ウロン学名Wulong、舞龍、「踊る竜」の意)は、中華人民共和国の北東部で発見された、約1億2000万年前の小型獣脚類恐竜。体の大きさはカラスと同程度であるが、遥かに長い尾を有しており、その末端には二股の尾羽が存在する[1]化石下部白亜系アプチアン階)の九佛堂層英語版で発見された。ウロン・ボハイエンシスWulong bohaiensis)の1種のみを含んでおり、発見された化石は幼体のものである[2][3][4]

ウロン
ホロタイプ標本 DNHM D2933
地質時代
前期白亜紀アプチアン Aptian
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
階級なし : コエルロサウルス類 Coelurosauria
階級なし : デイノニコサウルス類 Deinonychosauria
: ドロマエオサウルス科 Dromaeosauridae
: ウロン属 Wulong
学名
Wulong
Poust et al.2020
模式種
Wulong bohaiensis
Poust et al.2020
  • Wulong bohaiensis
    Poust et al.2020

発見

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ホロタイプ標本 DMHM D2933 は中国・遼寧省に分布する化石に富んだ九佛堂層英語版で農家により発見され、それ以降は遼寧省の大連自然史博物館のコレクションに収蔵されていた。骨格は Ashley William Poust により調査され、2014年に Wulong bohaiensis として命名された[5]。この名前はnomen ex dissertatione(学位論文上での命名)であったため当時は無効であったが、2020年にPoustは彼のかつての指導教官であったモンタナ州立大学英語版のDavid Varricchioおよび大連市の古生物学者であるGao Chunling、Wu Jianlin、Zhang Fengjiaoと共に有効な学名を発表し、タイプ種Wulong bohaiensisを記載した。属名は中国語の「舞」と「龍」に由来し、活発な姿勢と推測される俊敏な生態を反映している。種小名は博物館が渤海に位置することにちなむ[2]

特徴

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ウロン・ボハイネンシスの骨質の尾は長く、体長の2倍に達する。骨格には空洞化した骨が存在する。標本には四肢に羽毛が見られ、また尾の末端には2枚の長い飾り羽が存在する。加えて、頭部は狭く、薄い顎には小型で鋭い歯が並ぶ。義県層から産出したシノルニトサウルスと近縁である[2]

ウロンの長い頭蓋骨はその体から見て相対的に大きく、大腿骨長の1.15倍に達する。前上顎骨は軽量な構造をしており、ドロマエオサウルス科の中では相対的に背腹方向に短い[2]。大多数のドロマエオサウルス科の方形頬骨はT字型であるが、ウロンのものは小型でL字型をなす。この獣脚類の上行突起は高さ6ミリメートルであり、頬骨突起は長さ5ミリメートルである[2]

羽毛と色

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復元図

ウロンの標本には軟組織が保存されており、前肢と後肢には羽毛が存在し、また尾の末端にはミクロラプトル孔子鳥および現生のケツァールのような長い2枚の羽が存在する。しかしミクロラプトルと異なり、ウロンには尾の先端の羽毛が扇状であったという証拠が無い。未熟な個体に長い1対の尾羽が存在することから、尾羽は交尾には使用されず、おそらく他の装飾的な目的にも使われなかったと考えられる[2]

2023年には、Croudaceらがホロタイプの色彩について報告した。彼らによれば、前肢と後肢には遊色効果を示す羽毛が生えており、体の他の部分には灰色の羽毛が存在した。さらに彼らは、遊色効果を持つ幼鳥の羽毛は性的なサインを示すだけでなく、コミュニケーションに用いられる種内のシグナルを示す可能性があるとの仮説を発表した[6]

分類

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Poust et al. (2020) はウロンをドロマエオサウルス科ミクロラプトル亜科に位置付け、義県層から産出した僅かに古いシノルニトサウルスとの姉妹群とした。以下のクラドグラムに系統解析の結果を示す[2]

ミクロラプトル亜科

Hesperonychus

Graciliraptor
Microraptor

Tianyuraptor

Sinornithosaurus
Wulong

出典

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  1. ^ 羽毛持つ恐竜の新種、中国で化石発見 「踊る竜」と命名”. CNN (2020年1月22日). 2022年10月18日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Poust, AW; Gao, C; Varricchio, DJ; Wu, J; Zhang, F (15 January 2020). “A new microraptorine theropod from the Jehol Biota and growth in early dromaeosaurids”. The Anatomical Record (American Association for Anatomy). doi:10.1002/ar.24343. PMID 31943887. 
  3. ^ Hodge, Rae (17 January 2020). “Pocket-size raptor sheds new light on the links between dino and bird life - This "dancing dragon," a new species of feathered dinosaur, was discovered in one of the richest fossil deposits in the world.”. CNET. https://www.cnet.com/news/pocket-size-raptor-sheds-new-light-on-links-between-dino-and-bird-life/ 19 January 2020閲覧。 
  4. ^ Rayne, Elizabeth (18 January 2020). “This New Dinosaur Just Called It: Even Feathered Dinos Were Nothing Like Birds”. SyfyWire. https://www.syfy.com/syfywire/new-dinosaur-proves-feathered-dinos-werent-birds 19 January 2020閲覧。 
  5. ^ A.W. Poust. 2014. Description and ontogenetic assessment of a new Jehol microraptorine. M.Sc. Thesis, Montana State University, Bozeman, Montana
  6. ^ Croudace, A.D.; Shen, C.; Lü, J.; Brusatte, S.L.; Vinther, J. (2023). “Iridescent plumage in a juvenile dromaeosaurid theropod dinosaur”. Acta Palaeontologica Polonica 68. doi:10.4202/app.01004.2022.