エクセルシオール級
エクセルシオール級(エクセルシオールきゅう、Excelsior class)は、アメリカ合衆国のSFテレビドラマ『スタートレック』シリーズに登場する宇宙艦隊保有の宇宙船のクラス名のひとつである。日本語版では「エクセルシオ」または「エクセルオール」と翻訳・発音される。excelsiorの意味は「向上心」である[1]。
概要編集
スタートレック劇中において23世紀末に開発され、24世紀末においても現役を維持している非常に優秀な艦級。
初登場は『スタートレックIII ミスター・スポックを探せ!』のU.S.S.エクセルシオールNX-2000で、宇宙基地に停泊中の次世代新型ワープドライブの実験艦としてその姿を披露して以降、24世紀を舞台とするテレビシリーズ『新スタートレック(TNG)』『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン(DS9)』『スタートレック:ヴォイジャー(VOY)』にも頻繁に登場する。時系列的な最終登場はVOY最終話「道は星雲の彼方へ」で、地球付近に出現したボーグ・スフィアとの戦闘のために結集した18隻の連邦艦の中にその姿が見られ、劇場版第10作「ネメシス/S.T.X」では艦影こそ確認できないものの、コンピュータ画面上にU.S.S.フッドNCC-42296(エクセルシオール級の一つ)の名前が見られる。
『スタートレック:ピカード(PIC)』ではモデルチェンジがされたエクセルシオールⅡ級が登場した。『スタートレック:ローワーデッキ』でもワープナセルがソヴェリン級のものと同じものに交換されたオベナ級が就航している。
経歴編集
初号艦のU.S.S.エクセルシオールNX-2000はもともと、従来のワープドライブよりもはるかに高速で移動することを目的としたトランスワープドライブの実験艦として建造されたという経緯があるが、結局この試みは成功しなかった。その後U.S.S.エクセルシオールは通常のワープドライブへ換装し、登録番号をNCC-2000と書きかえて、ヒカル・スールー艦長の指揮の下にベータ宇宙域の調査任務に就く。
トランスワープの実用化は失敗であったものの数々の科学実験で多大な成果が得られており、さらにエクセルシオール級の宇宙艦としての船体設計の秀逸性に至っては成功したといえている。23世紀末の運用開始から80年以上経った2370年代でも、エンジンやコンピュータ等の内装機関を更新しつつ、現役艦として頻繁に用いられている。『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』のドミニオン戦争では大規模な艦隊戦に大量に投入され、『スタートレック:ヴォイジャー』118話「過去に仕掛けられた罠」では、造船所において24世紀後期の最新鋭艦であるアキラ級、イントレピッド級、ギャラクシー級宇宙艦らに混ざって、新規に建造中のエクセルシオール級宇宙艦を見ることができるほどである。対してエクセルシオール級の後継艦級であるはずのアンバサダー級はほとんど見かけることがない。
デザイン編集
デザインはILMのビル・ジョージ。全体的な船の外観は、基本的にU.S.S.エンタープライズNCC-1701のコンスティテューション級のもの(艦首に円盤部、その下部に円筒状の機関部が接続し、艦尾から2基の円筒状のワープナセルが上向きに設置されている)をそのまま踏襲した形状となっている。他のエンタープライズ形状の艦級(コンスティテューション級やギャラクシー級)と比較した場合、小顔な円盤部と長大なワープナセルが特徴である。ビル・ジョージによれば、「優秀だが杓子定規で面白みのない日本人がエンタープライズをデザインしたらこうなるだろう」というコンセプトによるデザインである[2]。またデザイナーのジョン・イーブスは自身のお気に入りであったというエクセルシオール級のデザインを踏襲し、ソヴェリン級宇宙艦のU.S.S.エンタープライズNCC-1701-Eを生み出した。
強化型エクセルシオール級編集
U.S.S.エクセルシオールの8年後に進宙した同級艦U.S.S.エンタープライズNCC-1701-Bは、第2船体側面の張り出たバルジ部分や、バサードラムスクープ、インパルスエンジンの追加、ワープナセル後部に突起があるなどデザインが一部異なっており、俗に「強化型エクセルシオール級」と呼ばれている。強化型エクセルシオール級は他に、U.S.S.ディファイアントNX-74205と交戦したU.S.S.ラコタNCC-42768がある。ラコタは最新型戦闘艦のディファイアントを大いに苦戦させるほど防衛力が強化されており、エクセルシオール級宇宙艦の設計の柔軟性と優秀性を示すこととなった。
エクセルシオールⅡ級編集
