メインメニューを開く

ゲンノショウコ(現の証拠、学名: Geranium thunbergii)は、フウロソウ科フウロソウ属多年草日本全土の山野や道端に普通に見られる[3]。中国植物名は、童氏老鸛草(どうしろうかんそう)[4]

ゲンノショウコ
'
ゲンノショウコ
神奈川県相模原市、2006年9月)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : 真正バラ類II Eurosids II
: フウロソウ目 Geraniales
: フウロソウ科 Geraniaceae
: フウロソウ属 Geranium
: G. sect. Geranium
: ゲンノショウコ G. thunbergii
学名
Geranium thunbergii
Siebold ex Lindl. et Paxton[1]
シノニム
  • Geranium nepalense auct. non Sweet
  • Geranium nepalense Sweet subsp. thunbergii (Siebold ex Lindl. et Paxton) H.Hara
  • Geranium nepalense Sweet var. thunbergii (Siebold ex Lindl. et Paxton) Kudô
  • Geranium nepalense Sweet f. roseum H.Hara
  • Geranium nepalense Sweet f. glabratum (H.Hara) H.Hara
品種[2]
  • シロバナゲンノショウコ G. t. f. pallidum
  • ヤエザキゲンノショウコ G. t. f. plenum
  • ベニバナゲンノショウコ G. t. f. thunbergii

近い仲間にアメリカフウロ老鸛草中国語版などがある。

名称編集

古来より、胃腸病に効能がある薬草として有名で、和名ゲンノショウコは「実際に効く証拠」を意味し、「現(験)の証拠」と漢字書きにされる[5][6]。日本では、現の証拠のほか、玄草(げんそう)という名でも流通している[4]。果実の形をろうそくに見立ててロウソクソウ[6]種子を飛散させた後の果実の形が、神輿の屋根のように見えることから、ミコシグサ(神輿草)とも呼ばれる[7][6][8]。また、葉の形にちなんでネコアシ(猫足)、ウメに似た花形と茎が細く伸びる姿からウメズル(梅蔓)ともよばれることもある[6][4]

特長編集

日当たりの良い野原や道ばた、山野、原野、水田のあぜなどに自生する多年草[4][5][6][9]

は分岐し約30 - 50センチメートル (cm) に伸びるが、下部は地表を這うようにして横に伸び広がり[5][9]、茎葉に毛があり、節の下部は下向きのが生えている[9]は長柄を持ち対生、形状は掌型に3 - 5に深裂し[9]は3 - 7 cm位。裂片は先でさらに3つに分裂し、倒卵形である。葉の縁は鋸歯型で、柔らかな葉質である[3]。若葉には暗紅色の斑点がある[9]。幼時は茎が横に張っていないので、類似植物と見誤ることもある[9]

花期は夏から秋にかけて(7月 - 10月)[5][10]は目立ち、紅紫色、または白色に淡紫の筋が入った花である[5][6]。枝先と葉腋から細長い花軸を出して花を2個付け[9]花弁は5枚で筋が走り、がく弁は5つ、雄しべは10ある[3]。花が咲き始めのころは、柱頭の先が1本に見えるが、開花後しばらく経つと5裂する[8]

花が咲き終わったあとにできる果実は、鳥のくちばしのように細長い形をした蒴果を結び[6]、熟すると下から5つに裂開して反り返り、中から5個の種子を1つずつ弾き飛ばす[11][9][8]。5裂片は蒴果の先端だけについていて、下方は外側に巻き上がる[9]。種子で繁殖する[5]

分布編集

日本では北海道草地本州から九州山野に分布する。また国外では、朝鮮半島中国大陸などに自生する。

ゲンノショウコには白い花を付ける白色系と、ピンク色を付ける紅色系とがあり、日本では、富士川付近を境に東日本では白花が多く、西日本では淡紅、日本海側で紅色の花が多く分布しているといわれる[5][11]

薬草編集

ゲンノショウコ
生薬・ハーブ
効能 整腸薬
原料 ゲンノショウコ
成分 ゲラニインクェルセチンタンニン
臨床データ
法的規制
投与方法 経口(湯液)
識別
KEGG E00026 D04360
テンプレートを表示

ゲンノショウコはドクダミセンブリなどと共に、日本では古くからの三大民間薬の一つに数えられ[12]、下痢止めの薬草として知られている[5][7]江戸時代から民間薬として用いられるようになり、『本草綱目啓蒙』(1803年)にも取り上げられ、「根苗ともに粉末にして一味用いて痢疾(りしつ)を療するに効あり、故にゲンノショウコと言う」との記載が見られる[7]。現代の日本薬局方にも「ゲンノショウコ」として見える。ただし、伝統的な漢方方剤(漢方薬)では用いない。

