クリー (マーベル・コミック)

クリーKree)は、マーベル・コミックによって出版されたアメリカン・コミックスに登場するに登場する架空のエイリアン種族である。彼らは大マゼラン雲の惑星“ハラ”を故郷とし、科学技術的に進歩した軍国主義社会を持つ。

クリー
出版の情報
出版者マーベル・コミック
初登場ファンタスティック・フォー』第65号(1967年8月)
クリエイタースタン・リー
ジャック・カービー
作中の情報
出身地ハラ(滅亡)
クリーラー
能力地球人より遥かに強靭なレベルの肉体と身体能力
最先端科学技術と兵器

発行履歴 編集

キャラクター経歴 編集

その他のバージョン 編集

MCU版 編集

クリー人(Kree) 編集

銀河宇宙の列強帝国“クリー”の国民であるヒューマノイド型種族。い肌を持つ者から、地球人と同様の肌色の肌をした者や、黒人さながらの外見の者まで。3タイプの人種が存在する[1]

何世紀も生きられるほどの長い寿命と銀河中の種族の中でも強靭な肉体、ひどい重傷からも身体を再生できるほどの非常に高い回復力を持っており[2]、更に彼らの体内を流れる青い血液を輸血された他の種族は、長寿化すると共に輸血前の何倍もの強力なパワーを得られる。筆記には独自の“クリー文字”を行使し、軍人たちは身元確認などのために識別コードを持つ。

我が部族が宇宙最強と自負する程の高いプライドと確然たる部族意識からか、仲間と他所者の区分を徹底している傾向が強く、“スプリーム・インテリジェンス”の指導の下、数多くの惑星を支配してクリー帝国を築き上げた。しかし、支配に従わない種族は武力で屈服、或いは滅ぼし、特に“スクラル人”とは数千年もの間、“クリー/スクラル戦争”を繰り広げてきた。

しかしそんなスクラル人や、1000年に渡って戦争を繰り広げた“ザンダー星人”とは、平和条約を結ぶくらいに近年体制が緩和していることもうかがえる[注釈 1]

指導者・人物 編集

スプリーム・インテリジェンス(Supreme Intelligence)
演 - アネット・ベニング
日本語吹替 - 榊原良子
ロナン・ジ・アキューザー(Ronan the Accuser)
演 - リー・ペイス
日本語吹替 - 白熊寛嗣
狂信的なクリー人将軍[2]。かつては、“アキューザーズ”の司令官であり、クリー帝国で最も力のある軍事指導者の一人だったが[2]、現代ではザンダーと平和条約を結んだクリー帝国を弱腰と断じてサノスと結託し、テロリストとなった。
コラス・ザ・パーサー(Korath the Pursuer)
演 - ジャイモン・フンスー
日本語吹替 - 乃村健次
クリーの諜報員[2]。1995年時には“スターフォース”の副官だったが、現代では実験的な兵器計画に志願して遺伝子改変とサイバネティックス強化を受け[2]ガモーラネビュラと共に訓練・バイオアップグレードを施されたことで[2]、ロナンの部下であるハンターになった。
ヴァース(Vers)
演 - ブリー・ラーソン
日本語吹替 - 水樹奈々
スターフォースの見習い隊員。その正体は、地球人のキャロル・ダンヴァースである。
ヨン・ロッグ(Yon-Rogg)
演 - ジュード・ロウ
日本語吹替 - 森川智之
クリー帝国の国民から英雄と慕われるスターフォースの隊長。スプリーム・インテリジェンスに対しては様付けで呼ぶほど非常に崇拝・信奉しており、スクラル撲滅に執念を燃やす。
ミン・エルヴァ(Minn-Erva)
演 - ジェンマ・チャン
日本語吹替 - 日笠陽子
登場作品 - 『キャプテン・マーベル』
スターフォースに所属するスナイパー兼遺伝子学者。ヴァースがヨン・ロッグを惹きつけていることが気に入らず、彼女を嫌って冷たく接しているが、どこか抜けている面もあり、ナーフの玩具を実銃と間違えて攻撃に使ってしまう失態を演じた。
惑星“トルファ”ではアット・ラスに擬態したスクラル人の1人を倒し、優れた狙撃の腕前を披露した。クライマックスではキャロルに挑んだほか、ヨン・ロッグの指示でニック・フューリーたちが搭乗した“クワドジェット”をポッドで追跡してドッグファイトを繰り広げるも、マリア・ランボーに撃墜され死亡する。
ブロン・チャー(Bron-Char)
演 - ルーン・タムティ
日本語吹替 - 安元洋貴
登場作品 - 『キャプテン・マーベル』
スターフォースに所属する巨漢。体躯通りの剛力を誇るだけでなく、頭の回転も速い戦士である。
だがクライマックスでは、彼の剛力を以ってしても、バイナリー・パワーに覚醒したキャロルに対抗しきれず敗北する。
アット・ラス(Att-Lass)
演 - アルゲニス・ペレス・ソト
日本語吹替 - 日野聡
登場作品 - 『キャプテン・マーベル』
スターフォースに所属する潜入活動のプロ。仲間内ではヴァースを姉のように慕っているほど彼女と親しかったらしく、クライマックスでキャロルに立ち向かった際には、彼女を取り押さえて「撃たせるな」と呼びかけるが、結局他のチームメイトと同様にあしらわれてしまう。
ソー・ラー(Soh-Larr)
演 - チュク・モデュー
登場作品 - 『キャプテン・マーベル』
クリーの諜報員。スクラルへの奇襲のためにトルファで潜入活動を行っていたが、スクラルの返り討ちに遭い、タロスに擬態されて行方不明となる。そのため、本物の彼はホログラムのみの登場である。
マー・ベル(Mar-Vell)
演 - アネット・ベニング
日本語吹替 - 榊原良子
クリーの科学者。スクラルを迫害してきたことを恥じてクリー帝国から脱走し、地球で密かにペガサス計画に参加していたが、後に裏切り者としてヨン・ロッグに射殺される。