『スタートレック:ピカード(PIC)』11話「スターゲイザー」で登場したU.S.S.エクセルシオールNCC-42037とU.S.S.ユーリカNCC-42023はエクセルシオールⅡ級とされており、円盤部がソヴェリン級のような縦長の楕円形となり第2船体も拡張されるモデルチェンジがされている。これらはソヴェリン級やアキラ級、サザーランド級ら宇宙艦隊のエース艦と肩を並べてU.S.S.スターゲイザーNCC-82893の救援に駆け付けた。
これまでのスタートレックシリーズにおいてはミランダ級とソユーズ級のようなマイナーチェンジこそあれ、こういった旧型艦のスタイルを踏襲したモデルチェンジは例がない。そのため頻繁に運用されているエクセルシオール級が宇宙艦隊で手堅く信頼されている艦級であることが示唆されている。
また『スタートレック:ローワーデッキ(LD)』20話「初めてのファースト・コンタクト」では、エクセルシオールⅡ級のワープナセルをソヴェリン級のものと置換したオベナ級U.S.S.アルキメデスNCC-83002が登場している。
主要登場人物との関わり(23世紀)編集
- U.S.S.エンタープライズNCC-1701を溺愛する機関主任のモンゴメリー・スコット中佐は、エンタープライズの株を奪ったU.S.S.エクセルシオールNX-2000を毛嫌いしており、「バケツのような船」「(開いた穴をふさぐ)ボルトだらけの古バケツ」などの悪態をつく。しかし『スタートレックVI』のラストシーンではエクセルシオールを賛美している。
- U.S.S.エンタープライズNCC-1701の操舵士だったヒカル・スールー中佐は大佐に昇格後、U.S.S.エクセルシオールNCC-2000の艦長に就任し、3年間の調査任務に就く。その後、U.S.S.エンタープライズNCC-1701-Aのジェイムズ・T・カーク艦長とともに、仇敵であったクリンゴン帝国と惑星連邦との同盟締結を成し遂げる。
- ジェイムズ・T・カーク大佐、モンゴメリー・スコット大佐、パベル・チェコフ中佐は、エクセルシオールと同型艦となったU.S.S.エンタープライズNCC-1701-Bの処女航海イベントに招待される。「大のエクセルシオール嫌い」で有名であったスコット大佐も、エンタープライズの名がついた途端に「こいつは素晴らしい船ですな」と絶賛する。
主要登場人物との関わり(24世紀)編集
- U.S.S.エンタープライズNCC-1701-Dの副長であるウィリアム・T・ライカー中佐の前任はU.S.S.フッドNCC-42296であった。
- ライカー中佐は、大佐への昇格とともにU.S.S.メルボルンNCC-62043の艦長就任を推薦されたことがあるが、エンタープライズの充実した日々が捨てがたく、返答を渋る。その直後、ウルフ359の戦いにおいてメルボルンはボーグ・キューブに破壊される。
- U.S.S.ヴォイジャーNCC-74656の艦長であるキャスリン・ジェインウェイ大佐は、中佐時代にU.S.S.アルバターニNCC-42995に科学士官として勤務していた。またアルバターニの艦長を務めていたオーウェン・パリス提督は、ヴォイジャーの操舵主任トム・パリス中尉の父親である。
- U.S.S.ヴォイジャーNCC-74655の保安・戦術主任トゥヴォック少佐は、初配属が23世紀のヒカル・スールー艦長指揮のU.S.S.エクセルシオールNCC-2000であった。
- 『スタートレック:ローワーデッキ』20話では、フリーマン艦長の友人ゴメス艦長の指揮するオベナ級(改造型エクセルシオールⅡ級)U.S.S.アルキメデスNCC-83002が登場する。
- 『スタートレック:ピカード』11話では、復隊したラファエラ・ムジカー中佐が初のロミュラン人士官候補生エルノアとともにエクセルシオールⅡ級U.S.S.エクセルシオールNCC-42037に乗艦する。
エクセルシオール級宇宙船一覧編集
- U.S.S.アル・バターニ (U.S.S.Al-Batani, NCC-42995)
- オーウェン・パリス大佐の指揮(当時)。アッバース朝時代の天文学者バッターニーに由来。
- U.S.S.イントレピッド (U.S.S.Intrepid, NCC-38907)
- アメリカの軍艦名に由来(USS Intrepid)。VOYシリーズのU.S.S.ヴォイジャーNCC-74656に代表されるイントレピッド級宇宙艦の1番艦、U.S.S.イントレピッドNCC-74000はこの艦の後継になる。
- U.S.S.エクセルシオール (U.S.S.Excelsior, NX-2000→NCC-2000)
- スタイルズ大佐、ヒカル・スールー大佐の指揮。エクセルシオール級の1番艦。
- U.S.S.エンタープライズ (U.S.S.Enterprise, NCC-1701-B) /強化型エクセルシオール級
- ジョン・ハリマン大佐の指揮。エンタープライズ (スタートレック)を参照。
