エドワード・ジェローム・バザ・カルボ英語: Edward Jerome Baza Calvo; 1961年8月29日 - )は、アメリカ合衆国グアム出身の政治家。2011年から2019年まで第8代グアム準州知事を務めた。共和党グアム準州議会議員(通算5期)。

エディ・カルボ
Eddie Calvo
第8代 グアム準州知事
任期
2011年1月3日 – 2019年1月7日
副知事レイ・テノリオ
前任者フェリクス・ペレス・カマチョ
後任者ルー・レオン・ゲレロ
第29回 グアム準州議会 副議長
任期
2007年1月1日 – 2008年5月7日
前任者ジョアン・M・S・ブラウン
後任者デーブ・シミズ
グアム準州議会議員
任期
2005年1月3日 – 2011年1月3日
任期
1999年1月4日 – 2003年1月6日
個人情報
生誕エドワード・ジェローム・バザ・カルボ
(1961-08-29) 1961年8月29日(62歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国グアムタムニング
政党共和党
配偶者クリスティーン・ルハン・ソニド
子供6
親族ポール・カルボ (父)
教育ノートルダム・ド・ナムール大学(BA)

経歴・人物 編集

カルボは1961年8月29日、アメリカ・グアムのタムニングで生まれた。父は第3代グアム準州知事を務めたポール・マクドナルド・カルボ、母はローザ・エレロ・バザ[1]

カルボは当初、グアムのドゥエニャス神父記念学校に通っていたが、その後カリフォルニアに移り、1979年カリフォルニア州マウンテンビューのセント・フランシス高校を卒業した。カリフォルニア州・ベルモントノートルダム・ド・ナムール大学で経営学の学士号を取得した[1]

パシフィック・コンストラクション・カンパニーのゼネラルマネージャー、グアムのペプシ・ボトリング・カンパニーの副社長兼ゼネラルマネージャーを務めた後、1990年代後半に政界入りした[1]

1987年にクリスティーン・ルハン・ソニドと結婚。夫婦には6人の子供がいる。

政治家として 編集

1998年、カルボは共和党員として、グアム準州議会議員に初当選し、1999年に就任した。

2002年、トニー・ウンピンコ準州議会議長が知事の共和党候補予備選に出馬。カルボは副知事候補として出馬した。しかし、フェリクス・ペレス・カマチョに予備選で敗れ、知事選から撤退した。その後、2年間政界から離れたのち、2004年の準州議会議員選挙に出馬し、以来、州議を通算5期務めた。2007年から2008年までの第29回議会前期で副議長を務め、2009年から2011年までの第30回議会で少数党院内総務を務めた[1]

グアム準州知事として 編集

2010年選挙 編集

2010年4月30日、カルボはチャモロ・ビレッジで行った自身の支持者に向けた演説の中で、任期満了に伴い州議会議員を辞職し、2010年のグアム知事選挙に向けて、共和党予備選への立候補を宣言。レイ・テノリオ上院議員を副知事候補に指名した[2]

2010年9月4日、共和党の予備選挙でマイケル・クルーズ副知事(当時)を破った。知事選では、民主党カール・T・C・グティエレス前知事とフランク・アグオン上院議員を破り、勝利した。2位候補との票差が2%未満だったため、規定に基づき、グアム選挙管理委員会から再集計が命じられた[2]

2014年選挙 編集

カルボ知事とテノリオ副知事は、再選を目指す意向を表明。2014年6月7日アニグアの選挙本部で、知事選のキックオフ集会を開催した[3]。知事選挙では、民主党候補のグティエレスと再び対決。64%の票を得て、再選した[4][5]

大統領選挙 編集

2012年3月、カルボはミット・ロムニー氏を大統領選に推薦した[6]2016年1月には、2016年大統領共和党予備選テキサス州テッド・クルーズ上院議員を支持し[7]、クルーズ氏が落選した後はドナルド・トランプの支持を表明した[8]

政策 編集

カルボは、高校卒業資格を持つ公務員のみを雇用する方針を打ち出した[4]。また、税金の還付を遅らせることで自己資金を調達するといった財政慣行を廃止するなど、経費を抑制し、財政改革を実施した結果、2013年度に2年連続の予算黒字化を達成した[5][9]フィッチ・レーティングススタンダード&プアーズといった格付け会社は、財政再建を目指すカルボの姿勢を評価。S&Pは2013年10月にグアムの一般財源保証債をB+からBB-に格上げし、見通しを安定的(outlook)と評価した[9]