有効成分は全体、特に開花時の茎葉に、フィロバロールタンニンを約20%、その他に没食子酸(もつしょくしさん)、クルセチオンコハク酸などを含んでいる[5]タンニンとは渋のことで、たんぱく質などと結合して細胞組織を引き締める収斂作用[7]、消炎作用、止血作用があるといわれる[5]・葉・花などを干し煎じて下痢止め胃薬とし、またとしても飲用する。飲み過ぎても便秘を引き起こしたりせず、薬効が強くて優秀な整腸生薬であることから、地方によりイシャイラズ(医者いらず)[7][4]、さらにはイシャゴロシ(医者殺し)[7]、「現の証拠」すなわち「ただちに効く」の意からタチマチグサ(たちまち草)[5]テキメンソウ(覿面草)[4]などの異名も持つ。

薬草としての栽培は、種子で繁殖させ、春に種をまく[9]。環境は、日当たりの良い適湿地が良いとされる[9]

採取と飲用編集

一般に開花期である7 - 8月頃に根を除いて刈り取り、洗って十分水気を除いて、天日で乾燥させたものが生薬になり、ゲンノショウコと呼んでいる[5]日本薬局方では茎・葉をゲンノショウコ、その粉末をゲンノショウコ末という[9]。若葉のころは、トリカブトキンポウゲ類の有毒植物に似ているため注意するが、夏の開花期であれば花で確認できる[3][13]

優れた健胃・整腸作用を持ち、下痢便秘食あたり、慢性の胃腸疾患に効能があり、時間をかけて十分煎じることで薬効成分が抽出される。下痢止めとしては、ゲンノショウコ1日量10 - 20グラムを約500 - 600 ccの水で煎じ約半量まで煮詰めたものをさらに濾して、温かい状態で1日3回分けて服用する方法が知られている[4][5][9]。下痢に使用するときは、なるべく量を多くした方が良いと言われ、便秘に使用するときは、1日量5 - 10グラムと量を減らして煎じ服用するとされる[4]。冷えた煎じ汁は、整腸薬となる[9]扁桃炎口内炎、のどの痛みには、煎じ汁をうがい薬として使用することが知られている[5]湿疹かぶれには、煎じ液を冷まして冷湿布に用いられる場合もある[5]。慢性的な胃腸の弱い状態などではお茶代わりに飲用する場合もある。利尿目的の場合は、1日10 - 15グラムを、500 ccの水で、5 - 10分煎じ、3回に分けて食間に服用する。高血圧予防には、ゲンノショウコ10グラム、ドクダミ10グラム、少し炒った決明子5グラムを煎じて常用すると効くとされる。また、ゲンノショウコ100グラム、ヨモギ100グラムを混ぜて浴湯料として使ったゲンノショウコ風呂は、冷え性、しぶり腹に効くとされる[5][3]

下痢、便秘に使用するのは日本独特の使い方で、中国ではこのような症状には使用されていなかった[4]。中国には日本のゲンノショウコはないが、キクバフウロミツバフウロイチゲフウロなどを老鸛草(ろうかんそう)と称して、神経痛に用いる[4]

季語編集

季語である。

脚注編集

[ヘルプ]

出典編集

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Geranium thunbergii Siebold ex Lindl. et Paxton”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年9月15日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). “BG Plants簡易検索結果表示”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 千葉大学. 2013年9月15日閲覧。
  3. ^ a b c d e イー薬草・ドット・コム - ゲンノショウコ
  4. ^ a b c d e f g h i j 貝津好孝 1995, p. 32.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 田中孝治 1995, p. 84.
  6. ^ a b c d e f g 飯泉優 2002, p. 233.
  7. ^ a b c d e f 稲垣栄洋 2010, p. 92.
  8. ^ a b c 菱山忠三郎 2014, p. 159.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n 馬場篤 1996, p. 52.
  10. ^ 亀田龍吉 2012, p. 81.
  11. ^ a b 稲垣栄洋 2010, p. 90.
  12. ^ 田中修 2007, p. 115.
  13. ^ 亀田龍吉 2012, p. 80.

参考文献編集

  • 飯泉優『草木帖 —植物たちとの交友録』山と溪谷社、2002年6月1日、233頁。ISBN 4-635-42017-5
  • 稲垣栄洋『残しておきたいふるさとの野草』地人書館、2010年4月10日。ISBN 978-4-8052-0822-9
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、32頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 亀田龍吉『雑草の呼び名辞典』世界文化社、2012年2月20日、80 - 81頁。ISBN 978-4-418-12400-8
  • 田中修『雑草のはなし』中央公論新社〈中公新書〉、2007年3月25日。ISBN 978-4-12-101890-8
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、84頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光舎、1996年9月27日、52頁。ISBN 4-416-49618-4
  • 菱山忠三郎『「この花の名前、なんだっけ?」というときに役立つ本』主婦の友社、2014年10月31日。ISBN 978-4-07-298005-7
  • 平野隆久写真『野に咲く花 : 写真検索』林弥栄監修、門田裕一改訂版監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2013年、増補改訂新版、307頁。ISBN 978-4-635-07019-5

関連項目編集

外部リンク編集