- U.S.S.オキナワ (U.S.S.Okinawa, NCC-13958)
- レイトン大佐の指揮(当時)。日本の沖縄県に由来。
- U.S.S.カイロ (U.S.S.Cairo, NCC-42136)
- エドワード・ジェリコ大佐、レスリー・ウォン大佐の指揮。エジプトの首都カイロに由来。
- U.S.S.グリソム (U.S.S.Grissom, NCC-42857)
- アメリカの宇宙飛行士ガス・グリソムに由来。
- U.S.S.クレイジー・ホース (U.S.S.Crazy Horse, NCC-50446)
- ラコタの一支族オグララの指導者クレイジー・ホースに由来。
- U.S.S.クロケット (U.S.S.Crockett, NCC-38955)
- アメリカの軍人, 政治家デイヴィッド・クロケットに由来。
- U.S.S.ゴルコン (U.S.S.Gorkon, NCC-40512)
- アリーナ・ナチェフ中将の座乗艦。クリンゴンの宰相ゴルコンに由来。
- U.S.S.チャールストン (U.S.S.Charleston, NCC-42285)
- アメリカサウスカロライナ州の都市チャールストンに由来。
- U.S.S.ティカムサ (USS Tecumseh, NCC-14934)
- アメリカに抵抗したショーニー族の首長テカムセ(ティカムサ)に由来。
- U.S.S.バレー・フォージ (U.S.S.Vally Forge, NCC-43305)
- アメリカ独立戦争時の野営地バレー・フォージ、アメリカの航空母艦ヴァリー・フォージなどが由来。
- U.S.S.ファラガット (U.S.S.Farragut, 登録番号不明)
- アメリカの提督デヴィッド・ファラガットに由来。廃船だったが、後継のネビュラ級ファラガットがクリンゴンに撃沈されたため現役復帰した。
- U.S.S.フィアレス (U.S.S.Fearless, NCC-14598)
- イギリスの軍艦名に由来。
- U.S.S.フッド (U.S.S.Hood, NCC-42296)
- ロバート・デソト大佐、ムラカミ大佐の指揮(2381~年の時点)。イギリスの軍艦名に由来。
- U.S.S.フレドリクソン (U.S.S.Frederickson, NCC-42111)
- 画家のアンソニー・フレドリクソンに由来。
- U.S.S.ベルリン (U.S.S.Berlin, NCC-14232)
- ドイツの首都ベルリンに由来。
- U.S.S.マリンチェ (U.S.S.Malinche, NCC-38997)
- サンダース大佐の指揮。エルナン・コルテスの通訳を務めたインディオの女性マリンチェに由来。
- U.S.S.メルボルン (U.S.S.Melbourne, NCC-62043)
- オーストラリアの都市メルボルンに由来。ライカー副長の艦長への昇進先として推薦されていたが、ウルフ359の戦いに参加、喪失。
- 当初『浮遊機械都市ボーグ・後編』ではネビュラ級(として採用されるデザインのもとになったスタディ・モデル)だったが、DS9『聖なる神殿の謎』で艦種が変更された。TVシリーズでは説明されていないが、外伝小説『Trust Yourself When All Men Doubt You』によればネビュラ級U.S.S.メルボルンに置き換えられる予定で、ライカー中佐が転属を打診されていたのは新型の方だったということになっている。
- U.S.S.ラコタ (U.S.S.Lakota, NCC-42768) /強化型エクセルシオール級
- エリカ・ベンティーン大佐の指揮。ディファイアント級並みの戦闘力を持つ強化改造型。アメリカの先住民族ラコタに由来。
- U.S.S.リビングストン (U.S.S. Livingston, NCC-34099)
- アメリカ独立宣言の起草に関わった政治家ロバート・R・リビングストンに由来。
- U.S.S.ルーズベルト (U.S.S.Roosevelt, NCC-2573)
- アメリカの大統領セオドア・ルーズベルトに由来。ウルフ359の戦いに参加、喪失。
- U.S.S.レパルス (U.S.S.Repulse, NCC-2544)
- タガート大佐の指揮。イギリスの軍艦レパルス (巡洋戦艦)に由来。
- U.S.S.ライチェス (U.S.S.Rigtheous, NCC-42451)
- ニコライ・アンドロポフ大佐の指揮(当時)。ウルフ359の戦いに参加、喪失。『スタートレック:ボーグ』に登場。
脚注編集
- ^ ニューヨーク市の標語「excelsior !!(より高く!)」ともなっている単語である。もう一つは貨物を箱に梱包する際の詰め物という意味もある。
- ^ “Excelsior class model” (英語). Memory Alpha 2018年8月7日閲覧。