2014年2月、カルボは法案146に署名し、城の原則を立法化した[10]。これは、住居等に侵入する者に対して住居の所有者が、銃の発砲等を含む武力を行使しても、法的な訴追を行われないというアメリカの刑法上の原則である。さらに2014年5月、銃規制を緩和する法案296に署名し、法案を成立させた。この法案は、Concealed Carry(衣服の下やかばんの中など他人に見えない状態での携帯)の免許を発効する条件を緩和するものであった[10][11]

2016年11月の総選挙の際に、将来のグアムについてコモンウェルス米国州独立のいずれかを選ぶ国民投票を実施する意向を表明したが、住民に対する教育や議論が不十分とされて延期された。同様の国民投票は1982年9月を最後に行われていなかった[12]

2017年1月、グアムでの嗜好用大麻を合法化する法律案を提出した[13]。カルボの任期中には成立しなかったが、その後、ルー・レオン・ゲレロ知事によって、2019年に合法化された[14]

外交 編集

北朝鮮 編集

2017年8月9日朝鮮中央通信北朝鮮軍がグアムの軍事基地中距離弾道ミサイルを発射する可能性を示唆[15]。カルボは、強行発言を繰り返すトランプ大統領を擁護したうえで、金正恩の残虐性を強調する発言をしている[16]

中華民国 (台湾) 編集

第一銀行チャイナエアラインといった中華民国 (台湾)の企業がグアムへ投資を行っており、2015年の台湾人観光客は42,314人で、日本、韓国、アメリカ本土に次いで4番目に多く、全体の3.1%を占めている[17][18]。カルボは2017年の一般教書演説で、グアムの主要産業である観光産業で重要な地域の一つとして台湾を挙げ[19]、4度訪台[20]するなど、台湾との関係を重要視している。

2012年4月にカルボは知事として初めて訪台し、台湾の馬英九総統と面会[21]。グアムでのビジネスを呼びかけるプレゼンを90近くの台湾企業に行った[22]2015年11月にも再度訪台し、グアムへの投資を呼び掛けた[23]

2017年11月、蔡英文総統が太平洋諸国への外遊の帰路、グアムを訪れた。中国は蔡の外遊に難色を示しており、アメリカに対して米国領土の通過を許可しないよう求めている中での出来事だった。ガルボは蔡の訪問は私的で非公式(private and unofficial)と評したが、州警察による警護を付け、グアム政庁内の施設で歓迎のレセプションを主催した[24][25]

2017年8月、事実上の領事館に相当する駐グアム台北経済文化弁事処が予算や人員の都合を理由に閉鎖された[26]。カルボは、駐グアム弁事処の再開を訴え、2017年10月と2018年7月に台湾を訪問し、蔡英文と会談を行った[20][26]。カルボの任期終了後の2020年8月に台湾・外交部は駐グアム弁事処の再開を発表した[26]