クリー帝国(Kree Empire) 編集

宇宙の銀河の強大な軍事国家である列強帝国。地球をはるかに超える高度な文明を持ち、スクラル人をはじめとする対立種族とは長年の間戦争に明け暮れてきた。国民たちは、戦場に赴く優秀で気高き兵士たちこそ英雄であると崇めている。

ハラ(Hala)
登場作品:『キャプテン・マーベル』、『マーベルズ』
銀河座標“8K1M YY67A47 + 58E698L”に位置する、クリー帝国の首都惑星。地上部分は、空飛ぶビークルの往来が絶えず、軍隊の基地施設を彷彿とさせる都市群が築かれ、スターフォースの宿舎やトレーニングジム、ヘリオンの格納庫、スプリーム・インテリジェンスが控える高層ビルなどがある。地下部分にも都市が広がっており、地下鉄が走るほか、街頭ビジョンで反スクラル人運動のニュースも放送されている。
ヨン・ロッグに拉致されたキャロルも、1995年まで“ヴァース”としてこの星のスターフォースの宿舎に住んでいた。
トルファ(Torfa)
登場作品:『キャプテン・マーベル』
銀河座標“P137.T55412AS + C00876”に位置する、クリーの境界の惑星。トルファ人による文明が築かれていた様子で、1995年時のスターフォースとスクラル人の戦闘時には、砂塵が舞い上がり朽ちた寺院などの建造物が残る遺跡のような集落が戦地となり、この側には池もある。
1995年時にスクラル人たちが敵対するクリーを誘き寄せる作戦の一環としてトルファ人に擬態してこの星に待ち構え、スターフォースがソー・ラーの救出任務としてアキューザーズを同伴させてこの惑星に攻め込み、激闘が展開される。

軍事組織 編集

スターフォース(Starforce)
クリーの少数精鋭の特殊部隊。隊長のヨン・ロッグを筆頭に、各部門から選抜されたエキスパートのみが所属する。1989年に地球から連れされたキャロルも“ヴァース”としてこの部隊に所属しており、ミン・エルヴァ以外のメンバーとも良好な関係を築いていた。だが、ヴァースの「クリー人ではなく地球人である」という出自と失われた記憶の真相については本人以外皆周知しており、ヨン・ロッグらはヴァースを利用し続けるためにこの事実を彼女に長く秘匿していた。
1995年時には、スクラル撲滅のためにトルファからマー・ベルのラボ、地球までを転戦した。キャロルがスクラル側につくと、メンバー全員何の躊躇もなく彼女に戦いを挑むも、バイナリー・パワーに覚醒したキャロルに圧倒され敗北する。
アキューザーズ(Accusers)
クリーのエリート軍隊。1995年にはロナンが司令官として所属していた。隊員たちはプロテクターとモヒカン状のヘルメット、ライフルで武装している。
1995年に戦艦を運用してスターフォースに同伴し、トルファを爆撃した。後にマー・ベルのラボ一帯でフューリーたちやキャロルと激戦を展開するが、相手を倒すことはできずに撤退する。

