円 判事7号
5号 446,700円 444,700円 445,700円 436,600円 437,700円 438,100円 438,500円
6号 428,800円 426,900円 427,900円 419,200円 420,300円 420,700円 421,100円 判事補1号
7号 394,200円 392,500円 393,500円 385,500円 386,600円 387,000円 387,400円 判事補2号
8号 368,900円 同左 370,000円 362,600円 363,700円 364,100円 364,500円 判事補3号
9号 345,100円 同左 346,200円 339,300円 340,400円 340,800円 341,200円 判事補4号
10号 322,200円 同左 323,500円 317,000円 318,200円 318,700円 319,200円 判事補5号
11号 306,400円 同左 307,800円 301,700円 302,900円 303,500円 304,100円 判事補6号
12号 288,200円 同左 289,700円 284,100円 285,300円 286,000円 286,800円 判事補7号
13号 277,600円 同左 279,100円 273,700円 274,900円 275,700円 276,500円 判事補8号
14号 253,800円 同左 255,400円 250,400円 252,000円 253,200円 254,100円 判事補9号
15号 244,800円 同左 246,400円 241,500円 243,100円 244,300円 244,300円 判事補10号
16号 234,300円 同左 236,000円 234,000円 236,200円 237,600円 238,500円 判事補11号
17号 227,000円 同左 228,700円 227,500円 229,900円 231,400円 232,400円 判事補12号

出典編集

  1. ^ 明治32年4月17日勅令第134号国立国会図書館デジタルコレクション-2 官報号外 明治24年7月27日
  2. ^ 1947年3月22日帝国議会・裁判所法案特別委員会議事録第4頁。なお木村は、同年に公職追放処分となる。
  3. ^ 山形道文『われ判事の職にあり』(文藝春秋)昭和57年、31頁
  4. ^ 平成29年12月15日改正 裁判官の報酬等に関する法律官報
  5. ^ 維新元気の会3名のうち1名、おおさか維新の会7名全員、無所属クラブ3名のうち1名、生活の党と山本太郎となかまたち3名のうち1名
  6. ^ 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案 2016年1月20日投票結果 参議院
  7. ^ J. Mark Ramseyer, Eric Rasmusen, Why is the Japanese Conviction Rate So High?, 1998. Harvard Law School.
  8. ^ Vincent Yang and Linda Ehrichs, The professionalism of judges: education, salaries and career structure in Asia, 2007, p49,Transparency International.
  9. ^ Francis T. Seow, ‘The Politics of Judicial Institutions in Singapore’ (1997), available at www.singapore-window.org/1028judi.htm
  10. ^ Vincent Yang and Linda Ehrichs, The professionalism of judges: education, salaries and career structure in Asia, 2007, p51,Transparency International.
  11. ^ 平成22年11月30日法律第57号 裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律
  12. ^ 平成24年2月29日法律第4号 裁判官の報酬等に関する法律等の一部を改正する法律
  13. ^ a b 平成26年11月28日法律第129号 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律
  14. ^ 平成28年1月26日法律第5号 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律
  15. ^ 平成28年11月30日法律第90号 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律
  16. ^ 平成29年12月15日法律第83号 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律

参考文献・脚注編集