参考文献 編集

  1. ^ a b c d “Calvo, Cruz take stances on issues: Sen. Eddie Calvo and Sen. Ray Tenorio”. Pacific Daily News. (2010年8月23日). オリジナルの2010年8月29日時点におけるアーカイブ。. https://webcitation.org/5sKmVCjGv?url=http://www.guampdn.com/article/20100823/NEWS01/8230302/Calvo-Cruz-take-stances-on-issues-Sen-Eddie-Calvo-and-Sen-Ray-Tenorio 2021年1月5日閲覧。 
  2. ^ a b Aguon, Mindy (2010年11月2日). “Calvo/Tenorio claim victory in razor-thin race”. KUAM-TV. http://www.kuam.com/Global/story.asp?S=13433310 
  3. ^ Aoki, Dance (2014年6月8日). “Calvo, Tenorio kick off campaign”. Pacific Daily News. オリジナルの2014年11月3日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20141103004558/http://www.guampdn.com/article/20140609/NEWS01/306090001/Calvo-Tenorio-kick-off-campaign 2021年1月5日閲覧。 
  4. ^ a b Raymundo, Shawn (2014年10月31日). “Sparks fly at Calvo-Gutierrez debate”. Pacific Daily News. オリジナルの2014年11月3日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20141103004623/http://www.guampdn.com/article/20141031/NEWS01/310310001/Sparks-fly-Calvo-Gutierrez-debate 2021年1月5日閲覧。 
  5. ^ a b Barro, Josh (2014年11月4日). “Republicans Have Already Won a Governor’s Race Today, in Guam”. The New York Times. 2021年1月5日閲覧。
  6. ^ “Romney wins entire Guam delegation”. CNN. (2012年3月9日). http://politicalticker.blogs.cnn.com/2012/03/09/romney-wins-entire-guam-delegation/ 
  7. ^ Gov. Calvo endorses Ted Cruz for president”. Guam Pacific Daily News (2016年1月30日). 2021年1月5日閲覧。
  8. ^ “Guam Republicans to endorse Trump in GOP convention”. Postguam. (2016年5月17日). http://www.postguam.com/news/local/guam-republicans-endorse-trump/article_5da7250a-1e5c-11e6-984f-ef90d626fa6d.html 
  9. ^ a b Keeley Webster (2014年7月7日). “Junk-Rated Guam Reports Budget Surplus”. bondbuyer.com. 2021年1月5日閲覧。
  10. ^ a b Gov. Calvo endorses Ted Cruz for president”. Guam Pacific Daily News (2016年1月30日). 2021年1月5日閲覧。
  11. ^ Matanane, Sabrina Salas (2014年5月28日). “Governor Signs 12 Bills, Vetoes 2”. Kuam News. https://www.kuam.com/story/25626210/2014/05/28/governor-signs-12-bills-vetoes-2 
  12. ^ Raymundo, Shawn (2016年12月8日). “Commission to launch series of decolonization meetings”. Pacific Daily News. Pacific Daily News. 2021年1月5日閲覧。
  13. ^ Calvo submits marijuana bill”. postguam.com (2017年1月6日). 2021年1月5日閲覧。
  14. ^ Angell, Tom (2019年4月4日). “Governor Signs Bill Legalizing Marijuana In Guam”. 2021年1月5日閲覧。
  15. ^ 北朝鮮、米領グアムへのミサイル攻撃を威嚇”. AFP (2017年8月9日). 2021年1月5日閲覧。
  16. ^ グアム知事、北朝鮮の「鼻っ面を殴らないと」 米大統領の対応擁護”. AFP (2017年8月14日). 2021年1月5日閲覧。
  17. ^ FY 2015 Guam Visitor Arrivals” (pdf). Guam Visitors Bureau. 2021年1月5日閲覧。
  18. ^ 就任当初(2011年)の台湾人観光客は40,707人で全体の3.6%。日本、韓国に次いで3番目に多い国・地域だった。
  19. ^ Governor Eddie Calvo's 2017 State of the Island Address”. KUAM NEWS (2017年3月6日). 2021年1月5日閲覧。
  20. ^ a b 鄧佩儒 (2018年7月30日). “關島總督四度訪臺 蔡英文:盼持續經貿合作,造福產業人民”. 台灣英文新聞. 2021年1月5日閲覧。
  21. ^ Governor Leads Guam Delegation on Trade Mission to Taiwan”. PNC (2012年4月17日). 2021年1月5日閲覧。
  22. ^ Steve Limtiaco (2012年4月24日). “Taiwan Businesses Set To Invest Millions On Guam”. Pacific Islands Report. 2021年1月5日閲覧。
  23. ^ Guam embarks on trade mission with Taiwan/Hong Kong”. KUAM NEWS (2015年11月2日). 2021年1月5日閲覧。
  24. ^ Maureen N. Maratita. “Taiwan president visits U.S. territory of Guam despite Chinese ire”. ロイター. 2021年1月5日閲覧。
  25. ^ Teng Pei-ju (2017年11月4日). “Guam passes legislative resolution to honor visit by Taiwan President”. 台灣英文新聞. 2021年1月5日閲覧。
  26. ^ a b c 台北駐日経済文化代表処”. 台湾が米国海外領土グアムでの弁事処再設置へ、米国側が同意 (2020年7月6日). 2021年1月5日閲覧。

外部リンク 編集

党職
先代
フェリクス・ペレス・カマチョ
グアム準州知事選挙
共和党立候補者

2010年、2014年
次代
レイ・テノリオ
公職
先代
フェリクス・ペレス・カマチョ
グアム準州知事
第8代: 2011年 – 2019年
次代
ルー・レオン・ゲレロ