テクノロジー 編集

スプリーム・インテリジェンス(Supreme Intelligence) 編集

登場作品:『キャプテン・マーベル』、『マーベルズ』

クリーの叡智を集めた超高度AI。クリー帝国を統治する存在でもあるが、決して真の姿を国民に明かすことは無く、他者と接触・対話する際には相手の潜在意識内にある最も尊敬する者の姿で現れる[注釈 2]。ヴァース/キャロルが対話をする時は、悪夢の中に出てくる謎の女性(ウェンディ・ローソン/マー・ベル)の姿で現れる[注釈 3]

ヴァースに対して彼女の力を高く評価し衝動的な面を諫めるなど、崇高な統治者として接するも、其の実スクラル殲滅のために、マー・ベルを裏切り者として抹殺し、キャロル/ヴァースをも利用しようと企てた首謀者だった。

キャロルがクリーに反旗を翻すと、スターフォースによって彼女に接触し、言葉巧みに服従させようとするも、キャロルが自らをただの人間であると自覚し、バイナリー・パワーを開放したことで跳ね除けられる。

ツール・武器 編集

ロナン・ジ・アキューザーの装備
長大なハンマーの“コスミ・ロッド”を愛用し、伝統的なクリーの鎧を常時着用している。
コラス・ザ・パーサーの武器
現代では“N20-75 ディスラプター・ライフル”を、スターフォース副官時代には“エナジー・ソード”を駆使する。
スターフォースのツール・武器
登場作品:『キャプテン・マーベル』
スターフォースのユニフォーム
ピストル
スターフォースのメンバーの基本装備であるハンドガン。携行時はグリップのみの形状だが、使用時にバレルが伸長しハンドガンの形状となる。アット・ラスは2丁所持・使用する。スターフォースのメンバーのほかローソン/マー・ベルも使用している。
マグニトロン・ガントレット(Magnitron Gauntlets)
ヨン・ロッグやブロン・チャーが両腕に装備している手甲。反重力波を放つほか、エナジー・シールドを展開することも可能。
スナイパー・ライフル
ミン・エルヴァが愛用する狙撃用ライフル。高性能ターゲットスコープを備え、1発で複数の標的を追尾・貫通するブラストを発射する。
上記のツールの多くが放つブラストやエネルギーの色は緑色である。
ライフル
登場作品:『キャプテン・マーベル』
アキューザーズの兵士の基本装備である銃。マー・ベルのラボではマリア・ランボーも使用する。

装置・ビークル 編集

フォトン・インヒビター(Photon Inhibitor)
登場作品:『キャプテン・マーベル』
クリー人によってヴァースの首筋に取り付けられた硬貨大の小型ディスク。ヴァースはこれが自らのパワーを制御するためのものだと知らされていたが、実際は彼女が強大な力に覚醒し、謀叛を起こすことを懸念して取り付けたパワー抑制装置だった。だがキャロルがバイナリー・パワーに完全覚醒したことにより外れ、彼女は真の力を発揮するようになる。
ダーク・アスター(Dark Aster)
登場作品:『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
ロナンが所有する全幅5km [2]の巨大宇宙戦艦。初登場時には銀河座標“T81S IS1301319 + 31N351”に位置していた。捻れた古代遺跡のような外観をした艦体で、9509年前に建造された[2]。中央後部の4基のエンジンで飛行し、30ものセグメントから構成される両翼は[2]、大気圏突入時に緩やかな速度で回転する。内部は薄暗い広大な空間となっており、ロナンの玉座を構えたフライトデッキに吊るされた光球に両手をかざして舵をとる。通路とデッキの間には強靭な防護ドアも備わり、艦体全体をエナジー・シールドで覆うことも可能。さらにロナンが眠るための天人の血で満たされたピット[2]や数千機もの“ネクロクラフト”も配備されている[2]
ロナンらに運用され、ザンダーで“ラヴェジャーズ”や“ノバ軍”の攻撃を物ともせずに着陸させようとするが、ピーター・クイル/スター・ロードたちが乗った“ミラノ号”が右舷へ、ロケットが操縦する“ウォー・バード号”がフライトデッキに特攻したことで墜落し、大破する。
ヘリオン(Helion)
登場作品:『キャプテン・マーベル』
スターフォースが運用する青緑色の小型宇宙船。後部ハッチから乗り込み、内部はコクピットと多数のライフルが収納された武器庫・後述のポッドの格納庫のみという簡素なものとなっている。スペースジャンプが可能だが、武装は確認されていない。
スターフォースがトルファへの移動、地球に不時着してしまったヴァースと合流するまでの活動拠点として運用するも、マリア・ランボーが操縦するクワドジェットの砲撃で大破する。
スペース・ポッド
登場作品:『キャプテン・マーベル』
クリー人が運用する、大気圏内外双方での運用が可能な小型機。2種類の機体が登場し、劇中ではヘリオンに1機、マー・ベルのラボに2機格納されていた。
前者は目的地への突入用ポッドで、スターフォースのメンバー全員が搭乗でき、運用時には高速で目的地に落着する。スターフォースのメンバーがトルファの大気圏に突入直後に運用し、現地の池に落着する。
後者はミン・エルヴァが奪取・操縦したレモン色のラインの機体と、ヨン・ロッグが奪取・操縦したいラインの機体が登場。搭乗時にはコクピット部のキャノピーを90度展開して乗り込む。機首にある2門の砲口から放つブラストが主武装である。ミン・エルヴァ機はクワドジェットを駆るマリアとドッグファイトを展開。最終的に撃墜され大破する。ヨン・ロッグ機はキャロルとの空中戦で一度不時着するも大破はせず、彼女によってヨン・ロッグをハラへ強制送還させるために利用される。
アキューザーズの戦艦(Accuser Warship)
登場作品:『キャプテン・マーベル』
アキューザーズが運用する宇宙戦艦。当艦もスペース・ジャンプが可能で、艦内にのラインに光る弾道ミサイルと多数の宇宙戦闘機を搭載している。また、整然とした外観ではあるが、ロナンが運用するダーク・アスターに似通っている。
トルファでの任務には2隻が、地球への出向時には3隻がスターフォースに同伴し、ミサイルや宇宙戦闘機で攻撃するが、地球の衛星軌道上での戦闘では1隻がキャロルの特攻によって大破する。
シルバー・アスター(Silver Aster)
アキューザーズの小艦隊の中心となって運用される、ロナン専用の宇宙戦艦。
宇宙戦闘機
登場作品:『キャプテン・マーベル』
アキューザーズの戦艦に多数搭載されている、小型の宇宙艦載機。武装は機体前部から放つブラスト。身体一つで弾道ミサイルを全て破壊し挑んできたキャロルに対し、編隊を組んで発艦し、彼女を攻撃するが、全く歯が立たずに次々と破壊される。
マー・ベルのラボ(Mar-Vell's Laboratory)
マー・ベルの研究所である宇宙船。

各作品における描写 編集

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
キャプテン・マーベル
マーベルズ


その他のメディア 編集

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』でも、ネビュラが「あいつら(クリー人)は慈悲深い」と話している。
  2. ^ そのため、当AIへコンタクトを試みる人物は、ハラにある当AIが控える高層ビル内の足の踏み場型の光る装置の上に立ち、そこから全身へ伸長・密着する多数の神経状の物体を介して意識をリンクさせる必要がある。これを経ることで、コンタクトを試みる人物の眼前は光が差す銀色の空と水面が広がる空間に変わり、接触・対話を行えるようになる。
  3. ^ 『キャプテン・マーベル』のブルーレイ収録の未公開映像ではヨン・ロッグがコンタクトするシーンもあり、彼の前にはヨン・ロッグ自身の姿で現れている。またヴァースは、ヨン・ロッグの潜在意識内にある、彼が最も尊敬する者を言い当てていた。

参考 編集

  1. ^ キャプテン・マーベル』劇場パンフレットより。
  2. ^ a b c d e f g h i j k ビジュアル・ディクショナリー 2019, p. 188 - 189

参考文献 編集

  • 『マーベル・スタジオ・ビジュアル・ディクショナリー』デアゴスティーニ・ジャパン、2019年。ISBN 978-4-8135-2270-6 
  • 『アベンジャーズ マーベルヒーロー超全集 (てれびくんデラックス愛蔵版)』小学館、2019年。ISBN 978-4-09-227211-8